認知症対策や相続対策を調べていると、「家族信託」という言葉をよく目にするようになりました。柔軟に財産を管理・承継できる仕組みとして人気が高まっていますが、「万能な対策」ではありません。初期費用の高さや税務の複雑さなど、事前に知っておくべきデメリットもあります。
この記事では、家族信託のデメリットと費用相場を中立の立場から整理し、「どんな家庭に向き、どんな家庭には不向きか」の判断基準をお伝えします。当窓口の方針は、不要な方にまで家族信託を勧めることではありません。メリットだけでなくデメリットも知った上で、必要な場合にだけ選ぶことが大切です。
家族信託とは?まずは仕組みを確認
家族信託とは、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を任せる契約です。たとえば親が自宅や預金を子に信託しておけば、親が認知症になっても、受託者である子が信託契約の範囲内で自宅の売却や預金の管理を続けられます。成年後見制度のように家庭裁判所の監督を受けず、柔軟に設計できるのが大きな特徴です。
認知症による口座凍結を避ける手段としても注目されています。凍結の仕組みそのものについては、認知症による口座凍結とは?で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
家族信託の主なデメリット
⚠️ 家族信託 5つのデメリット(早見)
1. 初期費用が高くなりやすい
最大のデメリットは、初期費用の高さです。専門家への設計・組成報酬、公正証書作成費用、不動産を信託する場合の登録免許税や登記費用などがかかります。信託財産の規模にもよりますが、一般的に初期費用として30万円から100万円程度、財産が大きい場合はさらに高くなることもあります。ランニングコストは抑えられる一方、スタート時のまとまった支出は避けられません。
2. 受託者に大きな責任と負担がかかる
財産を預かる受託者(多くは子)には、信託財産を分別して管理する義務や、帳簿を作成する義務が生じます。家族とはいえ責任は重く、長期にわたって続くため、引き受ける側の理解と覚悟が欠かせません。受託者を誰にするかで家族間の感情的なもつれが生じることもあります。
3. 税務が複雑で、節税効果は限定的
家族信託そのものに直接的な節税効果があるわけではありません。むしろ、信託した不動産から生じる損失を他の所得と損益通算できないなど、税務上不利になる場合もあります。信託の設計によっては贈与税や相続税の課税関係が複雑になるため、税理士との連携が不可欠です。「家族信託をすれば相続税が減る」という誤解には注意が必要です。
4. 対応できる専門家がまだ限られる
家族信託は比較的新しい制度で、経験豊富な専門家がまだ多くありません。設計を誤ると、かえって家族が困る信託になってしまう恐れもあります。実績のある専門家を慎重に選ぶ必要があります。
5. 身上監護はカバーしない
家族信託はあくまで財産管理の仕組みで、施設入所の契約や医療同意といった身上監護は対象外です。身上監護まで必要な場合は、成年後見制度との併用を検討することになります。任意後見との違いや併用の考え方は、任意後見制度の費用はいくら?もご参照ください。
家族信託の費用相場と他制度との比較
表は一般的な目安です。家族信託は初期費用が高い分ランニングコストを抑えやすく、任意後見や法定後見は継続的な月額報酬がかかる傾向があります。任意後見の費用の詳細は任意後見制度の費用はいくら?で解説しています。口座凍結後の成年後見については凍結口座の解除・成年後見もご覧ください。
家族信託を始めるまでの大まかな流れ
家族信託を利用する場合の一般的な流れは、まず家族で目的と信託する財産の範囲を話し合い、次に専門家と信託の設計を固め、信託契約書を作成して公正証書化し、必要に応じて不動産の登記や信託用口座の開設を行う、というものです。契約内容は一度作ったら長く使うことになるため、家族全員が納得した形で進めることが大切です。
この過程では、「誰を受託者にするか」「信託しない財産はどう管理するか」といった論点を丁寧に詰める必要があります。信託しない預金については、別途代理人カードや任意後見で備えるといった組み合わせも検討されます。全体を見渡して設計することで、余分な費用をかけずに済むこともあります。
後悔しないための判断基準
◯ 家族信託が向いている家庭
✓ 収益不動産・事業用資産があり柔軟に承継したい
✓ 受託者を任せられる信頼できる家族がいる
✓ 認知症後も自宅売却・資産管理を続けたい
✕ 向かない家庭(他の対策が有効)
✕ 財産の大半が預貯金で金額も大きくない
✕ 施設契約・医療同意など身上監護が中心
✕ 受託者を任せられる家族がいない
家族信託が向きやすいのは、収益不動産や事業用資産があり柔軟な承継をしたい家庭、あるいは受託者となる信頼できる家族が明確にいる家庭です。逆に、財産の大半が預貯金だけで金額もそれほど大きくない場合や、身上監護のニーズが中心の場合は、費用に見合わないこともあります。
当相談窓口の相談をもとに再構成した典型例として、次のようなケースがあります。80代の父が「認知症対策になる」と勧められ、預貯金中心の資産で家族信託を検討していましたが、詳しく伺うと財産の大半は普通預金で、施設費用の支払いが主な心配ごとでした。この場合、費用のかかる家族信託よりも、まずは代理人カードや任意後見の検討で十分という判断になりました。「勧められたから」ではなく「わが家に本当に必要か」を起点にすることが大切です。
まず何から始めればいいか
家族信託を検討する前に、そもそも自分の家庭に相続税や本格的な財産管理対策が必要なのかを把握することが第一歩です。当窓口では、無料・登録不要・3分で結果がわかる診断ツールをご用意しています。ご自身の状況に合った対策の方向性を知る目安としてお使いください。
よくある質問(FAQ)
家族信託をすれば相続税は安くなりますか?
家族信託そのものに直接的な節税効果は基本的にありません。相続税対策は別途、生前贈与や生命保険の非課税枠の活用などと組み合わせて考える必要があります。個別の税額計算は税理士にご相談ください。
家族信託と成年後見はどちらがよいですか?
一概には言えません。柔軟な財産管理・承継を重視するなら家族信託、身上監護まで含めて包括的に任せたいなら後見が向きます。両者を併用するケースもあります。家庭の事情に合わせて比較検討することをおすすめします。
家族信託の費用はどのくらいかかりますか?
信託財産の規模や不動産の有無によりますが、初期費用として30万円から100万円程度が一つの目安です。ランニングコストは比較的抑えられます。実際の費用は依頼先や内容によって変わるため、複数の専門家に確認することをおすすめします。
受託者になる家族がいない場合はどうすればいいですか?
信頼できる受託者が見つからない場合、家族信託は組みにくくなります。その場合は任意後見制度など、専門家が関与する仕組みの検討が現実的です。凍結口座の解除・成年後見もあわせてご参照ください。
まとめ
家族信託は、本人が元気なうちに柔軟な財産管理・承継の仕組みを作れる、強力な選択肢です。一方で、初期費用の高さ、受託者の負担、税務の複雑さ、身上監護をカバーしない点などのデメリットもあります。「万能な対策」と思い込まず、不動産の有無や受託者の存在などを踏まえて、本当に必要かを見極めましょう。
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本記事は提携行政書士監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額計算や信託の設計は、税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。
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