高年齢求職者給付金はいくら?65歳以上の失業保険と64歳退職の違い【2026年】

65歳の誕生日を過ぎてから、長く勤めた会社を9月末で辞めた。10日ほどして、会社から「離職票」の入った封筒が届く。「失業保険は65歳を過ぎたら出ないと聞いた」と、封筒を開けずに引き出しへしまっている方がいます。

65歳以上で辞めた方にも、雇用保険から「高年齢求職者給付金」という一時金が出ます。この記事では、もらえる条件と金額、64歳で辞めて「基本手当」を受ける場合との違い、手続きの流れを整理します。数字は2026年10月時点で、厚生労働省・ハローワーク・日本年金機構の公表内容を確かめたものです。

この記事の結論

  1. 65歳以上で辞めた方は、辞める前の1年間に雇用保険に6か月以上入っていれば、高年齢求職者給付金を受けられます。あわせて、働くつもりがあることが条件です。
  2. 金額は「基本手当日額」の30日分(加入1年未満)か50日分(1年以上)の一時金です。2026年8月からの日額の上限は7,450円なので、多くても37万2,500円です。
  3. 65歳以上で受ける老齢年金は、この一時金を受けても止まりません。期限は辞めた日の翌日から1年で、延長はできません。
目次

高年齢求職者給付金とは|65歳以上で辞めたときの一時金

一般に「失業保険」と呼ばれているのは、雇用保険の「基本手当」です。65歳未満で辞めた方は、この基本手当を4週間ごとに分けて受け取ります。

65歳以上で辞めた方は、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」の対象になります。違いは、分けて受け取るのではなく、一度にまとめて受け取る一時金だという点です。ハローワークで失業の確認(失業の認定)を受けるのも1回だけです。

厚生労働省のQ&Aでは、雇用保険の給付はすべて非課税で、確定申告は要らないとされています。

もらえる条件|離職前1年間に6か月以上と「働く意思」

厚生労働省と愛知労働局・ハローワークの案内では、条件は次の2つです。

  1. 辞めた日より前の1年間に、雇用保険に入っていた期間が通算6か月以上あること。ここでいう1か月は、給料の支払いの基礎になった日が11日以上ある月などを数えます。
  2. 失業の状態にあること。働く意思と体調・環境が整っていて、仕事を探しているのに、まだ決まっていない状態をいいます。

気をつけたいのは2つ目です。「もう働くつもりはない。のんびりしたい」という方は、この給付の対象になりません。逆に、週20時間未満のパートで少し働きたい、という方は受けられる可能性があるとハローワークは案内しています。

次の勤め先がすでに決まっている方も、対象外です。辞めたあとの予定が決まっていない段階で、ハローワークに相談するのが順番として自然です。

いくらもらえる?2026年8月からの日額と早見表

金額は「基本手当日額 × 30日分または50日分」です。雇用保険に入っていた期間が1年未満なら30日分、1年以上なら50日分になります。

基本手当日額は、次の順で決まります。

  • 賃金日額:辞める前6か月の給料(賞与は除く)の合計を180で割った額。
  • 基本手当日額:賃金日額のおよそ5〜8割。給料が低い方ほど割合が高くなります。

この額は毎年8月1日に見直されます。2026年8月1日からは平均給与が約2.7%上がったことを受けて、上限・下限が引き上げられました。65歳以上の方には「離職時29歳以下」と同じ表が使われ、日額の上限は7,450円、下限は2,562円です。

辞める前の月給(額面・賞与除く)基本手当日額の目安加入1年未満(30日分)加入1年以上(50日分)
15万円4,000円12万円20万円
20万円5,036円15万1,080円25万1,800円
25万円5,775円17万3,250円28万8,750円
30万円6,307円18万9,210円31万5,350円
40万円6,744円20万2,320円33万7,200円
50万円7,450円(上限)22万3,500円37万2,500円

(厚生労働省「基本手当日額の上限額・下限額等(令和8年8月1日~)」の計算式で、6か月同じ月給だった場合を当社が試算。2026年8月1日以降に辞めた方の目安です。実際の額は離職票の賃金をもとにハローワークが決めます)

下限は日額2,562円なので、50日分なら12万8,100円、30日分なら7万6,860円が最も低い額です。

64歳で辞める場合と65歳以上で辞める場合の違い

同じ会社を辞めるのでも、辞めた日に65歳になっているかどうかで、受ける給付が変わります。64歳で辞めれば基本手当、65歳以上で辞めれば高年齢求職者給付金です。主な違いを表にまとめます。

項目64歳で辞める(基本手当)65歳以上で辞める(高年齢求職者給付金)
受け取り方原則4週間ごとに、認定を受けた日数分1回の認定で、まとめて一時金
加入期間の条件原則、辞める前2年間に12か月以上(会社都合などは1年間に6か月以上)辞める前1年間に6か月以上
日数自己都合など:加入10年未満90日、10年以上120日、20年以上150日
会社都合など:加入期間に応じて最大240日
加入1年未満30日分、1年以上50日分
日額の上限(2026年8月〜)7,830円7,450円
年金との関係特別支給の老齢厚生年金や繰上げた老齢厚生年金を受けていると、その年金が止まる老齢年金は止まらない
受け取れる期間辞めた日の翌日から1年(病気などで延長できる場合あり)辞めた日の翌日から1年(延長はできない)
自己都合の場合の給付制限待期7日のあと原則1か月は支給されない(2025年4月1日以降に辞めた場合)
税金どちらも非課税

(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」「基本手当の所定給付日数」、厚生労働省のリーフレット・Q&A、日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」をもとに作成。2026年10月時点)

日数だけを見ると、64歳で辞めるほうが受け取る総額は大きくなりやすいです。たとえば月給30万円、加入20年以上、自己都合の場合、64歳なら日額5,348円の150日分で80万2,200円。65歳以上なら日額6,307円の50日分で31万5,350円です(いずれも上の計算式による目安)。

ただ、これで「64歳で辞めるほうが得」とは言い切れません。基本手当は、仕事を探しながら認定日ごとに受け取るもので、早く再就職すればそこで止まります。会社の退職金の規程や、65歳まで働いた場合の給料も比べる必要があります。

年金との関係も、人によって違います。日本年金機構の案内では、基本手当の手続き(求職の申込み)をすると、その翌月から受給が終わるまで、65歳になるまでの老齢厚生年金が全額止まります。対象は「特別支給の老齢厚生年金」と、繰上げて受けている老齢厚生年金です。

特別支給の老齢厚生年金は、男性は昭和36年4月1日以前、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた方が対象です。2026年に64歳の男性はこの生年月日の範囲に入らないため、繰上げをしていなければ止まる年金はありません。一方、2026年に64歳の女性は生年月日の範囲に入るため、厚生年金に1年以上入っていれば、年金が止まる側に入ることがあります。

辞める日を誕生日の前後で考えている方は、「この日に辞めたらどちらの給付になるか」を、事前にハローワークで確かめてください。年金を受けている方は、止まる額を年金事務所で聞いておくと比べやすくなります。

手続きの流れ|離職票からハローワーク、振込まで

手続きは、住んでいる地域を受け持つハローワークで、本人が行います。厚生労働省のリーフレットとQ&Aをもとに、順番を並べます。

順番すること目安
1. 離職票を受け取る会社から「離職票-1」「離職票-2」が届く。届かないときは会社に確認する退職後しばらくして
2. ハローワークで求職の申込み離職票、マイナンバーカード、写真1枚(縦3cm×横2.4cm。マイナンバーカードを示せば省略可)、本人名義の通帳かキャッシュカードを持っていくできるだけ早く
3. 待期失業の状態が7日たつまでは支給されない7日間
4. 給付制限(自己都合の場合)正当な理由のない自己都合退職は、さらに原則1か月支給されない原則1か月
5. 失業の認定日指定された日に本人が出向き、仕事を探している状況などを申告する給付制限がなければ手続きから3〜4週間後
6. 振込一時金がまとめて口座に入る認定日から約1週間後

(厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」「Q&A~労働者の皆様へ~」、愛知・長野の労働局のリーフレットをもとに作成)

期限には特に気をつけてください。受け取れるのは、辞めた日の翌日から1年の間です。手続きが遅れて、認定日から期限までの日数が30日や50日より短くなると、その日数分しか支給されません。病気などを理由に延ばすこともできません。

過去5年の間に2回以上、正当な理由なく自己都合で辞めて給付を受けている場合などは、給付制限が3か月になります。会社の都合や、体調・介護など事情があって辞めた場合は扱いが変わることがあるので、窓口で事情を伝えてください。

年金・健康保険はどうなるか

年金と雇用保険の給付を調整する仕組みは、日本年金機構の案内でも厚生労働省のQ&Aでも、65歳になるまでの年金が対象です。65歳以上で受ける老齢基礎年金・老齢厚生年金は、高年齢求職者給付金を受けても止まりません。両方を受け取れます。

2026年度の年金額や振込日、働きながら受ける年金のルールは2026年度の年金の変更点まとめで整理しています。

健康保険は、退職すると会社の保険から外れます。選び方は、会社の健康保険を自分で続ける「任意継続」、住んでいる市町村の国民健康保険、家族の健康保険の扶養に入る、の3つです。手続きに期限があるものもあるので、退職前に会社の担当者と市町村の窓口で保険料を聞いて比べておくと慌てません。

65歳以上の方の介護保険料は、住んでいる市町村と所得の段階で決まります。退職で所得が変わると、翌年度の段階が変わることもあります。金額の決まり方は65歳以上の介護保険料の記事をご覧ください。

退職金と一時金、受け取ったあとのお金の置き場所

65歳前後で辞めると、退職金と、高年齢求職者給付金の一時金が、数か月の間に同じ口座へ入ることがあります。普通預金の残高が急に増え、そのまま置いてあるという方も珍しくありません。

急いで使い道を決める必要はありません。まず、年金だけで毎月いくら足りないかを出し、当面の生活費を手元に残す。残りを定期預金などに分けるかどうかは、そのあとで考えれば十分です。

退職金の受け取り方と税金の基本は退職金を受け取ったら最初に確認すべきこと、預け先の金利の比べ方は定期預金の金利2026の記事で取り上げています。窓口で商品を勧められたときは、その場で決めずに一度持ち帰って大丈夫です。

口座がどこにあるかを家族が知らないと、入院したときや判断が難しくなったときに困ります。退職を機に、通帳の場所と、年金・退職金が入る口座を家族と一度確かめておくと安心です。

今日できる一歩

1. 離職票が届いているか確かめる。会社からの封筒をしまい込んでいないか見て、届いていなければ会社に「離職票を出してほしい」と伝えます。

2. 期限をカレンダーに書く。辞めた日の翌日から1年が期限です。認定日まで1か月前後かかるので、早めにハローワークへ行く日を決めます。

3. これから辞める方は、辞める日の候補を持ってハローワークへ。64歳と65歳の境目にあたる方は、どちらの給付になるか、年金が止まるかを先に確かめます。

相談現場から

よく伺うのは「65歳を過ぎたら失業保険は出ないと思っていた」というお話です。退職金の置き場所の相談に来られた方が、話の途中で離職票のことを思い出される場面もあります。もう一つ多いのは、退職金と一時金が同じ普通預金に入り、どれが生活費でどれが手を付けないお金なのか分からなくなっているケースです。口座を分けるだけでも、見通しはずいぶん立てやすくなります。

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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。表の金額は公表された計算式による目安で、実際の支給額や受けられるかどうかは、離職票の内容をもとにハローワークが判断します。年金が止まるかどうかや額は、年金事務所でご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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