実家の片付けをしていたら、押し入れの奥や仏壇の引き出しから、封筒に入った現金が出てきた。親が「家に置いておく方が安心」と言っていたお金かもしれません。これも相続税の申告に入れるのか、黙っていたら分かるのか、時効はあるのか。迷う方は少なくありません。
この記事では、亡くなった人が家に置いていた現金(タンス預金)の相続税の扱いを、2026年10月時点の国税庁の資料と法律で確かめられる範囲で整理します。税務署が把握する仕組み、時効の数え方、申告の正しい手順と加算税をまとめました。生前に親から現金で受け取ったお金(贈与)の話は、生前贈与の現金手渡しはバレる?で扱っています。
先に結論:タンス預金も相続税の対象。時効を待つより、自分から申告する方が負担は軽い
この記事の結論
- 相続税の対象:家に置いていた現金も、亡くなった日の金額で相続財産に入ります。申告書では「現金」として書きます。
- 時効:税務署が税額を決められる期間は、申告期限から原則5年です。偽りや不正があれば7年になります(国税通則法70条)。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。
- 正しい申告:期限を過ぎても、税務署の調査の通知が来る前に自分から申告すれば、無申告加算税は5%で済みます(国税通則法66条)。調査を受けてからだと15%以上、隠していれば重加算税40%です。
相続税の申告が要るかどうかは、現金だけでは決まりません。預金や不動産などを合わせた合計が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」(基礎控除)を超えるかで決まります。目安は相続税はいくらから?の早見表で確かめられます。
タンス預金とは?相続税では「現金」として数えます
タンス預金は法律の言葉ではありません。銀行に預けず、家で保管していた現金を指す呼び方です。国税庁は、相続税がかかる財産の例として、預貯金と並べて「現金」を挙げています。置き場所がタンスでも金庫でも仏壇でも、亡くなった日に本人のお金として家にあれば、相続財産です。
- 数える基準日:亡くなった日に手元にあった金額です。
- 申告書での書き方:第11表の付表3(現金・預貯金等用)に「現金」として書きます。
- 家族の名前の封筒でも:中身が本人のお金なら、本人の財産として数えます。家族名義の口座に入っているお金の考え方は名義預金と相続税で説明しています。
現金の数え方、どこにあったお金が対象になるかの早見表、遺産分割協議書での書き方は、手許現金とは(相続税申告での扱い)で詳しく説明しています。
タンス預金はなぜ税務署に分かるのか(公表されている仕組み)
「家にあった現金は記録がないから分からない」と考える方もいます。ただ、法律や国税庁の公表資料を見ると、税務署には亡くなった人の情報が集まる仕組みがあります。公表されている範囲で整理します。
相続税の調査は、実際に行われています。国税庁によると、令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件で、そのうち7,826件(82.3%)で申告漏れなどが見つかりました。申告をしていなかった人への実地調査は650件で、562件で申告漏れが見つかっています(国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」2025年12月)。
税務署から書類が届いたときの読み方と答え方は、税務署から「相続についてのお尋ね」が届いたらにまとめています。
「ばれないか」で考えないほうがよい理由
- 申告の義務は、分かるかどうかと関係がない:財産の合計が基礎控除を超えれば、現金も含めて申告するのが決まりです。
- あとから分かったときの負担が重い:加算税と延滞税がかかります。隠していたと判断されると、さかのぼれる期間が7年に延び、重加算税は40%です。
- 家族の間の問題にもなる:現金を見つけた人がほかの相続人に伝えないと、遺産分割のやり直しや争いの原因になります。考え方は相続時の財産隠しは犯罪?で説明しています。
相続税の時効は5年・7年。いつからいつまでかの数え方
相続税にも、税務署が税額を決めたり直したりできる期間の決まりがあります(国税通則法70条)。数え始めは亡くなった日ではなく、申告期限です。
つまり、亡くなってから数えると5年10か月ほど、隠していた場合は7年10か月ほどの間は、税務署が税額を決められます。申告を単に忘れていたのか、現金を隠したり事実と違う説明をしたりしたのかで、期間と加算税の重さが変わります。どちらに当たるかは、事実に基づいて判断されます。
「時効まで待つ」が得策でない理由
待っている間も延滞税は増えていきます。途中で調査を受ければ、自分から申告した場合よりも重い加算税がかかります。現金を隠していたと見られれば、7年と重加算税の対象です。さらに、ほかの相続人との関係にも影を残します。申告が必要だと分かった時点で、税理士か税務署に相談する方が、結果として負担は小さくなります。
申告していなかった・あとで見つかったときの手順と加算税
加算税は、いつ、どんな形で申告したかで割合が変わります。自分から早めに動くほど軽くなる仕組みです。
タンス預金が見つかったときの正しい手順
- 家族2人以上で数えて記録する。置き場所ごとの金額、数えた日と人の名前を書き、封筒ごと写真に撮ります。
- ほかの相続人に伝える。見つけた人だけで分けたり使ったりしません。
- 預金や不動産と合わせて合計を出す。基礎控除を超えるかを確かめます。
- 申告の状況に合わせて動く。まだなら期限内に申告します。期限を過ぎていれば期限後申告、すでに申告済みなら修正申告です。いずれも、税理士か税務署に相談しながら進めます。
- 遺産分割協議書に現金を書く。申告書と同じ金額にそろえます。
申告期限の数え方と、遅れたときの延滞税の考え方は相続税の申告期限10か月の数え方で説明しています。期限後申告と修正申告のどちらに当たるか、申告書を出す税務署(愛知県の管轄)は相続税を申告しないとどうなる?の判定表で確かめられます。
現金のほかに、預金・自宅・保険など、何から手を付ければよいか分からないときは、30分の無料相談で一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。
タンス預金で家族の話がこじれやすい3つの場面
現金は通帳のような記録がないぶん、相続人どうしで受け止め方がずれやすい財産です。よくある場面と、先に決めておきたいことを並べます。
葬儀費用として差し引けるもの・差し引けないものは、国税庁が示しています(タックスアンサーNo.4129)。お寺や葬儀社への支払いは差し引けますが、香典返しや法要の費用、墓地や墓石の購入費は含まれません。
親がタンス預金をしているとき、元気なうちにできること
家に現金を置く理由は、銀行に行くのが大変、手元にないと不安など、人それぞれです。責めずに、次のことを話しておくと、のちの手続きが楽になります。
- 置き場所と、だいたいの金額を家族に伝えておく:亡くなったあとに探し回らずに済み、数え漏れも防げます。
- 当面使わない分は口座に戻すことを考える:盗難や火事の心配が減り、残高が記録として残ります。
- 子や孫に現金で渡すなら記録を残す:贈与になるお金です。渡し方と残す記録は現金手渡しの記事にまとめています。
親の預金や自宅のことを、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
今日できる一歩
家で見つかった現金を、置き場所ごとに数えて紙に書き、今日の日付と数えた人の名前を添える。封筒のまま写真を撮り、ほかの相続人にも同じ内容を伝える。
よくある質問
タンス預金は相続税の申告に必ず入れるのですか
申告が必要な場合は、亡くなった日に家にあった現金も「現金」として申告書に書きます。少額だから書かなくてよいという基準は、国税庁の資料には示されていません。財産全体が基礎控除以下で、特例も使わないなら、申告そのものが要らないこともあります。
タンス預金の相続税に時効はありますか。何年ですか
税務署が税額を決められる期間は、申告期限から原則5年、偽りや不正があれば7年です(国税通則法70条)。申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月なので、亡くなってからだと5年10か月ほど、または7年10か月ほどになります。
なぜタンス預金は税務署に分かるのですか
死亡届の情報が市区町村から税務署へ通知され(相続税法58条)、国税の情報は全国でまとめて管理されています。現金そのものに記録はなくても、預金から下ろした記録は金融機関に残り、調査では預金先などに質問できます(国税通則法74条の3)。
亡くなる前に下ろして家に置いていたお金も対象ですか
亡くなった日に家に残っていれば、その金額は現金として相続財産に入ります。病院代などに使い切った分は残っていません。使い道が分からない大きな出金があるときは、通帳を持って税理士に相談すると確実です。
申告したあとにタンス預金が見つかったら、どうすればいいですか
修正申告をします。見つけた時点で、申告を頼んだ税理士か税務署に伝えます。調査の通知が来る前に自分から出す方が、加算税は軽くなります。遺産分割協議書もあわせて見直します。
タンス預金を相続人で分けるときの書き方は
遺産分割協議書に「被相続人の手許現金 金○○円」のように、亡くなった日の金額と受け取る人を書きます。書き方の考え方は手許現金の記事にまとめています。
参考にした公的情報
- e-Gov法令検索「国税通則法」第66条・第68条・第70条・第74条の3
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066 - e-Gov法令検索「相続税法」第58条
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073 - 国税庁 タックスアンサー「No.4105 相続税がかかる財産」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm - 国税庁 タックスアンサー「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm - 国税庁 タックスアンサー「No.4205 相続税の申告と納税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm - 国税庁「国税庁レポート2024」納税者サービスの充実と行政効率化(KSKシステム)
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/2024/03_5.htm - 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(2025年12月)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公開情報をもとにした一般的な整理です。申告が必要か、どの加算税に当たるかなどの判断は、財産の状況や事実関係で変わります。個別の申告や税額については、税理士または税務署にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
