親が守ってきたお墓を、自分の代で閉じることになった。石材店に見積もりを頼む前に、全部でいくらかかるのか、何にお金が要るのかを知っておきたい。そう考えて調べ始めた方に向けた記事です。
この記事では、墓じまいの料金を「今のお墓を片付けるお金」と「遺骨を移す先のお金」に分け、項目ごとに払う先・払う時期・金額の目安を表にしました。金額は、鎌倉新書が公表している調査と解説で確認できた範囲だけを、幅で載せています。お寺の永代供養に移す場合、浄土真宗の場合、家族で費用を分ける場合の考え方もまとめました。お布施の額や作法は、宗派・地域・お寺によって違います(2026年10月時点)。
先に結論:墓じまいの費用は「片付ける費用」と「移す先の費用」の合計です
この記事の結論
- いくら:鎌倉新書の2026年の調査では、墓じまいの費用は「31万〜70万円」と答えた人が31.3%で最も多く、70万円以下の人が約半数でした。一方で151万円以上の人も14.0%います。
- 何に:墓石の撤去工事、改葬許可の手続き、お寺へのお布施(閉眼供養・離檀のお礼)、新しい納骨先の4つに分かれます。総額を大きく動かすのは、撤去する区画の広さと、移す先の種類です。
- 誰が:民法897条で、お墓を引き継ぐのは祭祀(さいし)を主宰する人です。ただ、墓じまいの費用を誰が出すかまでは書かれていません。引き継いだ人を中心に家族で決め、分担を記録に残します。
墓じまいは、今のお墓から遺骨を取り出し、別の場所へ移して、区画を返すことです。法律の上では「改葬」にあたり、遺骨がある市町村の許可が要ります(墓地、埋葬等に関する法律5条)。お金がかかる場面は、この流れに沿って順に出てきます。
墓じまいはいくら?実施した人の費用の分布(2026年の調査)
鎌倉新書は「改葬・墓じまいに関する実態調査」を公表しています。2026年の第4回では、墓じまいを実施した人に、かかった費用をたずねています。公開ページの本文で確認できた数字は次のとおりです。
同じ調査で、墓じまいをやめた理由の1位は「解体費用が高すぎた」(22.2%)でした。2024年の第3回でも1位は同じ理由(26.3%)です。総額の幅が広いのは、墓石の量や工事の条件が家ごとに違うためです。次の内訳表で、自分の家がどこで高くなりそうかを見ていきます。
墓じまいの料金の内訳表:撤去・改葬許可・閉眼供養・離檀・新しい納骨先
墓じまいのお金は、払う相手が1つではありません。石材店、市町村、今のお寺、新しい納骨先と、払う先ごとに分けて考えると、見積もりの抜けや二重払いに気づきやすくなります。
新しい納骨先の費用は、種類によって桁が変わります。鎌倉新書の別の調査(新しくお墓を買った人が対象)と、解説の目安を並べると次のとおりです。
墓じまいの費用は「片付ける費用」が数十万円、そこに「移す先の費用」が足し算されると考えると、見当がつけやすくなります。公営の合葬式の納骨堂の料金例は、納骨堂の費用(種類別の目安・じまい費用)にまとめています。移す先の種類ごとの違いは、墓じまいの遺骨の行き先(7つの比較)で比べています。
撤去工事の見積書で、金額が動きやすいところ
撤去工事の金額は、現地を見ないと決まりません。見積書を受け取ったら、総額だけでなく次の点が書かれているかを見ます。書かれていない項目は、追加になるのかをたずねておくと安心です。
- 区画の面積と、墓石・外柵・基礎のどこまでを撤去するか
- 重機が入れるか。通路が狭く手作業や小運搬になると、手間が増えます
- 遺骨の数と、取り出した遺骨の扱い(洗う・乾かすなど)が含まれているか
- 墓石の処分費が工事費と別か、込みか
- 区画を返すときの条件(更地にして墓地の管理者の確認を受けるか)
お寺に渡すお布施や離檀のお礼は、石材店の見積書には載りません。工事費とは別に用意します。
改葬許可でかかるお金:名古屋市の例
改葬許可は、遺骨がいま納められている場所の市町村長に申請します(墓地、埋葬等に関する法律5条)。申請書には、墓地の管理者が作った「埋蔵(収蔵)の事実を証する書面」を添えます。申請する人がお墓の使用者でない場合は、使用者の承諾書なども要ります(同法施行規則2条)。
名古屋市では、保健所長が許可を出します。申請書は、保健所生活衛生部環境薬務課への郵送か、墓地がある区の保健センターの窓口で受け付けています。郵送なら切手を貼った返信用封筒、使用者以外が出すなら委任状が要ります。名古屋市の申請書の記入例には「申請手数料は無料です」とあります(2026年10月時点)。手数料は市町村で違い、横浜市は無料、静岡市は遺骨1体につき300円と案内しています。お墓がほかの市町村にある場合は、その市町村の案内で手数料と書式を確かめます。
費用として見込んでおきたいのは、市町村の手数料と、申請に添える証明書の発行料です。証明書の発行料をとるかどうかは墓地ごとに違うため、管理者に証明をお願いするときにあわせて聞いておきます。改葬許可の申請から納骨までの順番は、墓じまいの手続き(改葬許可の手順)にまとめています。
お寺の永代供養に移すときの費用の考え方
鎌倉新書の2026年の調査では、墓じまい後の移し先は「永代供養(合祀・合葬墓)」が43.2%で最も多く、前回の30.9%から増えています。お寺の永代供養に移す場合、払うお金は「今のお寺に払う分」と「移す先のお寺に払う分」の2つに分かれます。
永代供養料は、何人分か、個別に置く期間があるかで大きく変わります。合祀型と個別型では、上の表の目安でも数倍の開きがあります。同じお寺でも、一体ずつの料金か、家族何人分までまとめてかで違うため、移す遺骨の数を数えてから見積もりを取ります。
今のお寺の境内にある永代供養墓に移す場合は、檀家を続けるかどうかで、離檀のお礼が要るかが変わります。檀家を続けるなら、年に一度の会費などの扱いもあわせて聞いておきます。
浄土真宗の墓じまいの費用:内訳は同じ、お布施の考え方が違う
浄土真宗でも、墓石の撤去、改葬許可、新しい納骨先という費用の内訳は変わりません。違うのは、お寺に渡すお布施の考え方と呼び名です。
- 真宗大谷派は、亡くなった方を「霊」としてまつらないと説明しています。お墓から「魂を抜く」という意味の閉眼供養は行わない、と解説されることがあります。鎌倉新書の解説では、墓じまいの読経を「遷仏(せんぶつ)法要」「遷座(せんざ)法要」と呼ぶとしています。
- お布施の額は、閉眼供養と同じ3万〜10万円ほどとする解説があります。宗派で安くなる、高くなるという決まりはありません。
- 真宗大谷派は、お布施を読経の対価ではなく感謝を表すものとし、金額に決まりはないとしています。浄土真宗本願寺派も、表書きは「御布施」とし、「御礼」「御経料」などはふさわしくないと案内しています。
呼び名や包み方はお寺によって違うため、「墓じまいの前のお勤めをお願いしたい」と伝えて相談すれば通じます。封筒の表書きの例は、墓じまいのお布施と表書き(浄土真宗・親戚のお金の封筒)で詳しく書いています。
墓じまいの費用を家族で分けるときの考え方
民法897条は、系譜・祭具・墳墓(お墓)を、ほかの遺産とは別に「祖先の祭祀を主宰すべき者」が引き継ぐと定めています。誰が引き継ぐかは、亡くなった人の指定があればその人、なければ地域の慣習で決まり、慣習がはっきりしないときは家庭裁判所が決めます。
ただし、この条文が決めているのはお墓を誰が引き継ぐかです。墓じまいの費用を誰が出すかまでは書かれていません。お墓を引き継いだ人が中心になって払うのが一般的とする解説が多いものの、兄弟や親戚で分けても構いません。決まった割合もありません。
親が亡くなった後の預金は、遺産分割が終わるまで相続人全員のものです。墓じまいに使うなら、全員が納得したうえで、金額と使い道を書面に残しておくと後でもめにくくなります。口座が止まった後の払い戻しの仕組みは親が亡くなった後の預金引き出しで、納骨の費用と相続税の関係は納骨費用は相続税から差し引けるかで整理しています。
お墓の費用をほかの遺産とあわせてどう分けるか、家族の中で話を整理したいときは、30分の無料相談でお話をうかがえます。
分担を記録に残すときのメモの例
- 支払日、払った先、金額、名目(工事費・お布施・離檀のお礼・永代供養料)
- 誰がいくら出したか(立て替えた人と、あとで精算する額)
- 領収書の有無。お布施は領収書が出ないこともあるので、日付と金額をメモに残す
墓じまいの費用で損や手間につながりやすい点
- 移す先を決めないまま、撤去の契約を急ぐ:改葬許可の申請書には、遺骨を移す場所を書きます(墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条)。移す先が決まらないと許可が出ず、工事の日程も組めません。移す先の費用を確かめてから、撤去の契約に進みます。
- 離檀のお礼を「言われた額を払う決まり」と思い込む:国民生活センターは、離檀料を「檀家をやめるときに寺へのお礼として慣習的に支払う」もので、明確な基準はないと説明しています。300万円、700万円を求められたという相談も紹介されています。納得できないときは、家族や親族を交えてお寺と話し合い、住んでいる自治体の消費生活センター(消費者ホットライン188)にも相談できます。
- 墓地の使用料が戻ると思っている:区画を返したときに使用料が戻るかは、墓地の規則や契約で決まります。手元の使用許可証と規則を先に確かめます。
- 見積書の総額だけで比べる:撤去の範囲や処分費が入っているかで、総額の意味が変わります。内訳をそろえて比べます。
- 工事費とお布施を同じメモにまとめる:家族で精算するときに分からなくなります。名目ごとに分けて記録します。
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今日できる一歩
- お墓の使用許可証と墓地の規則を探し、区画の面積と返すときの条件を確かめる
- 移す遺骨の数を数え、移す先の候補で「何人分でいくらか」を聞く
- 家族で、誰が中心になって払うか、分けるならどの割合かを話し、メモに残す
墓じまいの費用・料金についてよくある質問
墓じまいの料金は、いつ誰に払いますか?
撤去工事は石材店に、改葬許可の手数料は市町村に、閉眼供養のお布施と離檀のお礼は今のお寺に、永代供養料などは移す先に払います。払う時期もばらばらなので、上の内訳表のように払う先ごとに分けて予定を立てると抜けが防げます。
墓じまいで一番お金がかかるのはどこですか?
新しくお墓を建てる場合は、移す先の費用が最も大きくなりがちです。合祀の永代供養に移す場合は、撤去工事の費用が中心になります。鎌倉新書の調査では、墓じまいをやめた理由の1位が「解体費用が高すぎた」でした。
離檀料は払わないといけませんか?
離檀料は、法律で支払いが決められたお金ではありません。国民生活センターも、慣習的に支払うお礼で明確な基準はないと説明しています。ただ、改葬許可には今の墓地の管理者の証明が要るため、お寺と話し合わずに進めることはできません。長年のお礼として、無理のない額を相談するのが現実的です。
浄土真宗だと、墓じまいの金額は変わりますか?
費用の内訳は他の宗派と同じです。閉眼供養とは呼ばず「遷仏法要」などとするという解説がありますが、読経のお布施は同じくらい包むとされています。お布施の額は宗派ではなく、お寺との付き合いや地域で変わります。
お寺の永代供養に移す場合、費用はいくら見ておけばいいですか?
今のお墓を片付ける費用に、永代供養料を足した額です。永代供養墓は、合祀型で5万〜30万円、個別型で50万〜150万円とする解説の目安があります。何人分か、個別に置く期間があるかで変わるため、移す遺骨の数を伝えて見積もりを取ります。
墓じまいの費用を、亡くなった親の預金から払えますか?
相続人全員が合意すれば、遺産から払うことができます。合意がないまま一人の判断で引き出すと、後でもめる原因になります。誰がいくら立て替え、遺産からいくら精算するかを書面に残してから進めます。
墓じまいに使える補助金はありますか?
国の制度として、墓じまいの費用を補助する仕組みは確認できませんでした(2026年10月時点)。お墓が公営墓地なら、返すときに使用料や管理料の一部が戻ることがあります。たとえば仙台市は、使用許可から3年以内の返還なら永代使用料の半額を返し、前払いの管理料は月割りで戻すと案内しています。扱いは自治体ごとに違うため、お墓のある自治体の墓地の担当に聞いてみてください。
参考にした公的情報・調査
- e-Gov法令検索「民法」第897条(祭祀に関する権利の承継)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第5条
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048 - e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」第2条
https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024 - 名古屋市「改葬許可申請」
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/eisei/1011432/1011619.html - 名古屋市「改葬許可申請書記入例」(PDF。申請手数料)
https://www.city.nagoya.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/619/r0805sinseisyokinyuurei.pdf - 横浜市「改葬許可申請(お墓の引越し)」(手数料)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/todokede/koseki-juminhyo/todokede-touroku/koseki/kaisou.html - 静岡市「改葬許可申請について」(PDF。手数料)
https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/58175/kaisoukyokasinnseinituite.pdf - 仙台市「市営墓地の返還」(使用料・管理料の還付)
https://www.city.sendai.jp/boenkanri/shisetsu/saijoureien/henkan.html - 独立行政法人国民生活センター「見守り新鮮情報」第424号(牛久市ホームページ掲載)
https://www.city.ushiku.lg.jp/data/doc/1659485046_doc_340_0.pdf - 真宗大谷派(東本願寺)「葬儀・法事・お墓のこと」
https://www.higashihonganji.or.jp/teachings/sogi-hoji-ohaka/ - 浄土真宗本願寺派「仏事・行事Q&A(金封の表書き)」
https://www.hongwanji.or.jp/faq/list.html - 鎌倉新書「【第4回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_hakajimai_2026/ - 鎌倉新書「【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_hakajimai_2024/ - 鎌倉新書「【第17回】お墓の消費者全国実態調査(2026年)」
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_2026/ - 鎌倉新書「いいお墓」墓じまいの費用の解説
https://guide.e-ohaka.com/tomb-condition/hakajimai_cost/ - 鎌倉新書「いいお墓」浄土真宗の墓じまいの解説
https://guide.e-ohaka.com/tomb-condition/jodoshinshu_hakajimai/
※本記事は2026年10月時点の法令、自治体・宗派の公式サイト、公表された調査をもとにした一般的な整理です。墓じまいの費用は、墓所の広さや立地、移す先、お寺との関係で大きく変わります。お布施の額や作法は宗派・地域・お寺によって異なります。特定の事業者や施設をすすめるものではありません。実際の金額は見積書と契約書でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
