認知症で銀行口座はどうなる?口座凍結の判断基準と防ぐ7つの対策【2026年】

「親が認知症になったら、銀行口座からお金を下ろせなくなるって本当?」——答えは本当です。金融機関が名義人の判断能力の低下を把握すると、口座は事実上「凍結」され、たとえ家族であっても預金を引き出せなくなります。介護費用や医療費、施設の入居費用を子どもが立て替え続けて家計が苦しくなるご家族は、相続相談の現場でも決して珍しくありません。ただし止まるのは診断の日ではなく、銀行が判断能力の低下を知ったときで、その前と後とで家族ができることが変わります。止まった後に成年後見で動かせるようになるまでの日数と、家族の役割分担も、支払い期日から逆算できる形で整理しました。

厚生労働省研究班の推計(2024年公表)では、認知症の高齢者は2040年に約584万人に達すると見込まれています。その手前の段階であるMCI(軽度認知障害)を含めれば、高齢者の3人に1人が該当する計算です。口座凍結はもはや他人事ではありません。本記事では、銀行が凍結を判断する基準とタイミング、凍結された場合の解除方法、そして凍結が起こる前にできる7つの対策を、中立の立場から費用も含めて徹底的に解説します。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 銀行が「本人の判断能力が低下した」と判断した時点で、口座は事実上凍結され、家族でも引き出せなくなる
  • 凍結後の正式な解除手段は成年後見制度のみ。専門職後見人なら月額2〜6万円の報酬が生涯続くことも
  • 元気なうちなら、代理人カード・家族信託・生命保険など7つの対策から選べる
  • どの対策も「本人の判断能力があるうち」しか使えない。先延ばしが最大のリスク

頼れる家族が近くにいない方が、亡くなった後の葬儀や精算を生前に頼んでおく方法は、死後事務委任契約とは?できること・費用・契約前の確認点で整理しています。

目次

親が認知症になると銀行口座はどうなる?段階ごとの早見表

親が認知症になっても、診断を受けた日に銀行口座が止まるわけではありません。口座の取引が止まるのは、銀行が本人の判断能力の低下を知ったときです。全国銀行協会の2021年の考え方でも、確かめる方法として本人との面談、診断書、担当医からの聞き取りなどが挙げられています。止まる前と止まった後とで、家族ができることは大きく変わります。

親の状態口座の状態家族ができること
元気で、窓口で自分で説明できるいつもどおり使える代理人カードや代理人の届出、定期預金の整理、任意後見・家族信託の契約。手順は認知症になる前の銀行手続きチェックリストへ
物忘れが増えたが、窓口ではまだ話せる使えるが、銀行によっては代理人の申込みを断られる早めに取引店へ相談する。日々のお金の見守り方は一人暮らしの親のお金の管理へ
銀行が判断能力の低下を知った引き出し・振込・解約、定期預金の解約が止まる。年金の入金や設定ずみの引き落としは続くことが多い本人の医療費などの支払いに限り、親族の依頼に応じる場合がある(極めて限定的)。並行して成年後見の申立てを考える
成年後見人が選ばれた後見人が本人に代わって取引する後見人以外の親族からの払出しには、銀行は応じないのが基本
本人が亡くなった相続の手続きに移る葬儀費用などの払い戻しは親が亡くなったら銀行口座はすぐ止まる?へ
全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年2月18日)をもとに整理。実際の扱いは銀行ごとに違います(2026年10月時点)。

止まる前にできること:代理人カード・代理人の届出は認知症になる前に

家族が親の口座を動かせるようにする銀行の仕組みは、親が元気なうちに申し込むものです。代表的なのは、家族がATMで入出金できる「代理人カード」と、窓口の取引も家族ができる「代理人の届出」です。

どちらも本人の申込みが前提なので、認知症が進んでからでは作るのが難しくなります。みずほ銀行の「代理人予約サービス」は、申込みの時点で認知機能の低下が心配される場合は利用できないと案内しています。三菱UFJ銀行の「予約型代理人」は、代理人が取引を始めるときに、専用の診断書と続柄がわかる公的な書類が要ります。

また、代理人カードがあれば安心とは言い切れません。銀行が本人の判断能力の低下を確かめると、代理人カードも使えなくなることがあります。仕組みの違いと限界は銀行の代理人カードと代理人指名手続きの違いで詳しく説明しています。

止まった後にできること:本人のための支払いを相談し、後見の準備を並行する

口座が止まった後の基本は、成年後見制度の利用です。全国銀行協会の考え方では、親族からの払出しの依頼に応じるのは「極めて限定的な対応」とされています。応じることが考えられるのは、本人が元気なら自分で払っていたはずの医療費の支払いなど、本人の利益に合うことが明らかな場合です。

施設の費用の支払いが迫っているときは、請求書を持って取引店に相談しつつ、断られた場合に備えて後見の申立ても準備します。払い方の順番は認知症の親の施設費用を親の預金から払うには、年金の受け取りは認知症の親の年金は家族が受け取れる?で整理しています。暗証番号を知っている家族がATMで引き出すことの問題点は、親が認知症なのに家族が預金を引き出すとバレる?をご覧ください。

親がすでに生命保険に入っている場合は、口座とは別に、保険の請求を家族が代わりにできる仕組みがあるかも確かめておけます。できることとできないことは認知症になったら保険は家族が動かせる?で分けて説明しています。

成年後見・任意後見・家族信託の違いと、公的に確かめられる費用

口座が止まった後でも使えるのは成年後見だけです。任意後見と家族信託は、本人に判断能力があるうちに契約しておく必要があります。費用は、裁判所などの公的な資料で確かめられたものだけを載せました。

制度始められる時期口座でできること公的な資料で確かめられる費用気をつけたいこと
成年後見(法定後見)判断能力が下がった後でも申し立てられる。申立先は本人の住所地の家庭裁判所後見人が本人の預金を管理する申立手数料は収入印紙800円分、登記手数料は収入印紙2,600円分、ほかに郵便切手(額は裁判所ごと)。鑑定をするときは鑑定の費用。専門職の後見人の報酬のめやすは月額2万円(管理する財産が1,000万円超5,000万円以下なら月3万〜4万円、5,000万円超なら月5万〜6万円)後見人を選ぶのは家庭裁判所で、家族が選ばれるとは限らない。報酬の額も家庭裁判所が決める
任意後見本人に判断能力があるうちに、公正証書で契約する判断能力が下がった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選んでから、任意後見人が契約の範囲で管理する公正証書をつくる手数料(額は公証役場で確認)。任意後見監督人の報酬のめやすは月額1万〜2万円(管理する財産が5,000万円超なら月2万5,000円〜3万円)判断能力が下がってからは契約できない
家族信託本人に判断能力があるうちに、信託の契約を結ぶ信託した預金を、預かった家族(受託者)が契約に沿って管理する国や裁判所が示す費用の目安はない。専門家への報酬は事務所ごとに見積もりを取る信託用の口座の扱いは金融機関ごとに違う。契約書づくりは司法書士・弁護士に相談する
報酬のめやすは東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」によるもので、実際の額は各家庭裁判所が事情に応じて決めます。申立ての費用は裁判所「後見開始」の案内によります(2026年10月時点)。

銀行ごとの対応の違い:ゆうちょ・大手行・愛知の地元の金融機関

家族が使える代理の仕組みは、名前も中身も銀行ごとに違います。公式の案内で確かめられた例を表にしました。

金融機関家族が使える仕組み公式の案内で確かめられたこと
ゆうちょ銀行代理人カード1つの総合口座につき、本人カードと代理人カードの2枚を発行できる。代理人カードは預金者1人につき1枚まで。申込みは貯金窓口で、通帳またはキャッシュカード、届出印、本人確認書類が要る(名義人以外が手続きするときは委任状も)
みずほ銀行代理人予約サービス申込みの時点で認知機能の低下が心配される場合は利用できない
三菱UFJ銀行予約型代理人代理人が取引を始めるときに、専用の診断書と続柄がわかる公的な書類が要る
愛知の地方銀行・信用金庫・JA各金融機関で違う取引店で、代理人カードと代理人の届出の有無、申し込める家族の範囲を確かめる。高齢の方のATMの振込・引き出しの制限は70歳以上のATM振込・引き出し制限にまとめています
2026年10月時点の各行の公式の案内による。条件は変わることがあるため、申し込む前に取引店で確かめてください。

窓口で聞くことは3つです。代理人の仕組みがあるか、申し込める家族の範囲、定期預金の解約も対象になるか。答えを書き込める質問表は認知症になる前の銀行手続きチェックリストに用意しています。

認知症になると銀行口座が凍結される理由と判断基準

なぜ凍結されるのか:預金の引き出しには本人の意思確認が必要

預金の引き出しや解約は、法律上「本人の意思に基づく取引」であることが大前提です。認知症が進行して意思能力が失われた状態での取引は無効とされる可能性があり、金融機関は本人の財産を不正引出しや使い込みから守る責任を負っています。だからこそ、名義人の判断能力に疑いが生じた時点で、銀行は取引を制限せざるを得ないのです。これは家族への嫌がらせではなく、本人保護の仕組みです。

銀行はなぜわかる?凍結される3つのタイミング

「認知症と診断されたら自動的に凍結される」という仕組みはありません。病院の診断情報が銀行に自動連携されることはなく、実際には次の3つのタイミングで金融機関が把握します。

🏦 銀行が「判断能力の低下」に気づく3つのタイミング

1

窓口でのやりとり

同じ質問の繰り返し、暗証番号の間違いなど、行員が様子の変化に気づく

2

家族からの申し出

「親が認知症なので代わりに手続きを」と相談したことがきっかけになる

3

手続きに伴う把握

施設入所に伴う住所変更、成年後見登記の確認など他の手続きが契機に

  1. 窓口でのやりとり:同じ質問を繰り返す、暧証番号を何度も間違える、書類に同じ箇所への記入を繰り返すなど、行員が様子の変化に気づくケース
  2. 家族からの申し出・相談:「親が認知症なので代わりに手続きしたい」と家族が相談した結果、凍結に至るケース(実は非常に多いパターンです)
  3. 手続きに伴う把握:施設入所に伴う住所変更、成年後見登記の確認など、他の手続きがきっかけになるケース

つまり「いつ凍結されるかは予測できない」のが実情です。軽度のうちは従来どおり使えていた口座が、ある日突然使えなくなる——この予測不能性こそが口座凍結問題の最大のリスクです。

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口座凍結されるとどうなる?できること・できなくなること

⭕ 凍結後も維持されること

✓ 年金の受取(入金)

✓ 公共料金・クレジットカードの自動引き落とし

※口座そのものが閉鎖されるわけではありません

✖ できなくなること

✕ 預金の引き出し・振込・解約

✕ 定期預金の解約(特に深刻)

✕ 株式・投資信託の売却

できなくなること:引き出し・解約・株式などの売却

ATMや窓口での預金の引き出し、定期預金の解約、振込、定額自動送金の設定変更などができなくなります。見落とされがちですが、預金だけでなく株式や投資信託の売却・解約もできなくなります。証券口座も同じく本人の意思確認が必要だからです。相場が下がる局面でも売りたくて売れない、という事態は資産運用上の大きなリスクです(詳しくは相続財産の運用で失敗しない!認知症リスクを避ける方法6選)。

維持されること:年金の受け取り・自動引き落とし

一方で、口座自体が閉鎖されるわけではないため、年金の受け取り(入金)や、公共料金・クレジットカードなどの自動引き落としは原則として維持されます。電気・ガス・水道がすぐに止まることはありません。困るのは「新しくまとまったお金を動かすこと」です。介護施設の入居一時金や自宅のリフォーム費など、数百万円単位の支出が必要になったときに家族が立ち往生します。

特に深刻なのは定期預金

定期預金は解約に本人の意思確認が必須のため、認知症になると満期が来てもそのまま「塩漬け」になります。最悪の場合、本人が亡くなって相続が発生し、相続人全員での遺産分割協議がまとまるまで、数年〜十数年にわたって誰も手を付けられません。詳細は定期預金は認知症になると解約できない?対処法と事前の備えをご覧ください。

また、凍結されるのは銀行預金だけではありません。証券会社の口座も同様で、株式や投資信託の売却・出金にも本人の意思確認が求められます。相場が動いても売却の指示が出せなくなるため、有価証券をお持ちの方は預金以上に早めの備えが必要です。

データで見る:備えができている家庭はまだ少数派

認知症の高齢者は全国で約471.6万人と推計される一方、凍結後の唯一の正式な解除手段である成年後見制度の申立ては年間約4.3万件にとどまります。大多数のご家庭が「凍結されてから困る」状態のまま、事前の備えをできていないのが実情です。相続・認知症に関する統計の詳細は相続の統計データ完全版にまとめています。

すでに凍結された場合の解除方法

原則:成年後見制度(法定後見)の利用

凍結後に預金を動かす正式な方法は、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらうことです。ただし、申立てから審判まで1〜3か月程度かかること、財産額や親族関係によっては司法書士や弁護士などの専門職が後見人に選ばれること、専門職後見人の報酬は本人の財産額などをもとに家庭裁判所が決め(月額2〜6万円程度が目安)、原則として本人が亡くなるまで発生し続けることなど、負担の大きさは必ず知ったうえで利用すべき制度です。手続きの流れ・費用・注意点は凍結された銀行口座を解除するには?成年後見制度の手続き・費用・注意点で詳しく解説しています。

例外:全国銀行協会の考え方による限定的な対応(本人の医療費など)

全国銀行協会は2021年2月の「金融取引の代理等に関する考え方」で、本人の判断能力が失われた後の親族からの払出しの依頼について、成年後見制度の利用を求めるのが基本で、応じるのは極めて限定的な対応だと整理しました。応じることが考えられるのは、本人が元気なら自分で払っていたはずの医療費の支払いなど、本人の利益に合うことが明らかな場合に限られます。病院や介護施設の請求書を持って相談すると話が進みやすくなりますが、応じるかどうかと条件は金融機関ごとに違い、確実な方法ではありません。

今日の一歩:例外扱いを窓口でどう頼むか

同じ請求書を持って行っても、伝え方で結果が変わることがあります。「お金を下ろしたい」ではなく「本人の施設費を、本人の口座から支払先へ払いたい」という組み立てで話してください。

行き先

口座のある取引店の窓口へ。ATMや電話では扱えません。来店前に電話で「本人の医療費・施設費の支払いについて相談したい」と用件を伝え、担当者を押さえておくと二度手間になりません。

持って行くもの

本人の通帳と届出印/本人の本人確認書類/窓口へ行く家族の本人確認書類/本人との続柄がわかる戸籍謄本/本人名義で届いた病院・施設の請求書/診断書やケアマネジャーからの連絡票(あれば)。請求書が本人名義であることが、本人の利益に資する支出だと示すうえで効きます。

窓口で伝える3点

  1. 本人の今の状態(診断名、意思確認ができる状態かどうか、在宅か施設か)
  2. お金の使いみち(本人の医療費・介護費・施設費であること。家族の生活費ではないこと)
  3. いくら必要か(請求書の金額。毎月いくら不足しているのか)

断られたときの次の一手

支店の判断で止まっていることがあります。「本部の相続・後見の担当部署に取り次いでほしい」と伝えてください。それでも動かないときは、家族が現金を受け取らず支払先へ直接振り込む形で再度依頼する方法もあります。ここまでで進まなければ、後見の申立てに切り替える判断になります。

後見の申立てには1〜3か月かかります。窓口で交渉している間も並行して申立ての準備を進めておくと、断られた場合の空白が短くなります。

やってはいけないこと:キャッシュカードでの無断の引き出し

暗証番号を知っている家族がATMで引き出し続けるケースは実際にありますが、避けてください。本人の意思に基づかない引き出しは、相続発生後に他の相続人から「使い込み」を疑われ、遺産分割トラブルの火種になります。使途の記録と領収書の保管を徹底し、早めに正式な制度に移行すべきです。

凍結された口座はいつ動かせる?支払い期日から逆算する段取り

認知症で止まった口座を成年後見で動かすには、申立ての後に「審理」「確定」「登記」「銀行への届出」の4つを通ります。最高裁判所の令和7年の統計では、後見などの申立てから2か月以内に終わった事件が約71%、4か月以内が約94%でした。審理が終わってもすぐには使えず、確定までさらに2週間かかります。

段階かかる時間(公的な資料で確かめられるもの)動く人
1. 書類をそろえる(申立書・診断書・戸籍など)家庭ごとに違う。診断書は主治医に早めに頼む申し立てる家族
2. 家庭裁判所の審理1か月以内に終わったのが37.9%、2か月以内が約71%、4か月以内が約94%(令和7年)家庭裁判所。家族は聞き取りに応じる
3. 審判の確定後見人が審判書を受け取ってから2週間、不服の申立てがなければ確定する待つだけ
4. 法務局への登記確定後、家庭裁判所が東京法務局に登記を依頼する(日数の公表はない)家庭裁判所
5. 登記事項証明書を取る窓口・郵送は1通550円。オンラインでも請求できる後見人
6. 銀行に届け出る必要な書類は銀行ごとに違うので、取引店に確かめる後見人
最高裁判所「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」、大阪家庭裁判所の後見等開始の申立ての案内、法務省の成年後見登記のQ&Aをもとに整理(2026年10月時点)。

計算の例です。審理が1か月で終わっても、確定までの2週間と登記・証明書の取得を足すと、銀行で手続きできるのは申立てからおよそ1か月半より後になります。余裕をみるなら、約94%が終わっている4か月に確定までの2週間を足し、支払い期日の4か月半ほど前には申立ての準備に入る計算です。

間に合わない分は、上で説明した取引店への相談か、家族の立て替えでつなぎます。立て替えたときは、本人のお金と混ぜずに領収書と記録を残してください。後見人は選ばれてから原則1か月以内に本人の財産を調べて目録を作る決まりがあるため(民法853条。家庭裁判所が期間を延ばすこともあります)、記録はそのときに後見人へ渡せます。

愛知・岐阜での申立先と、証明書を取る窓口

申立先は、本人が住んでいる場所の家庭裁判所です。愛知県なら名古屋家庭裁判所の本庁か支部、岐阜県なら岐阜家庭裁判所の本庁か支部・出張所になります。施設に入っていて住所がどこか迷うときは、申し立てる前に家庭裁判所に確かめてください。どの市町村がどこの担当かは名古屋家庭裁判所の管轄と窓口の表で確かめられます。

後見人が銀行に出す登記事項証明書は、郵送なら東京法務局の後見登録課に請求します。窓口なら東京法務局のほか、各法務局・地方法務局の戸籍課でも取れます。愛知県は名古屋法務局、岐阜県は岐阜地方法務局の戸籍課です(2026年10月時点)。申立書の書き方や必要書類は成年後見の申立ての手順と必要書類で順番に説明しています。

口座が止まったとき、家族の誰が何をするか

口座が止まると、銀行への相談、裁判所への申立て、支払いの立て替えが同時に動きます。全部を一人で抱えると、記録が抜けたり、きょうだいに話が伝わらなかったりします。先に役割を決めておくと進めやすくなります。

役割誰がなれるか・誰がするか気をつけること
銀行の窓口に相談する人本人の状態をいちばん説明できる家族を1人決める人によって説明が食い違わないよう、伝える内容を家族でそろえておく
申立てをする人本人、配偶者、四親等内の親族など本人の状態の鑑定が要るときは、その費用を申立人が負担することがある
後見人の候補者申立書に書けるが、選ぶのは家庭裁判所令和7年に親族が後見人など(保佐人・補助人を含む)に選ばれたのは16.4%。希望の人が選ばれないことを理由に、許可なく申立てを取り下げることはできない(家事事件手続法121条)
支払いを立て替える人決まりはない。家族で決める本人のお金と混ぜず、領収書と記録表を残す
ほかのきょうだいへの連絡申立てをする人がまとめて伝えると早い後見人を誰にするかは裁判所が決めることと、選ばれた後は後見人以外は口座を動かせないことを、先に共有しておく
裁判所「後見開始」、最高裁判所「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」をもとに整理(2026年10月時点)。

統計では、申立ての動機で最も多いのは「預貯金等の管理・解約」でした。口座が止まったことをきっかけに後見を考えるのは、珍しいことではありません。急ぐあまり、親に書類へ署名させたり、家族が代わりに署名したりするのは避けてください。後で取引の効力や使い込みを疑われる原因になります。

もう窓口で断られている方へ
断られた理由が「支店の運用だから」なのか「本人の意思確認ができないから」なのかで、次にやることが変わります。前者なら書類と伝え方の組み直しで進む余地があり、後者なら後見の申立てに切り替える判断になります。30分の無料相談では、どちらなのかを切り分けたうえで、次に窓口へ持って行く書類と、並行して進める申立ての段取りまでを整理してお持ち帰りいただけます。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
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口座凍結を防ぐ7つの生前対策を徹底比較

凍結対策はすべて「本人に判断能力があるうち」にしか実行できません。まずは7つの選択肢の全体像を比較表で把握してください。

対策 できること 費用の目安 向いている人
①代理人カード・代理人指名 日常の引き出しを家族が代行 ほぼ無料 まず手軽に備えたい人
②財産管理委任契約 財産管理を契約で家族に委任 契約書作成費用(公正証書推奨) 身体の衰えにも備えたい人
③任意後見制度 本人が選んだ人が将来後見人に 公正証書作成+発効後は監督人報酬(月額1〜3万円程度) 信頼できる家族がいる人
④家族信託 預金・不動産の管理・処分を家族に幅広く委託 国が示す目安はなく、専門家報酬は事務所ごとに見積もり 自宅や収益物件の管理・売却まで任せたい人
⑤生前贈与 財産を先に移して凍結対象から外す 年110万円の基礎控除超は贈与税 時間をかけて計画的に移せる人
⑥信託銀行の認知症サポート商品 予め預けた資金を手続きに応じて家族が引出可 信託報酬・管理手数料(商品による) 制度設計を金融機関に任せたい人
⑦生命保険(一時払い終身など) 死亡保険金を凍結・遺産分割の外で受取人に直接届ける。指定代理請求制度も活用可 保険料として資金を移す(掛け捨てではない) 亡くなった後に家族が確実に使えるお金を残したい人

①代理人カード・代理人指名手続き:まずやっておきたい無料の備え

多くの銀行では、本人の判断能力があるうちに申請すれば、家族用の代理人カードの発行や代理人の指名登録ができます。費用がほぼかからない反面、本人の判断能力が失われた後は使えなくなる銀行が多いという限界があります。あくまで入口の対策と考え、他の対策と併用しましょう。対応の可否・条件は取引銀行に確認が必要です。

②財産管理委任契約:判断能力があるうちの代理の根拠づくり

本人と家族の間で財産管理を委任する契約を結ぶ方法です。身体が不自由になった場合の代理権限を明確化できますが、認知症で意思能力が失われた後は効力に疑義が生じるため、③の任意後見とセットで設計されることが一般的です。

③任意後見制度:「誰に任せるか」を自分で決められる

将来判断能力が低下したときに後見人になってほしい人を、公正証書であらかじめ契約しておく制度です。法定後見と違い「誰が後見人になるか」を自分で決められるのが最大の利点です。一方、発効すると家庭裁判所が選ぶ任意後見監督人が必ず付き、監督人報酬が継続的に発生します。

④家族信託:不動産も含めて柔軟に管理できる

信頼できる家族に財産の管理・処分権限を信託契約で移しておく方法です。預金だけでなく自宅の売却や賃貸など不動産の活用まで任せられる自由度の高さが魅力で、近年注目されています。一方、契約設計に専門知識が必要で、専門家報酬を含めた初期費用は比較的高額です。また金銭信託用の口座開設に対応する金融機関が限られる点も実務上のハードルです。

⑤生前贈与:凍結対象から財産を外す

元気なうちに財産を子や孫に贈与しておけば、その分は凍結の影響を受けません。年110万円の基礎控除内での暦年贈与が基本ですが、渡しすぎるとご自身の老後資金・介護費用が不足するリスクがあります。相続開始前7年以内(段階的に延長中)の贈与は相続財産に加算されるルールにも注意が必要です。

⑥信託銀行の認知症サポート商品

信託銀行などが提供する、あらかじめ預けた資金を医療費・介護費の領収書などと引き換えに家族が引き出せる商品です。仕組みは安心感がある反面、管理報酬・手数料がかかり、引き出せる用途も限定されます。

⑦生命保険:「凍結されない現金の置き場所」としての活用

見落とされがちですが、生命保険には口座凍結対策として固有の強みがあります。死亡保険金は受取人固有の財産とされ、遺産分割協議を待たずに受取人が単独で請求でき、通常は請求から数営業日で支払われます。葬儀費用や当面の生活費、相続税の納税資金といった「すぐ必要になるお金」を確実に届けられるのです。さらに「500万円×法定相続人の数」までの相続税の非課税枠が使えるため、凍結対策と節税対策を同時に兼ねられます。

また、存命中の備えとしては指定代理請求制度も重要です。あらかじめ代理請求人を指定しておけば、本人が認知症などで請求できない状態になっても、家族が代わって保険金を請求できます。一方で、加入には年齢・健康状態の条件があり、商品によっては途中解約で元本割れするものもあるため、全財産ではなく「遺したいお金」の範囲で活用するのが原則です。商品選びの注意点は一時払い終身保険のデメリットとは?で詳しく解説しています。

どの対策を選ぶべき?典型例でわかる選び方

当社に寄せられるご相談をもとにした典型例で2パターンを紹介します(個人が特定されないよう内容を再構成した典型例です)。

典型例1:預金中心・70代後半のお母様と長女
財産は自宅と預金2,000万円(うち定期1,500万円)。物忘れが増え始めた段階でご相談いただき、まず定期預金を普通預金化して代理人指名を登録。そのうえで、葬儀費用と納税資金相当分を一時払い終身保険(受取人:長女)に組み替え、残りを生活費口座に集約する形で整理しました。信託までは不要と判断したケースです。

典型例2:自宅+アパート保有の80代のお父様と長男
賃貸物件の管理・将来の売却まで見据える必要があったため、家族信託で長男に管理権限を移し、金融資産の一部は非課税枠の範囲で生命保険を活用。信託と保険の併用型です。このように「不動産の有無」と「誰に何を残したいか」で最適な組み合わせは変わります。

よくある質問

Q1. 認知症と診断されたらすぐに凍結されますか?銀行はなぜわかるのですか?

診断と同時に自動凍結される仕組みはありません。窓口での様子、家族からの申し出、手続きの過程などで金融機関が把握した時点で取引が制限されます。タイミングは予測できないため、早めの備えが重要です。

Q2. 口座が凍結されても年金は受け取れますか?公共料金の引き落としは?

年金の入金や、すでに設定済みの公共料金・クレジットカードの自動引き落としは原則として維持されます。できなくなるのは引き出し・解約・新規の振込など、新たにお金を動かす取引です。親の年金を家族が代わりに受け取れるのか、受け取り口座を変えられるのかは、認知症の親の年金は家族が受け取れる?で確認できます。

Q3. 口座凍結されない方法はありますか?

凍結そのものを回避する方法はなく、「凍結されても困らない仕組みを先に作っておく」のが正解です。本記事の7つの対策のうち、まずは費用のかからない代理人指名と定期預金の整理から始め、財産規模と家族構成に応じて信託や保険を組み合わせてください。

Q4. すでに認知症が進んでいる場合、生前対策はもう無理ですか?

意思能力が失われている場合、選択肢は法定後見制度にほぼ限られます。ただし軽度(MCI含む)で意思能力が残っていると判断されれば、公正証書遺言や信託契約が可能なケースもあります。医師・公証人・専門家を交えて早急にご相談ください。

Q5. 対策の相談は誰にすればよいですか?

家族信託・任意後見など契約書類の作成は行政書士・司法書士、登記が絡む場合は司法書士、保険の活用は保険募集人のいる窓口と、内容によって窓口が分かれます。当社のように複数の専門家と連携した窓口であれば、全体設計から相談できます(相続の相談はどこに?も参考にしてください)。

保険も同じで、家族が契約内容を照会できるようにしておく方法があります。保険会社の家族登録制度とは|親の契約内容を家族が確認できる仕組みと限界で、できること・できないことを整理しました。

Q6. 親が認知症と診断された後でも、代理人カードは作れますか?

診断名だけで決まるわけではありませんが、難しくなることが多いです。代理人カードや代理人の届出は、本人が内容を理解して申し込むことが前提だからです。申込みの時点で認知機能の低下が心配される場合は利用できない、と案内している銀行もあります。作れなかった場合は、本人のための支払いを取引店に相談しながら、成年後見の申立てを考えることになります。

Q7. 認知症で凍結された銀行口座は、成年後見を申し立ててからどのくらいで使えますか?

審理の期間に、確定までの2週間と、登記・証明書の取得が加わります。令和7年の統計では審理の約71%が2か月以内、約94%が4か月以内に終わっています。審理が1か月で終わっても、銀行で手続きできるのは申立てからおよそ1か月半より後です。支払い期日がある場合は、本文の逆算の表で準備を始める時期を確かめてください。

まとめ:凍結対策は「元気なうち」にしかできない

口座凍結は、起きてからでは成年後見制度という負担の大きい選択肢しか残りません。一方、元気なうちなら7つの選択肢からご家族に合う組み合わせを選べます。親の物忘れが気になり始めた今が、家族で話し合う最後のチャンスかもしれません。関連記事:認知症の親の相続:注意点と合法的な手続き、相続時の預金名義変更:完全ガイド

参考にした公的情報


本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。費用・制度の詳細は各機関にご確認ください。個別の税額計算や税務判断は税理士にご相談ください。

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