実家の片付けは、いざ始めようとすると「どこから手をつければいいのか」で立ち止まってしまうものです。長年の家財の量、簡単には捨てられない思い出の品、そして「まだ使う」という親の抵抗——この3つの壁が、片付けを難しくします。
この記事では、愛知県内で相続・生前対策のご相談を受けている当社の視点から、実家の片付けの進め方と、業者を頼む場合の選び方・注意点を、中立の立場で整理します。単なる「モノの処分」ではなく、相続や生前対策につながる視点でお伝えします。費用の目安を先に書くと、愛知県内の業者の公開料金で1Kが2万3,000円〜8万円、2LDKが7万〜20万円、3LDKが11万〜24万円。同じ間取りでも業者間で2倍以上ひらきます(2026年9月時点・記事内に間取り別の表)。モノ全般の生前整理については生前整理のやり方、まず何から手をつけるかもあわせてご覧ください。片付けのあとの解体・売却・空き家の維持まで含めた実家じまいの費用の内訳は、記事の後半に表でまとめています。
実家の片付けを始める前に押さえたいこと
片付けに入る前に、最も大切なのが貴重品・重要書類を先に確保することです。勢いで処分を進めてしまうと、通帳・キャッシュカード・不動産の権利証・保険証券・年金関係の書類など、後で必要になるものまで捨ててしまう恐れがあります。これらは相続や各種手続きで不可欠なため、まず一箇所にまとめておきましょう。この作業は、そのまま財産の全体像の把握(財産目録づくり)にもつながります。
なお、不動産の権利証(登記識別情報)は、相続登記そのものに必要な書類ではありません。ただし「どこに不動産を持っているか」を知る手がかりになり、売却するときには必要になります。見つけたら処分せず、他の重要書類と一緒に保管してください。
実家の片付けの進め方ステップ
- 通帳・権利証・保険証券など重要書類を先に確保する
- 片付けの期間・ゴールを決める(一度に終わらせようとしない)
- 「残す・譲る・売る・処分する」の4分類で仕分ける
- 思い出の品は写真に撮って記録を残す方法も検討する
- 大型家具・大量の不用品は業者の利用を検討する
ポイントは、一度に終わらせようとしないことです。部屋やジャンルごとに区切り、少しずつ進めるほうが、親の負担も軽く、貴重品の見落としも防げます。
捨て方は4通り|自分で・自治体・買取・業者の使い分け
実家の片付けで時間がかかるのは、「何を、どの方法で手放すか」を決める場面です。量や品物によって向く方法が違うため、次の表で当てはめてみてください。
| 方法 | 向いている品物 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分で処分 | 衣類・食器・紙類など、ふだんのごみで出せるもの | 一度に出せる量には自治体の決まりがある。ごみの日に合わせて少しずつ出す |
| 自治体の粗大ごみ | タンス・ベッド・布団・家具など | 事前の申し込みと手数料が必要なところが多い。収集まで日数がかかるので早めに申し込む |
| 買取・譲渡 | 状態のよい家具、着物、骨董品、貴金属など | 値打ちがわからないものは、処分する前に複数の買取店に見てもらう |
| 遺品整理・不用品回収の業者 | 物量が多い、遠方で通えない、2階以上で運び出しが大変な場合 | 必要な許可の有無と、見積書の内訳を必ず確認する |
エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機は「家電リサイクル法」の対象
家電リサイクル法では、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、粗大ごみとしては出せません。販売店や指定の引取場所に引き渡し、リサイクル料金と運搬料金を支払うのが基本です。実家に古い家電が複数あるときは、片付けの費用を見積もる段階で、この分も含めて考えてください。
処分する前に必ず探すもの
実家で見つかりやすい「捨てる前に確認する物」
- 通帳、キャッシュカード、印鑑、現金(タンスや仏壇の引き出しにあることも多い)
- 保険証券、年金関係の書類、固定資産税の通知書、権利証(登記識別情報)
- 貸金庫の鍵、株や投資信託の取引報告書、ローンや借用書
- パソコンやスマートフォン(ネット銀行・ネット証券の手がかりになる)
- 遺言書、エンディングノート、住所録、年賀状(連絡先の手がかり)
- 位牌、仏壇、写真アルバム(家族で話し合ってから決める)
これらは見つけたらすぐ処分せず、一つの箱にまとめて保管します。遺言書は、見つけても開封せず、家庭裁判所の検認が必要な場合があるため、状態を変えずに取り置いてください。
親と片付けを進めるコツ
親にとって、実家は人生そのものです。「早く捨てて」と急かすと反発を招き、片付けが止まってしまいます。「もしものときに困らないように」「一緒に整理しよう」と、親の安心と参加を入り口にすると進めやすくなります。親自身に「残したいもの」を選んでもらい、その気持ちを尊重する姿勢が、結果的に片付けを前に進めます。
業者の選び方と注意点
量が多い場合は、不用品回収業者や生前整理・遺品整理の専門業者を利用する選択肢があります。まず、いくらくらいかかるのかを間取り別に見ておきましょう。下表は愛知県内(名古屋市・豊田市・一宮市・岡崎市)の業者が公開している料金を当社で集計したものです。
上下する要因ははっきりしています。物量(押入れ・納戸・物置にどれだけ残っているか)、搬出のしやすさ(エレベーターのない2階以上、トラックを横づけできるか)、そして作業範囲(仕分けまで頼むか、運び出しだけか、清掃や買取まで含めるか)の3つです。逆に市が変わっても料金はほとんど変わりません。広域で営業している業者は複数の市で同じ料金表を出しています。だから「近所だから安い」とは考えず、同じ作業範囲で複数社に出してもらうのが確実です。親が亡くなった後の片付けで、費用を誰が負担するかや、公的な調査で見た実際の見積額は遺品整理の費用は誰が払う?で、家族でできる部分を増やす手順は遺品整理を自分でする手順で説明しています。
業者を選ぶ際のポイントは次のとおりです。
- 相見積もりを取る:複数社から見積もりを取り、内訳を比較する
- 許可・資格を確認する:一般廃棄物や古物商など、必要な許可を持つ業者か確認する
- 作業範囲を明確にする:仕分け・運び出し・清掃・買取の有無を事前に取り決める
- 追加料金の条件を確認する:見積もり後の追加請求トラブルを防ぐ
- ✓ 相見積もりに快く応じる
- ✓ 必要な許可・資格を明示できる
- ✓ 作業範囲を書面で明確にする
- ✓ 料金体系が明朗で追加条件も説明
- ✕ 見積もりが曖昧で後から追加請求
- ✕ 許可や資格を確認できない
- ✕ 作業範囲をはっきり示さない
- ✕ 契約内容を書面に残さない
注意したいのが、「無料回収」をうたって不当な追加料金を請求する悪質業者です。あまりに安い、あるいは無料をうたう業者には慎重に対応し、料金体系と許可の有無を必ず確認しましょう。費用は物量・間取り・地域によって大きく変わるため、あくまで目安として、複数社の見積もりを取って比べると相場感がつかめます。
実家じまいの費用の平均は?片付け・解体・売却・空き家維持の内訳
実家じまいにかかる費用を、片付けから売却まで合計した「平均」を示す公的な調査は、2026年10月時点で見当たりません。家の広さ、建物を残すか壊すか、売るまでの期間で、合計が大きく変わるためです。そこで、費用を項目ごとに分け、公的機関が公表している金額や計算のルールで確かめられるものを表にまとめました。
表のとおり、実家じまいの費用は「片付け」と「建物をどうするか」で大きく分かれます。建物を残したまま売るなら解体費はかかりませんが、売れるまでの固定資産税や管理の手間が続きます。壊して土地で売るなら解体費がかかり、更地になると住宅用地の特例も外れます。どちらが得かは家ごとに違うので、片付けの見積もりと同じ時期に、売却の査定と解体の見積もりもそろえて比べると判断しやすくなります。
売る・貸す・住み続けるの比べ方と税金の特例は実家を売る・貸す・住み続ける?費用と税金で比べる判断基準で、空き家のまま置いた場合の固定資産税は空き家を放置すると固定資産税は6倍?でくわしく説明しています。
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片付けの先にある「実家じまい」全体を見据える
片付けは実家じまいの入り口にすぎません。片付けを進めながら、実家を売る・貸す・住み続けるのか、認知症や相続にどう備えるのかまで見据えておくと、二度手間を避けられます。全体像は実家じまい、何から始めればいいかで解説しています。
よくある質問(FAQ)
親が片付けに反対します。どうすればいいですか?
「捨てる」ことを前面に出すと反発を招きます。「入院したときに困らないように」「大事なものを一緒に整理しよう」と、親の安心と参加を入り口にしましょう。親自身に残したいものを選んでもらう進め方が有効です。
業者に頼むと費用はどのくらいですか?
愛知県内の業者の公開料金では、1Kで2万3,000円〜8万円、2LDKで7万〜20万円、3LDKで11万〜24万円が目安です(2026年9月時点)。同じ間取りでも業者間で2倍以上ひらくため、相見積もりを取り、作業範囲(仕分け・運び出し・清掃・買取)をそろえたうえで比べてください。「無料回収」をうたう業者の不当請求には注意が必要です。
実家じまいの費用は、平均でいくらかかりますか?
片付けから売却までを合計した平均を示す公的な調査はありません。項目ごとに見ると、業者に頼む片付けは総務省の調査で見積もり10万〜40万円が多く、相続登記の登録免許税は評価額の0.4%、売却の仲介手数料は売買価格の3%+6万円+消費税が上限です。解体するかどうかで合計が大きく変わるため、片付け・解体・売却の見積もりをそろえて比べてください。
片付けで最初に気をつけることは?
通帳・権利証・保険証券・年金関係の書類など、重要書類を先に確保することです。勢いで処分すると、相続や手続きで必要な書類まで捨ててしまう恐れがあります。まず貴重品をまとめてから、処分を進めましょう。
仏壇や位牌は、どう片付ければよいですか?
仏壇や位牌は、そのまま捨てずに、お付き合いのあるお寺や仏具店に相談するのが一般的です。宗派や地域で作法が違うため、「魂抜き」などの供養が必要かどうかも、あわせて確認してください。ご家族や親族とも先に話しておくと、後でもめにくくなります。
実家が遠方で、片付けに通えません。どうすればよいですか?
通える日数が少ないときは、貴重品と重要書類の確認だけを自分たちで行い、大型の家具や大量の不用品は業者に頼む分け方が現実的です。業者に頼む場合も、立ち会いの日に貴重品の確認を終えておくと、見落としを防げます。実家全体の進め方は実家じまいの始め方をご覧ください。
参考にした公的情報
- 経済産業省・環境省「家電リサイクル法」(対象4品目と引き渡し方法)
- お住まいの市区町村の粗大ごみ・ごみ出しの案内(品目と手数料は自治体ごとに異なります)
- 民法 第1004条(遺言書の検認)
- 総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和2年3月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000675388.pdf - 国土交通省「令和7年度における住宅局所管事業に係る標準建設費等について」(除却工事費)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001984775.pdf - 名古屋市「名古屋市老朽危険空家等除却費補助金」
https://www.city.nagoya.jp/bousai/anzen/1034530/1014550/1034531/1014557.html - 国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム」関係資料(低廉な空家等の媒介報酬の特例)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf - 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
※ 業者の料金は、各社の公開情報をもとにした目安です(確認日:2026年10月9日)。実際の費用は見積書でご確認ください。
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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。複数の提携行政書士による監修体制で運営しており、特定個人の士業を推奨するものではありません。
