兄弟の相続放棄の必要書類【2026年】戸籍の集め方・広域交付で取れない戸籍

兄が亡くなり、その子どもたちが相続放棄をした。しばらくして、自分あてに兄の借金の督促が届いた。兄弟姉妹の相続放棄は、こうして先の順位の人が放棄したあとに回ってくることが多い手続きです。

兄弟姉妹が相続放棄をするときの必要書類は、全員に共通の2点に加えて、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、親・祖父母が亡くなっていることが分かる戸籍などです。兄弟の場合は、子が出すときより集める戸籍が多く、しかも戸籍の広域交付では取れない戸籍が混ざります。この記事では、裁判所の案内をもとに、立場ごとの必要書類、広域交付で取れる戸籍と取れない戸籍、先の順位の人が出した書類で省けるもの、期限から逆算した段取りを、2026年10月時点の情報で整理します。

目次

先に結論:兄弟の相続放棄は「共通2点+兄弟用の戸籍」。先に出した家族の分は省けます

この記事の結論

  1. 共通の2点:亡くなった方の住民票除票(または戸籍附票)と、放棄する人自身の戸籍謄本です。収入印紙800円分と連絡用の郵便切手も1人ずつ要ります。
  2. 兄弟用の戸籍:亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍、親・祖父母の死亡が書かれた戸籍、子が先に亡くなっていればその子の出生から死亡までの戸籍です。甥・姪が出すときは、その親(亡くなった方の兄弟姉妹)の死亡が書かれた戸籍も加わります。
  3. 省ける書類:同じ方について先の順位の人がすでに放棄などで出している書類は、添付しなくてかまいません。申述の前に取れない戸籍は、申述の後に追加で出せます(裁判所の案内)。

郵送での出し方、封筒の書き方、切手の額は相続放棄を郵送でする手順にまとめています。この記事は「兄弟姉妹(甥・姪)が出すときに、何をどう集めるか」に絞ります。

兄弟姉妹が相続放棄するときの必要書類一覧

裁判所の案内では、兄弟姉妹と甥・姪は「第三順位の相続人」として、次の書類を出します。誰の書類かを分けて書くと、取りに行く先が見えてきます。

書類誰の書類かなぜ必要か省けるとき
相続放棄の申述書放棄する人放棄の申し出そのもの。1人につき1通省けない
住民票除票(または戸籍附票)亡くなった方最後の住所を示し、出す先の家庭裁判所を決める同時に出す家族がいれば1通で足りる
戸籍謄本放棄する人放棄する人の身分を示す省けない
出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)亡くなった方子がいないこと、または子が誰かを確かめる先の順位の人が出していれば不要
出生から死亡までのすべての戸籍亡くなった方の子で、先に亡くなっている人その子に代わって相続する孫がいないかを確かめる該当者がいなければ不要。先に出ていれば不要
死亡が書かれた戸籍亡くなった方の親・祖父母(直系尊属)親の順位の人がいないことを確かめる先に出ていれば不要
死亡が書かれた戸籍甥・姪が出すときの、その親甥・姪が代わりに相続人になったことを示す兄弟姉妹本人が出すときは不要
収入印紙800円分・連絡用の郵便切手放棄する人申述の手数料と連絡用省けない(切手の額は家庭裁判所ごと)
※出典:裁判所「相続の放棄の申述」(2026年10月時点)。戸籍謄本は「全部事項証明書」と呼ばれることがあります。審理に必要なときは、追加の書類を求められることがあります。

戸籍の代わりに、法定相続情報一覧図の写しを出せる場合もあります。使えるかどうかは、出す先の家庭裁判所に確かめます(裁判所)。作り方は法定相続情報一覧図の取り方にまとめています。

まず判定:あなたが集める戸籍はどれ?立場別の早見表

同じ兄弟姉妹の放棄でも、状況で集める戸籍は変わります。自分に当てはまる行を探してください。

あなたの状況集める戸籍(共通の2点のほか)ひとこと
亡くなった方の子が全員放棄した後に、兄弟姉妹として出す亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、親・祖父母の死亡の記載のある戸籍子が出した戸籍は省ける。どの家庭裁判所に出したかを子に聞いておく
亡くなった方にもともと子がいない上と同じ出生から死亡までの戸籍で「子がいない」ことを示す
亡くなった方の子が先に亡くなっている上に加えて、その子の出生から死亡までの戸籍孫がいれば孫が先の順位の相続人になる
自分は甥・姪で、親(亡くなった方の兄弟姉妹)が先に亡くなっている上に加えて、自分の親の死亡の記載のある戸籍甥・姪の子には回らない。くわしくは代襲相続とは
兄弟姉妹の何人かで同時に出す共通の書類は1通でよい。申述書と放棄する人の戸籍は人数分同じ家庭裁判所に同じ封筒でまとめて出すと確実
※出典:裁判所「相続の放棄の申述」(2026年10月時点)。

先の順位の人が放棄したかどうか自信がないときは、家庭裁判所に照会して確かめられます。照会の手数料はかかりません(名古屋家庭裁判所の案内)。照会のしかたと、次の順位への連絡のしかたは相続放棄はどこまで続く?で説明しています。

戸籍の集め方|兄弟は広域交付で取れない戸籍があります

今は、戸籍を本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて取れます(戸籍の広域交付)。ただし、請求できるのは本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られます(法務省)。兄弟姉妹はこの範囲に入っていません。

東京都中央区の案内でも、父母の戸籍から抜けたきょうだいの戸籍は、広域交付では請求できないと書かれています。兄弟の相続放棄では、ここが一番の手間になります。

必要な戸籍兄弟姉妹が広域交付で取れるか取れないときの取り方
親・祖父母の戸籍(亡くなった方が子どもの頃に入っていた戸籍)取れる(自分の直系尊属の戸籍のため)。コンピュータ化されていない一部の戸籍は対象外本籍地の市区町村に請求する(郵送もできる)
亡くなった方が結婚などで親の戸籍を出た後の戸籍取れない本籍地の市区町村に、相続の手続きに使うことと関係が分かる資料を添えて請求する
亡くなった方の子で、先に亡くなっている人の戸籍取れない(兄弟から見て甥・姪にあたるため)同じく本籍地の市区町村に請求する
甥・姪が出すときの、その親の死亡の記載のある戸籍甥・姪本人なら取れる(自分の直系尊属のため)本籍地の市区町村に請求する
※出典:法務省の戸籍の広域交付の案内、東京都中央区の広域交付の案内、品川区の第三者請求の郵送請求の案内(2026年10月時点)。広域交付は窓口での請求のみで、郵送や代理人では使えません。

広域交付で取れない戸籍は、本籍地の市区町村に郵送で請求できます。品川区の案内では、兄弟姉妹など戸籍に載っていない人が請求するときは、請求書に請求の理由をできるだけ詳しく書き、関係や理由が分かる資料の写しを同封するよう求めています。資料の例として、裁判所からの通知書などのコピーが挙げられています。

  • 請求書:本籍・筆頭者、必要な戸籍の種類と通数、自分と亡くなった方との関係(兄弟姉妹など)、使い道(相続放棄の申述に使うこと)。
  • 本人確認書類の写し:運転免許証など、今の住所が分かるもの。
  • 手数料:定額小為替など、本籍地の案内のとおりに。さかのぼって何通も要るときは多めに入れるよう案内している区もあります。
  • 関係や理由が分かる資料:督促状、先の順位の人の受理通知書の写しなど。何を求めるかは市区町村ごとに違うので、先に電話で確かめると確実です。
  • 返信用封筒:切手を貼り、自分の住所と名前を書いたもの。

手数料の額や必要な資料は市区町村ごとに違います。愛知県・岐阜県の市町村は、それぞれのホームページの「戸籍の郵送請求」の案内で確かめてください。古い戸籍のさかのぼり方は除籍謄本・改製原戸籍の取り方、広域交付の窓口での使い方は戸籍の広域交付の使い方にまとめています。

兄弟が何人もいるとき|誰が何を集めるか

兄弟姉妹が相続人になるときは、きょうだい全員が同時に相続人になります。1人だけ放棄しても、ほかのきょうだいは相続人のまま残ります(親の相続で子のうち1人だけが放棄する場合の割合やお礼の扱いは、兄弟の一人だけ相続放棄したらで説明しています)。家族で次のように分けると、同じ戸籍を何通も取らずにすみます。

役割誰がポイント
戸籍をまとめて集めるきょうだいのうち1人(親の戸籍を取りやすい人)共通の戸籍は同時に出すなら1通で足りる。費用の分け方は先に決めておく
申述書を書く放棄するきょうだい全員申述書・収入印紙800円・自分の戸籍は1人ずつ
まとめて送る戸籍を集めた人同じ封筒で同じ家庭裁判所に送ると、共通の書類が1通ですむ
照会書に答える照会書が届いたきょうだい届いた本人が自分で答えて返す。ほかの人が代わりに書かない
甥・姪に知らせる最後に受理された人など亡くなったきょうだいがいれば、その子(甥・姪)が相続人になる。受理されたことと家庭裁判所名を伝える
※出典:裁判所「相続の放棄の申述」(2026年10月時点)。

別々の時期に出す場合でも、同じ方についての放棄の事件が先にあれば、その事件で出した書類は省けます(裁判所の案内)。後から出すきょうだいは、先に出した人に「どの家庭裁判所に、いつ出したか」を聞いておき、省いてよい書類を申述先の家庭裁判所に確かめます。

期限から逆算した段取り|書類がそろわなくても先に申述できます

兄弟姉妹の3か月は、先の順位の人が全員放棄して、自分が相続人になったと知った時から数えます。戸籍の郵送請求は、往復で日数がかかります。裁判所の案内では、申述の前に取れない戸籍は、申述の後に追加で出してかまわないとされています。期限が近いときは、そろった書類で先に申述します。

時期の目安すること注意点
自分が相続人になったと知った日知った日と、そのきっかけ(督促状・家族からの連絡など)をメモする督促状などは捨てずに取っておく。3か月の数え方の説明に使える
1週目先の順位の人に、放棄した家庭裁判所と受理された日を聞く。亡くなった方の住民票除票を取る名古屋家庭裁判所の案内では、先の順位の人の放棄が受理されていないと、後の順位の人は申述できない
2〜4週目親・祖父母の戸籍を取る。広域交付で取れない戸籍は本籍地へ郵送で請求する本籍地が遠いと日数がかかる。早めに請求を出す
書類がそろい次第申述書を書き、家庭裁判所へ出す取れていない戸籍があっても期限を優先。後から追加で出す
申述の後照会書が届いたら答えて返す。受理通知書が届いたら保管する名古屋家庭裁判所の案内では、申述から結果の連絡まで約1か月が目安
※出典:裁判所「相続の放棄の申述」、名古屋家庭裁判所の相続放棄の案内資料(2026年10月時点)。期間は目安で、事案によって変わります。

3か月では財産や借金を調べきれないときは、期限内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる方法もあります。3か月の考え方は相続放棄の期限3か月はいつから?で説明しています。

愛知・岐阜で出す先

出す先は、亡くなった方の最後の住所地を担当する家庭裁判所です。放棄するきょうだいの住所の近くではありません。名古屋家庭裁判所の場合、連絡用の郵便切手は550円分(110円×5枚)です(名古屋家庭裁判所「郵便切手及び予納金一覧(令和8年4月1日~)」)。愛知・岐阜の支部ごとの担当地域は相続放棄 家庭裁判所はどこ?にまとめています。

ご家族の構成や財産で答えが変わるところは、30分の無料相談で、書類を見ながら一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。

今日できる一歩

亡くなった方の住民票除票を取り、本籍地を確かめる。あわせて、先に放棄した家族に「どの家庭裁判所に、いつ出したか」をメッセージで聞いておきます。

親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

よくある質問

兄弟の相続放棄の必要書類は何ですか

共通の2点(亡くなった方の住民票除票または戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本)に加え、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、親・祖父母の死亡の記載のある戸籍、先に亡くなった子がいればその子の出生から死亡までの戸籍です。収入印紙800円分と連絡用の切手も要ります(裁判所の案内)。

先に放棄した子どもたちが出した戸籍は、もう一度集めないといけませんか

同じ方についての放棄の事件が先にあれば、その事件で出された書類は添付しなくてかまいません(裁判所の案内)。どの家庭裁判所に出したかを聞いて、同じ家庭裁判所に出します。

兄弟3人で放棄します。戸籍は3通ずつ要りますか

亡くなった方の戸籍など共通の書類は、同時に出すなら1通で足ります。申述書、収入印紙800円、放棄する人自身の戸籍謄本は1人ずつ要ります(裁判所の案内)。

広域交付で亡くなった兄の戸籍は取れますか

親の戸籍に入っていた時期の分は、親の戸籍として取れます。兄が結婚などで親の戸籍を出た後の戸籍は、広域交付では取れません(法務省・中央区の案内)。本籍地の市区町村に郵送などで請求します。

甥・姪が相続放棄するときは、何が増えますか

兄弟姉妹が出すときの書類に加えて、甥・姪の親(亡くなった方の兄弟姉妹)の死亡が書かれた戸籍が要ります(裁判所の案内)。甥・姪の子には相続権は回りません。

期限までに戸籍がそろいそうにありません

申述の前に取れない戸籍は、申述の後に追加で出してかまいません(裁判所の案内)。期限を優先して、そろった書類で先に申述してください。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。必要書類、郵便切手の額、戸籍の請求に添える資料は、家庭裁判所や市区町村ごとに異なり、変わることがあります。実際に出す前に、申述先の家庭裁判所と本籍地の市区町村の案内をご確認ください。期限が迫っている場合や事情が複雑な場合は、司法書士・弁護士にご相談ください。

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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