親が亡くなって数日、年金事務所から「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」という長い名前の書類が届いた。あるいは、市役所で死亡届を出したときに「年金のほうは年金事務所へ」と言われただけで、何も届かない。どちらも珍しくありません。
この紙は「亡くなった方の年金を止める届」と「亡くなった月までの未払い分を遺族が受け取る請求」が1枚になったものです。この記事では、死亡届が省略できる条件、未支給年金を請求できる人の順位、そろえる書類、5年の期限、遺族年金との違い、そして受け取った未支給年金が相続財産ではなく受け取った人の一時所得になる点まで、愛知・岐阜の窓口の探し方と合わせて整理します。
先に結論:止める手続きと、もらう手続きの2つ
- 年金証書と「基礎年金番号」を探す。見つからなければ年金振込通知書やねんきん定期便でも代用できます。
- 年金事務所に電話して、死亡届が必要かを確認する。マイナンバーが年金機構に登録済みなら、死亡届(報告書)は原則省略できます。
- 未支給年金は「同居していた(生計が同じだった)遺族」だけが請求できる。配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順です。
- 期限は5年。ただし放置すると亡くなった後の月の年金が振り込まれ、後で返す手間が増えます。
- やってはいけないこと:亡くなった方の口座に振り込まれた年金を「そのまま使う」こと。死亡後の分は返還対象です。
「死亡届が省略できる」と聞いて安心してそのままにすると、未支給年金の請求まで忘れてしまいます。省略できるのは止める届のほうだけで、もらう請求は自分で出さないと1円も振り込まれません。ここが一番多い勘違いです。
この書類は何か:年金は「亡くなった月」まで支払われる
公的年金は、亡くなった月の分まで受け取る権利があります。ところが年金は「2か月分を後払い」で偶数月の15日に振り込まれる仕組みなので、亡くなった時点で必ず1〜2か月分の未払いが残ります。たとえば5月に亡くなった場合、4月分と5月分は6月15日に振り込まれる予定だったお金です。この「本人が受け取れなかった分」が未支給年金で、一定の遺族が代わりに受け取れます。
一方で、年金機構が死亡を把握しないと、亡くなった翌月以降の年金も振り込まれ続けます。これは返さなければならないお金です。だから「止める届(年金受給権者死亡届)」と「もらう請求(未支給年金請求書)」が1枚にまとまっています。
厚生年金10日以内・国民年金14日以内
期限5年・生計同一の遺族のみ
配偶者 → 子 → 父母 → 孫 → 祖父母 → 兄弟姉妹 → その他3親等内の親族
いずれも「亡くなった方と生計を同じくしていた」ことが条件
死亡届(報告書)が要る人・要らない人
日本年金機構にマイナンバーが収録されている方については、年金受給権者死亡届(報告書)の提出は原則不要です(日本年金機構「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」2026年9月時点)。市区町村に死亡届を出すと、その情報が住民基本台帳ネットワークを通じて年金機構に届くためです。
マイナンバーが収録されているかどうかは、本人には分かりにくいのが実情です。年金事務所に電話で「基礎年金番号」を伝えて確認するのが確実です。収録されていない場合は、死亡日の翌日から数えて厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内に死亡届を出します。実務上は、確認の手間をかけるより、未支給年金の請求書と一緒に死亡届の欄も埋めて出してしまう方が早いことが多く、年金事務所でもそう案内されます。
| 状況 | 死亡届(報告書) | 未支給年金請求 |
|---|---|---|
| マイナンバー収録済み・同居遺族あり | 原則不要 | 必要 |
| マイナンバー未収録・同居遺族あり | 必要(兼用の1枚で) | 必要 |
| 生計同一の遺族がいない(一人暮らしで別居の子のみ等) | 収録状況による | 別居でも生計同一を証明できれば可。できなければ請求不可 |
| 障害基礎年金・遺族基礎年金のみ受給 | 提出先が年金事務所ではなく市区町村役場になる場合あり | |
未支給年金を請求できる人:順位と「生計同一」
請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた、(1)配偶者 (2)子 (3)父母 (4)孫 (5)祖父母 (6)兄弟姉妹 (7)その他3親等内の親族、の順です(日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」2026年9月時点)。上の順位の人がいれば、下の順位の人は請求できません。同順位が複数いる場合(子が3人など)は、1人が代表して請求し、その1人に全額が支払われます。
ここで大事なのは「相続人かどうか」ではなく「生計が同じだったか」です。相続の場面では長男も次男も同じ相続人ですが、未支給年金は同居して家計を共にしていた次男だけが請求でき、別居の長男は請求できない、ということが普通に起きます。逆に、法律上の相続人でない内縁の配偶者でも、生計同一なら請求できる可能性があります。年金の世界の「配偶者」には事実婚が含まれるためで、詳しくは内縁の妻・夫は遺族年金をもらえる?で説明しています。
別居していた場合でも、生活費の仕送りをしていた、施設の費用を負担していたなど、経済的なつながりがあれば「生計同一関係に関する申立書」を添えて請求できます。住民票の住所が亡くなった方と同じでない場合は、亡くなった方と生計を共にしていたことについて第三者(民法上の3親等内の親族以外の方)の証明を受けた書類も併せて出す扱いです(日本年金機構FAQ、2026年9月時点)。第三者証明は、民生委員、施設の担当者、勤務先などにお願いするケースが多いです。
必要書類と出し方
| 書類 | 何のため・どこで取るか |
|---|---|
| 年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書 | 届いた案内に同封。なければ年金機構サイトからダウンロード、または年金事務所で受け取る |
| 亡くなった方の年金証書 | 基礎年金番号と年金コードの確認用。紛失していれば「見つからない」と申し出れば進められる |
| 死亡の事実がわかる書類 | 戸籍謄本(死亡の記載があるもの)、死亡診断書のコピーなど。マイナンバー収録済みなら省略できる場合あり |
| 続柄がわかる書類 | 戸籍謄本・戸籍抄本など。請求者と亡くなった方の関係を示す |
| 生計を同じくしていたことがわかる書類 | 世帯全員の住民票の写し(同居の場合)。別居なら生計同一関係に関する申立書+第三者証明 |
| 請求者の預金通帳(コピー可) | 振込先。亡くなった方の口座は使えない。請求者本人名義の口座 |
| 請求者のマイナンバーがわかるもの | マイナンバーカード、または通知カード+本人確認書類。記入すれば住民票等を省略できる場合がある |
提出先は、亡くなった方の住所地ではなくお近くの年金事務所、または街角の年金相談センターです。郵送でも受け付けます。相続手続きで戸籍を集める予定があるなら、法務局で法定相続情報一覧図を先に作っておくと、年金事務所にも戸籍の代わりに出せて、原本を持ち歩かずに済みます。
亡くなった方が受け取っていた年金が複数(老齢基礎年金と老齢厚生年金、加えて企業年金など)ある場合でも、国の年金については1枚の請求書でまとめて処理されます。振込までは、書類に不備がなければおおむね2〜3か月が目安です。
期限は5年。ただし「急がなくていい」わけではない
未支給年金を受け取る権利は、年金の支払日の翌月の初日から5年で時効になります(日本年金機構「年金の時効」2026年9月時点)。四十九日を過ぎてから落ち着いて出しても、時効の心配はありません。
それでも早めに出した方がいい理由が2つあります。1つは、死亡届が年金機構に届くまで年金が振り込まれ続け、後日「返納」の通知が来ること。亡くなった方の口座は凍結されているのが普通なので、返納の手続きだけ別に増えます。もう1つは、遺族年金の請求と同時に進めると、戸籍や住民票を一度そろえるだけで済むことです。
遺族年金との違い。同時に確認すべきこと
未支給年金は「亡くなった方がもらうはずだった過去の分」で、一度きりの支払いです。遺族年金は「残された家族がこれから受け取る年金」で、毎年続きます。まったく別の制度なので、片方を出したからもう片方も自動で処理される、ということはありません。
| 未支給年金 | 遺族年金 | |
|---|---|---|
| 何のお金か | 亡くなった方が受け取れなかった1〜2か月分(+請求漏れがあれば最大5年分) | 遺族の生活のための年金。以後継続 |
| 誰がもらえるか | 生計同一の遺族(配偶者→子→父母…の順) | 主に配偶者・子。年齢・子の有無・収入要件あり |
| 税金 | 受け取った人の一時所得(所得税) | 非課税 |
| 請求期限 | 5年 | 5年(遅れると過去分が受け取れなくなる) |
亡くなったのが夫で、妻が残された場合、夫が厚生年金に加入していた期間があれば遺族厚生年金の対象になる可能性が高いです。妻自身が老齢年金を受け取っていても、組み合わせ方で受け取れる額が変わります。未支給年金の請求で年金事務所に行くなら、その場で「遺族年金の対象になるか」を必ず聞いてください。予約の際に「未支給年金と遺族年金の相談」と伝えておくと、両方の書類を用意してもらえます。
受け取った未支給年金は「相続財産ではない」
未支給年金は、遺族が自分の名前で請求して自分の口座に受け取る、遺族固有の権利です。亡くなった方の財産(相続財産)には含まれません。国税庁も「未支給の国民年金は相続税の課税対象にならない」と整理しています(国税庁 質疑応答事例「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」2026年9月時点)。
相続財産でないということは、次の3つを意味します。
- 遺産分割協議書に書かなくてよい。請求した人のお金なので、兄弟で分ける義務はありません(家族の話し合いで分けるのは自由です)。
- 相続放棄をしていても受け取れる。相続財産ではないので、放棄の効果に影響しません。
- 受け取った人の一時所得になる。一時所得には年50万円の特別控除があるため、未支給年金が1〜2か月分(数十万円)であれば、他に一時所得がなければ課税されないことがほとんどです。ただし、請求漏れで数年分をまとめて受け取った場合や、同じ年に生命保険の満期金など他の一時所得がある場合は確定申告が必要になることがあります。
なお、亡くなった方の「準確定申告」(1月1日から死亡日までの所得の申告)では、未支給年金は含めません。亡くなった方の所得ではないからです。税額の判断は個別事情で変わるので、迷う場合は税理士に確認してください。
愛知・岐阜の年金事務所の探し方と予約
年金事務所は「お近く」であればどこでも構いません。亡くなった方の住所地に縛られないので、請求者が通いやすい事務所を選べます。愛知県内には熱田・一宮・大曽根・岡崎・笠寺・刈谷・昭和・瀬戸・鶴舞・豊川・豊田・豊橋・中村・名古屋北・名古屋西・半田の各年金事務所と、街角の年金相談センター(栄・名古屋)があります。岐阜県内は大垣・岐阜北・岐阜南・高山・多治見・美濃加茂の各年金事務所と、街角の年金相談センター岐阜です(日本年金機構「全国の相談・手続き窓口」2026年9月時点)。
窓口相談は予約制が基本です。予約受付専用電話 0570-05-4890(ナビダイヤル。月〜金 8時30分〜17時15分)で翌日以降の予約が取れ、インターネット予約も使えます。予約時に亡くなった方の基礎年金番号を聞かれるので、年金証書か通知書を手元に置いて電話してください。窓口の受付時間は月〜金 9時〜16時で、事務所によって週初の延長開所日(18時まで)と第2土曜の開所日があります(日本年金機構「予約相談について」2026年9月時点)。
名古屋市内で相続手続き全体の管轄機関を確認したい方は名古屋市の相続相談はどこにする?管轄機関の一覧を、岐阜県内の方は市ごとの手続きガイドを参照してください。
企業年金・共済年金は別の手続き
年金事務所で処理されるのは国の年金(国民年金・厚生年金)だけです。亡くなった方が次のような年金を受け取っていた場合は、それぞれ別の窓口に死亡の連絡と未支給分の請求が必要です。
- 企業年金(確定給付企業年金・厚生年金基金・確定拠出年金):勤めていた会社の企業年金基金、または企業年金連合会。通帳の振込名で確認できます。確定拠出年金は「死亡一時金」として別の扱いになり、こちらは相続税の対象(みなし相続財産)です。
- 共済年金(公務員・私学教職員):2015年10月の一元化後は厚生年金として年金事務所でも扱いますが、一元化前の期間に関する部分は国家公務員共済組合連合会、地方職員共済組合、公立学校共済組合、私学共済などに連絡します。
- 個人年金(生命保険会社の年金):保険会社へ。こちらは年金受給権が相続財産として評価される場合があります。
「どこから振り込まれていたか分からない」ときは、亡くなった方の通帳で偶数月15日前後の入金を全部書き出してください。振込名義がそのまま連絡先になります。
こういう場合は一度専門家に聞いた方がよい/聞かなくてよい
同居していた配偶者や子が、案内どおりに書類をそろえて出すだけなら、専門家は要りません。年金事務所の窓口は丁寧で、記入も手伝ってくれます。相談料を払う必要はないケースです。
一方で、次のどれかに当てはまるなら、年金事務所に行く前に一度相談した方が結果的に早く終わります。
- 別居していて、生計同一の証明(第三者証明)が必要になりそう
- 内縁関係で、戸籍上は他人になっている
- 相続放棄を検討中で、何を受け取ってよいか判断がつかない
- 亡くなった方が年金を請求していなかった(受給資格があるのに未請求)疑いがある。この場合、本来の年金を5年分さかのぼって遺族が請求できることがあり、金額が大きくなります
- 遺族年金の対象になるかどうかで、これからの生活設計が変わる
よくある質問
案内が届かないのですが、放置してよいですか
届かないことは普通にあります。案内が来なくても未支給年金の請求は必要です。年金機構のサイトから請求書を印刷するか、年金事務所で受け取って出してください。
亡くなった翌月に年金が振り込まれました。どうすればよいですか
亡くなった月の分までは受け取ってよいお金ですが、翌月以降の分は返還対象です。使わずに置いておき、年金事務所からの返納の案内に従ってください。口座が凍結されている場合は、その旨を年金事務所に伝えると納付書での返納など方法を案内されます。
同居の子が2人います。2人で分けて請求できますか
請求は1人が代表して行い、その人に全額が支払われます。受け取った後で家族の間で分けることは自由です。
年金証書が見つかりません
基礎年金番号が分かれば手続きできます。年金振込通知書、年金額改定通知書、ねんきん定期便のいずれかに記載があります。どれもなければ、年金事務所で亡くなった方の氏名・生年月日・住所から照会してもらえます。
未支給年金を受け取ったら確定申告が必要ですか
受け取った人の一時所得になります。一時所得には50万円の特別控除があるので、1〜2か月分の未支給年金だけで、他に一時所得がなければ申告不要となることが多いです。数年分をまとめて受け取った場合や、同じ年に他の一時所得がある場合は税理士に確認してください。
まとめ
- 届いた紙は「止める届」と「もらう請求」の2つが1枚になったもの。省略できるのは止める届だけ。
- 未支給年金を請求できるのは、生計を同じくしていた遺族。配偶者→子→父母の順で、相続人かどうかとは別。
- 期限は5年だが、放置すると返納の手間が増える。遺族年金の確認と一緒に済ませるのが最短。
- 受け取った未支給年金は相続財産ではなく、受け取った人の一時所得。協議書に書く必要はなく、相続放棄をしていても受け取れる。
- 企業年金・共済・個人年金は年金事務所では処理されない。通帳の振込名から連絡先を割り出す。
あわせて読みたい
- 内縁の妻・夫は遺族年金をもらえる?|事実婚の2つの条件・請求の4ステップ
- 相続手続き、自分でできる人・できない人|”戸籍の枚数”で決まる判定表
- 岐阜県南部の相続相談先マップ|市別ガイド 管轄機関とおくやみ窓口の一覧
本記事の制度・期限・窓口情報は2026年9月時点の日本年金機構および国税庁の公表内容にもとづく一般的な取り扱いです。必要書類や提出先は個別の状況で異なり、税金の扱いは受け取る金額や他の所得との関係で変わります。実際に手続きを始める前に、年金事務所または税理士に直接ご確認ください。