亡くなった親に借金があると分かった。相続放棄をしたいけれど、専門家に頼むほどのことなのか、自分でできるのか分からない。そんな方に向けた記事です。
相続放棄は、司法書士や弁護士に頼まなくても、相続人が自分で家庭裁判所に申述できます。費用の中心は収入印紙800円と郵便切手、戸籍などの手数料です。この記事では、自分で進めやすい人と相談した方がよい人の判定表、手順、子1人の場合の費用の計算例、3か月の期限から逆算した段取り、窓口・郵送・即日審判の比べ方を、裁判所と名古屋家庭裁判所の案内(2026年10月時点)で整理します。
先に結論:相続放棄は自分でできます。分かれ目は「立場」と「残りの日数」
この記事の結論
- 自分でできる:申述するのは相続人本人です。申述書と戸籍などを、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に出せば手続きになります。
- 費用:収入印紙800円(1人につき)、連絡用の郵便切手(名古屋家裁は550円分)、戸籍などの手数料です。子1人なら、下の計算例で2,250円に除票の手数料と郵送代を足した額です。
- 相談した方がよい場面:3か月を過ぎた、遺産を使ってしまった、債権者から裁判の書類が届いた、といった場合です。
どこの家庭裁判所に出すかは相続放棄 家庭裁判所はどこ?、封筒の書き方など郵送の細かな点は相続放棄を郵送でする手順にまとめています。この記事は「自分でやり切れるか」と「どう段取るか」に絞ります。
自分でできる?状況別の判定表
手続きの難しさは、放棄する人の立場と、期限までの日数で変わります。当てはまる行を探してください。
判定が「進めやすい」でも、財産と借金のどちらが多いか分からないなら、放棄すると決める前に調べることが先です。放棄は、あとから撤回できません(民法919条1項)。
相続放棄を自分でする手順(6ステップ)
- 3か月の最終日を決めて書く。期限は、自分が相続人になったと知った時から3か月以内です(民法915条)。最終日をカレンダーに書き込みます。
- 出す先の家庭裁判所を確かめる。亡くなった方の住民票の除票で最後の住所を確かめ、裁判所の「申立書提出先一覧」で担当の家裁を探します。
- 戸籍などを請求する。立場によって要る戸籍が変わります。申述の前にそろわない戸籍は、あとから追加で出せる場合があります(裁判所)。
- 申述書を書く。裁判所のサイトに書式と記入例があります。迷いやすい「放棄の理由」欄は相続放棄の理由の書き方で、ケース別に説明しています。
- 収入印紙と切手を用意して出す。印紙と切手は裁判所では売っていないので、郵便局などで先に買います。窓口に持って行くか、郵送します。
- 照会書に答え、受理通知書を受け取る。家庭裁判所から放棄の意思などを尋ねる書面が届いたら、期日までに返します。受理されると受理通知書が届きます。
自分でするといくら?費用の計算例
自分でするときにかかるのは、実費だけです。例として、父が亡くなり、母が健在で、子1人が名古屋家裁の本庁に郵送で出す場合を計算しました。父の死亡が載った戸籍には、母がまだ残っている前提です。
兄弟3人で同時に放棄するなら、申述書と収入印紙800円は3人分要ります。一方で、亡くなった方の戸籍など共通の書類は1通で足ります(裁判所)。司法書士に頼んだ場合は、この実費に報酬が加わります。報酬の内訳と誰が払うかは相続放棄を司法書士に頼む費用で整理しています。
期限から逆算した段取り表
自分でするときに一番の敵は、日数です。戸籍を郵送で取り寄せると、往復の日数がかかります。3か月の最終日から逆に見て、次の順で動きます。
次の順位の人への知らせ方と手紙の例文は、相続放棄はどこまで続く?にまとめています。家族が本当に放棄したかを確かめる方法は、相続放棄の確認方法で説明しています。
出し方は3通り:窓口・郵送・名古屋家裁本庁の即日審判
自分で出すときは、出し方も選べます。平日に動けるか、期限までの日数で決めます。
自分でやってつまずきやすい点
- 調べる前に遺産に手を付ける。預金を引き出して使う、価値のある遺品を売るといった行為は、相続を受け入れたとみなされることがあります(民法921条)。迷う行為は、する前に確かめます。
- 戸籍がそろうまで申述を待つ。申述の前に手に入らない戸籍は、あとから追加で出せる場合があります(裁判所)。期限が近いときは、先に申述する方法を申述先に聞きます。
- 家族の1人が出せば全員済むと思う。相続放棄は1人ずつの手続きです。申述書と収入印紙800円は、放棄する人ごとに要ります。
- 照会書を後回しにする。期日までに返さないと、手続きが進みません。答え方のポイントは相続放棄の理由の書き方の照会書の項目で説明しています。
- 「何ももらわない」協議書で済ませる。遺産分割協議書に判を押すだけでは、借金の支払いから外れません。家庭裁判所での申述が必要です。
自分で進めるか迷うところや、ご家族の構成で答えが変わるところは、30分の無料相談で、書類を見ながら一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。
今日できる一歩
3か月の最終日をカレンダーに書き、その日付をメモの一番上に置く。続けて、亡くなった方の住民票の除票を1通請求し、上の判定表で自分の行に印を付けておきます。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
よくある質問
相続放棄は自分でやっても大丈夫ですか
できます。申述するのは相続人本人で、書類をそろえて家庭裁判所に出せば手続きになります。3か月を過ぎた、遺産を使ってしまった、債権者から裁判の書類が届いた、といった場合は、司法書士や弁護士に相談してください。
自分でする場合、全部でいくらかかりますか
収入印紙800円、連絡用の郵便切手(名古屋家裁は550円分)、戸籍などの手数料です。子1人の例では、2,250円に除票の手数料と郵送代を足した額でした。兄弟姉妹が放棄するときは戸籍の通数が増えます。
家庭裁判所に行かなくてもできますか
郵送で出せます。照会書も郵送で返し、受理通知書も郵送で届く流れが一般的です。ただし、審理に必要なときは、追加の書類を求められることがあります。
平日に休めません。いちばん手間が少ない出し方は
郵送です。名古屋家裁の本庁が担当で、配偶者か子として亡くなった日から3か月以内なら、即日審判で1日で終える方法もあります。受付は平日の決まった時間だけです。
戸籍が期限までにそろいそうにありません
申述の前に手に入らない戸籍は、申述のあとに追加で出せる場合があります(裁判所)。財産の調べがつかず決められないときは、3か月のうちに期間の伸長を申し立てます。どちらも申述先の家庭裁判所に確かめてください。
自分でした放棄でも、効力は専門家に頼んだ場合と同じですか
同じです。受理されれば、誰が書類を作ったかに関係なく、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。違いが出るのは、書類集めの手間と、期限の管理を自分でするかどうかです。
参考にした公的情報
- 裁判所「相続の放棄の申述」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html - 裁判所「相続の放棄の申述書(成人)」(書式・記入例)
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html - 裁判所「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kasai/index.html - 名古屋家庭裁判所「相続の放棄の申述」(即日審判)
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/saiban/souzoku1/index.html - 名古屋家庭裁判所「相続放棄の申述」案内資料
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/04kajibu/05/02souzokuhouki.pdf - 名古屋家庭裁判所「郵便切手及び予納金一覧(令和8年4月1日~)」
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/R8.4yuubinkitteoyobiyonoukinichiran.pdf - e-Gov法令検索「民法」(915条・919条・921条・939条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。必要書類、郵便切手の額、受付時間は家庭裁判所ごとに異なり、変わることがあります。実際に出す前に、申述先の家庭裁判所の案内をご確認ください。期限が迫っている場合や事情が複雑な場合は、司法書士・弁護士にご相談ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
