生命保険は、請求しないと1円も支払われません。そして請求できるのは、原則として受取人本人だけです。もし本人が認知症になって請求の手続きができなくなったら——保険はあるのに、使えない。この状態を防ぐために保険会社が用意しているのが「指定代理請求人」の制度です。
この記事では、指定代理請求人とは何か、誰を指定できるのか、そして元気なうちにしかできない理由を説明します。手元に保険証券があれば、読みながら確認できます。
認知症になると、保険で何が起きるか
入院給付金や介護保険金、リビング・ニーズ特約の保険金など、「本人が受け取る」タイプのお金は、本人が保険会社に請求して初めて支払われます。認知症が進んで契約内容を理解できない状態になると、この請求ができません。
家族が代わりに電話をしても、保険会社は原則として応じられません。契約者本人の財産だからです。銀行口座が凍結されるのと同じことが、保険でも起こります。預金の凍結については定期預金と認知症の記事で詳しく書いていますが、保険は「凍結」という言葉が使われないぶん、気づかれにくいのが実情です。
指定代理請求人とは
指定代理請求人とは、本人(被保険者)が請求できない特別な事情があるときに、代わりに保険金・給付金を請求できる人のことです。あらかじめ契約に付けておく仕組みで、多くの保険会社では無料の特約として扱われています。
代理で請求できるお金の例
入院給付金・手術給付金、介護保険金・認知症保険の一時金、リビング・ニーズ特約の保険金、高度障害保険金など、「本人=受取人」のお金が対象です。死亡保険金は受取人が別に決まっているので、この制度の対象ではありません。
誰を指定できるか
範囲は保険会社ごとに決まっています。一般的なのは、戸籍上の配偶者、直系血族(親・子・孫)、同居または生計を同じくする3親等内の親族です。最近は、同居のパートナーや療養看護に努めている人まで広げている会社もあります。誰まで認めるかは会社によってかなり差があるので、「うちは無理だろう」と思う関係でも、確認する価値があります。
指定・変更ができるのは「元気なうち」だけ
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元気なうち
・指定代理請求人を付けられる
・指定した人の変更もできる
・手続きは契約者の申し出だけ
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認知症が進んだ後
・新たな指定はできない
・本人による請求もできない
・成年後見の申立てが必要になることも
「家族登録制度」との違い
似た名前の制度に「家族登録制度(ご家族登録サービス)」があります。こちらは、登録した家族が契約内容を照会できたり、保険会社からの案内を受け取れたりする仕組みで、請求する権利はありません。
整理すると、家族登録は「契約の存在を家族が把握するため」、指定代理請求人は「本人の代わりに請求するため」。役割が違うので、両方付けておくのが理想です。
指定代理請求人でも、できないことがある
ここは誤解が多いところです。指定代理請求人ができるのは「請求」だけで、解約や契約内容の変更はできません。解約する権利は契約者本人にしかないからです。
つまり、「親が認知症になったら保険を解約して介護費用に充てよう」という計画は、指定代理請求人だけでは実行できません。解約返戻金を介護費用に使う可能性があるなら、任意後見や家族信託など別の備えとセットで考える必要があります。どの組み合わせが合うかは家族構成と財産の内容次第なので、ここが専門家に相談する価値のある部分です。
いますぐできる確認は3つ
1つ目、保険証券に「指定代理請求人」の欄があるか、あるなら誰の名前が入っているかを見る。2つ目、その人が今も適切か(亡くなっていないか、疎遠になっていないか)を考える。3つ目、欄が空欄なら、保険会社に電話して「指定代理請求特約を付けたい」と伝える。多くの場合、書類1枚で手続きできます。
あわせて、死亡保険金の受取人も古いままになっていないか確認をおすすめします。受取人を放置する3つの落とし穴にまとめました。
相談員メモ
証券を持ってきていただくと、指定代理請求人の欄が空欄のままの方が実際に多くいらっしゃいます。付けるのは無料で、書類1枚。「今日帰ったら保険会社に電話する」で終わる話なので、ご相談の中でも真っ先に確認する項目のひとつです。
まとめ
保険金は請求しないと支払われず、認知症になると請求できなくなる。それを防ぐのが指定代理請求人で、指定も変更も元気なうちにしかできない。ただし解約まではカバーできないので、介護資金の計画には別の備えが要る——これがこの記事の要点です。
保険証券、最後に開いたのはいつですか
指定代理請求人が決まっているかは、証券を見ればわかります。見方がわからなければ、証券をお持ちいただければ30分で確認できます。ご家族だけでのご相談も可能です。
お電話でも:052-766-5650(相談中の場合は折り返しご連絡します)
※本記事は制度の一般的な説明です。特約の名称・指定できる範囲・手続きは保険会社ごとに異なります。かならずご契約先の最新の約款・案内でご確認ください。個別の税務・法務のご判断は税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。