10月15日の朝、銀行で通帳記入をすると、年金の振込額が前回と少し違っている。家に戻ると、日本年金機構から「年金振込通知書」のはがきが届いていた。
2026年度は、年金額の引き上げに加えて、働きながら年金を受け取る人のルールも変わりました。この記事では、すでに年金を受け取っている方と、これから受け取る60代の方に向けて、2026年度の変更点を順に整理します。数字はすべて2026年10月時点で、日本年金機構と厚生労働省の公表内容を確かめたものです。
この記事の結論
- 2026年度の年金は、国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げ。国民年金の満額は月70,608円です。
- 働きながら厚生年金を受け取る人は、年金が減り始める基準が月51万円から月65万円に上がりました(2026年4月から)。
- 振込日は偶数月の15日。次は12月15日(火)、その次は2027年2月15日(月)です。
2026年度の年金額はいくら変わったか
年金額は、物価や賃金の動きに合わせて毎年度見直されます。2026年度(4月分から)は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分=働いていた時の給与に応じた部分)が2.0%の引き上げになりました。
| 項目(月額) | 2025年度 | 2026年度 | 差 |
|---|---|---|---|
| 国民年金(老齢基礎年金・満額) | 69,308円 | 70,608円 | +1,300円 |
| 厚生年金(夫婦2人分の基礎年金を含む標準的な額) | 232,784円 | 237,279円 | +4,495円 |
| 老齢年金生活者支援給付金(基準額) | 5,450円 | 5,620円 | +170円 |
(国民年金の満額は昭和31年4月2日以後生まれの方の額。昭和31年4月1日以前生まれの方は月70,408円。厚生年金の標準的な額は、平均の給与が月45.5万円で40年働いた場合の水準。日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」をもとに作成)
新しい額で最初に振り込まれたのは、2026年6月15日(4月・5月分)です。6月上旬には、改定後の額を知らせる「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」が送られています。
ただし、表の額は「満額」や「標準的な例」です。実際の額は、保険料を納めた期間や働いていた時の給与で一人ひとり違います。年金生活者支援給付金(所得が一定以下の方に年金と一緒に支払われる給付)も、基準額どおりにならない場合があります。ご自身の額は、6月に届いた年金額改定通知書で確かめるのが確実です。
働きながら年金を受け取る人へ|在職老齢年金の基準が月65万円に
60歳以上で会社に勤めて厚生年金に入りながら、老齢厚生年金を受け取っている方には、「在職老齢年金」という仕組みがあります。給与と年金の合計が一定の額を超えると、年金の一部が止まる仕組みです。
2025年6月に成立した年金制度改正法により、この基準が2026年4月から月65万円に上がりました。2025年度は月51万円でした。
- 計算に使う2つの額:老齢厚生年金の月額(配偶者などがいる場合の加算分は除く)と、月の給与に1年間の賞与の12分の1を足した額
- 合計が65万円以下:年金は全額受け取れる
- 合計が65万円を超える:超えた額の半分が、年金から止まる
- 老齢基礎年金(国民年金):この仕組みの対象外で、減らない
日本年金機構の例では、年金が月10万円、給与と賞与を合わせて月46万円の方の場合、合計は56万円です。2025年度の基準(51万円)では月2.5万円が止まっていましたが、2026年4月からは65万円以下なので、10万円を全額受け取れます。
見直しで受け取る額が変わったかどうかは、手元の年金額改定通知書の「支給停止額」の欄で確かめられます。なお、65万円という基準は毎年度、賃金の動きに合わせて見直されます。
これから年金を受け取る60代の方には、受け取りが始まる年齢の3か月前に、日本年金機構から年金請求書が届きます。請求は、その年齢の誕生日の前日から出せます。「働き続けると年金が減るから」と仕事量を抑えていた方は、新しい基準で一度計算し直す価値があります。
2026年10月に始まったこと、2027年以降の予定
2026年10月1日から、パートやアルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に入る条件のうち、「月の賃金が8.8万円以上」という要件がなくなりました。いわゆる「106万円の壁」と呼ばれていたものです。いまは、週20時間以上働くこと、従業員51人以上の企業であること、学生でないことが条件です(日本年金機構の案内)。
60代でパートを続けている方は、勤め先から加入の案内が来ることがあります。厚生年金に入ると保険料がかかる一方、将来の厚生年金が増えます。また、年金を受け取りながら厚生年金に入れば、前の章の在職老齢年金の計算の対象になります。
同じ改正法には、2027年以降に順に始まる内容も含まれています。いずれも法律で時期が定められた予定で、主なものは次のとおりです。
| 時期(予定) | 主な内容 |
|---|---|
| 2027年9月 | 厚生年金の保険料を計算する給与の上限を、月65万円から68万円へ(2028年9月に71万円、2029年9月に75万円) |
| 2027年10月 | パートの社会保険加入の対象を、従業員36〜50人の企業にも広げる(その後、2029年10月に21〜35人、2032年10月に11〜20人、2035年10月に10人以下) |
| 2028年4月 | 遺族厚生年金の男女差の見直し、子どもがいる場合の加算の見直しなど |
| 2029年10月 | 従業員5人以上の個人事業所を、業種にかかわらず対象に(すでにある事業所は当分の間対象外) |
(厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」をもとに作成。2026年10月時点)
すでに年金を受け取っている方の毎月の額に、すぐ影響する内容は多くありません。遺族年金の見直しは、配偶者を亡くした場合の受け取り方に関わるため、細かい内容が固まった段階で改めて確かめれば足ります。
年金の振込日カレンダー(2026年10月〜2027年8月)
年金は、偶数月の15日に、前の2か月分がまとめて振り込まれます。15日が土日や祝日のときは、その直前の平日に振り込まれます。
| 振込日 | 何月分か | メモ |
|---|---|---|
| 2026年10月15日(木) | 8月・9月分 | 介護保険料などの天引き額が変わる方に振込通知書 |
| 2026年12月15日(火) | 10月・11月分 | 年末の出費の前に入る |
| 2027年2月15日(月) | 12月・1月分 | |
| 2027年4月15日(木) | 2月・3月分 | 見込み |
| 2027年6月15日(火) | 4月・5月分 | 2027年度の額で最初の振込(見込み) |
| 2027年8月13日(金) | 6月・7月分 | 15日が日曜のため前の平日(見込み) |
(日本年金機構の「偶数月の15日。土日祝日のときは直前の平日」という決まりを暦に当てはめた日付です。2027年4月以降は見込みで、変わる場合があります)
「12月の年金で年末年始の支払いを」と考える方もいます。12月15日の振込の次は2月15日なので、2か月分を年明けまで持たせる計算で使い道を決めておくと安心です。
通知書が届いたら確かめる3つの点
年金の通知は、主に2種類です。「年金額改定通知書」は1年間の年金額を、「年金振込通知書」は1回ごとに振り込まれる額を知らせます。どちらも6月に届き、振込額が変わるときは10月などにも振込通知書が届きます。10月の振込通知書は、介護保険料などの天引き額が変わる方に送られます。
- 「年金支払額」と「控除後振込額」の差:差の中身は、介護保険料、医療の保険料、所得税、住民税です。振込額が減ったときは、年金そのものではなく、差し引かれる額が変わったことが多いです。
- 「前回支払額」との比較:振込通知書には前回の支払額も載っています。どの項目が変わったかを見比べられます。
- 「振込先」の金融機関・支店名:年金が入る口座がどこか、家族と共有するときに役立ちます。
介護保険料や医療の保険料、住民税の額は、市区町村が決めています。金額に疑問があるときは、市区町村から届いた通知書を見るか、市区町村の窓口に聞くのが近道です。通知書をなくした場合は、「ねんきんネット」(日本年金機構のインターネットサービス)で内容を見られます(利用には登録が必要です)。
秋には「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」が届く方もいます。日本年金機構は2026年9月に、2027年分の受け付けを始めたと案内しています。届いた方は、同封の案内にある期限までに出してください。
年金から差し引かれる税金・保険料の仕組み
ここでは一般的な仕組みだけを説明します。ご自身に当てはまるかどうかは、収入の内訳や家族の状況で変わります。
- 介護保険料:年金から天引き(特別徴収)されます。
- 後期高齢者医療保険料、または国民健康保険料(税):天引きの対象になっている方だけ差し引かれます。
- 所得税・復興特別所得税:支払額から社会保険料と各種の控除を引いた額に、5.105%を掛けた額が差し引かれます。
- 住民税・森林環境税:天引きの対象になっている方だけ差し引かれます。
確定申告についても、国の決まりを紹介しておきます。公的年金の収入が年400万円以下で、年金以外の所得が年20万円以下などの条件を満たす方は、所得税の確定申告をしなくてよい仕組みがあります。ただし、この場合でも医療費控除などで税金が戻る場合は、申告できます。また、所得税の申告が要らなくても、住民税の申告が必要になることがあります(国税庁の案内)。
ご自身の場合に申告が要るかどうか、どの控除が使えるかは、ここでは判断できません。気になる方は、源泉徴収票と年金の通知書を手元に置いて、税務署か税理士に確認してください。当社にご相談いただいた場合は、提携の税理士が確認します。
年金が入る口座が使えなくなったら|認知症と家族の困りごと
年金の制度とは別に、ご家族が困りやすいのが「年金が入る口座」の問題です。年金の受取口座は、受け取る本人名義の口座です。日本年金機構の届出用紙の記入例にも「口座名義(本人名義)」とあり、年金の記録と口座名義のフリガナが違うと振り込めないと案内されています。家族名義の口座を振込先にすることは、原則としてできません(日本年金機構の記入例)。
本人が認知症などで判断が難しくなり、銀行がそれを知ると、引き出しや解約が制限されることがあります。年金は毎回きちんと振り込まれるのに、家族が生活費や施設の費用に使えない、という状態になりかねません。銀行がどんなときに取引を止めるのか、その前にできる対策は認知症による口座凍結の記事にまとめています。
年金の振込口座に定期預金を置いている方も多いと思います。定期預金も、本人の意思が確認できないと、満期が来ても解約しにくくなります。元気なうちにできることは定期預金は認知症になると解約できない?の記事で整理しています。
すでに判断が難しくなっている場合、成年後見人など(本人に代わって財産を管理する人)が付けば、年金の受取口座の変更などを届け出られます。後見人が管理する口座に変える場合も、口座名義に本人の氏名が入っている必要があります。任意後見人(元気なうちに本人が契約で選んだ人)の場合は、契約の中に年金の手続きが含まれているときに限られます(日本年金機構の案内)。後見の手続きや費用の目安は凍結された口座を解除するにはの記事をご覧ください。
また、年金を受け取っていた方が亡くなったときは、亡くなった月までの分で受け取っていない年金(未支給年金)を、家族が請求することになります。流れは未支給年金の案内が届いたらの記事で説明しています。
今日できる一歩
1. 通知書を2枚並べる。6月の「年金額改定通知書」と、10月に届いた「年金振込通知書」を並べ、振込額が変わった理由が天引きの額かどうかを確かめます。
2. カレンダーに書き込む。12月15日(火)と2027年2月15日(月)に「年金」と書いておくと、年末年始のお金の段取りが立てやすくなります。
3. 口座を家族と共有する。年金が入る銀行と支店名を、家族に伝えておきます。暗証番号は書き残さず、銀行名と支店名だけで十分です。
相談現場から
よく伺うのは「年金は上がったと聞いたのに、振込額が減った」というお話です。通知書を一緒に見ると、多くは介護保険料や住民税など、差し引かれる額が変わったことによるものです。もう一つ多いのが、親の入院をきっかけに、年金がどの口座に入っているのか家族が知らないと分かる場面です。年金の額より先に、「どこに入って、誰が使えるか」を家族で話しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
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参考にした公的情報
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の見直し」
- 厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」(PDF)
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 日本年金機構「年金振込通知書」の見方
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 日本年金機構「年金受給権者 受取機関変更届」記入例(PDF)
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。年金額・振込額は一人ひとり異なります。ご自身の年金については年金事務所に、税金については税務署または税理士にご確認ください。2027年以降の内容は予定であり、変わることがあります。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
