9月の半ば、郵便受けに緑色の封筒が入っていた。差出人は日本年金機構で、中には「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」と書かれたはがきが入っている。役所の封筒にしては見慣れない色で、「これは本物なのか」と手が止まる方も多いと思います。
この記事では、2026年度の年金生活者支援給付金について、もらえる人の条件、金額、はがきの出し方、対象から外れる場合を順に整理します。あわせて、この給付金を名乗る詐欺の見分け方もまとめました。数字はすべて2026年10月時点で、日本年金機構と厚生労働省の公表内容を確かめたものです。
この記事の結論
- 緑の封筒は、日本年金機構からの正規の請求書です。新たに対象になった方へ、2026年9月1日から順に送られています。はがきに名前などを書き、切手を貼って出せば手続きは終わりです。
- 2026年度の基準額は月5,620円(障害1級は月7,025円)。年金と同じ口座に、偶数月の15日、年金とは別の振込で入ります。
- 2027年1月4日までに届けば、2026年10月分からさかのぼって受け取れます。日本年金機構が電話で口座番号を聞いたり、ATMの操作を指示したりすることはありません。
緑の封筒の正体|年金生活者支援給付金とは
年金生活者支援給付金は、年金を受けている方のうち、所得が一定以下の方に、年金に上乗せして支払われる給付です。年金とは別の制度なので、もらうには一度「請求」の手続きが要ります。
給付金には3つの種類があります。老齢基礎年金(国民年金)を受けている方向けの「老齢」、障害基礎年金を受けている方向けの「障害」、遺族基礎年金を受けている方向けの「遺族」です。老齢には、所得が基準を少し超えた方向けの「補足的老齢年金生活者支援給付金」もあります。
緑の封筒が届くのは、すでに年金を受けていて、今年新たに対象になった方です。日本年金機構が市区町村から受け取った所得の情報をもとに判定し、毎年9月の最初の営業日から順に送っています。封筒には、はがき型の請求書のほか、手続きの案内、電子申請の案内などが入っています。
なお、所得の情報が確認できない方には、はがきではなくA4サイズの請求書と「所得状況届」が届きます。こちらは、市区町村の証明を受けるか、所得証明書などを付けて出す形です。
もらえる人の条件|早見表
老齢の給付金は、次の3つをすべて満たす方が対象です。「市町村民税非課税」とは、住民税がかかっていない、という意味です。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けている
- 本人を含め、同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前の年の「年金の収入」と「その他の所得」の合計が、基準額以下である
| 種類 | 対象になる人 | 所得の基準(2026年10月分から) |
|---|---|---|
| 老齢 | 65歳以上で老齢基礎年金を受けている。世帯全員が住民税非課税 | 年金収入とその他の所得の合計が826,500円以下(昭和31年4月1日以前生まれは824,100円以下) |
| 補足的老齢 | 同上 | 826,500円を超え926,500円以下(昭和31年4月1日以前生まれは824,100円を超え924,100円以下) |
| 障害 | 障害基礎年金を受けている(年齢の条件なし) | 前の年の所得が4,918,000円以下(扶養している家族の数に応じて上がる) |
| 遺族 | 遺族基礎年金を受けている(年齢の条件なし) | 前の年の所得が4,918,000円以下(扶養している家族の数に応じて上がる) |
(日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」、厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」をもとに作成。2026年10月時点)
判定に使うのは「前の年」の所得です。2026年10月分から2027年9月分までの給付金は、2025年の所得で決まります。
「年金の収入」に入れるのは、税金のかかる年金だけです。遺族年金や障害年金は税金がかからない収入なので、この合計には入りません。たとえば、ご主人を亡くして遺族厚生年金を受けている方は、その分を除いて計算します。
子世代の方に知っておいてほしいのは、「世帯全員が非課税」という条件です。親の年金が少なくても、同じ世帯に住民税のかかる人がいると対象になりません。同居を始めた、あるいは別の世帯に分かれた、という変化で結果が変わることがあります。
金額はいくら?2026年度の給付額
2026年度の給付額は、2025年度から3.2%の引き上げになりました。表の額は「基準額」で、老齢の給付金は保険料を納めた期間によって一人ひとり違います。
| 種類(月額) | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 老齢(基準額) | 5,450円 | 5,620円 |
| 障害1級 | 6,813円 | 7,025円 |
| 障害2級 | 5,450円 | 5,620円 |
| 遺族 | 5,450円 | 5,620円 |
| 補足的老齢 | 所得に応じて計算(下の説明を参照) | |
(日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」をもとに作成)
老齢の給付金は、次の2つを足した額です。保険料を40年(480か月)すべて納めた方は、月5,620円になります。
- 納めた期間の分:5,620円 × 保険料を納めた月数 ÷ 480か月
- 免除を受けた期間の分:11,768円 × 保険料の免除を受けた月数 ÷ 480か月(4分の1免除の期間は5,884円で計算。昭和31年4月1日以前生まれの方は11,734円、5,867円)
日本年金機構の例では、納めた期間が240か月、全額免除の期間が60か月の方は、2,810円と1,471円を足して月4,281円です。昭和16年4月1日以前生まれの方は、生年月日に応じて480か月が短くなります。
補足的老齢の給付金は、所得が基準に近いほど少なくなるしくみです。計算は「5,620円 × 納めた月数 ÷ 480か月 × 調整支給率」で、調整支給率は「(926,500円 − 前の年の年金収入とその他の所得の合計)÷ 100,000円」です(昭和31年4月1日以前生まれは924,100円で計算)。
遺族の給付金は、遺族基礎年金を受ける子が2人以上いる場合、5,620円を子の人数で割った額がそれぞれに支払われます。3人なら1人あたり月1,873円です。
計算しなくても大丈夫です。届いたはがきには、請求した場合の「支給見込額」(月額)が書かれています。
緑の封筒が届いたらやること|はがきの出し方と期限
手続きは郵送か電子申請です。窓口に出向く必要も、手数料もありません。
- 封筒を開けて中身を確かめる。差出人が日本年金機構であること、はがき型の請求書と案内が入っていることを見ます。
- はがきに記入する。氏名、電話番号、提出日などを書き、同封の目隠しシールを貼ります。はがきの二次元コードは事務に使うので、汚さないようにします。
- 切手を貼ってポストへ。2025年1月以降にはがきが届いた方は、電子申請もできます。電子申請をした場合、郵送は要りません。
期限で気をつけたいのは、2027年1月4日(月)です。この日までに日本年金機構に届けば、2026年10月分からさかのぼって受け取れます。この日を過ぎても手続きはできますが、請求した月の翌月分からの支給になります。投函は年末の郵便が混む前、12月中を目安にすると安心です。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 2026年9月1日から順に | 新たに対象になった方へ、緑の封筒(はがき型の請求書)が届く |
| 2026年12月15日(火) | 早く手続きが済んだ場合、10月分・11月分が年金とは別に振り込まれる |
| 2027年1月4日(月) | この日までに届けば、2026年10月分からさかのぼって受け取れる |
| 2027年2月15日(月) | 次の支給日(12月分・1月分) |
(日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」と同封リーフレット(令和8年度版)をもとに作成。初回の振込月は審査の進み具合で後になることがあり、その場合はさかのぼった分がまとめて振り込まれます)
振込先は年金と同じ口座で、日も年金と同じ偶数月の15日です。ただし、年金とは別の振込として入ります。初めて振り込まれる月の上旬には「振込通知書」が届きます。
ご本人に代わって成年後見人などが出す場合は、氏名欄にご本人の名前、電話番号欄に後見人の電話番号を書きます。差出人欄には後見人の住所と氏名を、後見人であることが分かるように書きます。封筒やはがきをなくした場合は、A4型の請求書を日本年金機構のサイトから印刷して書き、最寄りの年金事務所に出します。
届かない・対象から外れるのはこんなとき
緑の封筒が届かないからといって、もらえないとは限りません。逆に、条件から外れると支給が止まることもあります。よくある場面を並べます。
- すでに給付金を受けている:引き続き条件を満たしていれば、翌年以降の手続きは原則不要です。封筒は届きません。
- これから65歳になる:年金の請求と一緒に給付金も請求します。65歳の誕生日の前日から3か月以内に請求すれば、誕生日の前日がある月の翌月分から受け取れます。
- 世帯が変わった・税額が直された:世帯の構成が変わったり、住民税の額が直されたりして対象になった場合は、封筒が届かなくてもご自身で請求が必要です。
- 条件から外れた:所得が基準を超えた、世帯に住民税のかかる人がいる、年金が全額止まっている、日本国内に住所がない、刑事施設などに入っている、といった場合は支給されません。すでに受けていた方には「不該当通知書」が届きます。
亡くなった家族宛てに封筒が届くこともあります。日本年金機構は、請求書を作った後に死亡届が出た場合、記録に反映するまで時間がかかるためと説明しており、届いた請求書は破棄してよいとしています。
一方、給付金を受けていた方が亡くなったときは、受け取っていない分を家族が請求できる場合があります。用紙は未支給年金と同じ「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」です。流れは未支給年金の案内が届いたらの記事で説明しています。
「給付金」を名乗る詐欺に注意|本物との見分け方
9月から年末にかけては、本物の請求書が届く時期です。それに合わせて「給付金の手続きが済んでいない」「受け取るには手続きが要る」といった電話が来ることがあります。厚生労働省と日本年金機構は、次のように注意を呼びかけています。
- 日本年金機構や厚生労働省が、電話で口座番号を聞くことはありません。
- 手数料などのお金を求めることも、個人情報を聞くこともありません。
- ATMの操作や、現金の振り込みを指示することはありません。
- 日本年金機構の公式LINEアカウントはありません。LINEの登録を求められたら、なりすましです。
本物の手続きは、郵便で届いたはがきに名前などを書いて送り返すだけです。給付金は年金と同じ口座に入るので、緑の封筒で届いた請求で、新しく口座番号を伝える場面はありません。電話で「口座」「ATM」「手数料」という言葉が出たら、その場では答えずに電話を切ってください。
本物かどうか確かめたいときは、相手が言う番号ではなく、ご自身で給付金専用ダイヤル(0570-05-4092。050から始まる電話からは03-5539-2216)にかけて聞きます。受付は月曜8時30分〜17時15分、火〜金曜8時30分〜19時、第2土曜9時30分〜16時です。警察官を名乗る電話や還付金の電話など、ほかの手口は高齢者を狙う詐欺の手口2026の記事にまとめています。
年金のほかの変更点もあわせて確かめる
2026年度は、給付金だけでなく年金額そのものも引き上げられました。国民年金の満額は月70,608円(昭和31年4月1日以前生まれの方は月70,408円)です。働きながら年金を受ける方のルールや、年金の振込日も含めた全体は2026年度の年金の変更点まとめで整理しています。
給付金が入る口座は、年金が入る口座でもあります。ご本人が入院したり、判断が難しくなったりしたとき、家族がその口座のことを知らないと困る場面が出てきます。どの銀行のどの支店か、家族と一度話しておくと安心です。
今日できる一歩
1. 緑の封筒を探す。9月以降の郵便の中に、日本年金機構の緑の封筒がないか確かめます。親御さん宛てのものは、ご家族が一緒に見てください。
2. 届いていたら、はがきを出す。名前などを書いて目隠しシールを貼り、切手を貼って投函します。2027年1月4日に届くよう、12月中を目安にします。
3. 電話の横にメモを貼る。「年金機構は電話で口座番号を聞かない。ATMへ行けと言わない」と書いておくと、慌てたときの支えになります。
相談現場から
よく伺うのは「見慣れない緑の封筒だったので、怪しいと思ってしまい込んでいた」というお話です。反対に、本物の封筒が届く時期だからこそ、電話で「給付金」と言われると信じてしまいそうになる、という声もあります。見分ける軸は一つで、本物は郵便で届き、書くのは名前などだけです。迷ったら封筒ごと、ご家族か年金事務所に見せてください。
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参考にした公的情報
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」(同封リーフレット令和8年度版・PDF)
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」/よくあるご質問
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金」ポスター(詐欺への注意・PDF)
- 日本年金機構「職員や委託事業者などと称して、現金を詐取する不審な電話や訪問にご注意ください」
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。給付金の額や対象かどうかは、一人ひとりの年金記録や世帯の状況で異なります。ご自身の場合は、給付金専用ダイヤルまたは年金事務所にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
