税務署から「相続についてのお尋ね」が届いたら|なぜ届くのか・回答義務・申告要否検討表の書き方と10か月の期限

四十九日が終わって少し落ち着いたころ、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」や「相続についてのお尋ね」と書かれた封筒が届く。中には「相続税の申告要否検討表」という記入用紙が入っていて、財産を書いて返送するように、とある。うちに相続税なんて関係ないはずなのに、なぜ税務署が知っているのか。書かないとどうなるのか。

この記事では、届いた書類が何なのか、なぜ自分に届いたのか、回答しなければならないのか、どう書けばよいのか、そして申告が必要と分かったときに愛知・岐阜でどこへ出すのかを整理します。

目次

先に結論:慌てなくてよいが、封筒は捨てない

この封筒が届いたら、今日やること・やらないこと
  • この書類は「調査の予告」ではなく、申告が必要かどうかを自分で確かめてくださいという案内です。亡くなった方がいる家に広く送られています。
  • 返送は法律上の義務ではありません。ただし相続税がかからない家ほど、返送した方が得です。「かからない」ことを税務署に伝える手段だからです。
  • まず法定相続人の人数を数え、3,000万円+600万円×人数と財産のおおまかな合計を比べます。明らかに下回るなら、その旨を書いて返送して終わりです。
  • 財産が基礎控除に近い、または超えそうなら、封筒に書かれた期限より「亡くなった日の翌日から10か月」の申告期限を優先して動きます。
  • やってはいけないのは、封筒を開けずに置いておくこと、分からない欄を適当な数字で埋めることです。

届いたのは何か:2種類ある

税務署が相続に関して送ってくる書類は、名称と中身で大きく2つに分かれます。どちらが届いたかで、税務署がその家をどう見ているかがある程度分かります。

書類の名前同封されているもの意味合い
相続税の申告等についてのご案内申告要否検討表、申告のしかたの案内、返信用封筒「申告が必要かどうか自分で検討してください」という案内。広く送られる
相続についてのお尋ね財産の内訳を書く回答用紙、返信用封筒上の案内より一段踏み込んだ確認。税務署が把握している情報と、実際の財産を照らし合わせたい意図
相続税の申告書一式申告書の用紙そのもの「申告が必要な可能性が高い」と見ている。放置しない
※2026年9月時点。書類の名称・同封物は税務署や時期により異なります。

いずれも封筒の差出人は、亡くなった方の住所地を管轄する税務署です。相続人であるあなたの住所地の税務署ではありません。これは相続税の申告先が「被相続人の住所地の税務署」と決まっているためです(国税庁タックスアンサーNo.4205、2026年9月時点)。

なぜ自分に届いたのか:死亡届から税務署までの流れ

「相続税の申告なんてしたことがないのに、なぜ税務署が知っているのか」と思うのが自然です。答えは、死亡届を出した時点で情報が税務署に流れる仕組みがあるからです。

封筒が届くまでの流れ
📝
死亡届を提出
葬儀社が代行することが多い
🏢
市区町村
受理した死亡の情報を税務署へ通知(相続税法58条)
🏛
税務署
過去の申告・固定資産・保有情報と照合
相続人へ封筒
亡くなってから半年〜8か月ごろが多い
※2026年9月時点。届く時期・対象の絞り方は税務署ごとに異なり、すべての相続人に届くわけではありません。

市区町村は死亡届を受け付けると、その人の死亡を税務署に知らせることになっています(相続税法58条)。税務署側には、亡くなった方の過去の所得税の申告、不動産の固定資産税に関する情報、金融機関からの支払調書などがあります。それらを見て「この家は申告が必要かもしれない」と判断した先に、案内やお尋ねを送ります。

回答は義務か、放置するとどうなるか

「相続税の申告要否検討表」も「相続についてのお尋ね」も、返送は法律上の義務ではありません。返さなかったこと自体で罰則はありません。義務があるのは、基礎控除を超える財産があるのに申告しなかった場合の「相続税の申告」そのものです。

ただし、放置するとこうなります。

  • 相続税がかからない家の場合:税務署からすると「申告が必要なのに出していない家」と「不要だから出していない家」の区別がつきません。返送しないと、後日電話や再度の書面で確認が来ることがあります。検討表を返して「基礎控除以下です」と示しておけば、それで終わることがほとんどです。
  • 本当は申告が必要だった場合:申告期限(亡くなった日の翌日から10か月)を過ぎると、本来の税額に加えて無申告加算税と延滞税がかかります。お尋ねを放置したうえで税務署の調査で判明した場合、自分から期限後に申告した場合より加算税が重くなります。

申告が不要なケースの目安:基礎控除で判定する

相続税は、財産の合計が基礎控除額を超えたときだけ申告と納税が必要になります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(国税庁タックスアンサーNo.4102、2026年9月時点)。

法定相続人の数基礎控除額よくある家族構成
1人3,600万円配偶者はすでに他界、子1人
2人4,200万円配偶者と子1人/子2人
3人4,800万円配偶者と子2人
4人5,400万円配偶者と子3人
出典:国税庁タックスアンサーNo.4102「相続税がかかる場合」(2026年9月時点)。相続放棄した人も「法定相続人の数」には含めます。養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人までしか数えません。

比べる相手の「財産の合計」には、預貯金・不動産・株式・投資信託のほか、死亡保険金や死亡退職金(それぞれ500万円×法定相続人の数までは非課税)、亡くなる前3年以内(2024年以降の贈与から段階的に7年以内へ延長中)の贈与も含めます。逆に、借入金や未払いの医療費、葬式費用は差し引けます。

名古屋市内や近郊で持ち家と預貯金がある家だと、土地の評価だけで2,000万〜3,000万円になることは珍しくありません。「うちは大した財産がない」と思っていても、相続人が2人なら4,200万円が線になるので、自宅と預貯金の合計で超えるかどうかは実際に数字を出さないと分かりません。

なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使えば税額がゼロになる家は多いのですが、これらの特例は申告をして初めて使えるものです。「特例を使えば税金はかからないから申告も不要」ではありません。基礎控除を超えていれば、税額ゼロでも申告は必要です。

申告要否検討表の書き方

検討表は、亡くなった方の情報、相続人の一覧、財産の種類ごとの金額、贈与、債務・葬式費用、と順に埋めていき、最後に基礎控除と比べる構成です。国税庁のサイトには「相続税の申告要否判定コーナー」があり、同じ項目を画面で入力すると検討表を印刷できます(2026年9月時点)。手書きが面倒ならこちらが早いです。

財産の種類何を見て書くかつまずきやすい点
土地路線価×面積(路線価地域)。路線価がない地域は固定資産税評価額×倍率。路線価・倍率は国税庁「財産評価基準書」で調べられる固定資産税の納税通知書の評価額をそのまま書くと、路線価地域では低く出る。検討表の段階では概算でよい
建物固定資産税評価額そのまま(国税庁タックスアンサーNo.4602)納税通知書の「価格」欄。課税標準額ではない
預貯金亡くなった日の残高。金融機関で残高証明書を取る葬儀費用のために亡くなる直前に引き出した現金も財産に含める
株式・投資信託証券会社の残高報告書。亡くなった日の終値等取引がない口座を見落としやすい。郵便物で確認
死亡保険金・死亡退職金受け取った額。500万円×法定相続人の数を引いた残りが課税対象非課税枠を引く前の額を書く欄と、引いた後を書く欄が分かれている場合がある
生前贈与亡くなる前3〜7年以内の贈与と、相続時精算課税を使った贈与子や孫の口座に親が入金していたものは、名義に関係なく財産と扱われることがある
債務・葬式費用借入金の残高、未払いの医療費・税金、葬儀社への支払い香典返し、法要の費用、墓地の購入費は葬式費用に入らない
※2026年9月時点。検討表の様式は税務署により細部が異なります。

分からない項目はどうするか

検討表は申告書ではないので、1円単位で正確である必要はありません。分からない欄は、概算であることを示して「約」を付けて書くか、「調査中」と書いて空欄にしても構いません。避けるべきなのは、確かめもせずに「0」や適当な数字を書くことです。後で申告することになったときに、検討表との食い違いが不要な確認を招きます。

親名義の不動産がどこに何筆あるか分からない場合は、市区町村の名寄帳か、法務局の所有不動産記録証明制度で一覧を取れます。取り方は親名義の不動産が全国どこにあるか1,600円で調べる方法にまとめています。

検討表の結果、基礎控除を明らかに下回るなら、署名して返送すれば手続きは終わりです。控えのコピーを1部取っておいてください。

申告が必要と分かったら:期限は10か月、提出先は亡くなった方の税務署

財産が基礎控除を超えるなら、相続税の申告書を「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」に提出し、同じ期限までに納税します(国税庁タックスアンサーNo.4205、2026年9月時点)。期限が土日祝に当たれば翌開庁日です。お尋ねが届くのが亡くなってから半年〜8か月ごろということは、封筒を開けた時点で残りは2〜4か月しかない、ということでもあります。

提出先は、相続人の住所ではなく、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署です。愛知・岐阜は名古屋国税局の管内で、国税庁のサイト「税務署の所在地などを知りたい方」から県ごとの一覧と管轄区域を確認できます(2026年9月時点)。名古屋市内は区ごとに税務署が分かれており、たとえば中区は名古屋中税務署、中村区は名古屋中村税務署、昭和区・瑞穂区は昭和税務署、熱田区は熱田税務署、千種区は千種税務署です。北区・東区・南区・緑区は区の中で管轄が分かれるので、住所の丁目まで見て一覧で確認してください。名古屋市内の窓口全体は名古屋市の相続相談先と管轄機関の一覧にまとめています。

岐阜県側も同じ仕組みで、岐阜市は市内で岐阜北税務署と岐阜南税務署に分かれます。行き先の整理は岐阜市の相続手続きガイドを参照してください。大垣市・多治見市など周辺の市の税務署は、各市のガイド記事に載せています。

税理士に頼むべきケース、頼まなくてよいケース

お尋ねが届いた家のすべてに税理士が必要なわけではありません。当社が線を引くとしたら、次のとおりです。

状況判断の目安
財産が基礎控除を明らかに下回る税理士は不要。検討表を自分で書いて返送すれば足りる
基礎控除の前後で微妙(土地の評価しだいで変わる)評価だけ税理士に確認する価値がある。申告不要と分かれば費用はそこまで
超えているが、配偶者の軽減や小規模宅地の特例で税額ゼロになりそう申告は必要。特例の要件判定と添付書類が多く、税理士に頼むのが一般的
土地が複数ある、貸家・農地・自社株がある、相続人の関係が複雑相続税に慣れた税理士に。評価の仕方で税額が大きく変わる
「相続についてのお尋ね」が届き、期限まで3か月を切っているすぐ税理士に。期限間近は受けてもらえない・加算報酬がかかることがある

税理士なら誰でもよいわけではなく、相続税の申告を年に何件も扱っている事務所かどうかで、土地の評価や特例の使い方に差が出ます。選び方は相続に強い税理士の選び方で詳しく書いています。

税理士報酬の相場

愛知県内の複数の税理士事務所が公開している料金表を当社で調べた範囲(2026年9月時点)では、相続税申告の基本報酬は遺産総額のおおむね0.5〜1%が目安で、遺産5,000万円台で25万円前後、1億円台で40万円前後、2億円台で70万円前後という例がありました。基本報酬の最低ラインは10万〜30万円程度で、事務所により幅があります。

これに加算がつくのが一般的です。相続人が1人増えるごとに10%前後、土地1か所(利用区分)につき2.5万〜5.5万円、非上場株式1社につき15万円前後、そして申告期限まで3か月を切っていると10%、1か月を切ると30%の加算、という構造が複数の事務所で共通していました。お尋ねが届いてから動く場合、この期限加算がかかりやすいので、見積もりの段階で確認してください。詳しい内訳は相続税理士報酬の相場と節約方法にまとめています。

「うちは申告が要るのか」がはっきりしない方へ
封筒を前にして、財産の合計が基礎控除を超えるのか、土地の評価をどう見ればよいのか、税理士に頼むほどなのかが分からない。30分の無料相談では、固定資産税の納税通知書と通帳を見ながら、検討表のどの欄に何を書くか、申告が必要そうかどうか、必要なら誰に頼むべきかを一緒に整理します。税額の計算や申告書の作成は税理士の仕事なので、必要な場合は相続税に慣れた税理士を紹介します。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)/LINE https://lin.ee/Z4JtTcc

よくある勘違い

  • 「届いた=税務調査が始まる」:違います。案内やお尋ねは申告要否の確認で、調査ではありません。ただし申告が必要なのに放置すれば、その先に調査があります。
  • 「届かなかった家は申告不要」:違います。案内が届くかどうかと申告義務は無関係です。基礎控除を超えていれば、案内が来なくても申告が必要です。
  • 「配偶者がすべて相続すれば税金はかからないから申告も不要」:配偶者の税額軽減で税額がゼロになっても、基礎控除を超えていれば申告は必要です。申告しないと軽減は使えません。
  • 「遺産分割がまとまっていないから申告できない」:まとまっていなくても、10か月の期限は動きません。法定相続分で分けたと仮定して期限内に申告し、後で修正する方法があります。
  • 「相続放棄したから関係ない」:放棄した人は財産を取得しないので納税はありませんが、基礎控除の人数には数えます。他の相続人の計算に影響します。

よくある質問

封筒に書かれた返送期限を過ぎてしまった。どうすればよいか

検討表の返送期限は税務署が便宜的に設けたもので、過ぎても罰則はありません。今から書いて返送すれば足ります。ただし申告が必要な家であれば、本当の期限は「亡くなった日の翌日から10か月」の方です。そちらを確認してください。

相続人が複数いる。誰が回答するのか

封筒の宛名になった人(通常は配偶者や同居していた子)が代表して1通を返送すれば足ります。相続人全員がそれぞれ出す必要はありません。他の相続人が持っている財産の情報(別居の子が管理していた口座など)は、集めてから書いてください。

検討表を出したあと、財産が追加で見つかったら

検討表は申告書ではないので、訂正の手続きはありません。追加分を含めても基礎控除以下なら何もしなくて構いません。超えるなら申告に進みます。すでに申告を済ませていた場合は修正申告になります。

「相続についてのお尋ね」に、税務署が把握していない口座を書くと損か

書かないことで得をすることはありません。税務署は金融機関に照会する権限を持っており、後から分かった場合の方が加算税が重くなります。基礎控除以下なら書いても税金はかかりませんし、超えるなら申告が必要なのは同じです。

まとめ

  • 「相続税の申告等についてのご案内」「相続についてのお尋ね」は、死亡届の情報が市区町村から税務署に通知される仕組みで、亡くなった方の住所地の税務署から届く。
  • 返送は義務ではないが、相続税がかからない家ほど返送した方が話が早い。
  • 本体は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と財産の合計を比べること。特例で税額ゼロでも、超えていれば申告は要る。
  • 申告が要るなら期限は亡くなった日の翌日から10か月。提出先は亡くなった方の住所地の税務署で、名古屋市内・岐阜市内は区や地域で分かれる。
  • 基礎控除を明らかに下回るなら税理士は不要。微妙、特例を使う、土地が複数、期限が近い、のどれかなら相続税に慣れた税理士へ。
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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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