高齢者の住み替え費用2026|持ち家を売る・貸す・サ高住、家族で決めること

秋の夕方、2階の寝室へ上がる階段で、手すりを握る手に力が入るようになった。庭の草取りも、去年より時間がかかる。夫婦でそんな話をした翌朝、新聞に挟まっていた高齢者向け住宅のチラシを、捨てずに食卓に置いた方もいると思います。 自宅を担保に老後資金を借りる方法は、リバースモーゲージとは|仕組み・デメリットと契約前に確認する8つのことで詳しく説明しています。

この記事では、70代からの住み替えを4つの道に分けて比べます。数字は、2026年10月時点で国や公的機関の資料で確かめられたものだけを載せました。老人ホームなど介護施設の費用は、別の記事で詳しくまとめています。

この記事の結論
1. 住み替えの道は大きく4つです。「自宅に住み続ける」「売って賃貸やサ高住へ」「リースバック」「リバースモーゲージ」。手元に残るお金、住める期間、家が誰のものになるか、の3点で比べると違いが見えます。
2. 住んでいた家を売るときは、条件を満たせば利益から最高3,000万円を差し引ける特例があります。住まなくなった家は「住まなくなった日から3年たつ日の、その年の12月31日まで」に売ることが条件の一つです。
3. 認知症で判断が難しくなると、家を売る・貸す・借入れをする契約が本人だけではできなくなります。元気なうちに、家族で「どこまで今の家で暮らすか」「誰が手続きをするか」を決めておくと慌てずに済みます。
目次

70代の住み替え、4つの道を比べる

「住み替え」と聞くと家を売る話に思えますが、売らずに住まいを変える道もあります。まず4つを並べてみます。

道お金の動き住む場所・期間家は誰のものに気をつけたい点
自宅に住み続ける大きな出入りはない。固定資産税と修繕費は続く住み慣れた家。手すりや段差の工事をすることも自分のまま。亡くなった後は相続で家族へ階段、冬の寒さ、通院の足。一人になったときの暮らし
売って賃貸・サ高住へ売った代金が入る。家賃や管理費が毎月出ていく新しい住まい。賃貸は入居の審査がある買った人のもの売るときの税金。年齢によって部屋探しに時間がかかることも
リースバック売った代金が入る。その家の家賃を払い続ける今の家に住み続ける。ただし契約期間が決まっていることが多い買い取った事業者のもの家賃の合計が売った代金を上回ることがある。期間が来ると住めなくなることも
リバースモーゲージ(リ・バース60など)家を担保にお金を借りる。リ・バース60は毎月の支払いが利息だけ今の家、または建て替え・買い替えた家自分のまま。亡くなった後、相続人が一括で返すか、家を売って返す使いみちに決まりがある。リ・バース60は生活費には使えない
出典:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」、住宅金融支援機構「【リ・バース60】」をもとに整理(2026年10月8日確認)。

どれが得か、で選ぶと迷います。比べやすいのは「あと何年、どこで、どう暮らしたいか」と「亡くなったとき、家と預金をどう残したいか」の2つです。子どもが実家に戻る予定があるなら、売る道は選びにくくなります。誰も住む予定がないなら、元気なうちに売るほうが手続きは軽く済みます。

サ高住とはどんな住まいか|制度で決まっていること

サ高住は「サービス付き高齢者向け住宅」の略です。高齢者住まい法という法律にもとづき、都道府県などに登録された賃貸住宅です。2011年に始まった制度で、国土交通省の資料では2023年12月末時点で全国に28万5,267戸あります。

登録するために、住宅は次のような基準を満たす必要があります(国土交通省の資料より)。

  • 入居できる人:60歳以上の方、または要介護・要支援の認定を受けた方など。
  • 部屋:床面積は原則25㎡以上。廊下の幅、段差の解消、手すりなどバリアフリーになっていること。
  • 必ず付くサービス:状況把握(安否の確認)と生活相談の2つ。食事や掃除・洗濯の手伝いは、住宅ごとに付いたり付かなかったりします。
  • 契約:長く入院したことを理由に、事業者から一方的に解約できない契約であること。敷金・家賃・サービスの対価のほかに、お金を受け取らないこと。

見落としやすいのは、介護です。サ高住は「見守りと相談が付いた賃貸住宅」で、介護が必要になったら外の介護事業所と別に契約するのが一般的です。介護が重くなると、サ高住から特別養護老人ホームなどへ、もう一度移ることもあります。住み替えは1回で終わらないかもしれない、と考えておくと計画が立てやすくなります。

住み替えの費用の考え方|サ高住の月額は全国平均で約15.8万円

サ高住の家賃や食費は、住宅ごとに自由に決められます。国が決めた金額はありません。目安になるのは、厚生労働省の補助事業で行われた全国調査(2023年度)です。介護保険の自己負担を除いた月額の平均は、次のとおりでした。

サ高住(介護は外の事業所と契約する型)月額の平均
合計158,163円
うち家賃にあたる費用63,439円
うち食費47,934円
うち基本のサービス費・管理費40,304円
出典:厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」第2回資料(2025年4月28日)。PwCコンサルティング「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業」(令和5年度、サ高住955件の回答)の集計。全国の平均で、愛知県の相場ではありません。

この金額に、介護保険の自己負担(1〜3割)、医療費、日用品などが加わります。入居のときの敷金も住宅ごとに違い、公的な調査で示された目安は見当たりませんでした。

払えるかどうかは、次の順で確かめると分かりやすくなります。

  • 毎月の不足:新しい住まいの月額から、年金の手取りを引く。
  • 暮らす年数分の不足:毎月の不足×12×暮らす年数。
  • 最初に出ていくお金:敷金、引越し、家財の片付け、家を売るときの仲介手数料や登記の費用。
  • あてられるお金:預金と、家を売った場合の手取り(税金と費用を引いた額)。

たとえば月額16万円の住まいで、年金の手取りが月14万円なら、毎月2万円の不足です。1年で24万円、15年で360万円になります。これに最初の費用を足した額が、預金と売却の手取りでまかなえるかを見ます。数字はあくまで計算の例です。

自宅に住み続ける場合にも費用はかかります。固定資産税、屋根や水回りの修繕、手すりの工事などです。「住み替えはお金がかかる、住み続ければかからない」ではなく、両方の数字を並べて比べてください。介護施設の費用の計算は老人ホーム・介護施設の費用2026にまとめています。

売って賃貸へ移るとき|2025年10月からの「居住サポート住宅」

家を売って、駅や病院に近い賃貸へ移る人もいます。ただ、高齢の一人暮らしだと、貸す側が見守りや、亡くなった後の部屋の片付けを心配して、契約をためらうことがあります。

この不安を減らすため、改正住宅セーフティネット法が2025年10月1日に施行されました。あわせて「居住サポート住宅」の認定制度が始まっています。大家さんと居住支援法人(住まい探しや暮らしを支える団体)が組んで、入居した後の暮らしを支える賃貸住宅です。厚生労働省の案内では、支えの中身は次のとおりです。

  • 毎日の安否の確認
  • 訪問などによる見守り
  • 暮らしや心身の具合が不安定になったとき、福祉サービスにつなぐこと

認定するのは市区町村長などです。国土交通省の「居住サポート住宅情報提供システム」で、認定された住宅を探せます。お住まいの地域にどれくらいあるかは、このシステムか、市区町村の住宅の窓口で確かめてください。家賃の保証会社について、国が認定・登録する制度も設けられています。

リースバックとリバースモーゲージ|家に住みながらお金をつくるときの注意点

リースバック:売った家に、家賃を払って住み続ける

リースバックは、自宅を事業者に売って代金を受け取り、その家を借りて住み続ける方法です。国土交通省は2022年6月に「住宅のリースバックに関するガイドブック」を出し、契約前に確かめたい点を挙げています。

  • 住める期間:賃貸の契約は「定期借家」が多く、期間が来れば終わります。再契約するかは貸す側が決めるため、望むだけ住めるとは限りません。
  • 家賃の合計:住み続けたい年数分の家賃を足すと、売った代金を上回ることがあります。必ず計算して比べます。
  • 売る値段:複数の事業者や不動産会社に、相場を確かめます。
  • 買い戻し:当然にできる権利ではありません。「いつまでに」「いくらで」買い戻せるかを契約書で確かめます。
  • 修繕と退去:設備が壊れたときの修繕、退去のときの原状回復、契約した本人が亡くなったときの扱いを確かめます。
  • クーリング・オフ:宅地建物取引業者に家を売る契約には使えません。解約に多額の違約金がかかる契約もあります。

ガイドブックには、勧誘されたその日に契約し、解約しようとして約400万円の違約金を求められた例も載っています。その場で印鑑を押さず、家族と相談してから決めてください。迷ったときは、消費者ホットライン「188」で消費生活センターにつながります。

リバースモーゲージ:家を担保に借りて、亡くなった後に返す

リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りる方法です。代表的なものに、住宅金融支援機構と提携した金融機関が扱う「リ・バース60」があります。機構の案内(2026年10月確認)では、仕組みは次のとおりです。

  • 毎月の支払い:利息だけ。元金は、借りた人が亡くなったときに返します(夫婦で借りた場合は、2人とも亡くなったとき)。
  • 返し方:相続人が一括で返せば家は残ります。家と土地を売って返すこともできます。
  • 使いみち:家の建て替え・購入、リフォーム、住宅ローンの借り換え、サ高住の入居一時金など。生活費には使えません。
  • 借りられる額:60歳以上なら、家と土地の担保評価額の50%または60%が上限です。
  • 売っても足りないとき:「ノンリコース型」なら、残りを相続人が払う必要はありません。2025年度の申し込みの約99%がこの型です。ただし、払わなくてよくなった分に税金がかかる可能性があると案内されています。

銀行などが独自に扱うリバースモーゲージもあり、使いみちや条件は商品ごとに違います。どちらも、亡くなった後に家が家族の手元に残らないことがある仕組みです。借りる前に、家を継ぐかもしれない子どもにも話しておくと、後で行き違いが起きにくくなります。仕組みの全体はリバースモーゲージとは?で詳しく扱っています。

家を売るときの税金|3,000万円の特別控除と期限

家を売って、買ったときより高く売れると、その利益(譲渡所得)に税金がかかります。ただし、自分が住んでいる家や、住んでいた家を売ったときは特例があります。条件を満たせば、利益から最高3,000万円を差し引けます。国税庁の案内(2026年4月1日現在の法令)では、主な条件は次のとおりです。

  • 売る期限:住まなくなった家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。たとえば2026年10月にサ高住へ移ったなら、2029年12月31日までです。
  • 家を取り壊した場合:取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を結び、上の期限までに売ること。その間、貸し駐車場などに使っていないこと。
  • 買う人:親子や夫婦など、特別な関係のある人に売った場合は使えません。
  • 前の年との関係:売った年の前年・前々年に、この特例やマイホームの買い換えの特例などを受けていないこと。
  • 申告:特例を使うには、書類をそろえて確定申告をすることが必要です。

気をつけたいのは、住み替えてから「しばらく様子を見よう」と空き家にしておく場合です。期限は住まなくなった日から進みます。人に貸している間も同じです。売るか迷っているうちに期限を過ぎていた、ということがないよう、移る日が決まったら期限の年をメモしておきます。

一方で、家を売らずに残す場合は、相続のときの税金が関わります。亡くなった方の自宅の土地は、条件を満たせば330㎡まで評価額を80%減らせる特例(小規模宅地等の特例)があります。国税庁の案内では、要介護・要支援の認定を受けて老人ホームやサ高住などに入っていた場合も、対象になり得ます。ただし、空いた家を人に貸したり、事業に使ったりすると、この扱いは受けられません。

売る・貸す・置いておく、のどれを選ぶかで、税金の扱いは変わります。ご自身の場合に特例が使えるか、いくらかかるかは、提携の税理士が確認します。

認知症になると、家は売れなくなる

家を売る、貸す、リースバックやリバースモーゲージの契約をする。どれも、家の持ち主本人の契約です。認知症などで判断が難しくなると、本人だけでは契約ができません。家族が代わりに署名することもできません。

その後に家を売るには、家庭裁判所で成年後見人を選んでもらう方法があります。ただし、後見人が本人の住まいを売ったり貸したりするには、家庭裁判所の許可が必要です。施設の入居が決まってから手続きを始めると、売れるまでに時間がかかります。

元気なうちにできる備えには、次のようなものがあります。

信託や後見の書類づくり、登記の手続きは、提携の司法書士が担当します。

家族で決めておくこと

住み替えは、本人が決めることです。ただ、手続きや引越しを手伝うのは家族で、家が残れば相続にもつながります。全部をいっぺんに決めなくてかまいません。次の表の上から順に、話せるところから話してみてください。

決めておくこと話すときの目安
いつまで今の家で暮らすか「階段が使えなくなったら」「一人になったら」など、きっかけを言葉にしておく
家を売る・貸す・残すの方針子どもが住む予定はあるか。誰も住まないなら、いつ頃売るか
住み替えの費用をどのお金から出すか年金、預金、売った代金のどれを使うか。あてる預金がどの銀行にあるか
判断が難しくなったら誰が手続きをするか家族信託や任意後見を使うか。使わないなら、どこまで本人が元気なうちに済ませるか
家の名義と書類のありか名義が亡くなった親のままになっていないか。権利証や固定資産税の通知書の保管場所
きょうだいへの伝え方近くに住む子だけで決めず、決まったことは全員に同じ内容で伝える

子どもの側から切り出すときは、「家を売ってほしい」ではなく「この先の暮らしの希望を聞かせて」と始めると、親も話しやすくなります。切り出し方は年末年始の帰省で親とお金の話、家の片付けや進め方の順番は実家じまいは何から始める?で扱っています。

今日できる一歩

1. 固定資産税の納税通知書を出して、家の名義を確かめる。名義が亡くなった親のままなら、売る前に相続登記が必要です。

2. 年金の手取りと、今の家の1年の維持費を紙に書き出す。固定資産税と、ここ数年の修繕費で十分です。住み替え先の月額と並べる土台になります。

3. 家族に「住まいのこと、一度話したい」と伝える日を決める。最初は表の1行目、「いつまで今の家で暮らすか」だけで構いません。

相談現場から

よく伺うのは、「リースバックの案内を受けた。悪い話ではなさそうだが、判断がつかない」というお話です。売った代金と、住み続けたい年数分の家賃の合計を並べるだけで、見え方が変わります。もう一つ多いのが、住み替えを決めてから、家の名義が亡くなった親のままだと分かる場面です。名義の確認は、売るかどうかを決める前に済ませておくと安心です。

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※相談中は折り返しのお電話になります。
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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の一般的な情報です。サ高住や賃貸住宅の費用は住宅ごと・地域ごとに異なり、表の金額は公的資料にある全国の平均です。税金の特例が使えるか、契約の内容が妥当かといった個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家や、契約の相手方に直接ご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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