定期預金は認知症になると解約できない?家族の対処法と事前の備え【2026年】

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親の定期預金、満期でも下ろせない?

本人が窓口で意思確認できなくなると、満期が来ても解約は止まります。元気なうちなら銀行の代理人指名で足りることもあります。

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「親の定期預金が満期になったのに、認知症で解約できない」——これは銀行窓口で実際に頻発している問題です。しかも定期預金は普通預金以上に本人確認が厳格なため、認知症が進行すると事実上の「塩漬け」になり、最悪の場合は本人の存命中はもちろん、亡くなった後も遺産分割がまとまるまで、数年〜十数年にわたって誰も手を付けられません。この記事では、いますでに解約できない場合に銀行へ何をどう頼めるのか、成年後見の前に使える銀行の代理人の届出、そしてまだ本人が元気な場合にやっておく棚卸しの順で整理します。申立ての費用と期間は成年後見の申立て費用はいくら?期間・鑑定費用・必要書類【令和7年データ】で確認できます。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 親の定期預金を解約して普通預金に移せるのは、原則として親本人です。本人以外ができるのは、本人が書いた委任状を銀行が受け付けた場合、元気なうちに届け出た代理人、成年後見人の3つ。代理人カードや「家族だから」ではできません(下の判定表)
  • 定期預金の解約は窓口での本人確認・意思確認が必須。認知症が進むと満期が来ても解約できない
  • すでに解約できない場合は①取引銀行に例外扱いを相談、②成年後見の申立て。まだ本人と話せるなら③銀行の代理人の届出も選べる
  • 元気なうちの対策は「リストアップ→生活費分は普通預金へ→残りは凍結されない形(信託・贈与・保険)に組み替え」の3ステップ
  • 判断能力を失ってからでは選択肢がほぼなくなる。「まだ大丈夫」の時期が最後のチャンス

厚生労働省の研究班の推計では、65歳以上の認知症の人は2025年に約472万人(12.9%)、軽度認知障害(MCI)の人は約564万人(15.4%)です。合わせると65歳以上のおよそ28%にあたります。親の預金の話は、特別な家庭だけの話ではなくなっています(2026年10月時点)。

認知症への備えとして家族信託を考える方は、先に家族信託のデメリットも確かめておくと安心です。

目次

親の定期預金を普通預金に移す・解約するには:本人以外ができるかの判定表

親の定期預金を解約して普通預金に移す手続きは、満期でも満期前でも、原則として親本人が窓口で行います。本人以外が代わりにできるのは、次の表で「◯」か「△」の場合だけです。家族であることや、通帳と届出印を持っていることだけでは手続きできません。

手段いつ用意するか定期預金を解約して普通預金に移す普通預金の出し入れ親の判断能力が下がった後
代理人カード本人が元気なうちに申し込む×
ATM用のカード。定期預金の解約は原則として対象外
◯
ATMでの入出金。1回・1日の限度額あり
△
銀行が判断能力の低下を知ると、使えなくなる扱いもある
委任状(その都度)手続きのたびに本人が書く△
受け付けるか、何を確認するかは銀行しだい。ゆうちょ銀行の満期手続きは、本人がすべて自筆で書いた委任状とお届け印が必要
△
銀行しだい
×
書いた時点で判断能力がなければ、委任そのものが無効(民法3条の2)
代理人の事前指名
(みずほ銀行「代理人予約サービス」、三菱UFJ銀行「予約型代理人」など)
本人が元気なうちに、本人と代理人で申し込む△
三菱UFJ銀行は代理人ができる取引に「円預金の入出金・解約」を挙げている。定期預金の解約と普通預金への入金が対象かは、取引店で確認
◯
円預金の入出金
◯
銀行所定の診断書を出すと、代理人の取引が始まる(それまでは本人だけが取引)
成年後見人判断能力が下がった後に、家庭裁判所へ申し立てる◯
後見人が本人に代わって解約・管理できる
◯◯
ただし後見人を選ぶのは家庭裁判所で、家族が選ばれるとは限らない
家族信託の受託者(子など)本人が元気なうちに契約し、お金を移す×
親名義のまま残った定期預金は信託財産ではないため、受託者は解約できない
×
親名義の口座は同じ
◯
信託口口座などに移し終えたお金だけは、契約どおり受託者が動かせる
代理権のない家族―×
通帳と届出印を持って行っても不可
△
本人の医療費など、本人のためが明らかな支払いに限り、銀行が応じることがある(全国銀行協会は「極めて限定的な対応」と位置づけ)
△
同左。基本は成年後見の利用を案内される

2026年10月時点。みずほ銀行・三菱UFJ銀行の公式ページ、ゆうちょ銀行の公式FAQ、全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年2月18日)、民法・信託法をもとに整理。名称・対象取引・必要書類は金融機関ごとに異なります。取引店でご確認ください。

表で一番多い勘違いは、代理人カードがあれば定期預金も動かせる、というものです。カードで動かせるのは普通預金の出し入れまでで、定期預金の解約は別の手続きです。また、代理権のない家族が引き出した場合に、あとで何が問題になるかは親が認知症なのに家族が預金を引き出すとバレる?にまとめています。

「普通預金に移すだけ」でも、本人の手続きになる理由

同じ銀行の中でお金を移すだけに見えても、銀行から見れば定期預金の解約です。解約は預金者本人の意思で行う取引なので、窓口で本人確認と意思確認があります。家族が「引き出すのではなく、普通預金に移すだけです」と頼んでも、扱いは変わりません。

家族信託では、親名義の定期預金はそのまま動かせない

「家族信託を結べば、子が親の預金を動かせる」と思われがちですが、受託者が管理できるのは、信託契約で受託者に移した財産だけです(信託法3条)。預貯金には譲渡を制限する取り決めがあり(民法466条の5)、親名義のまま残った定期預金は信託財産になりません。

お金を信託するなら、親が元気なうちに自分で定期預金を解約し、受託者が管理する口座(信託口口座など。取扱いは金融機関ごとに違います)へ移す手順が要ります。契約だけ済ませて、お金を移す前に判断能力が下がると、その定期預金は家族信託の外に残ります。

親が窓口に行けるうちに、普通預金へ移す手順

  1. 取引店に電話し、「本人が来店して、定期預金を解約し普通預金に入れたい」と伝えて、持ち物を聞きます。本人の通帳か証書、届出印、本人確認書類が基本です。
  2. 満期まで待てるなら、次の満期で継続をやめて普通預金に入れる手続きにします。満期前に解約すると、約束の金利より低い中途解約の利率になるのが一般的です。
  3. 同じ日に、家族が出し入れする分の代理人カードと、代理人の事前指名を申し込めるかを聞きます。どちらも本人が元気なうちしか申し込めません。
  4. 動かした金額と移した先を、家族の間でメモに残します。後の相続で、使い込みと誤解されないためです。

本人の判断能力がすでに下がっている場合は、この手順は使えません。上の表の成年後見か、本人の医療費などに限った銀行への相談になります。進め方は、このあとの「すでに解約できなくなっている場合の対処法」で説明します。

なぜ定期預金は普通預金より「危険」なのか

普通預金と定期預金では本人確認の厳格さが違う

普通預金はキャッシュカードがあればATMで引き出せますが、定期預金の解約は原則として窓口での手続きになり、本人確認と意思確認が必ず行われます。窓口での会話が成り立たない、解約の目的を説明できない、書類に自署できない——こうした状態では、たとえ家族が同行していても銀行は解約に応じられません。金額が大きいほど確認は厳格になり、数百万円〜数千万円の定期預金ほど動かせなくなるという皮肉な構造があります。

項目 普通預金 定期預金
引き出し方法 ATMで可能(キャッシュカード) 原則、窓口での手続き
本人確認 比較的簡易 本人確認・意思確認が厳格
認知症が進むと 代理人カード等で一部対応可 事実上解約できず「塩漬け」に

自動継続の仕組みが「放置」を加速させる

多くの定期預金は満期が来ると自動的に同じ条件で継続されます(自動継続型)。本人が何もしなくても回り続けるため、家族が存在に気づかないまま何年も経過しているケースが少なくありません。「親の認知症が進んでから通帳を整理していたら、誰も知らない定期預金が見つかった」というのは相続相談の現場でよくあるパターンで、この時点ではすでに打てる手が限られています。

裏返せば、自動継続を止めておくだけでもリスクは下がります。多くの銀行では、満期日に自動で普通預金へ入金される取扱い(自動解約型)に変更したり、次の満期で継続を止める届出を出したりできます。手続きができるのは本人に判断能力があるうちだけですが、普通預金に落ちてさえいれば、代理人カードやATMで家族が動かせる余地が残ります。定期のまま置いておくのと、普通預金に移しておくのとでは、認知症が進んだあとの結果がまったく変わります。

「塩漬け」は3段階で長期化する

⚠️ 定期預金の「塩漬け」は3段階で長期化する

1

認知症で事実上の凍結

意思確認ができず解約不可。この状態が数年〜10年以上続くことも

2

死亡で正式に口座凍結

相続手続きのため口座全体が凍結される

3

遺産分割協議の長期化

協議がまとまるまで、原則として全額は動かせない

定期預金の塩漬けは、次の3段階で長期化します。第1段階は認知症による事実上の凍結。意思確認ができない限り解約できず、この状態が数年から10年以上続くこともあります。第2段階は死亡による正式な口座凍結。相続手続きのために口座全体が凍結されます。第3段階は遺産分割協議の長期化。相続人の間で協議がまとまらなければ、仮払い制度で一部を引き出せる場合を除き、全額は動かせません(仮払いの上限は「その口座の相続開始時の残高×3分の1×その相続人の法定相続分」、かつ同一の金融機関につき150万円まで)。つまり認知症の発症から数えると、十数年単位で家族の誰も使えないお金になり得るのです。

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  • 満期が近づいている
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すでに解約できなくなっている場合の対処法

対処法1:取引銀行に相談する(全国銀行協会の指針による柔軟対応)

全国銀行協会は2021年2月18日に「金融取引の代理等に関する考え方」を公表しました。本人の判断能力が下がっていて、成年後見制度を使っていない場合に限り、「本人の利益に適合することが明らかな」支払い(本人が元気なら自分で払っていたはずの医療費など)であれば、親族の払出しに応じることも考えられる、という内容です。銀行協会自身が「極めて限定的な対応」と位置づけ、基本は成年後見制度の利用を案内するとしています。実務上は、診断書、病院や介護施設の請求書・領収書、本人との関係がわかる戸籍謄本などの提示を求められます。対応の可否・範囲・必要書類は金融機関ごとに大きく異なり、定期預金の中途解約まで応じてもらえるかはケースバイケースです。確実な方法ではありません。施設費用の目安は老人ホーム・介護施設の費用2026で確認できます。

窓口では、この3つを分けて伝える

  1. 本人の今の状態(診断名、いま意思確認ができる状態かどうか、施設か在宅か)
  2. お金の使いみち(本人の医療費・介護費・施設費であること。家族の生活費ではないこと)
  3. いくら必要か(請求書の金額。毎月いくら不足しているのか)

持って行くもの

本人の通帳・届出印/本人の本人確認書類/窓口へ行く家族の本人確認書類/本人との続柄がわかる戸籍謄本/本人名義で届いた施設・病院の請求書/診断書やケアマネジャーからの連絡票(あれば)。請求書が本人名義であることが、本人の利益に資する支出だと示すうえで効きます。

断られたときの次の一手

支店の判断で止まっている場合があります。「本部の相続・後見の担当部署に取り次いでほしい」と伝えてください。それでも動かないときは、支払先へ直接振り込む形(現金を家族が受け取らない形)で再度依頼する方法もあります。ここまでで進まなければ、後見の申立てに切り替える判断になります。

対処法2:成年後見制度を利用する(確実だが負担も大きい)

本人の判断能力が失われた後でも確実に定期預金を解約できるのは、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらう方法です。後見人は本人に代わって定期預金の解約・管理ができます。ただし申立てから利用開始まで数か月かかります。専門職が後見人に選ばれた場合、報酬は財産額などをもとに家庭裁判所が決め(月額2〜6万円程度が目安)、原則として本人が亡くなるまで続きます。いったん始めると家族の判断だけではやめられない点も含めて検討してください。手続きの詳細は凍結された銀行口座を解除するには?成年後見制度の手続き・費用・注意点をご覧ください。後見人が選ばれた後に財産をどう守るかの仕組みのひとつは、後見制度支援信託とはで説明しています。

やってはいけないこと:本人に代筆・代理させての解約

意思能力がない本人を窓口に連れて行き、家族が誘導して書類を書かせる行為は、後日取引の無効を主張されるリスクがあるだけでなく、相続発生後に他の相続人から使い込みを疑われる重大な火種になります。相続トラブルの実態は相続時の財産隠しは犯罪?で解説していますが、お金の動きが不透明だと必ず疑われると考えてください。

もう窓口で断られている方へ
断られた理由が「支店の運用」なのか「意思確認ができないから」なのかで、次にやることが変わります。前者なら書類と伝え方の組み直しで進む余地があり、後者なら後見の申立てに切り替える判断になります。30分の無料相談では、どちらなのかを切り分けて、次に窓口へ持って行く書類までを整理してお持ち帰りいただけます。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)

成年後見の前に:銀行の「代理人」の届出という選択肢

本人がまだ自分の言葉で説明できる段階なら、成年後見より先に確認したい仕組みがあります。銀行が用意している代理人の届出です。呼び方は「代理人届」「代理人カード」「予約型の代理人サービス」など銀行ごとに違い、できることの範囲も同じではありません。混同されやすい3つを分けて整理します。

項目 代理人カード 代理人の届出(予約型) 成年後見
手続きできる時期 本人に判断能力があるうち 本人に判断能力があるうち 判断能力が低下した後でも申立て可
主にできること 普通預金の入出金 銀行が定めた範囲の取引 財産全般の管理・処分
定期預金の解約 原則、対象外 銀行により可否が分かれる 可能
注意点 本人の判断能力が低下すると使えなくなる扱いもある 取扱いの有無・対象取引・必要書類が銀行ごとに異なる 家庭裁判所の関与が続き、家族の判断ではやめられない

2026年9月時点。名称・対象取引・必要書類は金融機関ごとに異なります。取引店にご確認ください。

混同されやすいのは代理人カードです。代理人カードは家族名義のキャッシュカードを追加で発行するもので、動かせるのは普通預金の入出金まで。定期預金の解約は原則できません(違いは銀行の代理人カードと代理人指名手続きの違いで詳しく説明しています)。「代理人カードを作ってあるから大丈夫」と思っていた家族が、満期の窓口で断られるのはこのためです。

一方、本人が元気なうちに代理人を届け出ておき、将来判断能力が低下した後に代理人が取引できるようにしておく仕組みを設けている銀行があります。定期預金の解約まで対象になるか、届出のときに本人の来店や所定の書類が必要かは銀行ごとに違うため、取引店に「代理人の届出はできますか。定期預金の解約は対象に含まれますか」と2点セットで確認してください。全国銀行協会が2021年に示した考え方でも、本人から代理権を与えられた親族等を、銀行が任意代理人として届出を受けている場合は、その代理人と取引できるとされています。

ただし、これはすべて本人がまだ意思を伝えられる場合にしか選べません。すでに窓口で意思確認ができない段階に入っていれば、代理人の届出は受け付けてもらえず、成年後見に進むことになります。判断能力が残っているうちに備える任意後見との選び分けは、任意後見と成年後見のどちらを選ぶかの使い分け診断で確認できます。

2026年10月時点の動き:銀行の仕組みと後見制度の法改正

この1年で大きく変わったのは、成年後見制度の法改正が成立したことです。銀行の「代理人」の仕組みも、名前と条件が銀行ごとにかなり違います。ここでは、各社の公式ページで確認できた範囲だけを整理します。

銀行・ゆうちょの「家族が動ける仕組み」を比べる

項目 みずほ銀行 三菱UFJ銀行 ゆうちょ銀行
仕組みの名前 代理人予約サービス 予約型代理人 代理人による満期手続き(委任状)/成年後見人等による払戻し
申込みの条件 元気なうちに来店して申込み。申込時に認知機能低下の懸念があると利用できない 将来の代理人を事前に指定。指定後も本人は今までどおり取引できる 名義人本人がすべて自筆で書いた委任状とお届け印が必要
代理人が使うとき 銀行所定の診断書、続柄を示す公的書類などを出して取引を始める 専用の診断書、続柄を確認できる公的書類などを出して取引を始める 意思確認ができない場合、払戻しができるのは代理権のある成年後見人等
定期預金の解約 公式ページに明記なし。窓口で確認 公式の発表文に明記なし。窓口で確認 定額・定期貯金の満期手続きは、委任状があれば代理人が可能
費用 サービス利用料は無料(診断書代は自己負担) 無料 公式案内に記載なし

みずほ銀行は2026年9月3日現在の公式ページ、三菱UFJ銀行は2021年3月8日の発表(同月22日から取扱い開始)、ゆうちょ銀行は公式FAQによる。名称・条件は変わることがあります。愛知・岐阜の地方銀行・信用金庫・JAの仕組みは、取引店でご確認ください。

表の2行目と3行目が大事です。どの仕組みも、使えるのは「元気なうちに申込んだ人」だけです。窓口では「代理人の届出はできますか。定期預金の解約は対象に含まれますか」と、2つ続けて聞いてください。

後見制度の法改正は成立済み、施行はこれから

時期 できごと 家族にとっての意味
2021年2月18日 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」 親族の払出しは「極めて限定的な対応」。基本は成年後見の利用を案内
2022年5月16日 全国銀行協会「不測の事態における預金の払出しに関する考え方」 突然の病気やけがで本人の意思が確認できないとき、診断書などをもとに、医療費や施設入居費を請求先へ直接払う考え方
2026年6月17日成立
6月24日公布
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号) 後見と保佐の制度をなくし、「補助」に一本化。必要な範囲で権限をつける形になる
施行日 公布から2年6か月を超えない範囲で、政令が定める日 まだ始まっていない。申立てが必要な家庭は、今の制度で手続きする
2026年8月28日 金融庁の説明資料 全国銀行協会が新しい制度を踏まえた預貯金商品を検討中とされている(内容・時期は未定)

2026年10月時点。出典は記事末の「参考にした公的情報」をご覧ください。

法改正で、定期預金の解約ができない問題がなくなるわけではありません。施行後も、「本人の判断能力が失われたとき、誰が窓口で代わりを務めるか」を、元気なうちに決めておく大切さは変わりません。

実際の申立ての様子は、最高裁判所の令和7年(1〜12月)の統計でわかります。申立ての動機(複数回答)で最も多いのは「預貯金等の管理・解約」で、約93%でした。結論が出るまでの期間は、2か月以内が約71%、4か月以内が約94%です。一方、親族が後見人に選ばれたのは約16%で、約84%は司法書士・弁護士・社会福祉士などの第三者でした。「家族が後見人になれる」と思い込まず、第三者が選ばれる前提で考えておくほうが安全です。

元気なうちにやっておきたい定期預金の棚卸し:実践ガイド

1

リストアップ

通帳・証書・ネット定期・ゆうちょの定額貯金・地域金融機関の定期を、財産目録の形で洗い出す

2

使う予定のない定期は普通預金へ

満期で普通預金に移し、当面の生活費・介護費相当を確保。あわせて代理人指名・代理人カードを登録

3

使う予定のないお金は「凍結されない形」に

生活費を超える分は、家族信託・暦年贈与・一時払い終身保険などに組み替えて凍結・相続税の両リスクに備える

STEP1:定期預金のリストアップ

まずは何がどこにあるかの把握からです。確認すべきは、①通帳・証書(紙の定期預金証書は特に見落としがち)、②ネットバンクの定期預金(通帳がなく家族が気づきにくい)、③ゆうちょの定額貯金・定期貯金(2007年9月30日以前に預けた旧郵便貯金は、満期から20年が過ぎると催告書が届き、その後2か月で払戻しを受ける権利がなくなります。放置は禁物です)、④農協・信用金庫など地域金融機関の定期、の4系統です。財産目録の形にまとめておくと、将来の相続手続きでもそのまま使えます。

STEP2:使う予定のない定期は満期で普通預金へ

2026年は定期預金の金利が上がってきましたが、普通預金との差は年0.1〜0.2%ほどで、200万円なら年に数千円の違いです(銀行別の最新の金利はこちら)。一方で、認知症になったときの「動かせない」心配は、普通預金より定期のほうがずっと大きくなります。当面の生活費・介護費相当分(目安として数百万円)は普通預金に移し、代理人指名や代理人カードを登録しておくのが基本形です。70歳以上のATM振込・引き出しの制限は70歳以上のATM振込・引き出し制限2026、家族で決めておくことの全体像は親のお金の管理にまとめています。親の預金がまだ動かせるうちに確認しておきたい銀行の手続きは、認知症になる前の銀行手続きチェックリスト12項目にまとめています。

STEP3:使う予定のないお金は「凍結されない形」に組み替える

生活費を超える部分、すなわち「最終的に家族に残すことになる可能性が高いお金」は、定期預金のままでは凍結リスクと相続税の両方を抱えたままになります。選択肢は主に3つあります。①家族信託で管理権限を家族に移す(不動産も含めて管理したい場合に有力)、②暦年贈与で計画的に移転する(年110万円の基礎控除内。ただし2024年以降の贈与は、相続開始前7年以内の分が相続財産に加算されます。延長された4年分については合計100万円まで加算対象外)、③一時払い終身保険などで「死亡保険金」の形に変える、です。特に③は、死亡保険金が受取人固有の財産として遺産分割協議を待たず数営業日で支払われ、かつ「500万円×法定相続人の数」の相続税非課税枠も使えるため、凍結対策と節税対策を同時に兼ねられます。例えば法定相続人が3人なら1,500万円まで非課税です。ただし早期解約の元本割れなどの注意点もあるため、必ず一時払い終身保険のデメリットを理解したうえでご検討ください。

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凍結される前に、うちは何をすればいいのか

ご家族の人数と、だいたいの財産額を選ぶだけです。判断能力があるうちにしかできない手続きから順に、必要なものだけをお出しします。

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設例:定期預金1,500万円を抱えた70代後半の母の場合

実在の人物や相談事例ではなく、整理の進め方を示すための設例です。物忘れが増え始めた母(78歳)の財産が、自宅と預金2,000万円(うち定期1,500万円)だとします。長女が心配して動くなら、①定期のうち800万円を満期で普通預金へ移し(生活費・介護予備費)、代理人の届出をする、②残り700万円は、家族信託・贈与・保険などの中から、母の希望ときょうだいの状況に合うものを比べて決める、③あわせて公正証書遺言を作る、という順番が考えられます。ポイントは、判断能力があるうちは本人の意思ですべてできることです。半年遅れると、選べる手段は大きく狭まっているかもしれません。

よくある質問

Q1. 家族が通帳と届出印を持参すれば解約できませんか?

できません。定期預金の解約には本人の意思確認が必須で、通帳・印鑑の所持だけでは足りません。委任状があっても、作成時点での意思能力に疑義があれば銀行は応じません。

Q2. 軽度の認知症(MCI)ならまだ解約できますか?

銀行が本人の意思を確認できる状態であれば可能な場合があります。ただし症状は進行するため、「まだ大丈夫」の時期こそ棚卸しと組み替えの最後のチャンスです。先延ばしが最大のリスクです。

Q3. 本人が亡くなった後、定期預金はどうやって引き出しますか?

相続手続きとして、遺産分割協議書または相続人全員の同意書類、戸籍一式などを揃えて解約・名義変更します。手順は相続時の預金名義変更:完全ガイドで解説しています。

Q4. ゆうちょの定額貯金も同じですか?

意思確認が必要な点は同じです。満期の手続きを代理人が行う場合は、名義人本人がすべて自筆で書いた委任状とお届け印、満期を迎えた証書、双方の本人確認書類が必要です(ゆうちょ銀行の案内)。つまり、委任状を書けるうちでないと使えません。加えて、民営化前(2007年9月30日以前)に預けた定額・定期郵便貯金は、満期から20年が過ぎると催告書が送られ、その2か月後までに請求しないと権利が消滅します。優先的に棚卸ししてください。名義人が亡くなった後のゆうちょ銀行の手続き(相続確認表の提出から払戻しまで)はゆうちょ銀行の相続手続き完全ガイドにまとめています。

Q5. 定期預金の担保貸付(自動貸付)も使えなくなりますか?

総合口座の自動貸付(定期預金を担保に普通預金がマイナスになる仕組み)は、口座が凍結されると新規の引き出し自体ができなくなるため、実質的に利用できなくなります。「いざとなれば借りられる」という想定は成り立ちません。

Q6. 本人が寝たきりで銀行に行けない場合はどうなりますか?

意思能力はあるものの来店が難しい場合は、銀行によっては行員が自宅や施設を訪問する出張対応や、電話での意思確認によって解約に応じてもらえることがあります。対応の可否や条件は金融機関ごとに異なるため、まずは取引店に事情を伝えて相談してください。ただし、意思能力そのものが失われている場合はこの方法は使えず、成年後見制度によることになります。

Q7. 親の定期預金を、本人以外が普通預金に移すことはできますか?

家族というだけではできません。定期預金を普通預金に移すことは、銀行から見れば定期預金の解約だからです。本人以外ができるのは、本人が書いた委任状を銀行が受け付けた場合、元気なうちに届け出た代理人が銀行の定める範囲で行う場合、成年後見人が行う場合です。代理人カードは普通預金の出し入れ用で、定期預金の解約には使えないのが原則です。手段ごとの違いは、記事前半の判定表をご覧ください。

親の定期預金、認知症になる前に決めておきたい方へ

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  • 親の物忘れが気になってきた
  • どの銀行にいくらあるか、家族が把握していない

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まとめ:定期預金の「安心感」は元気なうち限定

定期預金は安全な資産に見えますが、その安全性は「本人が元気であること」が前提です。認知症リスクの高まる年代では、金利のつかない安心感より、「家族が使える形になっているか」を優先して見直すべきです。全体像は認知症による口座凍結とは?銀行の判断基準と防ぐ7つの対策をご覧ください。

参考にした公的情報(2026年10月時点)

2026年10月時点の一般的な情報です。個別の事情による判断は、専門家や取引金融機関にご確認ください。


本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。取扱いは金融機関ごとに異なるため各窓口にご確認ください。個別の税額計算は税理士にご相談ください。

定期預金が動かせず、支払いが先に来ている方へ

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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