実家の親の通帳を一緒にめくると、満期の近い定期預金が何冊も出てきた。最近は物忘れも増えている。そんな場面は、決して珍しくありません。何から手をつければいいのか分からない。そんなときに、順番に印をつけていける表を用意しました。この記事の表は、ブラウザの印刷機能でそのまま紙にできます。
✅ この記事の結論
- 銀行の「代理人」の仕組みは、親が元気なうちに申し込むものです。認知機能に心配が出てからでは、断られる銀行があります
- 先にやるのは、口座の一覧づくり、定期預金の満期日の確認、取引銀行への2つの質問です
- 質問は「代理人の届出はできますか」と「定期預金の解約も対象ですか」。この2つを続けて聞いてください
銀行が見ているのは「診断名」より「窓口でのやりとり」
認知症と診断されたら、その日から口座が使えなくなる。そう思っている方は多いのですが、銀行の窓口で見られるのは、取引の内容を本人が理解し、自分の言葉で意思を伝えられるかどうかです。診断名がついたというだけで、すぐに口座が止まると決まっているわけではありません。ただし、対応は銀行ごとに違います。
一方で、元気なうちにしかできない手続きがあります。みずほ銀行の「代理人予約サービス」は、申込みの時点で認知機能の低下が心配される場合は利用できないと案内しています(2026年9月3日現在の公式ページ)。診断を受ける前、物忘れが気になり始めた今が、手続きの時期です。
| 親の状態 | 銀行でできること | 注意点 |
|---|---|---|
| 元気で、窓口で説明できる | 代理人の届出、代理人カード、定期預金の整理、口座振替の設定 | いちばん選択肢が広い時期 |
| 物忘れが増えたが、窓口ではまだ話せる | 普通預金への移し替え、代理人カードなど。代理人の届出は銀行により断られることがある | 申込時に認知機能の心配があると使えない仕組みがある |
| 窓口で意思確認ができない | 原則として成年後見の申立て。本人のための支払いは、銀行が個別に判断する例外対応 | 全国銀行協会は家族の払出しを「極めて限定的な対応」としている |
印刷して使う:銀行手続きチェックリスト12項目
上から順に、できたものに印をつけてください。「済んだ日」の欄は、手書きで日付を入れます。
| 済 | やること | 確かめるポイント | 済んだ日 |
|---|---|---|---|
| A. 口座を洗い出す | |||
| ☐ | 1. 口座の一覧をつくる | 銀行名・支店・口座の種類・名義・満期日をノート1枚に | |
| ☐ | 2. 見落としやすい口座を足す | ネット銀行、ネット定期、ゆうちょ、JA、信用金庫、使っていない古い通帳 | |
| ☐ | 3. 通帳・印鑑・カードの置き場所を共有 | 置き場所は家族も知っておく。暗証番号は本人が管理し、他人に教えない | |
| B. 定期預金を整える | |||
| ☐ | 4. 満期日と満期後の扱いを確認 | 自動継続か、満期で普通預金に入る型か。証書の裏や案内ハガキで確かめる | |
| ☐ | 5. 生活費・介護費ぶんを普通預金へ | 数か月から1年ぶんの生活費の目安。使う予定のない定期は満期のたびに見直す | |
| ☐ | 6. 満期の自動継続を止められるか聞く | 次の満期から自動解約型にできるか、取引店に確認 | |
| C. 銀行で家族の関わり方を決める | |||
| ☐ | 7. 代理人の届出ができるか聞く | 名称は「代理人予約」「予約型代理人」など銀行ごとに違う。定期預金の解約が対象かも聞く | |
| ☐ | 8. 代理人カードの要否を決める | 動かせるのは普通預金の入出金まで。定期預金の解約はできない | |
| ☐ | 9. ATMの限度額を確認 | 高齢の方は振込や引き出しに限度額がある銀行がある。変更の手続きも聞く | |
| D. 毎月の入り口と出口を整える | |||
| ☐ | 10. 年金の口座と引落口座を確認 | 年金が入る口座、公共料金・保険料・施設費の引落口座が同じか。口座振替にしておくと支払いが止まりにくい | |
| ☐ | 11. 届出の住所・電話・印鑑を確認 | 引っ越しや改印のあと、銀行に届けていないことがある | |
| ☐ | 12. 家族の役割を決める | 窓口へ行く人、記録をつける人、きょうだいへ伝える人を決める | |
銀行の窓口で聞くこと:答えを書き込む表
窓口では、緊張して聞き忘れがちです。次の質問を印刷して持って行き、返ってきた答えを書き込んでください。家族だけで先に聞きに行っても、制度の一般的な説明は受けられます。本人の口座の中身は、本人の同意がないと教えてもらえません。
| 聞くこと | 銀行の答え(書き込み) |
|---|---|
| 代理人の届出はできますか。名称は何ですか | |
| 定期預金の解約は、代理人の対象に含まれますか | |
| 申込みに本人の来店は必要ですか。必要な書類は何ですか | |
| 物忘れが心配な場合でも申し込めますか | |
| 代理人が実際に取引するとき、診断書は必要ですか | |
| 定期預金の自動継続を止める手続きは、どうしますか |
三菱UFJ銀行の「予約型代理人」は、代理人が取引を始めるときに専用の診断書と続柄を示す公的書類が必要です(2021年3月8日の発表)。銀行ごとに条件が違うため、必ず取引店で確かめてください。
親に切り出すときの順番
「通帳を見せて」と言うと、身構えられます。切り出すなら、「もし入院したとき、支払いは誰が動けば困らないか、一緒に決めておきたい」という話からです。親が主役で、家族は手伝う側、という形にします。
お金の話の入り方は年末年始の帰省で親とお金の話をする切り出し方、通帳やカードを預かるときの決めごとは親のお金の管理にまとめています。
今日できる一歩
- この記事の表を印刷して、チェックリストの1番(口座の一覧)だけ書き始める
- 定期預金の証書や案内ハガキを探して、満期日を3つ書き出す
- 取引銀行に電話をして、窓口で聞くことの1番目と2番目を聞いてみる
よくある質問
Q1. 認知症と診断されたら、口座はすぐ使えなくなりますか。
診断名だけで一律に止まるとは決まっていません。銀行は、窓口で本人が取引を理解し、意思を伝えられるかを見ます。ただし、意思確認が難しいと判断されると取引が止まります。対応は銀行ごとに違うため、早めに取引店へ確認してください。
Q2. 暗証番号を家族に教えておいてもよいですか。
多くの銀行の預金規定は、カードや暗証番号を他人に貸したり、知らせたりしないよう求めています。家族でも同じです。引き出しを手伝ってもらうなら、代理人カードなど銀行の制度を使うほうが安全です。
Q3. 親の通帳を預かってもよいですか。
親が納得していて、お金の出入りを記録に残すなら、預かっている家庭は多くあります。ただし、親のお金と自分のお金は混ぜないでください。記録がないと、相続のときに使い込みを疑われることがあります。
Q4. もう窓口で断られた場合は、どうすればよいですか。
断られた理由が「銀行の運用」なのか「意思確認ができないから」なのかで、次の手が変わります。くわしくは定期預金は認知症になると解約できない?と親が認知症なのに家族が預金を引き出すとバレる?をご覧ください。
参考にした公的情報(2026年10月時点)
- 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」(2021年2月18日) https://www.zenginkyo.or.jp/news/2021/n021801/
- 全国銀行協会「不測の事態における預金の払出しに関する考え方について」(2022年5月16日) https://www.zenginkyo.or.jp/news/2022/n051602/
- みずほ銀行「代理人予約サービスについて」 https://www.mizuhobank.co.jp/tetsuduki/dairinin_yoyaku/index.html
- 三菱UFJ銀行ほか「予約型代理人サービスの取扱い開始」(2021年3月8日) https://www.bk.mufg.jp/news/news2021/pdf/news0308.pdf
- ゆうちょ銀行「定額・定期貯金の満期手続きを代理人が行う際の必要書類」 https://faq.jp-bank.japanpost.jp/faq_detail.html?id=10510
2026年10月時点の一般的な情報です。取扱いは金融機関ごとに異なります。個別の判断は、取引金融機関や専門家にご確認ください。
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本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
