夏が過ぎたころ、市役所から介護保険料の通知書が届いた。開くと「第7段階」「年額87,574円」とだけ書いてある。去年と同じなのか、ほかの市と比べて高いのか、この紙だけでは分かりません。
65歳を過ぎると、介護保険料は住んでいる市町村が決め、多くの人は年金から引かれます。この記事では、名古屋市など愛知の主な市の金額(2024〜2026年度)、自分の段階の確かめ方、年金天引きと納付書の違い、そして2027年度からの見直しで決まっていることと、まだ決まっていないことを分けて整理します。
介護保険料は「どこに住むか」と「所得」で決まる
65歳以上の人(第1号被保険者)の介護保険料は、国が一律に決めるものではありません。市町村ごとに、3年間でどれくらい介護サービスが使われるかを見込み、そのうち65歳以上の人が負担する分を、65歳以上の人数で割って「基準額」を出します。名古屋市はこの仕組みを、市のよくある質問で説明しています。
基準額は3年ごとに見直されます。今は2024年4月〜2027年3月の「第9期」で、2027年4月から「第10期」に切り替わります。
実際に払う額は、基準額に所得に応じた割合をかけて決まります。住民税がかからない人は基準額の0.25倍など低めに、所得の高い人は2倍、3倍と高めになります。段階の数も市によって違い、名古屋市は18段階、豊田市は13段階です。国が示す標準は13段階で、それより細かく分けている市町村もあります。
同じ年金額の人でも、住む市が違えば保険料は変わります。また同じ市の中でも、家族に住民税を払っている人がいるかどうかで段階が変わります。
愛知の主な市の基準額(第9期:2024〜2026年度)
各市の公式ページで確認できた金額をまとめました。「基準額」は真ん中の段階の人の額で、ここから所得に応じて上下します。
| 市(保険者) | 基準額(月あたり) | 基準額(年額) | 段階の数 | いちばん低い段階(年額) | いちばん高い段階(年額) |
|---|---|---|---|---|---|
| 名古屋市 | 約6,950円 | 83,403円 | 18 | 20,851円 | 258,550円 |
| 一宮市 | 6,317円 | 75,800円 | 17 | 20,800円 | 212,200円 |
| 岡崎市 | 5,700円 | 68,400円 | 16 | 17,100円 | 194,940円 |
| 春日井市 | 5,580円 | 66,960円 | 15 | 19,083円 | 174,096円 |
| 豊田市 | 5,300円 | 63,600円 | 13 | 18,444円 | 162,180円 |
| 豊橋市など(東三河広域連合) | 4,930円 | 59,160円 | 15 | 16,860円 | 141,984円 |
| 愛知県平均 | 5,957円 | 県内市町村の加重平均(愛知県公表) | |||
| 全国平均 | 6,225円 | 全国の加重平均(厚生労働省公表。第8期は6,014円) | |||
名古屋市の基準額は、この表の中ではいちばん高く、全国平均も上回っています。一方、豊橋市など東三河の8市町村は月4,930円で、名古屋市より2,000円ほど低い水準です。
保険料は毎回必ず上がるわけではありません。春日井市は、市がためてきた基金を取り崩して、基準額を月6,280円から5,580円へ700円引き下げたと案内しています。
自分の段階を確かめる:通知書のどこを見るか
その年度の保険料が決まると、市町村から通知書が届きます。名前や様式は市によって違いますが、年額と所得段階、それに年金から引かれる額や納付書で払う額が書かれています。見るところは3つです。
- 所得段階:「第◯段階」の数字。市のページにある段階表と照らすと、どの条件で決まったかが分かります。
- 年額:その年度(4月〜翌年3月)に払う合計です。
- 払い方:年金から引かれるのか、納付書・口座振替なのか。両方が書かれている年もあります。
段階を決めるのは、主に「本人に住民税がかかっているか」「同じ世帯の家族に住民税がかかっているか」、そして本人の所得です。例として、名古屋市の第1〜第9段階を並べます。
| 段階 | おもな条件(名古屋市・2026年度) | 年額 | 月あたりの目安 |
|---|---|---|---|
| 第1 | 生活保護などを受けている。または老齢福祉年金を受けていて、世帯全員が住民税非課税 | 20,851円 | 約1,738円 |
| 第2 | 世帯全員が非課税で、本人の年金収入とほかの所得の合計が82万6,500円以下 | 20,851円 | 約1,738円 |
| 第3 | 世帯全員が非課税で、同じ合計が82万6,500円超〜120万円以下 | 33,362円 | 約2,780円 |
| 第4 | 世帯全員が非課税で、同じ合計が120万円超 | 57,132円 | 約4,761円 |
| 第5 | 本人は非課税、家族に課税の人がいて、本人の合計が82万6,500円以下 | 70,893円 | 約5,908円 |
| 第6(基準額) | 本人は非課税、家族に課税の人がいて、本人の合計が82万6,500円超 | 83,403円 | 約6,950円 |
| 第7 | 本人が課税で、合計所得金額が80万円未満 | 87,574円 | 約7,298円 |
| 第8 | 本人が課税で、合計所得金額が80万円以上125万円未満 | 91,744円 | 約7,645円 |
| 第9 | 本人が課税で、合計所得金額が125万円以上200万円未満 | 104,254円 | 約8,688円 |
| 第10〜18 | 本人が課税で、合計所得金額が200万円以上。所得が上がるほど段階も上がり、第18段階は1,500万円以上 | 125,105〜258,550円 | 約10,425〜21,546円 |
「合計所得金額」は、収入から年金の控除や必要経費を引いたあとの額で、基礎控除などを引く前の金額です。年金の額面そのものではない点に注意してください。
非課税の人の段階を分ける境目の金額は、年度によって少し変わります。春日井市の案内では、2025年度は80万9,000円、2026年度は82万6,500円でした。年金額の改定にあわせた調整で、去年と収入が同じでも段階が変わることがあります。
また、配偶者が亡くなった、子と同居を始めた、といった世帯の変化でも段階は動きます。本人の収入が変わっていないのに保険料が変わったときは、世帯の課税状況を見直してみてください。
年金から引かれる人、納付書で払う人
老齢(退職)年金、遺族年金、障害年金のいずれかを年18万円以上(月にならすと1万5,000円以上)受け取っている人は、原則として年金から天引きされます。これを「特別徴収」といいます。岡崎市の案内では、老齢福祉年金からは引かれません。
天引きは年金が振り込まれる偶数月の年6回です。4月と6月は、前の年度の2月と同じ額を仮に引きます。その年度の保険料が決まったら、残りを8月以降に割り振ります(豊田市の案内)。夏ごろに天引き額が変わるのはこのためです。
年金が年18万円未満の人は、納付書か口座振替で払います。これを「普通徴収」といいます。豊田市・岡崎市はどちらも年8回ですが、時期は違い、豊田市は6月〜翌年1月、岡崎市は7月〜翌年2月です。
年金が18万円以上あっても、しばらく納付書で払う場合があります。各市の案内に共通するのは次のようなときです。
- 65歳になったばかりのとき
- ほかの市町村から引っ越してきたとき
- 年度の途中で保険料が下がったとき、年金を受け取り始めたとき
- 年金を担保にお金を借りているとき
65歳の誕生日のあとに届く納付書は、払い忘れが起きやすい書類です。天引きになると思い込んで放置しないよう、届いたら口座振替の手続きをしておくと安心です。なお一宮市や豊田市の案内のとおり、天引きの対象になった人が「納付書で払いたい」と選ぶことはできません。
75歳以上は後期高齢者医療の保険料も年金から引かれます。名古屋市の案内では、介護保険料と後期高齢者医療の保険料の合計が年金額の2分の1を超えると、後期高齢者医療の保険料は天引きされず、納付書などで払う形になります。納めた介護保険料は、所得税・住民税の社会保険料控除の対象です。
払えない・払い忘れたときにどうなるか
納期限を過ぎると督促状が届き、延滞金がかかります。さらに滞納が長く続くと、介護サービスを使うときに不利な扱いを受けます。これは介護保険法にもとづく全国共通の仕組みで、豊田市や名古屋市の案内にも同じ措置が載っています。期間の区切りは次のとおりです。
- 1年以上の滞納:サービスの費用をいったん全額自分で払い、あとから申請して払い戻しを受ける形になります。
- 1年6か月以上の滞納:その払い戻しが一時的に止められ、滞納している保険料に充てられることがあります。
- 2年以上の滞納:2年たつと時効で払えなくなります。その期間に応じて、自己負担が3割(もともと3割の人は4割)に上がり、高額介護サービス費なども受けられなくなります。
災害で家が大きな被害を受けた、生計を支える人が長く入院した、といった事情があるときは、申請によって保険料の猶予や減免を受けられることがあります(名古屋市の案内)。払うのが難しいと感じたら、滞納する前に市の窓口に相談するのが近道です。
2027年度からの第10期で変わること・まだ決まっていないこと
2027年4月から2030年3月までの3年間が第10期です。2026年10月時点で、表の各市・広域連合の公式ページに第10期の保険料額はまだ載っていません。決まっていることと未定のことを分けると、次のとおりです。
| 区分 | 内容(2026年10月時点) |
|---|---|
| 決まっていること | 第10期は2027年度〜2029年度の3年間。保険料は3年ごとに見直す仕組みで、各市町村が新しい計画にあわせて決め直します。 |
| 進んでいること | 名古屋市は第10期の計画「はつらつ長寿プランなごや2029」を策定中で、市のページに「策定に向けて検討を進めております」とあります(2026年9月1日更新)。 |
| 国で検討中のこと | 2026年9月18日の社会保障審議会介護保険部会で「第1号保険料の在り方」が議題になりました。所得の高い人の標準の割合の見直しと、住民税が非課税から課税に変わるときの上がり幅を緩める方向の段階の見直しが論点です。結論は出ていません。 |
| 未定のこと | 各市の第10期の基準額、段階の数と割合。介護サービスの2割負担の対象を広げるかどうかも未定です。 |
全国平均の基準額は、第8期の月6,014円から第9期の6,225円へ上がりました。高齢の人が増え、介護サービスの利用が増えるほど、保険料は上がりやすくなります。ただ、春日井市のように基金を使って下げた例もあり、第10期の額は市ごとの事情で決まります。
各市の基準額が決まれば市のページなどで公表され、一人ひとりの額は2027年度に届く通知書で分かります。天引きの人は、4月・6月は前の年度と同じ額が引かれ、新しい額との差は8月以降で調整されるのが通常の流れです。各市の計画案が公表されたら、この記事も更新します。
介護が必要になったときの自己負担は別の話
ここまでの介護保険料は、元気なうちから毎月払う「掛け金」にあたるお金です。実際に介護サービスを使うときは、これとは別に費用の一部を自己負担します。負担の割合は所得によって1割・2割・3割に分かれます。
この2割負担の対象を広げるかどうかも、2027年度に向けて国で議論されています。判定の基準や、まだ決まっていない点は介護保険の2割負担拡大はどうなる?2027年度に向けた議論と判定基準で整理しています。
年金から引かれる保険料と、いざというときの自己負担。この2つを合わせて、年金と預金でどこまでまかなえるかを一度見ておくと、慌てずに済みます。
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参考にした公的情報
- 厚生労働省「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40211.html
- 愛知県「介護保険料の推移」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/korei/kaigohokenryou.html
- 名古屋市「第1号被保険者の保険料」 https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/seido/hokenryou/
- 豊田市「保険料 介護保険料の納付」 https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/fukushi/koureisha/kaigo/1009259/1003185.html
- 名古屋市「第10期名古屋市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」 https://www.city.nagoya.jp/shisei/keikaku/1010462/1036406/1053434.html
- 厚生労働省「第136回社会保障審議会介護保険部会(2026年9月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76225.html
※本記事は2026年10月時点で各市・愛知県・厚生労働省が公表している一般的な情報をもとにしています。保険料の段階や減免の可否は世帯の状況で変わるため、個別の判断はお住まいの市町村の介護保険担当窓口や専門家にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
