実家じまいは何から始める?手順の早見表と、親が元気なうちに決める5つのこと

お盆に帰省して、仏壇の横の押し入れを開けたら、手のつけようがない量の荷物が詰まっていた。実家をどうするか考えなければと思いながら、親にはまだ切り出せていない。当社の相談でも、実家じまいの入り口でこうして足が止まる方は少なくありません。

実家じまいとは、親が住んでいる(または住んでいた)家について、片付け・売却・賃貸・住み続ける、といった方向を決めて進めることです。結論から言うと、最初の一歩は、片付けでも業者探しでもありません。実家の名義の確認と、親の気持ちを聞くことです。親が認知症などで判断能力を失うと、実家の売却も名義変更も原則としてできなくなるため、親が元気なうちに動く意味があります。親が亡くなった後に進める場合は、相続放棄3か月・相続登記3年・空き家の特例の売却期限など、相続側の日付から逆算します。

この記事では、相続や生前対策のご相談を受けている当社の視点から、実家じまいを「何から始めればよいか」を、親が元気なうちにやるべきことを軸に整理します。特定の業者やサービスをすすめるのではなく、「本当に必要なことは何か」を見極める中立の立場でお伝えします。

この記事の結論

  • 何から始めるか。実家の名義(登記簿の所有者)を確かめます。同時に、親には「家をどうする」ではなく、「入院しても困らないように」から話します。
  • いつ始めるか。親が元気で、自分の意思を伝えられるうちです。認知症になると、売却や賃貸の契約が原則できなくなります。
  • 先に済ませること。名義が祖父母のままなら、実家じまいの前に相続登記が必要です。期限が2027年3月31日までの場合もあります。

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目次

実家じまいの手順の早見表

順番は大きく5つです。「誰がやるか」と「つまずきやすい点」まで並べました。それぞれの詳しい説明は、この下の見出しにあります。

順番 やること 誰がやる つまずきやすい点
1 名義を確認する
登記事項証明書で、所有者の名前を確かめる
子だけでできる 祖父母の名義のままだった、という例は少なくありません
2 親の気持ちを聞く
「困らないように」から話す
親と子 「追い出される」と身構えられやすい。一度で決めようとしない
3 荷物を少しずつ片付ける
写真・書類・通帳など、残すものを先に決める
親と子(一部は業者に頼める) 思い出の品で手が止まる
4 売る・貸す・住み続けるを決める
家族で方向性を話し合う
家族全員 きょうだいの間で意見が割れる
5 認知症・相続への備え
家族信託・遺言・任意後見を検討する
親と家族(必要に応じて専門家) 親が元気なうちにしか選べない

実家じまいとは?なぜ「親が元気なうち」が大切なのか

実家じまいとは、親の住む実家について、片付け・処分・売却・活用などの方向性を整理し、将来に備えることです。相続が発生してからの「空き家問題」の対応とは異なり、親が健在なうちに、親自身の意向を確認しながら進められる点が大きな違いです。

なぜ早めが大切かというと、理由は主に3つあります。第一に、親が認知症などで判断能力を失うと、実家の売却・賃貸・リフォームといった契約が原則できなくなること。第二に、相続が起きてから相続人同士で「どうするか」を決めると、意見が割れてもめやすいこと。第三に、放置された空き家は管理の手間・費用・近隣リスクを生み、資産価値も下がりやすいことです。

なぜ「親が元気なうち」に動くのか

1
契約ができなくなる
認知症などで判断能力を失うと、実家の売却・賃貸・リフォームが原則できなくなる
2
相続後は揉めやすい
相続が起きてから決めると相続人同士で意見が割れ、話がまとまりにくい
3
空き家リスク
放置された空き家は管理の手間・費用・近隣リスクを生み、資産価値も下がりやすい

実家じまいで整理すべき5つの論点

実家じまいと一口に言っても、考えるべきことは複数あります。次の5つの論点に分けて整理すると、進めやすくなります。

1. 実家の名義(所有者)を確認する

まず出発点は「実家が誰の名義か」の確認です。実は親名義だと思っていたら、すでに亡くなった祖父母名義のままだった、というケースは少なくありません。名義が古いままだと、売却や相続の際に余計な手間がかかります。確認方法は実家の名義、誰のものか確認する方法で解説しています。

2. モノの片付けを進める

長年住んだ実家には、大量の家財や思い出の品があります。親が元気なうちに一緒に片付けを進めておくと、いざというときの負担が大きく減ります。進め方や業者の選び方は実家の片付け、進め方と業者の選び方で詳しく整理しています。

3. 「売る・貸す・住み続ける」の方向性を考える

実家をどうするかの大きな分岐が、売却・賃貸・居住継続の選択です。それぞれにメリット・デメリットがあり、家族の事情や物件の条件によって適した選択は変わります。判断基準は実家を売る・貸す・住み続ける、判断基準で解説しています。自宅を活かして老後資金を得るリバースモーゲージという選択肢もあります(リバースモーゲージとは?)。

4. 空き家にする前の対策を考える

「当面は空き家のまま」という選択をする場合でも、放置は禁物です。管理・税・売却のしやすさの観点から、空き家にする前にやっておくべき生前対策があります。詳しくは空き家にする前にすべき生前対策をご覧ください。すでに実家が空き家になっている場合の税金や放置したときのリスクは、実家を空き家のまま放置したときの固定資産税と特例で説明しています。

5. 判断能力低下・相続への備えをする

実家じまいで最も見落とされがちなのが、この論点です。親が認知症になると実家の売却ができなくなるため、必要に応じて、柔軟に不動産を管理・処分できる家族信託や、判断能力低下に備える任意後見を検討します。実家じまいは、単なる不動産の話ではなく、生前対策そのものと地続きなのです。

実家じまいの進め方ステップ

  1. 実家の名義と、親の資産・負債の全体像を確認する
  2. 親の意向(住み続けたいか、施設か、売却してよいか)を聞く
  3. 片付けを少しずつ進める
  4. 売る・貸す・住むの方向性を家族で話し合う
  5. 認知症・相続への備え(家族信託・遺言・任意後見)を検討する

実家じまいの進め方ステップ

1
名義と全体像を確認する
実家の名義と、親の資産・負債の全体像を把握する
2
親の意向を聞く
住み続けたいか、施設か、売却してよいか、親の希望を確認する
3
片付けを少しずつ進める
モノの片付けを無理のない範囲で進めておく
4
方向性を家族で話し合う
売る・貸す・住むの方向性を家族で話し合う
5
認知症・相続への備えを検討する
家族信託・遺言・任意後見などの備えを検討する

今日の一歩:親に切り出す前に、ひとりで済ませられること

ステップ1の「名義の確認」は、親御さんに相談しなくても、子だけで先に済ませられます。登記事項証明書は誰でも取得でき、所有者本人の委任状は要りません。話し合いの前にここを確かめておくと、ステップ2以降の会話が具体的になります。

行き先

最寄りの法務局(登記所)。全国どこの法務局でも、日本中どこの不動産の登記事項証明書も取れます。実家が遠方でも、その土地の法務局まで行く必要はありません。オンラインでの請求もできます。

持ち物・必要な情報

  • 実家の地番と家屋番号(郵便の住所とは別の番号です)。毎年春ごろ親御さんに届く固定資産税の納税通知書に同封された課税明細書に載っています
  • 手元に無ければ、住所を窓口で伝えれば地番を調べてもらえます(備え付けの地図で照合します)
  • 交付手数料(書面での請求は1通600円。オンライン請求のほうが安くなります。2026年9月時点)

見るのは1か所だけ

「権利部(甲区)」の所有者欄です。親の名前ならステップ2へ進めます。祖父母の名前のままなら、実家じまいの前に、まずその相続の登記が必要です。

祖父母名義のままだったときは、期限があります

相続登記は2024年4月1日から義務化されました。取得を知った日から3年以内が原則で、施行前にすでに発生していた相続(=祖父母名義のまま放置されている実家)については、2027年3月31日までに登記する必要があります。正当な理由なく怠ると過料の対象になります。親御さんが元気なうちに動けば、相続人がまだ少なく、話がまとまりやすい状態です。

実家以外にも土地がありそうなときは

市区町村の資産税課で名寄帳(固定資産課税台帳)を取ると、その市区町村内で親名義の不動産が一覧で出ます。畑や私道の持分など、家族が知らない土地が出てくることがあります。ただしこちらは登記事項証明書と違い、所有者本人か、委任状を持った家族でないと取れません。親御さんと一緒に動く段階の一手です。

親とどう話し始めるか

実家じまいの最大のハードルは、親との話し合いです。いきなり「家をどうする」と切り出すと、親は「追い出されるのか」と身構えてしまいます。「もし入院したときに困らないように」「片付けを手伝うよ」といった、親の安心を入り口にすると話しやすくなります。焦らず、親の気持ちに寄り添いながら進めることが、結果的に円滑な実家じまいにつながります。

💡 ポイント:親を安心させる切り出し方
「家をどうする」ではなく、「もし入院したときに困らないように」「片付けを手伝うよ」と、親の安心を入り口にすると話が進みやすくなります。焦らず、親の気持ちに寄り添う姿勢が、円滑な実家じまいにつながります。

親が亡くなった後の実家じまい|期限から逆算する順番

親が元気なうちに進められなかった場合、実家じまいは相続の手続きと重なります。片付けそのものに期限はありませんが、相続や税金の側には日付が決まっているものがあります。先に日付を書き出し、そこから順番を決めると、後から「間に合わなかった」を防げます。

いつまで決まっていること実家じまいで気をつけること
相続を知ってから3か月相続放棄の申立て借金が多く相続放棄を考えるなら、家財の処分や売却はしない。処分すると相続を受け入れたとみなされることがある
亡くなった翌日から10か月相続税の申告と納付(かかる場合)実家の評価額が要る。売るかどうかを決める前でも申告はこの日まで
取得を知った日から3年相続登記の申請(2024年4月から義務)実家を売るには、先に相続人の名義に変える登記が必要
相続税の申告期限の翌日から3年(亡くなってからおよそ3年10か月)相続税を払った人が売ると、払った相続税の一部を売却時の取得費に足せる相続税がかかった家だけの話。売る時期の目安になる
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日空き家の特例(売却益から最高3,000万円を引ける)の売却期限昭和56年5月31日以前に建てた家であることなど要件がある。2027年12月31日までの売却が対象。相続人が3人以上なら1人2,000万円まで
毎年1月1日その年度の固定資産税の基準日1月1日に建物がなく更地だと、住宅用地の特例(税の軽減)がその年度から外れる。解体の時期で税額が変わる
出典:民法921条・915条、国税庁タックスアンサーNo.3306・No.3267、法務省「相続登記の申請義務化」、地方税法(2026年10月時点)。税の特例が使えるかは、税理士か税務署に確かめてください。

順番にすると、まず相続放棄をするかを決め、次に名義を変え(相続登記)、そのあとで売る・貸す・解体するを選ぶ流れです。空き家の特例を使いたいなら、売却の期限から逆算して、片付けと売却の準備を早めに始めます。片付け・解体・売却にかかる費用の内訳は「実家の片付けと実家じまいの費用の目安」で表にしています。

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よくある質問(FAQ)

実家じまいは、いつまでにすればいいですか?

実家じまいそのものに期限はありません。ただ、親が亡くなった後は、相続登記が取得を知った日から3年以内、空き家の特例を使うなら相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。親が存命なら、認知症などで契約ができなくなる前が目安です。

実家じまいとは何ですか?

親が住んでいる(または住んでいた)家について、片付け・売却・賃貸・住み続ける、といった方向を決めて進めることです。「家を処分すること」だけを指すのではなく、名義の確認や、親の気持ちを聞くところから含みます。

実家じまいは、親が元気なうち(生前)と相続後で、どう違いますか?

生前は、親本人の意思を確かめながら、売る・貸す・住み続けるを選べます。相続後は、相続人全員の合意が必要になり、名義変更(相続登記。取得を知った日から3年以内)が先に要ります。

税金の面では、相続した空き家を売るとき、売った利益から最高3,000万円を引ける特例があります。昭和56年5月31日以前に建てられた家であることなど、要件がいくつもあります。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。相続人が3人以上のときは、引ける額が2,000万円までになります(2026年10月時点)。使えるかどうかは、税理士か税務署に確認してください。

登記にかかる実費(登録免許税や証明書代)は、相続手続きの実費と専門家報酬の違いで、計算例つきで解説しています。

実家じまいは、親が亡くなってからでは遅いのですか?

亡くなってからでも対応はできますが、選択肢が狭まります。特に親が認知症になると、生前は実家の売却や賃貸契約が原則できなくなります。相続後は相続人全員の合意が必要になり、もめる原因にもなります。親が元気で判断能力があるうちに進めるのが理想です。

まず何から手をつければいいですか?

実家の名義の確認と、親の意向を聞くことから始めるのがおすすめです。名義が古いままだと後の手続きが複雑になり、親の意向がわからないと方向性を決められません。この2つが、費用のかからない最初の一歩です。

実家じまいと相続対策は別のものですか?

地続きです。実家という大きな資産をどうするかは、認知症対策(売却できなくなるリスク)や相続(誰が引き継ぐか)と切り離せません。実家じまいを入り口に、生前対策全体を見直すとよいでしょう。

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参考にした公的情報

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。複数の提携行政書士による監修体制で運営しており、特定個人の士業を推奨するものではありません。不動産の売買・登記の具体的手続きは、各分野の専門家にご相談ください。

▶ あわせて読みたい:実家じまいの相談事例|愛知県での取り組みと進め方のヒント

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名義の確認・親の意向・認知症への備えのどれを先にやるべきかは、実家の名義とご家族の状況で変わります。とくに登記簿の所有者が祖父母のままだった場合は、実家じまいより先に済ませることがあります。30分の無料相談では、登記簿と家族構成をもとに順番を組み立てて、次にやることを1つに絞ってお持ち帰りいただけます。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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