生命保険の契約者・被保険者・受取人と税金の早見表|相続税・所得税・贈与税の分かれ方

手元に保険証券があって、「契約者」「被保険者」「受取人」の3つの欄が並んでいる。この3つが誰になっているかで、保険金にかかる税金が相続税・所得税・贈与税のどれになるかが決まります。同じ1,000万円の保険金でも、税金の種類が変われば手取りは大きく変わります。

やっかいなのは、この3つの欄を見ても「保険料を実際に払っていたのは誰か」までは書かれていないことです。税金の判定で効いてくるのは契約者の名前ではなく保険料を負担した人なので、証券の記載だけで判断すると読み違えます。

この記事では、3者の組み合わせごとの税金の種類を早見表で整理し、そのうえで「契約者と保険料負担者が違う」ケース、満期保険金や年金形式で受け取る場合、確定申告が必要になる場面まで順にたどります。相続が起きた後の確認にも、親が元気なうちの点検にも使える形にしました。

目次

先に結論:税金の種類は「保険料を払った人」と「受け取る人」で決まる

死亡保険金にかかる税金は、3者の組み合わせで3通りに分かれる

🏠

父が払い、父にかけ、子が受け取る

相続税

保険料を払った人 
被保険者 
受取人 

相続人が受け取れば非課税枠あり

💴

子が払い、父にかけ、子が受け取る

所得税

保険料を払った人 
被保険者 
受取人 

一時所得。50万円控除のうえ2分の1

🎁

母が払い、父にかけ、子が受け取る

贈与税

保険料を払った人 
被保険者 
受取人 

基礎控除110万円を超えた分に課税

見るのは証券の「契約者」欄ではなく、保険料を実際に負担した人 → ここを取り違えると税目ごと変わる

出典:国税庁タックスアンサーNo.1750「死亡保険金を受け取ったとき」。2026年9月時点。個別の判定は税理士にご確認ください。

国税庁は死亡保険金の課税関係を、被保険者・保険料の負担者・受取人の3者で整理しています。3者のうち保険料負担者と受取人が同じなら所得税、被保険者と保険料負担者が同じで受取人が別なら相続税、3者がすべて別なら贈与税です。契約者の名前は判定の入口にすぎません。

パターン1|相続税になる組み合わせ(いちばん多い形)

父が自分に保険をかけ、自分で保険料を払い、受取人を子や配偶者にしている。実務でいちばん多いのがこの形で、受け取った死亡保険金は相続税の対象になります。正確には相続財産そのものではなく「みなし相続財産」で、遺産分割協議を経ずに受取人が単独で請求できる一方、相続税の計算には入るという性質を持ちます。

非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」

相続人が受け取った死亡保険金には非課税枠があります。国税庁タックスアンサーNo.4114の計算式は「500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額」です。法定相続人が配偶者と子2人の3人なら1,500万円までが非課税になります。

複数の相続人が保険金を受け取った場合、非課税枠はそれぞれが受け取った金額の割合で按分されます。1人が枠を使い切って、もう1人が使えないという配分にはなりません。

相続人以外が受取人だと、非課税枠は使えない

ここが見落とされがちな点です。No.4114は「相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません」と明記しています。孫、兄弟姉妹、甥・姪、内縁のパートナーなどを受取人にしている場合、その保険金は1円目から相続税の課税対象です。相続を放棄した人が受け取った保険金も、非課税枠の対象からは外れます。

さらに、配偶者・父母・子以外の人が財産を取得すると、相続税額が2割増しになります。国税庁タックスアンサーNo.4157が定める2割加算で、対象になるのは「被相続人の配偶者、父母、子ではない人」です。兄弟姉妹や、甥・姪として相続人になった人が例示されています。代襲相続人になっていない孫養子も対象です。

⚠️ 孫を受取人にしているとき

「相続税を1回飛ばせる」という考えで孫を受取人にする例がありますが、孫が代襲相続人でない場合は非課税枠が使えず、さらに2割加算という二重の不利が重なります。渡したい相手と税金の重さは別の話です。意図があってその指定にしているのかを一度確認しておくと、あとで慌てずに済みます。判断は税理士にご確認ください。(2026年9月時点)

パターン2|所得税(一時所得)になる組み合わせ

保険料を払った人と受取人が同じなら、所得税です。子が自分のお金で父に保険をかけ、受取人も自分にしている形が典型です。一時金で受け取った場合は一時所得になります。

No.1750の計算は次の順序です。受け取った保険金の総額から、すでに払い込んだ保険料の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除50万円を差し引く。その残額の2分の1が、他の所得と合算して課税される金額になります。

たとえば保険金1,000万円、払込保険料の総額が600万円だったとします。1,000万円 − 600万円 − 50万円 = 350万円。その2分の1の175万円が、給与などの所得に上乗せされて課税されます。払った保険料が差し引ける分、相続税より有利になる場面も、逆に高所得の人では不利になる場面もあります。どちらが得かは他の所得の状況しだいなので、金額が大きい場合は税理士に試算してもらうのが確実です。

パターン3|贈与税になる組み合わせ

保険料を払った人、被保険者、受取人の3者がすべて別々だと、贈与税になります。母が保険料を払い、父に保険をかけ、受取人が子。父が亡くなったとき、子は「母が払った保険料で買われた保険金」を受け取ることになるため、母から子への贈与とみなされます。

国税庁タックスアンサーNo.4402は「自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合、あるいは債務の免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたものとみなされて贈与税がかかります」としています。暦年課税の基礎控除は年110万円で、超えた部分に贈与税がかかります。

3つの税目のなかで、同じ金額なら贈与税がいちばん重くなりやすい形です。夫婦のどちらかがまとめて家計を管理している家庭で、意図せずこの形になっていることがあります。

3者の組み合わせ早見表

保険料を払った人被保険者受取人かかる税金使える控除
子(相続人)相続税500万円 × 法定相続人の数
孫・兄弟姉妹など相続人以外相続税(2割加算)非課税枠なし
所得税(一時所得)払込保険料+50万円、残りの2分の1
贈与税基礎控除110万円(暦年課税)
※出典:国税庁タックスアンサーNo.1750・No.4114・No.4157・No.4402(2026年9月時点)。相続放棄をした人が受け取った保険金は非課税枠の対象外です。個別の判定は税理士にご確認ください。

「契約者」と「保険料を払った人」が違うとき

証券の契約者欄が子になっていても、実際の保険料が親の口座から引き落とされていた。この形は珍しくありません。税金の判定で見るのは保険料を負担した人なので、契約者欄だけを根拠にすると答えを間違えます。

親が保険料を払い、契約者が子で、被保険者も子という契約は、親が亡くなった時点では保険金が出ません。それでも「生命保険契約に関する権利」という財産として相続税の対象になります。国税庁タックスアンサーNo.4660によれば、この権利は「相続開始の時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額」で評価します。前納保険料や剰余金を加算し、源泉徴収される所得税相当額を差し引いた金額が評価額です。

途中で契約者名義を変えた場合はどうか。国税庁の質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」の考え方では、契約者を変更した時点では課税関係は生じず、実際に保険金や解約返戻金が支払われる時に、それまでに誰がいくら保険料を負担したかの割合で課税されます。名義を書き換えただけでは税金の話は片づかない、ということです。

誰がいくら払ったかを後から証明するのは手間がかかります。引き落とし口座の履歴、保険料控除証明書が誰の年末調整・確定申告で使われていたか。この2つが手がかりになります。詳しくは相続時に生命保険の契約者と支払者が異なる場合のリスクで整理しています。

相談現場から|相談員メモ

証券をお持ちいただくと、受取人が亡くなった親のままになっている契約が珍しくありません。同じように多いのが、契約者欄と実際に保険料を出していた人がずれている契約です。税金の種類はそのずれで変わるので、当社の相談では証券と一緒に「引き落とし口座は誰の名義か」を必ず確認しています。取扱いは会社・商品によって異なりますし、最終的な税務の判定は税理士の領域ですが、どこを調べればよいかはその場で見当がつきます。

満期保険金・解約返戻金・年金形式で受け取るとき

死亡以外の受け取りにも同じ考え方が使えます。国税庁タックスアンサーNo.1755は、満期保険金や解約返戻金について、保険料を負担した人と受取人が同じなら一時所得、違うなら贈与税になると整理しています。一時所得の計算式は死亡保険金と同じで、受取総額から払込保険料を引き、50万円を引いて、残りの2分の1です。

年金形式で受け取る場合は雑所得になります。その年に受け取った年金額から、その金額に対応する払込保険料を差し引いた額が課税対象です。学資保険や個人年金保険がこの形にあたります。

相続で年金を受け取る権利そのものを引き継いだ場合は、また別の計算が入ります。年金受給権に相続税がかかり、その後に受け取る年金には所得税がかかるため、二重課税を避ける調整の仕組みが用意されています。この扱いは個人年金保険を相続したときの税金と手続きにまとめました。

確定申告が必要になるのはどの場面か

相続税の対象になる死亡保険金は、所得税の確定申告には出てきません。ここが混乱しやすいところで、「保険金を受け取ったから申告が要る」と考えて税務署に行き、必要なかったと分かることがあります。

  • 相続税の申告:遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合。保険金は非課税枠を差し引いた後の金額で判定に加わります。期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内。
  • 所得税の確定申告:保険料を負担した本人が受け取り、一時所得や雑所得が生じた場合。給与所得者でも、一時所得を2分の1にした額などの合計が20万円を超えると申告が必要になります。
  • 贈与税の申告:基礎控除110万円を超える保険金を、保険料を負担していない人が受け取った場合。翌年2月1日から3月15日までに申告します。
  • 準確定申告:亡くなった人に確定申告が必要な所得があった場合。相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

申告の要否と書き方は相続時における生命保険の確定申告についてで詳しく扱っています。金額や他の所得しだいで結論が変わるため、判断に迷う場合は税理士にご確認ください。

生前なら直せる組み合わせ、直せない組み合わせ

相続が起きた後は、税金の種類は変えられません。逆にいえば、被保険者が元気なうちであれば手を入れる余地があります。

いちばん軽いのが受取人の変更です。契約者本人の申し出で、多くの会社は書類1枚で受け付けています。手数料がかからない会社が一般的ですが、取扱いは会社・商品により異なります。受取人を相続人にするだけで非課税枠が使えるようになる、というのはよくある改善です。受取人が元配偶者や亡くなった人のままになっていないかも、この機会に確認しておくとよいところです。生命保険の受取人、そのままになっていませんかに、放置したときに起きることをまとめています。

保険料を誰が払うかを設計に組み込む形もあります。親が子に現金を贈与し、子がその資金で自分名義の契約の保険料を払う「保険料贈与」です。ただし贈与の実態が必要で、形だけ整えても認められません。手順と注意点は保険料贈与とは|親が保険料を払い、子が契約者になる生前贈与のやり方と注意点で扱っています。

注意したいのは、契約者の変更も受取人の変更も、契約者本人に判断能力があることが前提だという点です。認知症が進んだ後では手続きが止まります。「あとで直せばいい」と思っていた変更ができなくなる、というのが実際に起きていることです。

まとめ

証券を開いたら、契約者・被保険者・受取人の3つの欄と、保険料の引き落とし口座を並べて見てください。保険料を払った人と受取人が同じなら所得税、被保険者と保険料負担者が同じで受取人が別なら相続税、3者すべて別なら贈与税。この3分岐が判定の骨格です。

相続税になる形でも、受取人が相続人かどうかで非課税枠と2割加算の扱いが分かれます。金額が大きい契約ほど、この差は無視できません。すでに相続が起きているなら申告の要否を、まだなら直せる欄がないかを、順に確認していくのが現実的な進め方です。

証券を見ても、どの税金になるか判断がつかないという方へ
契約者・被保険者・受取人の組み合わせ、保険料を実際に負担していた人、非課税枠が使える形かどうか。証券や保険会社からの封書をお持ちいただければ、30分の無料相談で契約ごとに整理できます。当社も保険募集を行う立場です。比較の結果「今は何もしなくてよい」が答えになることもあります。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)
LINEで証券の写真を送るだけでも確認できます:LINEで相談する(2営業日以内に返信)

あわせて読みたい

※本記事は2026年9月時点の国税庁公表資料にもとづく一般的な整理です。税制は改正されることがあり、実際の課税関係は契約内容・保険料の負担状況・他の所得や財産の状況によって異なります。個別の税務上の判断は税理士に、契約内容の確認はご契約先の保険会社にご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

目次