介護費用・おむつ代は医療費控除の対象?施設と親の分を払った場合【2026年分】

年末、実家の茶の間で親の通帳を整理していたら、領収書の束が出てきた。訪問看護の領収書、特養から毎月届く請求書、ドラッグストアで買った紙おむつのレシート。「これ、確定申告で使えるのかな」と手が止まる方は少なくありません。

この記事では、2026年1月〜12月に払った介護の費用とおむつ代を取り上げます。医療費控除の対象になるもの・ならないものを、国税庁と厚生労働省の公表内容で整理しました。親の分を子が払った場合の考え方と、2027年の申告までに残しておく書類もまとめています。

この記事の結論
1. 介護保険のサービスは「医療に近いもの」が対象です。訪問看護や老健・介護医療院の費用は対象、特養は自己負担の2分の1。掃除や調理など生活援助中心の訪問介護、グループホームの費用は対象外です。
2. おむつ代は、医師の「おむつ使用証明書」か、要介護認定の主治医意見書を使った書類があれば対象になります。いまは控除1年目からこの書類が使えます。
3. 親の医療費・介護費を子が払った場合、生計を一にしていれば、実際に払った子の申告で控除できます。誰の申告に入るかは「誰のお金で払ったか」で決まります。
※2026年10月時点。出典:国税庁タックスアンサーNo.1120・1125・1127、国税庁質疑応答事例
目次

医療費控除のしくみ:「10万円」か「所得の5%」を超えた分が対象

医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に払った医療費が一定の額を超えたときの制度です。超えた分を、所得から差し引けます。払った医療費がそのまま戻るわけではありません。所得が減った分に応じて、所得税が少なくなるしくみです。

計算は次の3段階です。

  • 払った医療費の合計から、あとで戻ってきたお金を引く(健康保険の高額療養費、介護保険の高額介護サービス費、保険会社から受け取った入院給付金など)
  • そこから「10万円」を引く。ただし1年の所得の合計(総所得金額等)が200万円未満の人は、10万円ではなく「所得の5%」を引く
  • 残った額が控除額。上限は200万円

年金だけで暮らす65歳以上の方は、この「5%」に当たることが多くあります。年金には「公的年金等控除」という差し引きがあります。65歳以上で年金の収入が330万円未満なら、110万円が引かれます(年金以外の所得が1,000万円以下の場合)。たとえば年金収入が200万円なら、所得は90万円。その5%の4万5,000円を超えた分が控除の対象です。医療費が10万円に届かなくても対象になりうるのは、このためです。

数えるのは「払った年」です。2026年12月に受けた治療でも、払ったのが2027年1月なら2027年分になります。

介護サービスの費用:対象になるもの・ならないもの早見表

介護保険のサービスは、「医療に近いもの」は対象、「暮らしの手助け」は原則対象外、という分け方です。自宅で受けるサービスは、ケアマネジャーが作るケアプラン(介護サービスの利用計画)に沿って受けていることが前提になります。

サービス・施設医療費控除ひとこと
訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ(デイケア)、居宅療養管理指導(医師や薬剤師などが自宅に来て行う療養の指導)、医療系のショートステイ(短期入所療養介護)対象自己負担分が対象
訪問介護(身体介護など)、訪問入浴、デイサービス(通所介護)、福祉系のショートステイ(短期入所生活介護)、小規模多機能型居宅介護(通い・泊まり・訪問を組み合わせるサービス)条件つきで対象同じ月のケアプランに、上の段の医療系サービスが入っている場合だけ
訪問介護のうち生活援助中心のもの(掃除・洗濯・調理など)対象外医療系サービスと一緒に使っていても対象外
福祉用具のレンタル対象外―
認知症グループホーム、介護付き有料老人ホームの介護費(特定施設入居者生活介護)対象外―
介護老人保健施設(老健)、介護医療院対象介護費・食費・居住費の自己負担額の全額
特別養護老人ホーム(特養。地域密着型を含む)2分の1が対象介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1
施設の日常生活費(理美容代など)、特別なサービスの費用対象外どの施設でも対象外
出典:国税庁タックスアンサーNo.1125・No.1127(令和8年4月1日現在法令等)をもとに作成。2026年10月時点。

「条件つきで対象」になるかどうかは、ケアマネジャーから毎月渡される「サービス利用票」に、医療系サービスが載っているかで決まります。迷ったら、その月の利用票を見てください。

金額は、事業者の領収書で確かめられます。介護サービスの領収書には、原則として「医療費控除の対象となる金額」が書かれています。自分で計算し直す場面は、多くありません。

デイケアなどに通う交通費は、対象になる自己負担がある場合で、通常必要なものに限って対象です。タクシー代は電車やバスが使えない場合を除いて対象外、自家用車のガソリン代や駐車場代も対象外です。

施設の費用:老健・介護医療院は全額、特養は半分

施設に入っている場合は、施設の種類で扱いが分かれます。

  • 老健・介護医療院:介護費・食費・居住費の自己負担額が全額対象
  • 特養(地域密着型を含む):同じ自己負担額の2分の1が対象
  • どの施設も:理美容代などの日常生活費や、特別なサービスの費用は対象外

たとえば特養の自己負担(介護費・食費・居住費の合計)が月12万円なら、対象は月6万円、1年で72万円です。施設の領収書にも、原則として対象額が書かれています。

高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合は、その分を差し引きます。特養では、払い戻された額の2分の1に当たる額を差し引きます。

有料老人ホームやグループホームの月々の費用は、国税庁が示す対象施設の一覧に入っていません。介護付きホームの介護サービス費(特定施設入居者生活介護)も対象外とされています。ただ、ホームの中で医師の診察を受けた代金や薬代は、病院にかかったときと同じく医療費として数えられます。施設ごとの月額の目安は老人ホーム・介護施設の費用の記事で整理しています。

おむつ代:医師の証明書か、主治医意見書の書類があれば対象

紙おむつの購入費や貸おむつの賃借料は、条件を満たせば医療費控除の対象です。条件は、病気やけがでおおむね6か月以上寝たきりで、医師の治療を受けていて、おむつが必要と認められること。これを書類で示します。

使える書類どこで出してもらうか使える場面
おむつ使用証明書寝たきりの原因の病気を治療している医療機関の医師控除1年目・2年目以降とも
主治医意見書の内容を市区町村が確認した書類、または主治医意見書の写し要介護認定を受けた市区町村の介護保険の窓口1年目:その年の要介護認定と、続けて受けた認定の有効期間を合わせて6か月以上
2年目以降:その年に意見書が作られていなければ、有効期間13か月以上の認定のもの
出典:国税庁質疑応答事例「寝たきりの者のおむつ代」、厚生労働省「おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて」。2026年10月時点。

主治医意見書は、要介護認定のときに主治医が市区町村に出す書類です。2025年1月以降に出す申告(2024年分以後)では、おむつ代の控除1年目からこの書類が使えます。それまでは2年目以降に限られていました。

市区町村の確認では、意見書の「寝たきりの程度」や「失禁への対応」の欄を見ます。横浜市の例では、条件は2つです。寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)がB1〜C2であること。失禁への対応の欄に「尿失禁」か「カテーテル」のチェックがあること。書類の名前や申請の方法は市区町村で違うので、窓口に確認してください。条件に合わないときは、医師に「おむつ使用証明書」を頼みます。

おむつを買ったお店のレシートや領収書は、年ごとにまとめてとっておきます。証明書は申告書に添えるか、見せるのが原則です。証明の日付・名称・発行した医療機関名などを明細書の欄外に書けば、添付を省けます。その場合も、領収書と証明書は5年間保管します。

親の分を子が払ったとき:「生計を一にする」の考え方

医療費控除は、本人だけでなく「生計を一にする配偶者や親族」のために払った医療費も対象です。親の医療費や介護費を子が払っていれば、子の申告で控除できる場合があります。

「生計を一にする」とは、日常の生活費を共にしている、という意味です。国税庁の考え方は次のとおりです。

  • 同じ家に住んでいる:明らかに互いに独立した暮らしをしている場合を除き、生計を一にするとされます
  • 離れて住んでいる:いつも生活費や療養費を送っている、または休みのたびに一緒に暮らしている、といった場合は生計を一にするとされます

国税庁の質疑応答事例に、郷里で一人暮らしをする母親の医療費を子が払った例があります。答えは「生計を一にしていれば、払った子の医療費控除の対象になる」です。親の所得がいくら以下、という数字の条件は示されていません。

気をつけたいのは、控除を使えるのは「実際に払った人」だという点です。

  • 親の口座や年金から払った分は、親の医療費控除になります
  • 子が自分のお金で払った分は、子の申告で使える可能性があります
  • 家族が付き添い、付添料の名目でお金を渡しても、その分は対象外です

親の年金が少なく、もともと所得税がかかっていない場合、親の申告で医療費控除をしても戻る税金はありません。だからといって、親のお金で払ったものを子の分として申告することはできません。どちらの申告に入るかは、支払いの事実で決まります。

亡くなった親の入院費を、亡くなったあとに子が払うこともあります。この場合、治療を受けた時点で生計を一にしていれば、子の医療費控除の対象になります。親の準確定申告(亡くなった人の最後の確定申告)には入れられません。

「うちは生計を一にしていると言えるか」「どちらの申告に入れるか」は、送金の状況や暮らし方で変わります。個別の判断は、提携の税理士が確認します。

必要な書類と、領収書の残し方

申告では、領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作り、確定申告書に添えます。領収書そのものは出しませんが、申告期限から5年間は自宅で保管し、求められたら見せる必要があります。

健康保険から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を添えると、明細書の記入が簡単になります。その分の領収書は、保管しなくてよくなります。マイナンバーカードでe-Taxを使う場合は、マイナポータルから医療費の情報を取り込むこともできます。介護サービスの領収書やおむつのレシートは、これとは別に保管し、明細書に書き足す前提で準備しておくと安心です。

残しておくものは次のとおりです。

  • 病院・薬局の領収書(医療費のお知らせがあれば、それと見比べる)
  • 介護サービス事業者・施設の領収書(「医療費控除の対象額」の欄があるもの)
  • おむつのレシートと、おむつ使用証明書または市区町村の確認書類
  • 高額療養費・高額介護サービス費の通知(差し引く額が分かるもの)
  • 通院の交通費のメモ(日付・行き先・金額)
  • 家族が払った場合は、誰の口座・財布から払ったかが分かるもの

封筒を「父」「母」と人ごとに分け、届いた順に入れていくだけでも、2月の作業がずっと楽になります。

年金暮らしの親が申告するとき・セルフメディケーション税制との選択

公的年金の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告をしなくてよい制度があります。ただ、これは「しなくてもよい」という意味です。医療費控除で税金を戻してもらうには、申告(還付申告)が必要です。

還付のための申告は、確定申告の期間と関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せます。2026年分なら、2027年1月から出せます。過去の年の分も、5年以内なら出せます。申告が要る人・要らない人の分かれ目は年金受給者の確定申告の記事で詳しく整理しています。

市販薬が多い年は「セルフメディケーション税制」と比べる

対象の市販薬を年12,000円を超えて買った人は、「セルフメディケーション税制」を選ぶこともできます。控除額は12,000円を超えた分で、上限は88,000円。健康診断や予防接種などを受けていることが条件です。

通常の医療費控除とは、どちらか一方しか選べません。申告したあとで選び直すこともできません。介護費やおむつ代を足すと金額が大きくなりやすいので、両方を計算して比べてから選んでください。

今日できる一歩

1. 2026年1月以降の病院・薬局・介護サービス・施設の領収書を集め、人ごとに封筒を分ける。

2. 介護サービスの領収書に「医療費控除の対象額」の欄があるか確かめる。見当たらなければ、事業者に電話で聞く。

3. おむつ代がある場合は、要介護認定を受けた市区町村の介護保険の窓口に「おむつ代の医療費控除の確認書類は出してもらえるか」と問い合わせる。

相談現場から

よく伺うのは、「親の介護費を払っているから、全部自分の控除にできると思っていた」というお話です。実際には、施設の利用料が親の年金口座から引き落とされていて、親の分だった、ということがあります。特養は半分だけ、生活援助中心の訪問介護は対象外と知らずに、領収書の合計をそのまま書いてしまう方もいます。領収書の「対象額」の欄と、引き落とし口座を一度確かめるだけで、こうした食い違いの多くは防げます。

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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の国税庁・厚生労働省の公開情報に基づく一般的な説明です。セルフメディケーション税制は国税庁タックスアンサーNo.1129、還付申告はNo.2030、亡くなった親の医療費は質疑応答事例「死亡した父親の医療費」を参照しました。実際に控除が使えるか、どなたの申告に入れるかは個別の事情で変わります。申告の前に、税務署または税理士にご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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