生命保険の受取人が本人・いない場合【2026年】相続財産になるか早見表

親の保険証券を開いたら、受取人の欄に親本人の名前が書いてある。あるいは受取人の欄が空いている。こういうとき、保険金は誰がどう受け取るのか、相続の手続きとどう関わるのかで手が止まります。

この記事では、2026年10月時点の法律・国税庁の資料・保険会社の公開資料をもとに、「受取人が本人」と「受取人がいない」の2つを、証券の欄ごとに見分けられる形で整理します。

目次

先に結論:本人なら相続財産、指定なしなら約款で決まる

この記事の結論

  1. 「本人」はどの欄の本人かで答えが変わります。被保険者本人か、契約者本人か、入院給付金などの受取人か。まず証券の欄を確かめます。
  2. 死亡保険金の受取人が被保険者本人なら、保険金は本人の相続財産です。遺産分割で分け方を決め、相続放棄をすると受け取れません。
  3. 受取人の指定がないときは、約款の定めで決まります。「被保険者の相続人」とする約款もあれば、「遺族(配偶者→子→父母…の順)」とする約款もあります。

ふだんの死亡保険金は「受取人ひとりの財産」で、遺産分割の対象になりません。ところが受取人が本人だと、この前提が逆になります。ここを取り違えると、協議書の作り方も、相続放棄の判断も変わってしまいます。

「受取人が本人」は3通り。証券のどの欄かで見分ける

証券には「契約者」「被保険者」「受取人」の欄があります。受取人も、死亡保険金・満期保険金・入院給付金などで別々に書かれていることがあります。「受取人が本人」と言っても、次の3通りで意味がまったく違います。

証券の書き方何が起きるか税金の種類
①死亡保険金の受取人=被保険者本人本人が亡くなると、保険金を受け取る権利が相続人に引き継がれる。遺産分割の対象相続税の計算に入る(非課税枠の扱いは個別に確認)
②契約者本人(保険料を払う人)=受取人。被保険者は家族家族が亡くなると、契約者が自分の保険金として受け取る。相続とは別の話所得税(一時所得)
③入院・手術給付金や満期保険金の受取人=本人本人が生きているうちは本人が受け取る。亡くなった後に支払われた給付金は本人の相続財産本人死亡後の給付金は相続財産として相続税の計算に入る
出典:国税庁タックスアンサーNo.1750、相続税法基本通達3-7(注)(2026年10月時点で確認)。税額や申告の要否は税務署・税理士にご確認ください。

②は、たとえば妻が自分で保険料を払い、夫に保険をかけ、受取人も妻という契約です。国税庁No.1750では、保険料の負担者と受取人が同じなら所得税になると整理されています。満期保険金を本人が受け取る場合も、払った人と受け取る人が同じなら一時所得です。組み合わせごとの税金は契約者・被保険者・受取人と税金の早見表で詳しく整理しています。

③の入院給付金などは、住友生命の案内でも受取人は原則として被保険者本人とされ、被保険者が亡くなっている場合は相続人が受取人になると説明されています。相続税法基本通達3-7の注では、こうした給付金が被保険者の死亡後に支払われた場合は、本来の相続財産になるとしています。

死亡保険金の受取人が被保険者本人だったときに起きること

①の形は、受取人欄に本人の名前を書いたまま変えていない古い契約などで見つかることがあります。この場合、保険金を受け取る権利は本人のものです。本人が亡くなると、その権利は預金と同じように相続人へ引き継がれます。

確かめること受取人が家族(ふつうの形)受取人が被保険者本人
保険金は誰の財産か受取人ひとりの財産亡くなった本人の相続財産
遺産分割協議書に書くか原則書かない書く(誰が取得するか決める)
請求する人受取人が単独で請求できる相続人が会社所定の書類で請求(代表者・協議書・同意書など)
相続放棄をした人受取人なら受け取れる受け取れない
亡くなった人の借金との関係保険金は遺産とは別遺産の一部として扱われる
民法939条(相続放棄の効力)などをもとに整理(2026年10月時点)。請求書類は保険会社ごとに違います。

相続放棄をすると、本人受取の保険金は受け取れない

民法939条は、相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなすと定めています。受取人が本人の保険金は相続財産なので、放棄した人は受け取れません。「放棄しても保険金は受け取れる」という説明は、受取人が家族になっている契約の話です。

借金が多くて放棄を考えているときは、もう一つ注意があります。民法921条1号は、相続財産を処分すると単純承認したものとみなすと定めています。本人受取の保険金を請求して使ってしまうと、放棄ができなくなるおそれがあります。放棄を決めるまでは請求・使用を止め、相続放棄できないケースで確認してから動いてください。

分け方は遺産分割で決める

本人受取の保険金は、預金や不動産と一緒に遺産分割協議の対象になります。協議書には「〇〇生命保険株式会社の保険契約(証券番号〇〇)に基づく死亡保険金請求権は、長男〇〇が取得する」のように書きます。ふつうの保険金を協議書に書かない理由は死亡保険金は遺産分割の対象になる?で説明しています。

相続人に未成年の子と、その親権者の両方が含まれる場合は注意が必要です。親と子の間で取り分を決めることになるため、家庭裁判所で子の特別代理人を選ぶ必要があります(民法826条)。

相続税はかかる。非課税枠は申告前に確認する

本人受取の保険金も、相続税の計算に入る財産です。ふつうの死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(国税庁No.4114)。本人受取の契約でこの枠をどう扱うかは、契約の内容を見て判断することになるため、この記事では断定しません。申告の前に、証券と支払明細を持って税務署か税理士に確認してください。

受取人の指定がない場合は、約款で決まる

受取人欄が空いている、または「指定なし」になっている契約は、約款(契約のルールブック)の定めで受取人が決まります。定め方は会社・商品によって違います。確認できた例を2つ挙げます。

例1:「指定がないときは被保険者の相続人に支払う」と定める約款

最高裁昭和48年6月29日判決は、このような約款がある保険について、相続人に保険金を取得させる趣旨と解し、特段の事情がない限り相続人のための契約になるとしました。保険金は相続人それぞれの固有の財産で、遺産分割の対象にはなりません。

受取人欄に「相続人」と書かれている契約も、同じ考え方です。住友生命の「死亡保険金ご請求のしおり」では、この場合の受取割合は法定相続割合とされ、複数いるときは代表受取人を1名選んで請求すると案内されています。

例2:「指定がないときは被保険者の遺族」とし、順位を決めている約款

かんぽ生命の「一時払終身保険(告知不要型)普通保険約款」では、申込書に受取人の記載がなく特定されていないときは、被保険者の遺族を受取人とします。遺族の順位は次のとおりです。

  1. 配偶者(籍を入れていない事実上の夫婦も含む)
  2. 子
  3. 父母
  4. 孫
  5. 祖父母
  6. 兄弟姉妹
  7. 死亡当時、被保険者の扶助で生計を維持していた人
  8. 死亡当時、被保険者の生計を維持していた人

順位が先の人がいれば、後の人は受け取れません。同じ順位が複数いれば均等に分けます。つまり配偶者がいれば、子がいても配偶者が全額を受け取ります。法定相続分で分ける「相続人」とは結果が違います。

このように「指定なし=法定相続人」とは限りません。手元の契約は、証券に付いている約款(ご契約のしおり)の「保険金受取人」の条文を見るか、保険会社に「受取人の指定がない場合、誰が受取人になりますか」と聞くのが確実です。どの会社と契約していたか分からないときは生命保険契約照会制度で探せます。

指定した受取人が先に亡くなって「いない」場合

受取人を指定していたのに、その人が先に亡くなっていたケースは別のルールです。保険法46条により、亡くなった受取人の相続人全員が受取人になります。誰がいくら受け取るかは受取人が先に亡くなっていた保険金は誰のもので整理しています。

受取人欄の書き方で、分け方と税金はこう変わる(早見表)

証券の受取人欄を見ながら、自分の契約がどの行に当たるかを確かめてください。被保険者(亡くなった方)が保険料を払っていた契約を前提にしています。

受取人欄受け取る人と割合遺産分割の対象か相続放棄した人相続税と非課税枠
相続人の名前(例:長男)その人。複数なら指定の割合対象外(原則)受取人なら受け取れる相続税。相続人なら非課税枠あり(放棄した人は枠なし)
相続人以外の名前(孫・内縁の妻など)その人対象外(原則)―相続税。非課税枠なし。配偶者・父母・子以外は2割加算
「相続人」法定相続人。割合は法定相続分とする扱い対象外(相続人それぞれの財産)扱いは保険会社に確認相続税。相続人が受け取った分は非課税枠あり
被保険者本人遺産分割で決めた人対象受け取れない相続税の計算に入る。非課税枠の扱いは税務署・税理士に確認
空欄・指定なし約款で決まる(相続人・遺族など)約款が相続人・遺族に払うと定めていれば、原則対象外約款による受け取った人が相続人かどうかで変わる
指定した受取人が先に死亡その受取人の相続人全員(保険法46条)対象外―受け取った人が相続人かどうかで変わる
出典:保険法46条、国税庁タックスアンサーNo.4114・No.4157、最高裁昭和48年6月29日判決、住友生命「死亡保険金ご請求のしおり」、かんぽ生命の約款(2026年10月時点で確認)。会社・商品・個別の事情で扱いが変わることがあります。

2割加算は、配偶者と一親等の血族(子・父母。代襲相続人の孫を含む)以外の人に適用されます(国税庁No.4157、相続税法18条)。非課税枠を使えるのは相続人が受け取った分だけで、相続人以外や相続放棄をした人が受け取った保険金には使えません(No.4114)。枠の計算は生命保険の非課税枠はいくら?にまとめています。

本人のまま・指定なしの契約を見つけたら:生前と死後でやることが違う

被保険者が元気なうち:受取人を指定し直す

保険法43条により、契約者は保険事故が起きるまで受取人を変更できます。死亡保険の受取人変更には被保険者の同意が要ります(45条)。本人のまま・空欄のままにする理由がなければ、渡したい家族の名前に直しておくと、相続放棄や遺産分割に左右されなくなります。手続きは生命保険の受取人変更の手続きを見てください。

変更は契約者本人の意思で行う手続きです。認知症などで判断が難しくなると進められなくなります。入院給付金を家族が代わりに請求できる「指定代理請求人」も、あわせて確かめておくと安心です。詳しくは指定代理請求人が空欄だったらにまとめています。

亡くなった後:この順番で進める

  1. 証券の受取人欄を写真に撮る。死亡保険金・給付金・満期それぞれの受取人を確認します。
  2. 保険会社に連絡し、受取人が誰の扱いになるか聞く。本人受取・指定なしの場合は、必要な書類(戸籍の範囲、協議書の要否)も聞きます。
  3. 相続財産になる保険金は、放棄するか決めるまで手を付けない。相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月です。
  4. 遺産分割協議書に保険金の取得者を書く(本人受取の場合)。
  5. 相続税の申告が必要か確かめる。期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月です。相続税の申告期限10か月の数え方も参考にしてください。

請求の流れと必要書類の全体は死亡保険金の請求手続きと必要書類で説明しています。

今日できる一歩

  1. 手元の証券を開き、「死亡保険金受取人」の欄に書かれている名前が、被保険者本人・家族の名前・「相続人」・空欄のどれかをメモしておきましょう。上の早見表のどの行かが分かれば、次に保険会社へ何を聞けばよいかが決まります。
受取人が本人のまま・空欄の契約で、家族の話がまとまらない方へ
本人受取の保険金を誰が取得するか決まらない。相続放棄を考えていて、保険金に手を付けてよいか分からない。親の契約が本人のままで、今から直すべきか迷っている。こうした場面は、証券と家族の関係を並べて見ないと判断できません。30分の無料相談で、証券をもとに確認すべき点を整理します。保険の比較は、当社と提携する生命保険募集人(乗合代理店に所属)が担当します。比較の結果「今は何もしなくてよい」が答えになることもあります。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)
先に自分で整理したい方は無料の相続対策診断もどうぞ。

よくある質問

Q. 生命保険の受取人が本人の場合、保険金は誰がもらえますか?

A. 死亡保険金の受取人が被保険者本人なら、保険金は本人の相続財産です。相続人が遺産分割協議で誰が取得するかを決め、決まった人が保険会社所定の書類で請求します。

Q. 相続放棄をしても、受取人が本人の保険金はもらえますか?

A. もらえません。相続財産なので、放棄すると受け取る立場がなくなります(民法939条)。放棄しても受け取れるのは、受取人として自分の名前が書かれている保険金です。

Q. 生命保険の受取人がいない場合、保険金はどうなりますか?

A. 指定がないときは約款の定めで受取人が決まります。「被保険者の相続人」とする約款のほか、かんぽ生命の一部の約款のように「遺族(配偶者→子→父母…の順)」とするものもあります。指定した受取人が先に亡くなっている場合は、その受取人の相続人全員が受取人です(保険法46条)。

Q. 受取人欄に「相続人」と書いてあります。兄弟で等分ですか?

A. 等分ではなく、法定相続分の割合で分ける扱いが一般的です。住友生命の請求のしおりでも、この場合の受取割合は法定相続割合とされています。配偶者と子2人なら、2分の1・4分の1・4分の1です。

Q. 親が入院給付金を請求しないまま亡くなりました。誰が請求しますか?

A. 受取人が本人の給付金は、本人が亡くなると相続人が請求します。死亡後に支払われた給付金は本来の相続財産です(相続税法基本通達3-7の注)。請求の期限は約款で決まっているので、早めに保険会社へ連絡してください。

Q. 契約者の自分を受取人にした保険は、相続と関係ありますか?

A. 自分で保険料を払い、家族にかけて自分が受け取る契約なら、受け取った保険金は相続財産ではありません。税金は所得税(一時所得)です(国税庁No.1750)。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の法令・国税庁の公表資料・保険会社の公開資料をもとにした一般的な整理です。受取人の扱いや請求書類は保険会社・商品・契約時期によって異なります。実際の契約は約款と保険会社の案内に従ってください。税額の計算や申告の要否は税務署・税理士に、相続人の間で争いがある場合は弁護士にご確認ください。特定の保険会社や商品を勧めるものではありません。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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