相続放棄の期限3か月はいつから?手続き・費用・してはいけないこと|愛知・岐阜

四十九日を終えた週末、名古屋市内の実家で郵便物を整理していると、父宛てのカード会社の封筒が何通か出てきました。開けてみると「お支払いのお願い」。預金より借りていたお金のほうが多いかもしれない。そう感じたときに思い浮かぶのが相続放棄です。

相続放棄には「3か月」の期限があります。この記事では、期限の数え方、家庭裁判所での手続きと費用、放棄できなくなる行為を順に整理します。愛知県・岐阜県の申述先(書類を出す家庭裁判所)の一覧も載せました。内容は2026年10月時点の裁判所の案内と民法で確かめています。

この記事の結論

  1. 期限は「自分が相続人になったと知った時から3か月以内」です。多くの場合は亡くなったことを知った日から数えます。間に合わないときは、3か月のうちに家庭裁判所へ期間を延ばす申立てができます。
  2. 書類は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に出します。費用は1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手、それに戸籍などの取り寄せ代です。
  3. 迷っている間は、遺産の預金を使う・物を売るなどの「処分」をしないことです。処分すると相続を受け入れたものとみなされ、放棄できなくなることがあります。
目次

相続放棄の期限は3か月|「いつから」数えるか

民法は、相続を受け入れるか放棄するかを「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に決めるよう定めています(民法915条)。この3か月を「熟慮期間(考えるための期間)」と呼びます。

生活の言葉にすると、「亡くなったこと」と「自分が相続人になったこと」の両方を知った時から3か月です。亡くなった日そのものではありません。場面ごとの目安は次のとおりです。

場面3か月の数え始め(一般的な考え方)
同居や近くに住む親が亡くなった亡くなったことを知った日。多くは亡くなった日と同じ
疎遠で、亡くなったことを後から知らされた知らせを受けて、自分が相続人だと分かった時
子どもが全員放棄し、親や兄弟姉妹が相続人になった先の人の放棄を知って、自分が相続人になったと分かった時
財産も借金もないと思っていたら、後から督促状が届いた原則は上と同じ。事情によっては、借金を知ってから3か月以内の申述が受理されることもある(家庭裁判所の判断)

(民法915条、名古屋家庭裁判所の相続放棄の案内資料をもとに作成。2026年10月時点。個別の起算点は家庭裁判所が判断します)

知った日は数に入れず、翌日から数えます(民法140条・143条)。たとえば10月8日に知ったなら、最終日は翌年1月8日です。つまり「知った日の3か月後の同じ日付」が最終日です。土日祝や年末年始に重なるときの扱いは、申述先に確かめておくと安心です。

亡くなった日から3か月を過ぎて申述するときは、いつ知ったかを示す書面(債権者からの通知書の写しなど)が要ることがあります(大阪家庭裁判所の案内)。届いた封筒は捨てずに取っておいてください。

3か月で決められないときは「期間の伸長」

3か月で決めきれないときは、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し立てると、期間を延ばしてもらえる場合があります(民法915条ただし書)。出す先は放棄と同じ家庭裁判所です。費用は相続人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です。この申立ても3か月のうちに出す必要があります。

手続きの流れ|申述から受理通知書が届くまで

相続放棄は、家庭裁判所に申述(申し出)をして、受理されて初めて効果が出ます。親族に「放棄する」と伝えただけでは、借金の支払いから外れません。遺産分割協議書に「何も受け取らない」と書く方法との違いは、「相続放棄してほしい」と言われたらで説明しています。

段階することポイント
1. 財産と借金を調べる通帳、郵便物、登記などで、プラスとマイナスを書き出す調べてよい期間として、法律でも認められている(民法915条2項)
2. 書類をそろえる申述書を書き、戸籍などを取り寄せる書式と記載例は裁判所のサイトにある
3. 家庭裁判所に出す窓口に出すか、郵送する収入印紙800円分と連絡用の郵便切手を付ける
4. 照会書が届く書面の質問に答えて返送する必要に応じて、裁判所での聴き取りが行われることもある
5. 受理通知書が届く大切に保管する名古屋家庭裁判所の案内資料では、受理までの目安は約1か月
6. 必要なら受理証明書を取る受理した家庭裁判所に申請する1件につき収入印紙150円分。債権者などに示すときに使う

(裁判所「相続の放棄の申述」、名古屋家庭裁判所の相続放棄の案内資料をもとに作成。期間の目安は時期や事情で変わります。2026年10月時点)

照会書が届いたら、指示と日付を確かめて早めに返送します。受理されなかったときは、2週間以内なら不服を申し立てられます(家庭裁判所の案内)。

自分で出せるか、専門家に頼むか

申述書は相続人本人が書いて出せます。書式と記載例は裁判所のサイトにあります。ただ、3か月を過ぎている、集める戸籍が多い、遺産の預金をすでに使った、債権者から連絡が来ている、といった場合は早めに専門家へ相談したほうが安心です。家庭裁判所に出す書類の作成を頼む先は司法書士か弁護士で、債権者との交渉や親族との争いは弁護士の仕事です。

必要な書類と費用|収入印紙800円と郵便切手

裁判所が示している標準的な書類は次のとおりです。同じ書類は1通で足ります。

だれが放棄するかそろえる書類
全員に共通相続放棄の申述書、亡くなった方の住民票除票または戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本
配偶者・子上に加えて、亡くなった方の死亡が書かれた戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本。孫が代わりに相続人になる場合は、亡くなった子の死亡が書かれた戸籍も
父母・祖父母上に加えて、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍など
兄弟姉妹・おい・めい上に加えて、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍、父母など直系尊属の死亡が書かれた戸籍など

(裁判所「相続の放棄の申述」をもとに要約。正確な一覧は出典ページで確認してください。2026年10月時点)

先に家族が同じ方の放棄を申述していれば、提出済みの書類は要りません。間に合わない戸籍は、あとから追加で出せる場合があります。戸籍の代わりに法定相続情報一覧図の写しを出せる場合もあります(申述先に確認)。

戸籍は、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できます(広域交付)。対象は本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍で、顔写真付きの身分証明書が要ります。郵送や代理人では請求できません(法務省)。兄弟姉妹の戸籍はこの方法では取れないので、時間に余裕を見てください。

費用は、放棄する人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。切手の金額は裁判所ごとに違うため、申述先の案内で確かめます。名古屋家庭裁判所は印紙と切手を売っていないので、郵便局などで先に買っておきます。ほかに戸籍などの取り寄せ代がかかります。

どこの家庭裁判所に出すか|愛知・岐阜の申述先

申述先は、亡くなった方の「最後の住所地」の家庭裁判所です。放棄する人の住所ではありません。岐阜市に住む子が、春日井市で亡くなった親の相続を放棄するなら、出す先は名古屋家庭裁判所(本庁)です。

申述先亡くなった方の最後の住所地
名古屋家庭裁判所(本庁)名古屋市、豊明市、日進市、清須市、北名古屋市、豊山町、東郷町、春日井市、小牧市、瀬戸市、尾張旭市、長久手市、津島市、愛西市、弥富市、あま市、大治町、蟹江町、飛島村
名古屋家裁 一宮支部一宮市、稲沢市、犬山市、江南市、岩倉市、大口町、扶桑町
名古屋家裁 半田支部半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町
名古屋家裁 岡崎支部岡崎市、幸田町、安城市、碧南市、刈谷市、西尾市、知立市、高浜市、豊田市、みよし市
名古屋家裁 豊橋支部豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市、新城市、設楽町、東栄町、豊根村
岐阜家庭裁判所(本庁)岐阜市、関市、美濃市、羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、岐南町、笠松町、北方町、下呂市のうち金山振興事務所の区域
岐阜家裁 郡上出張所郡上市(岐阜家裁本庁でも受け付け)
岐阜家裁 大垣支部大垣市、海津市、養老町、垂井町、関ケ原町、神戸町、輪之内町、安八町、揖斐川町、大野町、池田町
岐阜家裁 御嵩支部美濃加茂市、可児市、坂祝町、富加町、川辺町、七宗町、八百津町、白川町、東白川村、御嵩町
岐阜家裁 多治見支部多治見市、瑞浪市、土岐市
岐阜家裁 中津川出張所中津川市、恵那市
岐阜家裁 高山支部高山市、飛騨市、白川村、下呂市(金山振興事務所の区域を除く)

(裁判所「申立書提出先一覧」愛知県・岐阜県の家庭裁判所をもとに作成。2026年10月時点。町村名は郡名を省略)

名古屋家庭裁判所の本庁には「即日審判」がある

名古屋家庭裁判所の本庁では、条件が合えば、申述したその日に受理通知書などを受け取れる「即日審判」を行っています。支部では行っていません。条件は、配偶者か第1順位の相続人(子など)が申述すること、亡くなった日から3か月以内であること、亡くなった方が外国人でないことなどです。

午前9時〜11時の受付は正午ごろ、午前11時〜午後2時(昼休みを除く)の受付は午後3時ごろに交付されます。3月21日〜4月4日、7月21日〜8月31日の午後、12月20日〜28日は行っていません。申し出のときに希望を伝え、認印と身分証明書を持っていきます。審査の結果、当日に審判できないこともあります(名古屋家庭裁判所「相続の放棄の申述」)。

相続放棄の前後にしてはいけないこと

相続財産の全部または一部を「処分」すると、相続をそのまま受け入れた(単純承認した)ものとみなされます(民法921条1号)。名古屋家庭裁判所の案内資料も、遺産の一部を処分したときは放棄は認められない、としています。処分の内容や理由によっては受理されることもありますが、ここでは一般論として、避けたい行為を挙げます。

  • 遺産の預金を引き出して使う、解約する:亡くなった方の口座のお金は遺産です。葬儀費用などの扱いは事情で分かれるので、使う前に確かめてください。
  • 家や車、株などを売る・名義を変える:典型的な処分に当たります。
  • 遺産から借金を返す:よかれと思って返しても、遺産の処分と見られるおそれがあります。
  • 値打ちのある品を持ち帰る・形見分けする:品物の価値によっては処分と見られるおそれがあります。
  • 遺産分割協議書に署名・押印する:遺産の分け方を決めることに加わると、相続を受け入れたと見られるおそれがあります。
  • 放棄したあとに遺産を隠す・使い込む:放棄の後でも、相続を受け入れたものとみなされます(民法921条3号)。

一方、財産の価値を保つための最低限の行為(保存行為)は、法律上の例外です(民法921条1号ただし書)。どこまでが保存行為かは個別に判断されます。

もう一つ、相続放棄は3か月の期間内でも撤回できません(民法919条1項)。「とりあえず出して、あとで取り消す」ことはできないので、財産を調べてから決めてください。

放棄すると次の順位の人が相続人になる|家族への連絡

放棄した人は「初めから相続人とならなかったものとみなす」とされます(民法939条)。すると、相続の権利と借金は次の順位の人に移ります。

順位相続人になる人この順位の人が全員放棄すると
いつも配偶者配偶者が放棄しても、ほかの順位には影響しない
第1順位子(子が先に亡くなっていれば孫)第2順位の人が相続人になる
第2順位父母(いなければ祖父母)第3順位の人が相続人になる
第3順位兄弟姉妹(先に亡くなっていればおい・めい)配偶者もいなければ、相続人がいなくなる

(民法887条・889条・890条・939条をもとに作成。2026年10月時点)

子が放棄しても、その子ども(孫)が代わりに相続人になることはありません。孫が代わりに相続人になるのは、子が先に亡くなっている場合などです(民法887条2項)。

子が全員放棄すると、借金の話は亡くなった方の親や兄弟姉妹に移ります。知らないうちに相続人になり、ある日督促状が届くこともあります。次の順位の人の3か月は、その人が「自分が相続人になった」と知った時から数えるのが原則です。受理されたら、受理通知書の写しを添えて早めに知らせてください。なお、先の順位の人の放棄が受理されるまで、後の順位の人は申述できません(名古屋家庭裁判所の案内資料)。

放棄した人でも、遺産の家などを実際に手元で管理しているときは、次の人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で守る必要があります(民法940条1項)。

まだ迷っている段階でできること|財産と借金の調べ方

放棄するかどうかは、プラスとマイナスの財産を比べて決めます。次の順に資料を集めると、見落としが減ります。

  1. 郵便物を1か所に集める:カード会社の明細、督促状、銀行や証券会社の通知は、借入れや口座の手がかりです。
  2. 通帳の引き落とし欄を見る:毎月同じ相手への引き落としがあれば、ローンやカードの返済かもしれません。住宅ローンが残っている場合は、団信で消える分・残る分も確かめます。
  3. 不動産を調べる:固定資産税の納税通知書や、市町村の名寄帳で分かります。全国のどこに不動産があるか分からないときは、所有不動産記録証明制度も使えます。
  4. 借入れの記録を確かめる:信用情報機関に開示を求める方法もあります。相続人として申し込めるか、何が必要かは、各機関の窓口で確かめてください。

あなたが死亡保険金の受取人になっている場合は、税の扱いも確かめておきます。国税庁の案内では、相続を放棄した人が受け取った死亡保険金には、非課税の枠(500万円×法定相続人の数)が使えません。保険金と遺産の関係は死亡保険金は遺産分割の対象になるかで説明しています。

見通しが立たないときは、期間の伸長を考えます。名古屋家庭裁判所の本庁では、伸長にも即日審判があります(延ばす先が亡くなった日から6か月以内の場合など)。相続人に認知症の方がいるときは、先に成年後見人を選ぶ必要があります。後見人は、選任の審判が確定してから3か月以内に手続きをとれます(名古屋家庭裁判所の案内資料)。

今日できる一歩

1. カレンダーに最終日を書き込む。自分が相続人になったと知った日(多くは亡くなったことを知った日)の、3か月後の同じ日付が最終日です。その1〜2週間前に「書類を出す日」も書いておきます。

2. 郵便物と通帳を1つの箱に集める。借入れらしいものには付箋を貼ります。封筒は捨てずに取っておきます。

3. 遺産には手をつけず、申述先を確かめる。上の表で、亡くなった方の最後の住所地から家庭裁判所を確かめます。

相談現場から

よく伺うのは「亡くなって3か月を過ぎたから、もう放棄はできない」という思い込みです。後から借金を知った場合など、事情によっては受理されることもあるため、あきらめる前に一度確かめる価値があります。逆に多いのが「自分が放棄すれば家族みんな関係なくなる」という勘違いです。放棄すると、借金の話は親や兄弟姉妹に移ります。放棄を決めたら、次に相続人になる人への連絡まで含めて段取りを組むと、家族の中で慌てずに済みます。

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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。3か月の数え始めや、ある行為が「処分」に当たるかどうかは、個別の事情によって家庭裁判所が判断します。実際の手続きは、申述先の家庭裁判所の案内を確かめたうえで、必要に応じて司法書士・弁護士にご相談ください。

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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