年金受給者の確定申告|400万円の不要条件と申告したほうがよい人(2026年分)

1月の半ば、実家の郵便受けに日本年金機構からのはがきが届きます。中身は「公的年金等の源泉徴収票」。その晩、母から「これ、税務署に出さないといけないの?」と電話がかかってきました。

年金を受け取っている人の多くは、所得税の確定申告をしなくてよい仕組みになっています。ただ、「しなくてよい」と「しないほうがよい」は別の話です。この記事では、2026年分(2027年2〜3月に申告する分)を取り上げます。申告しなくてよい条件、申告すると税金が戻りやすい場面、親の申告を家族が手伝うときの流れを順に整理します。数字は2026年10月時点で、国税庁と日本年金機構の公表内容を確かめたものです。

この記事の結論

  1. 公的年金の収入が年400万円以下で、年金以外の所得が年20万円以下なら、所得税の確定申告はしなくてよい決まりです。年金の全部が源泉徴収の対象であることが前提です。
  2. それでも、医療費が多かった年や、扶養親族等申告書を出していない年は、申告すると税金が戻ることがあります。住民税の申告が別に要ることもあります。
  3. 2026年分は基礎控除が大きく上がりました。年金から引かれすぎた分は、原則として12月の年金で精算されます。
目次

申告しなくてよい条件|2つの数字を源泉徴収票で確かめる

国税庁は、次の条件をすべて満たす人は所得税の確定申告をしなくてよい、と定めています(確定申告不要制度)。まずは早見表で確かめてください。

条件どこで確かめるか見るときの注意
① 公的年金等の収入が年400万円以下1月に届く源泉徴収票の「支払金額」天引き前の額で見る。年金を2か所以上から受け取っている人は合計で見る
② 年金の全部が源泉徴収の対象源泉徴収票外国の年金など、源泉徴収されない種類の年金を受け取っている人は対象外
③ 公的年金等以外の所得が年20万円以下パートの給与明細、個人年金の支払通知など「収入」ではなく、経費や控除を引いた「所得」で見る

(国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」「高齢者と税(年金と税)」をもとに作成。2026年10月時点)

①の「公的年金等」には、国民年金や厚生年金のほか、会社の企業年金(確定給付企業年金など)も含まれます。一方、遺族年金と障害年金は所得税がかからないため、400万円の計算に入りません。源泉徴収票も届きません。

③で数えるのは、年金以外の所得です。たとえば、生命保険会社などと契約した個人年金、パートやシルバー人材センターの収入、土地や駐車場を貸した収入がこれに当たります。パートの給与なら、収入から給与所得控除(2026年分は最低74万円)を引いた額が所得です。

なお、確定申告不要制度は「申告しなくてよい」という意味で、「申告してはいけない」わけではありません。条件を満たしていても、申告すれば税金が戻る人は申告できます。

所得税の申告が要らなくても、住民税の申告が要ることがある

見落とされやすいのが住民税です。国税庁も「確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合がある」と案内しています。住民税の申告は、税務署ではなく市町村が受け付けます。

名古屋市の案内(2026年度分)では、年金の所得だけの人は原則として申告不要としたうえで、次のような場合は申告が必要としています。

  • 年金以外に所得がある:所得税では「20万円以下なら申告不要」でも、住民税では申告が要る扱いです。
  • 源泉徴収票に載っていない控除を受けたい:医療費控除、自分で納付や口座振替をした社会保険料、生命保険料控除などです。

申告の期間や窓口は市町村ごとに決まっています(名古屋市の2026年の受付は2月6日〜3月16日でした)。同じ案内では、所得税の確定申告書を出した人は、住民税の申告書を別に出す必要はないとしています。お住まいの市町村の税務課の案内で確かめてください。

申告したほうがよい場合|税金が戻りやすい4つの場面

年金から引かれる所得税は、源泉徴収票に載っている控除だけで計算されています。それ以外に使える控除があると、確定申告(還付申告)で払いすぎた分が戻ることがあります。典型的なのは次の4つです。

場面使う控除手元に用意するもの
入院や通院、歯の治療などで医療費が多かった医療費控除医療費の領収書、または健康保険の「医療費通知」
家族の国民健康保険料や後期高齢者医療保険料を口座振替で払った社会保険料控除市町村から届く納付額のお知らせ、通帳
生命保険や医療保険に入っていて、秋に保険会社から控除証明書が届いた生命保険料控除保険会社の「控除証明書」
扶養親族等申告書を出していない、または出した後に家族の状況が変わった配偶者控除、扶養控除、障害者控除など家族の所得が分かるもの、障害者手帳など

(国税庁 No.1120・No.1130、日本年金機構の扶養親族等申告書のQ&Aをもとに作成。2026年10月時点)

医療費控除は、1年間(1月〜12月)に払った医療費から、保険などで戻った分を引き、さらに10万円を引いた額が控除になります。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく所得の5%を引きます。65歳以上で収入が年金だけなら、年金収入が年310万円未満のとき所得は200万円未満です。医療費が10万円に届かなくても対象になる場合があります。生計を一にする家族の医療費もまとめられます。

社会保険料控除は、誰が払ったかで控除を受ける人が決まります。年金から天引きされた介護保険料や後期高齢者医療保険料は、年金を受け取っている本人の控除です。一方、口座振替に切り替えた保険料は、口座の名義人の控除になります(国税庁 No.1130のQ&A)。夫の口座から妻の保険料を払っている夫婦などは、ここで差が出ます。

扶養親族等申告書は、毎年秋に日本年金機構から届く書類です。出していないと、年金から引かれる所得税の計算で配偶者控除や障害者控除などが反映されません。日本年金機構は、その場合は確定申告で精算しないと控除が受けられないと案内しています。

還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます。2026年分なら2027年1月から出せて、3月15日を過ぎても受け付けてもらえます。去年までの分で心当たりがある場合も、5年以内ならさかのぼって申告できます。

2026年分で変わったこと|基礎控除の引き上げと12月の精算

2025年と2026年の税制改正で、誰でも受けられる基礎控除が2年続けて引き上げられました。年金受給者の多くが当てはまる「合計所得金額489万円以下」の区分では、2026年分の基礎控除は104万円です。

合計所得金額2024年分まで2025年分2026年分
132万円以下48万円95万円104万円
132万円超336万円以下48万円88万円104万円
336万円超489万円以下48万円68万円104万円
489万円超655万円以下48万円63万円67万円
655万円超2,350万円以下48万円58万円62万円

(国税庁「No.1199 基礎控除」「令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等について」をもとに作成。2028年分以後は金額がまた変わる予定です。2026年10月時点)

たとえば65歳以上で、年金収入が年300万円、ほかに所得がない方なら、年金の所得は190万円(300万円−110万円)です。この方の基礎控除は、2025年分の88万円から、2026年分は104万円になります。

2026年分の新しい控除額は、2026年12月1日に施行されます。日本年金機構は、11月分までは従来の控除額で源泉徴収し、12月の年金支払いのときに新しい控除額で1年分の税額を計算し直し、引かれすぎた分は原則として還付すると案内しています。年金だけの方は、改正のためにわざわざ申告する必要はないことが多いと考えられます。

ただし、次の場合は確定申告で精算することになります。

  • 2026年12月に年金の支払いがない:年の途中で受け取りが終わった場合などは、12月の精算がありません(国税庁)。
  • 改正で新たに扶養に入れる家族がいる:扶養親族などの所得の条件は、62万円以下に広がりました。2026年分で新たに扶養控除などを受ける場合は、原則として確定申告が必要です(日本年金機構)。

パート収入がある方には、給与所得控除の見直しも関係します。給与から差し引く最低額は、2024年分までの55万円から、2025年分は65万円、2026年分は74万円になりました。2027年1月からは、源泉徴収されない年金額の目安も、65歳以上で年214万円未満に上がります。

必要な書類と、2027年3月15日までのスケジュール

2026年分の申告に向けた流れを、カレンダーにまとめました。

時期届くもの・できること
2026年10月〜日本年金機構から2027年分の扶養親族等申告書が順次届く
2026年12月15日(火)年金の振込日。この支払いで2026年分の税額が精算される
2027年1月上旬〜中旬公的年金等の源泉徴収票が届く(2026年は1月8日〜15日に順次送付)
2027年1月1日〜還付申告を出せる(5年間)
例年2月16日〜3月15日確定申告の期間。2026年分の期限(納期限)は2027年3月15日(月)
2〜3月ごろ住民税の申告(期間は市町村ごと)

(日本年金機構「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」、同「公的年金等の源泉徴収票が届きません」、国税庁「納期限と振替日」をもとに作成。2026年10月時点で、令和8年分の受付開始日は国税庁の案内で確認できていません)

申告に使う主な書類は次のとおりです。

  • 公的年金等の源泉徴収票(年金を受け取っている先の数だけ。企業年金の分も)
  • 年金以外の収入が分かるもの(パートの源泉徴収票、個人年金の支払通知など)
  • 医療費の領収書、または医療費通知
  • 国民健康保険料などの納付額が分かるもの、保険会社の控除証明書
  • マイナンバーカード(ない場合は通知カードなど番号が分かるものと、運転免許証などの本人確認書類)
  • 還付金を受け取る本人名義の口座

源泉徴収票をなくした場合は、「ねんきんネット」や年金事務所で再交付を申し込めます。医療費の領収書は申告書に添付しませんが、提示を求められることがあるため、5年間は保管しておきます。

家族が代わりに申告書を作るときの流れ

親の申告を子が手伝うご家庭は多いと思います。申告するのはあくまで親本人なので、「作るのは家族、確認して出すのは本人」という形が基本です。

  1. 書類を親と一緒に集める:1月に源泉徴収票が届いたら、医療費の領収書や控除証明書と一つの封筒にまとめます。
  2. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で入力する:画面の案内に沿って、源泉徴収票の数字や医療費を入力すると申告書ができます。
  3. 親に内容を見てもらい、提出する:印刷して親が確認し、郵送するか税務署へ持参します。家族が持参する場合、添付する本人確認書類の写しは親本人の分で足り、持参する家族の分は要りません(作成コーナーのQ&A)。
  4. e-Taxで送る場合:e-Taxは、申告する本人の電子証明書などで本人確認をする仕組みです。マイナンバーカードを使う方法なら、親のカードと暗証番号を使い、親と一緒に操作します。

子が親の入院費を払っている場合、生計を一にしていれば、子の申告で医療費控除を使える場合があります。どちらの申告で使うと得か、生計を一にしているといえるかは、家の事情で答えが変わります。当社にご相談いただいた場合は、提携の税理士が確認します。

親が書類の内容を理解して確認するのが難しくなってきた場合は、家族が「代わりに出しておく」だけでは済まない場面が出てきます。申告に限らず、年金が入る口座や預金の管理をどうするか、早めに家族で話しておくと安心です。

親が亡くなったとき|準確定申告は4か月以内

年の途中で亡くなった方の所得税は、相続人が代わりに申告します。これを準確定申告といいます。国税庁の案内によると、期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

  • 対象の期間:1月1日から亡くなった日までの所得。前年分の確定申告が必要だった人が、申告しないまま1月1日〜3月15日に亡くなった場合は、前年分もあわせて4か月以内に申告します。
  • 出し方:相続人の氏名や続柄を書いた「付表」を付け、亡くなった当時の納税地(通常は住所地)の税務署に出します。相続人が2人以上なら、連名で出すか、各自が出します。
  • 使える控除:医療費や社会保険料は、亡くなった日までに本人が払った分が対象です。亡くなった後に家族が払った入院費は含められません。
  • 2026年中に亡くなった場合:2026年11月30日までに準確定申告書を出すと、改正前の基礎控除で計算されます。あとから「更正の請求」をすれば新しい控除額を使える、と国税庁は案内しています。

亡くなった月までの分で受け取っていない年金(未支給年金)は、亡くなった方の所得ではなく、請求して受け取った家族の一時所得として扱われます(国税庁 No.1605)。請求の流れは未支給年金の案内が届いたらの記事で、相続税について税務署から書類が届いた場合は「相続についてのお尋ね」の記事で説明しています。

なお、準確定申告をe-Taxで出す場合は、作成コーナーではなくe-Taxソフトなどを使うと国税庁は案内しています。年金だけの暮らしだった親でも、申告の要否や還付の有無は個別に変わります。迷ったときは税務署か税理士に確かめてください。

今日できる一歩

1. 去年の源泉徴収票を探す。「支払金額」が400万円以下か、年金を何か所から受け取っているかを見ておくと、1月に届く2026年分と見比べやすくなります。

2. 医療費の領収書を入れる封筒を1つ決める。2026年1月からの領収書を集め、12月末に合計してみます。家族の分も同じ封筒で構いません。

3. 扶養親族等申告書が届いていないか確かめる。10月から順次届きます。配偶者や障害のある家族がいる方は、期限までに出しておくと、年金から引かれる税金に控除が反映されます。

相談現場から

よく伺うのは「年金が400万円以下だから、何も出してはいけないと思っていた」というお話です。申告不要は「出さなくてよい」という意味で、医療費が多かった年などは申告して税金が戻ることがあります。もう一つ多いのが、親の入院費を払っていた子が、親の申告と自分の申告のどちらで医療費を使うか迷う場面です。領収書を捨てずに取っておけば、5年以内ならあとから確かめられます。

親の申告、うちの場合はどうなるか知りたい方へ
源泉徴収票や医療費の領収書を手元に置いて、30分の無料相談で一緒に整理します。申告が要るか、戻る税金がありそうかといった税の判断は、提携の税理士が確認します。年金が入る口座や預金を家族でどう管理していくかも、あわせてご相談いただけます。愛知県内は対面・ご自宅への訪問も可能、それ以外はオンラインです。
※お電話は、相談中の場合は折り返しになります。
LINEで源泉徴収票の写真を送って相談する 返信は2営業日以内(土日祝を除く)

あわせて読みたい

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。申告が必要かどうか、どの控除が使えるかは、収入の内訳や家族の状況で変わります。個別の判断は、税務署または税理士にご確認ください。住民税の申告は、お住まいの市町村の案内をご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

預金・保険・相続、うちの場合は? 30分無料で相談できます052-766-5650無料相談を申し込む
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

目次