この夏の帰省で、一度だけ家族で話してみませんか。今のうちにできる備えは生前対策診断で、持ち帰って書けるシートは「わが家の安心メモ」からどうぞ。
実家に帰ったのは、庭の草が伸びすぎていると近所の方から連絡をもらったからでした。玄関の鍵を開けると、郵便受けからあふれたチラシと、こもった湿気のにおい。誰も住んでいないだけなのに、家はこんなに早く傷むのかと驚きます。「そのうち何とかしよう」と思いながら、気づけば1年近くが過ぎていました。
この記事の結論(30秒まとめ)
- 実家を空き家のまま放置すると、住宅用地の固定資産税特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍相当になる可能性があります。
- 2023年の法改正で「管理不全空家等」の区分ができ、特定空家等になる前の段階でも自治体の指導・勧告の対象になり得ます。
- 老朽化した建物が倒壊した場合、所有者は民法717条にもとづき、隣家や通行人への損害賠償責任を負う可能性があります。
- 相続登記は2024年4月から義務化されており、空き家と一緒に登記も放置すると10万円以下の過料の対象になり得ます。
- 「売る・貸す・管理サービスに頼む・解体する」の4つの選択肢を、家庭の事情に合わせて早めに検討することが負担を抑える近道です。
「まだ誰も困っていないから」「実家を手放すのは気が引ける」——そう思って先送りにしているあいだにも、実際に重くなっていくのは気持ちの問題ではなく、固定資産税や倒壊リスクといった数字で測れる負担です。しかも実家を空き家のまま放置している家庭ほど、相続登記の手続きも後回しになりがちで、2024年の義務化によって新たな過料のリスクまで重なるようになりました。だから、この記事では、放置を続けた場合に何がどう変わっていくのかを時系列で示したうえで、今すぐ検討できる4つの選択肢と、親が元気なうちにできる予防までをまとめました。
放置した実家はどうなる?半年〜3年以上でみる時系列リスク
国土交通省の「平成26年空家実態調査」によれば、空き家を取得した経緯のうち56.4%が「相続」となっています。つまり、実家が空き家になる一番のきっかけは、多くの場合、親などの所有者から相続したことそのものです。「売却するか」「住むか」を決めないまま名義だけが変わり、結果として建物には誰も住まなくなる——このパターンが空き家の主因であるとされています。
放置期間が延びるほど、実家に起きる変化は段階的に進んでいく傾向があります。断定はできませんが、目安として次のように整理できます。
- 半年〜1年程度:庭の雑草が伸び、害虫が発生しやすくなり、郵便受けにチラシや郵便物が滞留しはじめる。
- 1〜3年程度:換気や通水がされないことで建物の傷みが進みやすくなり(雨漏り・カビ・シロアリなど)、近隣とのトラブルや自治体への相談が増えやすくなる。
- 3年以上:老朽化が進み倒壊リスクが顕在化しやすくなるほか、「特定空家等」に指定されるリスク、相続登記を怠ったことによる過料の対象になるリスクが重なりやすくなる。
実家をどう扱うか、何から手をつければよいか迷っている場合は、実家じまい、何から始めればいい?で全体の進め方を確認しておくと、次の一歩が見えやすくなります。
固定資産税が最大6倍に?放置で外れる住宅用地の特例
住宅が建っている土地には、固定資産税の負担を抑えるための「住宅用地の特例」が設けられています。具体的には、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は3分の1に軽減される仕組みです。実家の敷地がこの特例の対象になっている場合、建物が建っているというだけで、更地に比べてかなり低い税額に抑えられていることになります。
管理が行き届かない状態が続き、自治体から「特定空家等」または「管理不全空家等」に指定されて指導・勧告を受けると、住宅用地の特例の対象から除外されます。結果として、土地にかかる固定資産税が、特例を受けていたときと比べて最大6倍相当まで上がる可能性があります。建物を解体して更地にした場合も、同様に住宅用地としての扱いがなくなるため、税額が上がる点には注意が必要です。
まだ実家が空き家になっていない、あるいは親が存命で今後の相続に備えたいという段階であれば、空き家にする前にすべき生前対策で、税金・管理・売却の面から事前にできる備えを解説していますので、あわせてご覧ください。
「特定空家等」「管理不全空家等」に指定されるとどうなるか
「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、管理が不十分な空き家に対して自治体が指導・勧告・命令などの措置を取れるようにする法律です。2023年の改正で新たに「管理不全空家等」という区分が設けられ、倒壊のおそれなど状態が著しく悪化した「特定空家等」になる前の段階でも、自治体からの指導や勧告の対象になり得るようになりました。
指導や勧告を受けても改善が見られない場合、命令、さらには行政代執行(自治体が所有者に代わって解体などを行い、その費用を所有者に請求する仕組み)に至る可能性もあります。所有者としては、自治体からの通知や現地確認の連絡を放置せず、早い段階で状況を自治体の窓口に相談しておくことが、リスクを大きくしないための現実的な対応です。
実家が誰の名義になっているかがあいまいなまま指導を受けると、対応が遅れやすくなります。実家の名義、誰のものか確認する方法で、まず名義の確認方法を押さえておくと安心です。
倒壊・損害賠償のリスクも他人事ではない
空き家は人の出入りがなく、換気や補修が行われないため、屋根や外壁、基礎部分の劣化が進みやすくなります。老朽化した建物が倒壊したり、瓦や外壁材が落下したりして、隣家や通行人に被害を与えてしまった場合、所有者は民法717条(工作物責任)にもとづき、損害賠償責任を問われる可能性があります。
具体的な賠償額は建物の状態や被害の内容によって大きく異なるため、この記事では断定的な金額は示しません。ただし、所有者が「気づかなかった」「遠方に住んでいて把握していなかった」という事情があっても、責任を免れるとは限らない点は、リスクとして知っておく必要があります。台風や地震などをきっかけに一気に被害が表面化するケースもあるため、老朽化が進む前に対応を検討しておくことが望ましいといえます。
このようなリスクを避けるためにも、実家を「どうするか」を早めに決めておくことが重要です。実家を売る・貸す・住み続ける、どう選ぶ?では、判断基準をより詳しく比較しています。
売る・貸す・管理サービスに頼む・解体する──4つの選択肢の選び方
実家をどうするか、選択肢は大きく4つに整理できます。それぞれ向いている家庭の傾向を、判断の目安とあわせて紹介します。
- 売却:相続人の誰も住む予定がなく、立地に一定の需要が見込める場合に向いています。特に駅からの距離が近い、市街化区域内にあるなど、買い手がつきやすい条件がそろっているケースでは、現金化して相続人間で分けやすくなるメリットがあります。
- 賃貸:建物の状態がまだ良く、リフォーム費用をかけても賃料収入で回収できる見込みがある場合に向いています。管理の手間や空室リスクを許容できるかどうかも判断材料になります。
- 管理サービスに頼む:売却や活用の方針をまだ決めきれていないが、遠方に住んでいて頻繁に見に行けない場合の「つなぎ」の対応として向いています。月数千円程度から巡回・通風・簡易清掃などを依頼できるサービスがあり、方針が決まるまでの管理不全化を防ぐ役割を果たします。
- 解体:老朽化が進み倒壊リスクが高い、または更地にして売却・活用する方針がすでに固まっている場合に向いています。解体費用はかかりますが、倒壊や損害賠償のリスクを断つことができます。前述のとおり、解体後は住宅用地の特例が外れるため、更地の固定資産税は建物があったときより高くなる点は事前に把握しておく必要があります。
実務知見:当窓口の相談から
当窓口に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です。ある家庭では、実家の活用方針が決まらないまま数年が過ぎ、近隣から「庭木が越境している」と連絡を受けたことをきっかけに相談にいらっしゃいました。相続人3人の意見がそれぞれ違ったため、まず管理サービスで応急的に管理不全の状態を止めたうえで、半年ほどかけて話し合いを重ね、最終的に解体のうえ土地を売却する方針でまとまりました。方針が決まるまでの「つなぎ」の一手を持っておくことで、判断を急ぎすぎずに済んだケースです。
実際にどのような判断で選択肢を決めていったのか、より具体的な流れを知りたい場合は、実家じまいの相談事例もあわせてご覧ください。
空き家の放置は「相続登記の放置」も招きやすい
実家を空き家のまま放置している家庭では、建物の管理だけでなく、名義変更(相続登記)も後回しになっているケースが少なくありません。しかし2024年4月1日から、相続登記の申請は義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記の申請をしないと、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料の対象になり得ます。
「誰も困っていないから」と実家の管理を先送りにする家庭は、同じ理由で登記の手続きも先送りにしがちです。しかし、空き家の管理を怠ったことによる固定資産税の増額リスクと、登記を怠ったことによる過料のリスクは、別々の制度でありながら「放置」という同じ行動から同時に発生します。実家の名義が誰になっているかを確認することは、空き家対策と相続登記対策の両方に共通する最初の一歩です。
相続登記だけでなく、登記名義人の住所や氏名が変わった場合の変更登記も2026年4月から義務化されています。住所等変更登記の義務化|自分でやれば1物件1,000円もあわせて確認しておくと安心です。
親が元気なうちにできる予防──生前対策への一歩
ここまで、すでに空き家になっている、またはなりつつある実家を前提に、放置を続けた場合のリスクを見てきました。一方で、親がまだ存命で実家に住んでいる、または元気なうちであれば、今からできる予防があります。
- 名義の確認:実家の登記が誰の名義になっているか、共有者がいないかを事前に確認しておく。
- 家族での方針決め:将来、誰が実家を引き継ぐのか、売却するのか、どのタイミングで判断するのかを、相続が発生する前に家族で話し合っておく。
- 遺言書での承継先の明確化:実家を含む不動産の承継先を遺言書で明確にしておくと、相続開始後の名義変更や活用の判断がスムーズになりやすい。
これらは、実家がすでに空き家になってしまってからでは選択肢が狭くなりがちな対策です。まだ実家が空き家になっていない方、または親が存命の方は、事前にできる生前対策を空き家にする前にすべき生前対策で解説していますので、あわせてご確認ください。相続人間で意見が分かれそうな場合は、もめる相続リスク診断で、話し合いの前に論点を整理しておく方法もあります。
すでに実家の活用方針が固まっていて、売却や賃貸の手続きも自分たちで進められる見通しがある場合、無理に専門家へ依頼する必要はありません。固定資産税の特例や相続登記の期限など、必要な情報を確認しながらご自身で進められるのであれば、それで十分です。
そのうえで、判断に迷う点が1つでもあるようでしたら、30分の整理面談(無料)でご一緒に確認できます。
セルフチェック:今の実家はどの段階にあるか
次の5つのうち、当てはまるものがいくつあるか数えてみてください。
- 実家に人が住まなくなってから1年以上経っている
- 庭の手入れや郵便物の回収を、直近3か月以上できていない
- 建物の外壁や屋根に、目に見える傷み(ひび割れ・雨漏りなど)がある
- 実家の名義が誰になっているか、正確に把握していない
- 相続人の間で「売る」「貸す」「残す」の方針がまだ決まっていない
0〜1個該当:ご自身で対応を進められる可能性が高い状況です。この記事で紹介した時系列や選択肢を参考に、無理のない範囲で計画を立てていただければと思います。そのうえで、判断に迷う点が1つでもあれば、30分の整理面談(無料)でご一緒に確認できます。
2〜3個該当:放置が進みつつある段階です。固定資産税の特例や相続登記の期限に関わる論点がある可能性が高いため、生前対策診断で状況を整理するか、直接相談で早めに確認することをおすすめします。
4個以上該当:管理不全化・倒壊・過料など複数のリスクが重なりやすい段階です。自治体からの指導・勧告に発展する前に、30分の整理面談(無料)で早めに状況を整理することをおすすめします。
よくある質問
Q. 空き家をそのままにしておくと、必ず固定資産税が6倍になりますか?
必ずではありません。「特定空家等」または「管理不全空家等」に指定され、自治体からの指導・勧告を受けて住宅用地の特例の対象から除外された場合に、土地の固定資産税が最大6倍相当まで上がる可能性がある、という仕組みです。管理が行き届いていれば、直ちに特例が外れるわけではありません。
Q. まだ近所からの苦情もなく、特に困っていません。それでも今から動く必要がありますか?
困りごとが表面化していない段階こそ、選択肢が多く残っています。放置期間が延びるほど、建物の傷みや倒壊リスク、特例除外の可能性が段階的に高まりやすくなる一方、早い段階であれば売却・賃貸・管理サービスなど選べる対応の幅は広いままです。「困っていないうち」に方針だけでも決めておくことが、結果的に負担を小さくします。
Q. 相続登記をしていない実家でも、固定資産税の特例除外や倒壊のリスクはありますか?
はい。固定資産税の課税や、自治体からの指導・勧告、倒壊した場合の損害賠償責任は、登記の有無にかかわらず、実質的な所有者(相続人)に及ぶ可能性があります。登記をしていないことが、リスクを避ける理由にはなりません。
Q. 相続人が複数いて、まだ誰が実家を引き継ぐか決まっていません。それでも相談できますか?
方針が決まっていない段階でのご相談も可能です。むしろ、方針が決まる前に一度整理しておくことで、話し合いがまとまりやすくなるケースもあります。相続人間で意見が分かれそうな場合は、もめる相続リスク診断で論点を整理する方法もあります。
Q. 相談に費用はかかりますか?
30分の整理面談は無料です。当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。
実家の空き家、放置する前に整理しませんか
当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務判断を保証するものではありません。固定資産税の特例や相続登記の義務化に関する具体的な取り扱いは、お住まいの自治体・法務局または税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。