介護費用は誰が出す?兄弟間でもめない分担ルールの決め方

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『介護費用は「みんなで出し合おう」と言ったはずなのに、実際に振り込んでいるのは自分だけ。弟に聞くと「今厳しいから待って」と言われ続けて半年。妹は遠方で「顔を出せない分、お金は出す」と言っていたのに、結局振込は数えるほどです。このまま自分だけが負担し続けるのは納得できませんが、催促するのも気まずくて言い出せません。』

※上記は、当窓口によくお寄せいただくご相談内容を、典型的なパターンとして再構成したものです。特定の相談者様の実際のご相談内容ではありません。

「介護費用は誰が出すのか」は、多くのご家庭で曖昧なまま進んでしまうテーマです。話し合わないまま時間が経ち、気づけば一人が負担し続けている——そんな状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。この記事では、費用分担に関する法律上の考え方、もめないための話し合い方、そして立て替えた費用が将来の相続でどう清算できるのかを、行政書士法人が中立的な立場から整理してご説明します。

30秒でわかる結論

  • 介護費用を兄弟間でどう分担するか、法律に具体的なルールはありません。話し合って決めるしかないのが実情です。
  • 兄弟姉妹には扶養義務がありますが、これは主に経済的な扶養を意味し、金額まで法律が決めているわけではありません。
  • 話し合いがないまま近くにいる人が立て替え続けると、金額も感情も膨らみ、後の対立の火種になりやすい構造があります。
  • 立て替えた記録を残しておけば、将来の相続で寄与分・特別寄与料として清算できる可能性があります。
  • もっとも確実なのは、親が元気なうちに家族で分担ルールを言葉にし、遺言や保険で備えておくことです。
目次

介護費用の分担に「法律の決まったルール」はない

「介護費用は兄弟で平等に分けるべきだ」と考える方は多いですが、実はこれを定めた法律の条文はありません。民法877条は、直系血族及び兄弟姉妹に互いに扶養する義務があると定めていますが、これは「困っている家族の生活を支える」という経済的な扶養義務であり、「介護費用を兄弟で均等に分割する」というルールとは異なります。つまり、誰がいくら出すかは、あくまで家族間の話し合いで決めるしかない、というのが法律上の実情です。

この「ルールがない」という事実そのものが、実はもめる原因になっています。ルールがないからこそ、「近くにいる人が払うのが当然」「収入が多い人が出すべき」など、家族それぞれが違う前提を持ったまま話し合いを避け続け、結果として一人に負担が偏っていくのです。

扶養義務の正しい範囲を知っておく

扶養義務には、大きく分けて「生活保持義務」(夫婦や親子など、自分と同程度の生活を保障する強い義務)と「生活扶助義務」(兄弟姉妹など、自分の生活に余力がある範囲で援助する義務)の2種類があるとされます。親の介護における兄弟姉妹間の扶養義務は、この生活扶助義務にあたると考えられており、自分の生活を犠牲にしてまで負担する義務ではありません。この整理を知っておくだけでも、「出せない」という兄弟の主張と、「それでも協力してほしい」という自分の思いの、折り合いをつけるヒントになります。

もめない分担の決め方

分担でもめないためには、感情的な言い合いになる前に、次のステップで進めることをおすすめします。

  1. かかっている費用を数字で見える化する――施設費用、医療費、交通費などの実費を一覧にして、事実として共有します。
  2. 分担の考え方を提案する――「収入に応じて負担割合を決める」「介護の実働を担う人は費用負担を軽くする」など、家族の状況に合った基準を提案します。
  3. 親も交えて話し合う――可能であれば、親自身の意向も確認しながら進めると、後々の納得感が違います。
  4. 決めたことを記録に残す――口約束だけでなく、簡単なメモでも構わないので、決めた内容を残しておきます。

話し合いが難しい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど第三者を交えることで、感情的な対立を避けながら現実的な着地点を見つけやすくなります。

【本丸】立て替えの記録が、相続での清算の武器になります

話し合いで解決できなかった分担の不公平は、実は相続の場面で清算できる可能性があります。ここでは、その仕組みを整理します。

寄与分――費用を負担した相続人が財産の上乗せを受けられる制度

民法904条の2は、相続人の中に被相続人の財産の維持・増加について「特別の寄与」をした人がいる場合、相続財産に上乗せして受け取れる「寄与分」という制度を定めています。介護費用を継続的に負担してきたことは、この寄与分の対象になり得ます。

実務上のポイント

寄与分が認められるには、「通常期待される範囲を超えた特別の貢献」であることを主張・立証する必要があり、実務上のハードルは低くありません。他の相続人との合意が得られなければ、家庭裁判所の調停・審判に発展することもあります。日頃の記録が、この主張の土台になります。

特別寄与料――相続人でない親族が費用を負担してきた場合

費用を負担してきたのが、相続人ではない長男の配偶者などの親族だったという場合は、2019年の民法改正で新設された特別寄与料(民法1050条)の対象になる可能性があります。相続人でない親族が無償で療養看護等を行い、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して金銭を請求できる制度です。相続の開始及び相続人を知った時から6か月、または相続開始の時から1年という請求期限があるため、注意が必要です。

遺言――事後の争いを避ける最も確実な方法

寄与分も特別寄与料も、相続が起きた後に主張する制度である以上、争いになるリスクは残ります。より確実なのは、親が元気なうちに遺言を作成し、「費用を負担してくれた分を踏まえてこの配分にする」という意思をあらかじめ明確にしておくことです。付言事項に感謝の言葉を添えることで、遺された家族の受け止め方も変わります。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税額計算や保険商品の推奨を行うものではありません。保険のご相談は、全社を比較できる提携乗合代理店をご紹介します。ご紹介にあたり当社が紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

親が元気なうちにできる生前対策3つ

  1. 家族会議で分担ルールを言葉にしておく――誰がどれだけ負担するかを、感情論ではなく事実に基づいて話し合っておきます。
  2. 立替記録をつける習慣をつける――誰が何にいくら使ったかを記録し、後から精算しやすい状態にしておきます。
  3. 遺言や生命保険の受取人指定を検討する――費用負担の偏りを踏まえた配分を、親自身の意思として形にしておきます。

セルフチェック――当てはまる項目はいくつありますか

  • 介護費用を、自分がほぼ一人で負担している
  • 兄弟姉妹と、費用分担のルールを一度も話し合ったことがない
  • 「出す」と言われたお金が、実際にはほとんど振り込まれていない
  • 立て替えた費用の記録を残していない
  • このままでは将来の相続でも同じ不公平が続くのではと不安がある

0〜1個――今のところ大きなリスクは低い状況です。決めたルールは記録として残しておきましょう。

2〜3個――分担の不公平が、すでに家計や関係性に影響し始めている可能性があります。早めに話し合いと記録を始めましょう。

4個以上――放置すると、家計の圧迫と将来の相続トラブル、両方のリスクが高い状況です。遺言や保険の受取人指定など、具体的な対策の検討をおすすめします。

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よくあるご質問(FAQ)

Q1. 介護費用は兄弟で均等に分けるのが法律上の決まりですか?

そのような決まりはありません。兄弟姉妹には扶養義務がありますが、金額や割合を法律が定めているわけではなく、家族間の話し合いで決めるのが実情です。

Q2. 「出す」と言った兄弟が払ってくれません。強制できますか?

口約束だけでは法的な強制力は弱いのが実情です。まずは金額と支払時期を明確にした簡単な合意メモを残すこと、それでも履行されない場合は、将来の相続での清算を視野に、立替記録を積み重ねておくことが現実的な対応です。

Q3. 収入が少ない兄弟にも、費用負担を求められますか?

扶養義務は、自分の生活に余力がある範囲で果たせばよいとされる「生活扶助義務」にあたると考えられています。収入が少ない兄弟に無理な負担を強いることは難しく、費用負担が難しい分、実働で協力してもらうなど、負担の形を分ける工夫も検討の余地があります。

Q4. 分担について話し合う際、どう切り出せばもめにくいですか?

いきなり金額の話から入るのではなく、まず「かかっている費用の実態」を事実として共有することから始めると、感情的な対立を避けやすくなります。誰かを責める言い方ではなく、「一緒に整理したい」という姿勢で伝えることも大切です。

Q5. 立て替えた費用は、将来の相続で必ず取り戻せますか?

必ず取り戻せるとは限りません。寄与分は家庭裁判所が「特別の寄与」と評価した場合に限って認められるものです。記録を残すことに加え、遺言や生命保険の受取人指定など、事前の備えを組み合わせることで、確実性を高めることができます。

介護費用の分担は、法律が決めてくれるものではないからこそ、家族で話し合い、記録に残しておくことが何より大切です。そして親が元気なうちに、遺言や保険の受取人指定といった対策を進めておくことが、将来のもめごとを避ける一番の近道になります。

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この記事を書いた人

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