高齢者を狙う詐欺の手口2026|警察官を名乗る電話・還付金・国際電話への備え

平日の午前10時。自宅の固定電話に「+1」から始まる見慣れない番号が表示され、出ると「こちら〇〇警察署です。あなたの口座が犯罪に使われています」と告げられる。2026年、こうした電話から始まる詐欺の被害が全国で大きく増えています。

この記事では、警察庁と愛知県警察が公表している最新の数字をもとに、いま多い手口と、電話でよく言われる決まり文句を整理します。そのうえで、家族で決めておける約束と、電話の設定でできる対策をまとめました。

この記事の結論
1. 2026年に被害額が大きいのは、SNS型投資詐欺と、警察官をかたる「ニセ警察詐欺」です。電話で「逮捕」「口座の調査」と言われたら、いったん切ってください。
2. 「お金を動かす前に、家族に一本電話」を家族の約束にしておくと、多くの手口はそこで止まります。
3. 固定電話は、留守番電話と国際電話の休止(無料)で、犯人と話す機会そのものを減らせます。
目次

2026年の特殊詐欺、最新の数字と多い手口

警察庁が2026年9月4日に公表した集計(2026年1〜7月末・暫定値)では、特殊詐欺の認知件数(警察が把握した件数)は26,051件、被害額は2,108.1億円でした。前年の同じ時期より、件数は16.6%、被害額は42.9%増えています。この集計には、SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺も含まれています。

手口別に並べると、次のとおりです。

手口主な入口認知件数被害額
SNS型投資詐欺SNS・投資の広告6,566件881.2億円
ニセ警察詐欺(警察官をかたる)電話・ビデオ通話5,422件617.1億円
SNS型ロマンス詐欺SNS・マッチングアプリ3,037件293.2億円
架空料金請求詐欺SMS(携帯のショートメッセージ)・メール・電話3,688件86.5億円
オレオレ詐欺電話2,350件84.2億円
還付金詐欺電話1,757件40.7億円
キャッシュカード詐欺盗電話+自宅への訪問908件9.8億円
預貯金詐欺電話+自宅への訪問587件5.4億円

(出典:警察庁「令和8年7月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」。2026年1〜7月末の累計。「主な入口」は当社が手口の特徴をまとめたものです)

ニセ警察詐欺は件数こそ前年より少し減ったものの、被害額は25.7%増えました。1件あたりの金額が大きいのが特徴です。キャッシュカード詐欺盗も、件数が前年より30.3%増えています。

愛知県内の状況

愛知県警察の集計(2026年1〜8月末・暫定値)では、県内の認知件数は2,928件で、前年の同じ時期より903件増えました。被害額は約237億7,700万円で、前年の同じ時期より約104億7,000万円増えています(いずれも1月から8月末までの累計)。

愛知県警が2025年の被害者858人に行った調査(SNS型詐欺を除く)では、8割を超える人が、被害の前は「自分は被害に遭わない」と思っていたか、考えたこともなかったと答えています。被害の約9割は電話から始まり、きっかけは固定電話が53%、携帯電話が36%です。被害は、特別に用心が足りない人に起きているわけではありません。相手は人をだますことを「仕事」にして、言葉を選んで電話をかけてきます。

手口ごとの「電話の決まり文句」と「本当はどうか」

手口は違っても、言われる言葉はかなり決まっています。下の表の言葉が出てきたら、その場で決めずに電話を切ってかまいません。

手口よく言われること本当はどうか
ニセ警察詐欺「あなたの口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」「資産を保護するので送金を」警察が電話で取り調べをしたり、お金を求めたりすることはありません。逮捕状の画像を送ることも、突然ビデオ通話をかけてくることもありません。
還付金詐欺「医療費や保険料の払い戻しがある」「手続きの期限が今日まで」「携帯電話を持ってATMへ」ATMを操作してお金が戻ってくることはありません。言われたとおりに操作すると、相手の口座へ振り込むことになります。
オレオレ詐欺「風邪で声が変なんだ」「携帯をなくして番号が変わった」「会社のお金を使い込んだ」家族の名前を使った別人です。前から知っている家族の番号にかけ直せば、確かめられます。
キャッシュカード詐欺盗・預貯金詐欺「口座が不正に使われている」「カードを新しくするので取りに伺う」「暗証番号を教えて」警察官や銀行員、役所の職員が、暗証番号を聞いたりカードを預かったりすることはありません。
架空料金請求詐欺「動画サイトの未納料金がある」「払わないと裁判になる」「コンビニで電子マネーを買って番号を」電子マネーを買わせて番号を伝えさせる支払いは、詐欺です。
SNS型投資・ロマンス詐欺「必ずもうかる」「先生の指示どおりに買えば大丈夫」「会いに行くための費用を立て替えて」SNSで知り合っただけの相手から、投資や送金の話が出たら詐欺を疑ってください。

(警察庁・政府広報オンラインの注意喚起をもとに整理。2026年10月時点)

ニセ警察詐欺では、警察署の代表番号に見せかけた番号が表示されることもあります。表示された番号が本物らしく見えても、安心材料にはなりません。また警察庁によると、「+」で始まる国際電話番号で末尾を「0110」にし、警察署からの電話を装う例が目立っています。

お金はどう動かされるのか:ATM・電子マネー・カード・ネットバンキング

どの手口も、最後は「お金を相手に渡す」動きに行き着きます。流れを知っておくと、途中で「これはおかしい」と気づきやすくなります。

  • ATMへ誘導される(還付金詐欺に多い):電話をつないだままATMへ行かせ、画面の操作を一つずつ指示します。「受け取る」つもりで、実際には振り込みの操作をさせられます。
  • カードを渡す・すり替えられる(キャッシュカード詐欺盗・預貯金詐欺):電話のあと、警察官や銀行員を名乗る人が自宅に来ます。カードを封筒に入れさせ、目を離したすきに別の封筒とすり替える手口もあります。
  • 電子マネーの番号を伝えさせる(架空料金請求詐欺):コンビニで電子マネーのカードを買わせ、裏の番号を電話やメールで伝えさせます。番号を伝えた時点で、お金は使われてしまいます。
  • ネットバンキングで送金させる(ニセ警察詐欺):「捜査のため」「資産を保護するため」と言って、インターネットバンキングを新しく開かせ、指定の口座へ送金させます。現金や金(きん)を直接受け取りに来る例もあります。

共通しているのは「急がせる」「誰にも言わないよう求める」「ひとりで操作させる」の3つです。この3つがそろったら、それだけで手を止める理由になります。

「お金を動かす前に、家族に一本電話」の約束をつくる

詐欺の電話は、考える時間と相談相手を奪うようにできています。それなら、家族で先に「相談してから動く」と決めておけば、相手の筋書きはそこで崩れます。決めておくとよいのは次の4つです。

  1. 対象を決める:振り込み、ATMの操作、カードを人に渡す、電子マネーを買う。この4つの前には、必ず家族に電話する。
  2. かける先を紙に書く:子どもや兄弟の携帯番号を、電話機の横と財布に入れておく。電話で言われた番号ではなく、この番号にかける。
  3. 断る言葉を決めておく:「家族に確認してから折り返します」。本物の警察や役所なら、それで困ることはありません。
  4. 家族だけの合言葉:家族を名乗る電話があったら、まず合言葉を聞く。

子世代の側にも、ひとつお願いがあります。親から「こんな電話があった」と連絡が来たら、まず「電話をくれてありがとう」と伝えてください。叱られた経験があると、次に変な電話が来たとき、相談しにくくなってしまいます。

固定電話・携帯の設定でできる対策(国際電話の止め方も)

いちばん確実なのは、犯人と話さないことです。電話の設定でできることを挙げます。

固定電話

  • いつも留守番電話にしておく:相手を確かめてから出ます。愛知県警の調査では、被害にあった人で留守番電話を設定していたのは約3割でした。
  • 国際電話を止める(無料):海外との電話が要らないなら、「国際電話不取扱受付センター」(0120-210-364・通話料無料)に申し込むと、発信と着信を無償で休止できます。オペレーターは平日9時〜17時、自動音声は土日祝も24時間受け付けています。対象は固定電話・ひかり電話で、ほかにも条件があるため申込時に確認します。
  • 防犯機能付きの電話機や自動通話録音機:着信したときに、相手へ「通話を録音します」という警告を流す機器です。警告機能や着信拒否の機能がある電話機は、詐欺の電話を減らす手段として政府広報でも紹介されています。

携帯電話(スマートフォン)

  • 「+1」「+44」など「+」で始まる知らない番号には出ない。かけ直さない。
  • iPhoneには、連絡先にない番号からの着信を鳴らさずに留守番電話へ回す設定(不明な発信者の設定)があります。画面の場所はiOSの版によって違うので、分からなければ家族や携帯ショップで一緒に設定してもらうと確実です。
  • 海外からの着信を止めたいときは、契約している携帯会社に、止める設定や対策のサービスがあるかを問い合わせる。

愛知県内の自治体の支援

名古屋市は、自宅の固定電話に付ける自動通話録音機の無料貸し出しを2024年度・2025年度と続けて行っています。2025年度は、市内在住で昭和36年4月1日以前に生まれた方が対象で、1世帯1台・300台(多い場合は抽選)、5月に募集でした。家族が代わりに申し込むこともできます。今年度の受付状況は、市の地域安全推進課か区役所でご確認ください。

ほかの市町村でも、自動通話録音機の貸し出しや、対策機能付き電話機の購入費の補助をしていることがあります。内容は年度ごとに変わるので、お住まいの市町村の防犯担当の窓口に聞いてみてください。

被害にあったかも、と思ったら

「おかしい」と気づいたら、ひとりで抱えずに、早めに連絡してください。早いほど、できることが残ります。

  • 振り込んだ・送金した:振込先の金融機関と警察に、すぐ連絡します。振込先の口座の利用停止を求めることができます(金融庁の案内)。
  • カードを渡した・暗証番号を伝えた:自分の銀行のカード紛失・盗難の窓口に電話し、カードと口座を止めてもらいます。
  • いま家に受け取りに来ると言われている:110番です。
  • 詐欺かどうか迷う電話があった・被害にあったかもしれない:警察相談専用電話「#9110」に相談できます(お住まいの都道府県警察の相談窓口につながります)。急ぐときは110番です。
  • 商品やサービスの契約、身に覚えのない請求で困っている:消費者ホットライン「188」に相談できます(お近くの消費生活センターなどにつながります)。

なお、被害のあとに「取られたお金を取り戻します」と、金融機関の窓口や公的機関を名乗る電話がかかってくることがあります。金融庁は、返金を名目にATMへ誘導する詐欺にも注意を呼びかけています。返金の話も、必ず自分で調べた番号に確認してください。

親子でお金の話をしておくことが、いちばんの備えになる

詐欺の電話は「ひとりで・急いで・内緒で」お金を動かさせようとします。裏を返せば、どこにどんなお金があるかを家族がゆるやかに知っていて、ふだんから話せる関係があれば、それだけで強い守りになります。

共有しておくとよいのは、「どの銀行に口座があるか」「定期預金はどこにいくらくらいか」「通帳と届出印はどこにしまってあるか」まで。暗証番号は家族にも書き出さず、本人だけが知っている状態にしておきます。

この話は、詐欺対策だけでなく、認知症への備えにもつながります。定期預金は、本人の意思確認ができなくなると、満期が来ても家族が解約できないことがあります。詳しくは定期預金は認知症になると解約できない?の記事と、認知症による口座凍結の記事にまとめています。何から話し始めればよいかは、親のお金の管理、家族で決めておくことが参考になります。

今日できる一歩

1. 固定電話を留守番電話に切り替える。国際電話を使わないなら、0120-210-364に休止を申し込む。

2. 家族の携帯番号を紙に書き、電話機の横に貼る。「お金を動かす前に、ここへ一本電話」と書き添える。

3. 次に家族と話すとき、「どの銀行に口座があって、通帳はどこにあるか」だけ話題にしてみる。

相談現場から

相続や生前対策のご相談で通帳を一緒に見ていると、「同じ銀行の定期が、支店違いで何冊もあった」と、ご本人が驚かれることがよくあります。ご本人もすべてを覚えていない状態は珍しくありません。お金の置き場所が整理されていると、家族が変化に気づきやすくなり、詐欺への備えにも、認知症への備えにもなります。

お金の置き場所や家族との共有のしかたを、一緒に整理したい方へ
30分の無料相談では、定期預金や通帳がどこにどれだけあるか、家族にどこまで伝えておくか、認知症に備えて何をしておくかを一緒に整理します。愛知県内は対面・ご自宅への訪問も可、それ以外はオンラインです。
※詐欺の被害にあった、あったかもしれないというご相談は、当社ではお受けしていません。警察相談専用電話 #9110(急ぐときは110番)へ、契約や請求のトラブルは消費者ホットライン188へご連絡ください。
お電話は、相談中の場合は折り返しになります。
LINEで写真を送って相談する:返信は2営業日以内(土日祝を除く)

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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点で公表されている情報をもとにした一般的な内容です。数字は暫定値を含み、今後更新されることがあります。自治体の支援は年度ごとに内容が変わるため、各窓口でご確認ください。被害の相談は警察・消費生活センターへ、個別の判断は専門家にご相談ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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