介護保険の2割負担拡大はどうなる?2027年度に向けた議論と判定基準

10月の週末、実家の茶の間で母の介護保険の書類を整理していると、「介護保険負担割合証」という小さな紙が出てきた。割合の欄には「1割」とある。ニュースで聞いた「2割負担の拡大」で、この数字が変わるのかどうかが気になる。

この記事では、介護サービスの自己負担が1割・2割・3割のどれになるかの決まり方と、月の上限を取り上げます。あわせて、2割負担の対象を広げる議論が2026年10月時点でどこまで進んでいるかを、決まったことと検討中のことに分けて整理します。

この記事の結論
1. 2割負担の対象拡大は、2026年10月時点で決まっていません。政府は「2026年度中に結論を得る」としていて、厚生労働省の審議会で検討が続いています。
2. 今の基準で2割になるのは、65歳以上で本人の合計所得金額が160万円以上の方のうち、年金収入とその他の所得の合計が280万円以上の方です。65歳以上が2人以上の世帯では346万円以上が基準です。親の割合は負担割合証で確かめられます。
3. 自己負担には月の上限(高額介護サービス費)があります。住民税が課税される世帯で課税所得380万円未満なら、世帯で月44,400円です。食費や居住費はこの計算に入りません。
※2026年10月時点。出典:厚生労働省 第136回社会保障審議会介護保険部会 資料2、名古屋市「介護サービスを利用したときの利用者負担」「高額介護(介護予防)サービス費」
目次

親の負担割合は「負担割合証」で確かめる

介護保険負担割合証は、要介護・要支援の認定を受けた方に市区町村から届く書類です。1割・2割・3割のどれかが書いてあります。介護サービスを使うときは、介護保険被保険者証と一緒に事業所へ見せます。

有効期間は8月1日から翌年7月31日までです。静岡市の案内では、毎年7月下旬に新しい割合証が送られます。お住まいの市町村の送付時期は、市町村の案内で確かめてください。

割合は、前の年の1月から12月までの所得で決まります。年の途中で変わることもあります。同じ世帯の65歳以上の人が増えたり減ったりしたときや、住民税の所得が修正されたときです。この場合は、さかのぼって割合が変わります。変わったときは、新しい割合証が届きます。なくしたときは、市区町村の窓口で再交付を申し込めます。

まだ認定を受けていない親には、割合証は届きません。介護費用を前もって見積もりたいときは、次の早見表で見当をつけます。

1割・2割・3割の決まり方(早見表)

65歳以上の方は、2つの条件の両方に当てはまるかどうかで割合が決まります。1つは本人の所得、もう1つは同じ世帯の65歳以上の方の年金と所得の合計です。

割合①本人の合計所得金額②年金収入+その他の合計所得金額
(65歳以上が本人だけの世帯)
②の基準
(65歳以上が2人以上の世帯)
3割220万円以上340万円以上463万円以上
2割160万円以上280万円以上346万円以上
1割上の3割・2割に当てはまらない方
①と②の両方に当てはまると、その割合になります。64歳以下の方、生活保護を受けている方、住民税が非課税の方は1割です。
出典:名古屋市「介護サービスを利用したときの利用者負担」、厚生労働省 第136回介護保険部会 資料2(2026年10月時点)

「合計所得金額」は、収入から必要な経費や控除を差し引いた後の金額です。年金なら、年金の額面から年金向けの控除を引いた額になります。「年金収入」は額面の金額で、遺族年金や障害年金のように税金のかからない年金は含みません。

年金だけで暮らす一人暮らしの方なら、年金の年額が280万円に届くかどうかがおおよその分かれ目です。夫婦の場合は、割合が一人ずつ決まる点に注意します。たとえば65歳以上の夫婦で、夫の年金が年280万円、妻の年金が年80万円だとします。2人の合計は360万円で、346万円以上です。夫は本人の所得も160万円以上なので2割、妻は本人の所得が160万円に届かないので1割になります。

厚生労働省の資料によると、2025年3月時点で介護サービスを使っている約541万人のうち、2割の方は約4.3%、3割の方は約3.9%です。9割以上の方は1割です。

月の上限がある:高額介護サービス費

1か月の自己負担の合計が上限を超えると、超えた分があとで戻ってきます。これが高額介護サービス費です。上限は世帯の所得で決まります。「世帯」は同じ世帯でサービスを使う人全員の合計、「個人」は本人の分だけの上限です。

区分月の上限
課税所得690万円以上140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満93,000円(世帯)
住民税が課税される世帯で、課税所得380万円未満44,400円(世帯)
世帯全員が住民税非課税24,600円(世帯)
世帯全員が住民税非課税で、年金収入と所得の合計が82万6,500円以下の方、老齢福祉年金を受けている方15,000円(個人)
世帯では24,600円
生活保護を受けている方など15,000円(個人)
課税所得は、世帯の中でいちばん所得の高い65歳以上の方のもので判定します。
出典:名古屋市「高額介護(介護予防)サービス費・総合事業高額サービス費」(2026年10月時点)

上限の計算に入らない費用もあります。施設の食費と居住費(ショートステイの滞在費)、理美容代などの日常の実費、福祉用具の購入や住宅改修の負担、配食サービスの負担などです。施設に入ると、毎月の支払いのかなりの部分がこちらになることもあります。

手続きは、初回だけ申請が要ります。名古屋市では、対象になる方にサービスを使った月のおおむね2か月後以降に案内が届きます。一度申請して口座を届け出れば、その後は上限を超えた月ごとに自動で振り込まれます。医療費と介護費の両方がかさんだ年には、1年分を合わせて上限をかける「高額医療・高額介護合算」という制度もあります。医療費の上限については高額療養費2026年8月見直しの記事で整理しています。

介護費用を見積もるときの計算例

介護保険がきくサービスを月にいくら使うかで、自己負担は次のようになります。どれだけ使うかはケアマネジャーと決めるもので、ここでは計算の仕方だけを示します。

保険がきくサービスの利用額(月)1割2割3割
5万円5,000円10,000円15,000円
10万円10,000円20,000円30,000円
20万円20,000円40,000円60,000円
(上限44,400円の世帯なら、超えた15,600円が戻る)
同じ世帯にほかにサービスを使う人がいない場合の計算です。食費・居住費・日用品などは別にかかります。

1割から2割になると、保険がきく部分の自己負担はちょうど2倍です。月10万円分を使っている方なら、月1万円、年12万円の増え方になります。ただし月の上限があるので、たくさん使う月ほど差は縮まります。なお、要介護度ごとに保険で使える量には上限があり、それを超えて使った分は全額が自己負担です。

2割負担の対象拡大はどこまで進んでいるか(2026年10月時点)

2割負担になる人の範囲を広げるかどうかは、何年も前から議論されてきました。2024年度の見直しのときにも結論が出ず、先送りになった経緯があります。ここまでの流れは次のとおりです。

時期出来事状態
2023年12月2024年度の見直しに向けた議論で結論が出ず、厚生労働大臣と財務大臣の折衝で「第10期(2027年度から)の開始の前までに結論を得る」とされた先送り
2025年12月25日社会保障審議会介護保険部会の意見書でも結論は出ず、改めて「第10期の開始の前までに結論を得る」とされた先送り
2026年政府が毎年まとめる経済財政の基本方針「骨太の方針2026」に「2割負担の判断基準の見直しについて2026年度中に結論を得る」と書かれた結論の期限が示された
2026年9月18日第136回介護保険部会で、基準を下げる場合の案と、負担を和らげる措置の案、その試算が示された検討中
2026年10月8日時点基準・時期・対象者のいずれも決まっていない未定
出典:厚生労働省 第136回社会保障審議会介護保険部会 資料2「持続可能性の確保(給付と負担)について」、同部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(2025年12月25日)

9月の部会で示された案の中身

示されたのは、②の「年金収入+その他の合計所得金額」の基準を、今の280万円から260万円〜230万円の範囲に下げる案です。65歳以上が2人以上の世帯は、346万円から326万円〜296万円に下がります。今の基準は65歳以上の方の所得の上位20%にあたり、案では上位約25%〜30%に広がります。厚生労働省の試算では、230万円まで下げた場合に影響を受ける方は約35万人です。

あわせて、負担が急に増えないようにする措置も2つ示されました。

  • 負担増に上限を設ける案:新たに2割になる方の負担の増え方を、当分の間、月7,000円までに抑えます。月10万円分を使う方なら、自己負担は1万円から2万円ではなく、1万7,000円までになる計算です。
  • 預貯金が少ない方は1割に戻す案:預貯金などが一定額以下なら、申請で1割に戻します。基準の例として、単身700万円・夫婦1,700万円、単身500万円・夫婦1,500万円、単身300万円・夫婦1,300万円の3通りが示されました。預貯金のほか、有価証券や投資信託、現金も数え、借金は差し引きます。自己申告を基本に、必要なら市町村が金融機関に照会する案です。

これとは別に、株の配当など金融所得や、預貯金などの資産を負担の判定に反映するかどうかも、引き続き検討するとされています。

まだ決まっていないこと

2026年10月8日時点で、広げるかどうかそのものが決まっていません。基準をいくらにするか、負担を和らげる措置を設けるか、いつから適用するかも未定です。上の金額や人数は、審議会で議論するための案と試算です。報道で具体的な金額が出ることがあっても、決まった内容とは限りません。

決まった場合は、市町村の案内や毎年届く負担割合証で確かめられます。「2割負担になるから今のうちに」と、お金の移し替えや契約を急がせる話があったら、まだ決まっていない段階だと思い出してください。

介護費用に備えるお金の置き場所

介護費用は、親本人の年金と預金から払うのが基本です。子が立て替える前に、親の口座から払える形になっているかを見ておきます。誰が出すかの考え方は介護費用は誰が出すかの記事にまとめています。

毎月の支払いは、年金が振り込まれる普通預金から出せるようにしておくと、残高の動きが追いやすくなります。保険がきく部分には月の上限があります。在宅の介護なら、「上限額+食費などの実費」の数か月分を普通預金に置いておくと慌てずに済みます。2割になった場合に備えるなら、今の自己負担がそのまま2倍になった額で一度見積もっておくと安心です。

定期預金は、満期のときに当面の分だけを普通預金へ移しておくのが一つの方法です。定期預金の解約には本人の意思確認が要るため、親の判断が難しくなると、家族が代わりに解約できないことがあります。詳しくは定期預金は認知症になると解約できないのかの記事をご覧ください。

親が判断できるうちに、家族で決めておくこと

割合が1割でも2割でも、介護が長く続くと、お金の出し入れを家族が手伝う場面が増えます。親が自分で判断できるうちに、次のことを話しておくと後が楽になります。

  • どの口座から払うか:介護費用を払う口座を1つに決め、通帳とキャッシュカードの置き場所を家族が知っておきます。
  • 銀行への代理人の届け出:銀行によっては、家族を代理人として届け出て、窓口やカードで手続きできる仕組みがあります。名前や条件は銀行ごとに違い、届け出には本人の意思確認が要ります。口座が使えなくなる流れと対策は認知症による口座凍結の記事で整理しています。
  • 費用の分担:親のお金で足りなくなったら、誰がどう出すか。立て替えた場合は、日付・金額・使いみちを記録しておきます。進め方は親のお金の管理の記事が参考になります。
  • 書類の置き場所:負担割合証、介護保険被保険者証、高額介護サービス費の通知は、ひとまとめにしておきます。親が民間の介護保険に入っているなら、家族が代わりに請求できる届け出(指定代理請求人)が付いているかも、証券で見ておきます。
今日できる一歩
1. 親が認定を受けているなら、介護保険負担割合証を探して、割合と有効期間を確かめる。
2. 親の年金の年額を年金の通知書で確かめ、早見表の280万円(65歳以上が2人以上の世帯は346万円)と比べてみる。
3. 介護費用をどの口座から払うか、家族で一度話す日を決める。
相談現場から
よく伺うのは、負担割合証の「2割」を見て、施設の費用が全部2倍になると思い込んでしまうお話です。実際には食費や居住費は割合の対象外で、保険がきく部分にも月の上限があります。もう一つ多いのが、割合証や通知を親が一人で保管していて、家族が中身を知らないまま費用の話が進んでしまう場面です。
この話、うちの場合はどうなるか知りたい方へ
30分の無料相談で、親の負担割合と月の上限から介護費用を一緒に見積もります。どの口座から払うか、親が判断できるうちに何を決めておくかも整理します。愛知県内は対面・ご自宅への訪問もできます。それ以外の地域はオンラインです。
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参考にした公的情報

本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な説明です。2割負担の対象拡大は検討中で、今後内容が変わることがあります。負担割合や上限の区分、手続きはお住まいの市区町村によって案内が異なる場合があります。ご自身の割合や区分は市区町村の介護保険の窓口に、税金の個別の判断は税理士に、介護サービスの内容はケアマネジャーにご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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