保険の受取人を子どもにしておきたい。けれど税金はどうなるのか、子どもがまだ小さいと誰が受け取るのか、兄弟がいるときはどう分ければいいのか。受取人欄に名前を書く前に、決めておくことがいくつかあります。
この記事では、子どもを受取人にするときに限って、税金・非課税枠の計算・未成年の子の受け取り方・兄弟の割合の決め方を、2026年10月時点の法律と国税庁の資料をもとに整理します。契約者と保険料を払う人がずれている契約については、契約者と支払者が違うときの税金で別に扱っています。
先に結論:誰が保険料を払うかで、子にかかる税金が決まる
この記事の結論
- 親が払い、親にかけ、子が受け取る形なら相続税です。子は相続人なので「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えます。
- 子が自分で払っていれば所得税、もう一方の親が払っていれば贈与税です(国税庁No.1750)。
- 未成年の子は、親権者が代わりに請求し、子の財産として管理します。離婚している場合は、子の親権者が管理する点に注意します。
- 兄弟の割合は「何のためのお金か」で決めると、あとで説明がつきます。非課税枠は受け取った額の割合で按分されます。
子を受取人にしたときの税金:家族の形で見る早見表
国税庁No.1750は、被保険者・保険料の負担者・受取人の3者の関係で税金の種類を分けています。証券の「契約者」欄ではなく、実際に保険料を払っていた人で判定する点が大事です。子どもを受取人にする場合に当てはめると、次のようになります。
| 保険料を払う人 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 | 子にとってのポイント |
|---|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税 | 非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使える |
| 父 | 父 | 子(相続放棄した) | 相続税 | 保険金は受け取れるが、非課税枠は使えない |
| 子 | 父 | 子 | 所得税(一時所得) | 払った保険料と50万円を引き、残りの2分の1に課税 |
| 母 | 父 | 子 | 贈与税 | 母から子への贈与とみなされる。基礎控除は年110万円 |
| 祖父 | 祖父 | 孫(子が健在) | 相続税 | 孫は相続人でないため非課税枠なし。2割加算の対象 |
いちばん多いのは1行目の形です。2行目のように、子が借金を理由に相続放棄をしても、受取人であれば保険金は受け取れます。ただし非課税枠は相続人が受け取った分にしか使えず、放棄した人は相続人に含まれません(No.4114)。
4行目の贈与税の形は、夫婦の一方が家計をまとめて払っている家庭で、気づかないうちに当てはまることがあります。名義と実際の負担者を確かめる方法は契約者と支払者が違うときの税金に、3者の組み合わせ全体は契約者・被保険者・受取人と税金の早見表にまとめています。
子どもが受け取るときの相続税:非課税枠の計算例
非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です。相続人が複数受け取ったときは、各人が受け取った額の割合で枠を分けます(国税庁No.4114)。父が亡くなり、相続人が母と子2人(3人)の家庭で見てみます。非課税枠は1,500万円です。
| 受取人と金額 | それぞれの非課税枠 | 相続税の計算に入る額 |
|---|---|---|
| 長男 1,000万円・長女 1,000万円 | 750万円ずつ | 250万円ずつ(合計500万円) |
| 長男 2,000万円だけ | 1,500万円 | 500万円 |
| 長男 1,000万円だけ | 1,000万円まで(枠の残り500万円は使えない) | 0円 |
| 孫 1,000万円(相続人でない) | なし | 1,000万円(その人の税額は2割加算) |
計算に入った額にすぐ税金がかかるわけではありません。他の財産と合計して、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときに相続税がかかります。枠の考え方は生命保険の非課税枠はいくら?で詳しく説明しています。
孫を受取人にすると、非課税枠が使えないうえに税額が2割増しになります(相続税法18条、No.4157)。子が先に亡くなっていて孫が代襲相続人になっている場合や、孫を養子にしている場合は扱いが変わります。養子縁組と相続もあわせて確認してください。
未成年の子が受取人のとき:誰が請求し、誰が管理するか
成年は18歳です(民法4条)。18歳未満の子が受取人のときは、子が自分ひとりで請求するのではなく、親権者が代わりに手続きします。
| 場面 | 請求する人 | 確認すること |
|---|---|---|
| 父が亡くなり、母が親権者 | 母が子に代わって請求 | 母と子の続柄が分かる戸籍などを添える |
| 離婚していて、子の親権者が元配偶者 | 元配偶者が子に代わって請求 | 保険金は子の財産として親権者が管理する |
| 親権者がいない(両親とも死亡など) | 未成年後見人が請求 | 家庭裁判所で未成年後見人を選ぶ |
| 子が18歳以上 | 子本人が請求 | 本人確認書類と口座 |
かんぽ生命の請求の案内では、受取人が未成年のときは親権者(法定代理人)の同意と、未成年者と親権者の続柄を確認できる書類が必要とされています。住友生命の「死亡保険金ご請求のしおり」でも、親権者または未成年後見人が請求し、それを確認できる戸籍などを出すと案内されています。
受け取ったお金は「子のお金」。離婚後は相手が管理することになる
民法824条は、親権を行う者が子の財産を管理すると定めています。子の保険金は、親権者が子のために管理するお金です。親自身の生活費と混ぜないよう、子名義の口座で分けておくと後で説明がつきます。
見落とされやすいのが離婚後です。離婚して子と別に暮らす親が、子を受取人にしている場合、その保険金は子の親権者(元配偶者)が受け取り、管理します。それで構わないのか、子が18歳になってから使える形を望むのか。望む形と違うなら、受取人の決め方そのものを考え直すことになります。離婚に伴う受取人の見直しは生命保険の受取人、そのままになっていませんかを見てください。
特別代理人が要るのはどんなときか
親と子の利益がぶつかる行為は、親権者が子を代理できません。家庭裁判所に子の特別代理人を選んでもらいます(民法826条)。裁判所は典型例として、父が亡くなった後に母と未成年の子が行う遺産分割協議を挙げています。
| ケース | 特別代理人の目安 |
|---|---|
| 受取人欄に子の名前があり、親権者が請求するだけ | 保険金は子自身の財産で、遺産分割ではない。親権者の代理で進むのが通常の流れ |
| 受取人が「被保険者本人」で、保険金が遺産分割の対象になる | 母と未成年の子で分け方を決めるなら必要 |
| 保険金以外の遺産(預金・自宅)を母と未成年の子で分ける | 必要(裁判所が挙げる典型例) |
| 母と子の両方が受取人で、割合をあらためて話し合って決める書類に署名する | 利益がぶつかる可能性がある。保険会社と家庭裁判所に確認 |
申立ては子の住所地の家庭裁判所に、親権者などが行います。費用は子1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。受取人が本人になっていて保険金が遺産分割の対象になる契約の扱いは、生命保険の受取人が本人・いない場合で整理しています。
兄弟で受取人と割合をどう決めるか
子が2人以上いるとき、選び方は大きく3つです。1人を受取人にする、複数の子を受取人にして割合を決める、子ごとに契約を分ける。複数指定ができるか、割合を何%単位で決められるかは、会社・商品によって違います。かんぽ生命は複数指定ができるとしつつ、受取人の間でトラブルになった事例があるため複数指定を勧めていないと案内しています。複数の受取人がいると、請求の際に代表者を決める書類を求める会社もあります(住友生命など)。
割合は「何のためのお金か」で決めると、後で兄弟に説明できます。
| 保険金の目的 | 受取人の決め方の例 | あわせて確かめること |
|---|---|---|
| 相続税の納税資金 | 多く納税する人(自宅を継ぐ子など)に多めに | 非課税枠は受取額の割合で按分される |
| 自宅を継ぐ子が他の兄弟に払う代償金 | 自宅を継ぐ子に | 協議書の書き方。不動産しかない相続の分け方 |
| 介護をしてくれた子に多く残したい | その子に多め、または全額 | 額が遺産に比べて大きすぎると持ち戻しの議論になりうる |
| 兄弟を公平に扱いたい | 均等の割合 | 他の遺産の分け方と合わせて公平か |
保険金は原則として受取人固有の財産で、遺産分割の対象になりません。ただし最高裁平成16年10月29日決定は、保険金の額や遺産に対する比率などから相続人の間の不公平が著しい「特段の事情」がある場合は、持ち戻しの対象になりうるとしました。1人に多く残すときの線引きは死亡保険金は遺産分割の対象になる?で、裁判例の比率とあわせて整理しています。
もう一つ大事なのは、理由を生前に伝えておくことです。受取人を偏らせた理由が分からないまま相続を迎えると、金額より「知らされていなかった」ことが話し合いを止めます。
受取人を子にする前に確かめる3つのこと
- 保険料を払っている人は誰か。証券の契約者と引き落とし口座の名義が違うと、子にかかる税金が相続税ではなくなることがあります。
- 受取人を変える手続きは誰がするか。変更できるのは契約者で、死亡保険の受取人変更には被保険者の同意が要ります(保険法43条・45条)。手続きは生命保険の受取人変更の手続きを見てください。
- 契約者が元気なうちに決められるか。認知症などで判断が難しくなると、受取人の変更が進められなくなります。家族が動ける範囲は認知症の親の保険は解約できないにまとめています。
今日できる一歩
- 証券の「契約者」「被保険者」「受取人」と、保険料の引き落とし口座の名義を1枚の紙に書き出しましょう。上の早見表のどの行に当たるかで、子にかかる税金の種類が分かります。
よくある質問
Q. 生命保険の受取人を子供にすると、相続税はかかりますか?
A. 亡くなった親が保険料を払っていた契約なら、相続税の対象です。ただし「500万円×法定相続人の数」までは非課税で、他の財産と合わせて基礎控除を超えなければ相続税はかかりません。
Q. 受取人を配偶者にするのと子にするのでは、どちらが税金で有利ですか?
A. どちらも相続人なので、非課税枠は同じように使えます。どちらが有利かは、他の財産の分け方や配偶者の税額軽減の使い方で変わります。家族全体の財産を並べて、税理士に試算してもらうのが確実です。
Q. 未成年の子が受け取った保険金を、親が使ってもいいですか?
A. 子の財産なので、親権者は子のために管理します(民法824条)。子の生活や教育のために使うことと、親自身の用途に使うことは別です。子名義の口座で分けておくと安心です。
Q. 兄弟のうち1人だけを受取人にしても問題ありませんか?
A. 受取人は契約者が決められます。保険金は原則として受取人の財産で、遺産分割の対象外です。ただ、遺産に比べて額が極端に大きいと持ち戻しの議論になることがあります。理由を生前に伝えておくと、話し合いが止まりにくくなります。
Q. 子が相続放棄をしたら、保険金はもらえませんか?
A. 受取人として名前が書かれていれば受け取れます。ただし相続放棄をした人は、非課税枠を使えません(国税庁No.4114)。受取人が親本人になっている契約は相続財産なので、放棄すると受け取れません。
Q. 孫を受取人にするのと、子を受取人にするのはどう違いますか?
A. 子が健在なら孫は相続人ではないため、非課税枠が使えず、税額も2割加算になります。孫にお金を残す他の方法は孫にお金を残す方法で比べています。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.1750「死亡保険金を受け取ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.4157「相続税額の2割加算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm - e-Gov法令検索「民法」(第4条、第824条、第826条、第838条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索「保険法」(第43条、第45条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/420AC0000000056 - 裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html - 裁判所 最高裁平成16年10月29日第二小法廷決定(平成16(許)11)
https://www.courts.go.jp/hanrei/52421/detail2/index.html - かんぽ生命「保険金等の請求(受取人が未成年の場合)」「保険金受取人を複数指定できるか」
https://faq.jp-life.japanpost.jp/faq/show/479?site_domain=default - 住友生命「死亡保険金ご請求のしおり」
https://www.sumitomolife.co.jp/contract/service/assurance/pdf/shiori.pdf
※本記事は2026年10月時点の法令・国税庁の公表資料・裁判所と保険会社の公開資料をもとにした一般的な整理です。請求書類や受取人の指定方法は保険会社・商品によって異なります。税額の計算や申告の要否は税務署・税理士に、特別代理人の要否は家庭裁判所にご確認ください。特定の保険会社や商品を勧めるものではありません。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
