空き家にする前の生前対策|実家の名義・費用・公的制度チェックリスト

親が施設に入ったり、亡くなったりして、実家が「空き家」になる——このとき、事前の備えがあるかないかで、その後の負担は大きく変わります。空き家は、放置すると管理の手間・費用がかかるうえ、税負担が増えたり、資産価値が下がったりします。空き家になってから慌てるのではなく、そうなる前の「生前」に手を打っておくことが重要です。

この記事では、愛知県内で相続・生前対策のご相談を受けている当社の視点から、実家が空き家になる前にすべき生前対策を、相続が発生する前の段階に焦点を当てて、中立の立場で整理します。

すでに相続した家を売る場合の手順と、空き家の3,000万円特別控除の条件は、相続した家の売却で確認できます。

目次

空き家を放置すると起きる問題

まず、なぜ対策が必要かを確認しましょう。空き家を放置すると、次のような問題が生じやすくなります。

  • 建物の老朽化が進み、資産価値が下がる
  • 庭木・雑草・害虫・不法投棄など、近隣トラブルの原因になる
  • 管理のための交通費・光熱費・修繕費が継続的にかかる
  • 管理が著しく不十分だと「特定空家」等に指定され、固定資産税の住宅用地の軽減が外れて税負担が増える可能性がある

特に見落とされがちなのが税負担です。住宅が建つ土地は固定資産税が軽減されていますが、管理不全な状態が続くとこの軽減が受けられなくなる場合があり、結果として「空き家のまま持ち続けるほど損」という事態にもなりかねません。

⚠️ 見落としやすい税負担のリスク

管理が著しく不十分で「特定空家」等に指定されると、それまで受けていた固定資産税の住宅用地の特例(軽減)が外れるおそれがあります。軽減が外れると土地の固定資産税が上がり、「空き家のまま持ち続けるほど負担が重くなる」状態になりかねません。適切に管理するか、売却・活用の方向性を早めに決めておくことが、余計な負担を避けるポイントです。

空き家にする前にすべき生前対策

📝 空き家にする前にすべき4つの生前対策

対策 主なねらい 効いてくる場面
1. 名義を確認・整理 古い名義を放置せず、相続登記の要否を早めに把握 売却・活用
2. 認知症リスクに備える 家族信託などで、判断能力を失っても管理・処分を継続最重要 管理・売却
3. 「売る・貸す・住む」を決める 家族で方向性を共有し、いざというとき迷わない 売却・活用
4. 遺言で承継先を明確化 空き家をめぐる相続人間の争いを防ぐ 相続後の管理

1. 名義を確認・整理しておく

実家の名義が、すでに亡くなった祖父母のままになっていると、売却や活用の前に相続登記が必要になり、手間と時間がかかります。空き家にする前に名義を確認し、必要なら整理しておきましょう。確認方法は実家の名義、誰のものか確認する方法で解説しています。

2. 認知症で「売れなくなる」リスクに備える

最も重要な対策がこれです。親が認知症などで判断能力を失うと、実家を売却したくても、本人が契約できないため原則として売れなくなります。空き家の維持費だけがかさむ、という事態を避けるには、元気なうちに、柔軟に不動産を管理・処分できる家族信託を設計しておく方法があります。信頼できる家族に管理・処分の権限を託しておけば、親が認知症になっても空き家の売却や活用を進められます。

3. 「売る・貸す・住む」の方向性を決めておく

空き家にする前に、その先どうするのかを家族で話し合っておくと、いざというときに迷いません。売却・賃貸・活用それぞれの判断基準は実家を売る・貸す・住み続ける、判断基準で解説しています。自宅を活かして老後資金を得るリバースモーゲージも選択肢の一つです。「親が元気なうちに名義を子に移しておく」「生きているうちに売ってしまう」という案が出たら、先に税金の違いを確かめてください。生前の名義変更は登記の税金が相続の5倍になる一方、売却は親が売主のうちのほうが3,000万円控除を使いやすいという、逆向きの関係があります(実家を親が生きているうちに名義変更・売却するとどうなる)。

4. 遺言で承継先を明確にしておく

相続が起きたとき、空き家を「誰が引き継ぐか」が決まっていないと、相続人の間で押し付け合いになりがちです。遺言書で承継先を明確にしておくと、相続後の空き家をめぐる争いを防げます。実家じまい全体の進め方は実家じまい、何から始めればいいかをご覧ください。

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実家が空く前に、何をしておくべきか

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空き家は全国で900万戸|実家が空き家になる前に知っておきたい数字

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年4月公表)では、全国の空き家は約900万戸で過去最多、全住宅の13.8%にのぼります。そのなかで、売ったり貸したりする予定のない「その他の空き家」の多くが、実家のように持ち主が高齢になって使われなくなった家です。

空き家のまま持ち続けると、次のようなお金と手間がかかり続けます。

毎年かかるもの 内容
固定資産税・都市計画税住んでいなくても毎年かかる。管理不全の状態で勧告を受けると、土地の軽減(住宅用地の特例)が外れることがある
火災保険・水道光熱の基本料金空き家になると保険の扱いが変わることがあるため、保険会社への連絡が必要
草刈り・見回り・修繕遠方の場合は交通費もかかる。庭木や屋根の傷みは近所の迷惑につながりやすい
片付けの費用家財が残ったままだと売却や賃貸の前に必ず必要になる(片付けでつらくなったときは遺品整理で気持ちが落ち込むときも参考に)

※ 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」、空家等対策の推進に関する特別措置法(令和5年12月改正施行)をもとに作成。

実家が空き家になる前にやることの順番

「何から手をつければよいかわからない」という方が多いため、親が元気なうちから空き家になってからまでの順に、チェックリストにまとめました。

空き家にしないためのチェックリスト

親が元気なうち

  • 登記簿で家と土地の名義を調べ、親の名義になっているか確かめる
  • 家族で「この家を将来どうするか」を一度話し合う
  • 家の中の物を少しずつ減らす(生前整理のやり方)
  • 権利証(登記識別情報)や固定資産税の通知書の保管場所を共有する

親が施設に入る・入院するとき

  • 月に1回は風通しや見回りをする人を決める
  • 火災保険の契約者と保険会社に、住まない状態になることを連絡する
  • 売る・貸す・残すのどれにするか、期限を決めて検討を始める

親が亡くなったら

  • 相続人を確定し、家の相続登記を3年以内に行う(正当な理由なく怠ると過料の対象)
  • 相続人の間で、誰が引き継ぐか、売るかを話し合う

空き家の出口を考えるときに知っておきたい公的な仕組み

「売れない」「誰も継がない」と感じたときに、確認できる仕組みがあります。それぞれ使える条件が決まっているため、先に窓口で確認してください。

仕組み ポイント 相談先
相続登記の義務化 令和6年4月1日から義務化。相続を知った日から3年以内に申請。正当な理由なく怠ると過料の対象になる 法務局、司法書士
相続土地国庫帰属制度 相続で取得した土地を、一定の要件で国に引き渡せる制度。建物がある土地は対象外のため、建物を取り壊したうえで申請する。審査手数料は土地1筆につき14,000円(不承認でも返らない)。承認後は10年分の標準的な管理費用に当たる負担金が必要 法務局(事前相談)
空き家バンク・各種補助 市区町村が運営する空き家の登録制度や、解体・改修の補助。内容と金額は自治体ごとに異なる 市区町村の空き家担当窓口
相続空き家の3,000万円特別控除 一定の要件を満たして売ると、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける(令和9年12月31日までの売却) 税務署、税理士

※ 法務省「相続土地国庫帰属制度」、国税庁タックスアンサー No.3306をもとに作成(2026年10月確認)。

売却を考える場合の費用や税金の比べ方は、実家を売る・貸す・住み続けるの費用と税金の比較にまとめています。

相続発生後の空き家対応との違い

相続が発生してからの空き家対応は、相続人全員の合意が必要になり、意見が割れると何も進められません。一方、生前であれば、親の意思のもとで方向性を決め、認知症に備える仕組みも作れます。「相続前にできる対策」と「相続後にせざるを得ない対応」では、選択肢の広さがまったく違う——これが、空き家対策を生前に行う最大の意義です。

生前にできる対策 と 相続後の対応 はこんなに違う

✓ 生前にできる対策

✓ 親本人の意思で方向性を決められる

✓ 認知症に備える仕組み(家族信託など)を作れる

✓ 売る・貸す・住むを柔軟に選べる

✕ 相続後にせざるを得ない対応

✕ 相続人全員の合意が必要になる

✕ 意見が割れると何も進められない

✕ 選択肢が狭まり、対応に追われやすい

よくある質問(FAQ)

まだ親が住んでいますが、今から対策すべきですか?

はい。むしろ親が住んで元気なうちが、最も対策の選択肢が広い時期です。認知症になってからでは売却も契約もできなくなります。名義の確認と、認知症に備える仕組み(家族信託など)の検討から始めるのがおすすめです。

空き家のままにしておくと税金が上がるのですか?

管理が著しく不十分で「特定空家」等に指定されると、土地の固定資産税の軽減が外れ、税負担が増える可能性があります。適切に管理するか、売却・活用の方向性を早めに決めることが、余計な負担を避けるポイントです。

認知症になると本当に売れなくなるのですか?

本人に判断能力がないと、不動産の売買契約は原則できません。成年後見制度を使う方法はありますが、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要など制約があります。家族信託を元気なうちに設計しておくと、より柔軟に対応できます。

名義の確認、家族信託、遺言のどれから手をつけるかは、実家の名義と親の状態で変わります。判断がつかないときは、専門家に一度整理してもらうのが早道です。

空き家の草刈りや見回りは、誰に頼めますか?

遠方の場合は、空き家の管理サービスを行う事業者や、地域のシルバー人材センターなどに依頼する方法があります。内容と料金は事業者ごとに違うため、見積もりを取って比べてください。市区町村によっては、相談窓口を設けているところもあります。

相続した空き家を取り壊すと、税金はどうなりますか?

建物を取り壊して更地にすると、土地の固定資産税の住宅用地の軽減が受けられなくなり、税額が上がる場合があります。ただし、3,000万円特別控除の要件を満たす場合は、取り壊してから売ることも認められています。取り壊す前に、税理士か市区町村に確認しておくと安心です。

参考にした公的情報

  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(空き家数・空き家率)
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度」(審査手数料・対象外となる土地)
  • 法務省「相続登記の申請義務化」
  • 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法(国土交通省)

※ 制度は改正されることがあります。ご利用前に最新の案内をご確認ください(確認日:2026年10月9日)。

実家が空き家になる前に手を打ちたい方へ
名義が古いまま・親の判断能力が心配・きょうだいで方針が決まっていない。この3つのどれかに当てはまると、空き家になってから動くのは難しくなります。30分の無料相談では、登記簿と家族構成をもとに「今できる対策」と「先に決めておくこと」を整理してお持ち帰りいただけます。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。複数の提携行政書士による監修体制で運営しており、特定個人の士業を推奨するものではありません。税・登記の具体的な取扱いは、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。

空き家にする前の生前対策が実際どのように役立ったか、具体的な事例は実家じまいの相談事例|愛知県での取り組みと進め方のヒントで紹介しています。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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