ペイオフ1,000万円を超えたら分けるべき?保護の範囲と口座を増やしすぎない備え

定期預金の満期の案内はがきが届いた朝。通帳を机に並べて足してみたら、同じ銀行の分だけで1,000万円を少し超えていました。「ペイオフって、1,000万円までだったはず」。別の銀行にも口座を作ったほうがいいのか、迷う方は少なくありません。

この記事では、預金保険(銀行が破綻したときに預金を守る国の仕組み。いわゆるペイオフ)で何がどこまで守られるかを、預金保険機構・金融庁・ゆうちょ銀行の公表内容をもとに整理します。そのうえで、1,000万円を超えたときの選び方と、口座を増やしすぎたときに家族が困ることまでお伝えします。

この記事の結論
1. 守られるのは、1つの金融機関ごと・1人あたり「元本1,000万円とその利息」。利息のつかない決済用預金は全額です。同じ銀行の別の支店は合算され、外貨預金は対象外です。
2. 超えたときの手は「別の金融機関に分ける」「決済用預金にする」「そのままにする」の3つ。どれがよいかは、金額と、自分で管理できる口座の数で決まります。
3. 分けるなら口座は必要な数だけに。一覧表を作って家族と共有しておくと、相続や認知症のときの手間が大きく減ります。
※2026年10月時点。出典:預金保険機構「預金保険制度の概要」
目次

ペイオフ(預金保険)で守られる範囲|早見表

預金保険は、銀行などに預けた時点で自動的に入っている仕組みです。預ける人が申し込んだり、保険料を払ったりする必要はありません。

守られる範囲は、預金の種類によって3つに分かれます。

預金の種類主な例守られる範囲
決済用預金当座預金、利息のつかない普通預金(無利息型普通預金)全額
一般預金等利息のつく普通預金、定期預金、定期積金、貯蓄預金など1金融機関ごとに合算して、元本1,000万円までと破綻日までの利息。超えた部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされることがある)
対象外外貨預金、譲渡性預金、金融債の一部など預金保険では守られない(財産の状況に応じて支払われ、一部カットされることがある)
出典:預金保険機構「預金保険制度の概要」「保護される預金等の範囲」(2026年10月時点)

ふだんの暮らしでいちばん関係するのは、真ん中の「一般預金等」です。定期預金も、利息のつく普通預金も、同じ金融機関の分は全部まとめて1,000万円までと考えます。

「決済用預金」は、次の3つをすべて満たす預金です。①利息がつかない、②いつでも引き出せる、③引き落としや振込などに使える。この3つがそろっていれば、金額にかかわらず全額が守られます。

外貨預金は、円の預金と同じ銀行の窓口で扱っていても預金保険の対象外です。「銀行で預けたものは全部守られる」わけではない点は、覚えておいてください。

同じ銀行の別の支店・合併した銀行・家族名義はどうなる?

別の支店に分けても、同じ銀行なら合算

よくある勘違いが「駅前の支店と自宅近くの支店に500万円ずつ分けたから大丈夫」というものです。銀行が破綻したときは、同じ人が持っている口座を全部集めて合計します。これを「名寄せ(なよせ)」といいます。

支店が違っても、同じ銀行なら1つにまとめて1,000万円まで。分ける意味があるのは、別の金融機関に分けたときです。

なお、同じグループ(同じ持株会社)に属していても、別々の銀行であれば、それぞれの銀行ごとに守られます。

銀行が合併したら、1年間だけ枠が広がる

A銀行とB銀行に分けて預けていたのに、2つの銀行が合併して1つになった。このときは特例があります。合併から1年間に限り、守られる上限が「1,000万円×合併した金融機関の数」になります。2行の合併なら2,000万円です(決済用預金は別で全額)。

ただし、1年を過ぎると普通の1,000万円に戻ります。合併のお知らせが届いたら、分けていた預金が同じ銀行の中にまとまっていないか、一度確かめておくと安心です。

夫婦・親子は別々。ただし名前を借りた預金は対象外

預金保険は「1人あたり」で数えます。夫婦や親子は別々の預金者です。夫名義・妻名義の口座が同じ銀行にあれば、それぞれに1,000万円の枠があります。

一方、家族の名前を借りただけの預金(借名預金)は、保護の対象外とされています。お金を出しているのも管理しているのも本人なのに、孫の名前で口座を作る。こうした預金は、相続のときに「名義預金」として本人の財産と見られることもあります。名義預金の考え方は生前贈与のやり方の記事で説明しています。ご自身の場合の税の扱いは、提携の税理士が確認します。

もう一つ、預金保険機構は、氏名や住所が変わったら金融機関に届け出るよう呼びかけています。名寄せは届け出た情報をもとに行うためです。旧姓や昔の住所のままの口座があれば、この機会に直しておきましょう。

信用金庫・農協・ゆうちょはどうなる?ゆうちょの預入限度額

信用金庫・信用組合・労働金庫も、銀行と同じ預金保険の対象です。守られる範囲も銀行と同じです。

農協(JA)や漁協の貯金は、預金保険とは別の「貯金保険制度」で守られています。運営するのは農水産業協同組合貯金保険機構です。JAバンクは、この制度は銀行などの預金保険制度と同様の内容だと説明しています。

ゆうちょ銀行も預金保険の対象です。ここで少し注意したいのが、ゆうちょには「預けられる上限(預入限度額)」が別にあることです。

ゆうちょの貯金預けられる上限(1人あたり)
通常貯金(通常貯蓄貯金を含む)1,300万円まで
定期性貯金(定額・定期など。財形を除く)1,300万円まで(民営化前に預けた郵便貯金も合算)
振替口座上限なし
出典:ゆうちょ銀行「貯金商品のご利用について」「よくあるご質問」(2026年10月時点)。財形貯金は別枠で550万円まで。

通常貯金と定期性貯金を合わせると、ゆうちょには最大2,600万円まで預けられます。けれども、預金保険で守られる額は別の話です。ゆうちょ銀行の中で合算して、元本1,000万円とその利子まで。振替口座の預り金は全額保護です。「預けられる上限」と「守られる上限」は別のものだと考えてください。

上限を超えてしまったときは、払い戻しなどで上限内に収める必要があります。超えた状態が続くと、ゆうちょ銀行側で払い戻しの手続きをとることがあると案内されています。

1,000万円を超えたときの3つの選択肢

同じ金融機関の預金が1,000万円を超えたとき、考えられる手は3つです。どれか一つが正解というものではありません。比べやすいように並べます。

選択肢よいところ気をつけたいところ
別の金融機関に分ける利息のつく預金のまま、全額を保護の範囲に収められる口座が増え、通帳・届け出・満期の管理が増える。相続のときは金融機関ごとに手続きが要る
決済用預金にする口座を増やさずに、金額にかかわらず全額が守られる利息がつかない。定期預金のままでは決済用にならない。扱いや手続きは金融機関ごとに違う
そのままにする管理が楽で、家族にも分かりやすい。今の金利の条件も変わらない万一の破綻のとき、1,000万円を超えた部分は一部カットされることがある

別の金融機関に分ける

超えた分を、別の銀行・信用金庫・ゆうちょなどに移す方法です。たとえば1,300万円なら、1,000万円以下と300万円に分ければ、どちらも保護の範囲に収まります。

ただ、少し超えるたびに口座を1つ増やすと、80代になったころに管理が追いつかなくなります。分けるのは「保護の範囲に収めるのに必要な数」までにしておくのが、無理のない線です。

決済用預金(無利息型の普通預金)にする

今の普通預金を、利息のつかないタイプに切り替える方法です。預金保険機構の説明では「無利息型普通預金」などが例に挙げられています。引き落としや振込に使えることが条件なので、ふだん使いの口座として使えます。

そのかわり、利息はつきません。扱っているかどうか、切り替えの手続き、今の口座番号のまま使えるかは金融機関ごとに違います。取引先の窓口で「この口座を決済用預金にできますか」と聞くのがいちばん確実です。

そのままにする理由もある

超えた部分も、破綻したら必ずゼロになるわけではありません。破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われ、一部がカットされることがある、という扱いです。

超えている額が小さく、口座を増やす手間や家族の負担を考えると、あえて1か所にまとめておく。こうした考え方の方もいらっしゃいます。超えた部分をどう考えるかは、ご本人の安心の感じ方次第です。金利の条件を比べたい方は定期預金の金利2026の記事もあわせてご覧ください。

なお、「ペイオフ対策に」と勧められて、預金以外の商品に乗り換える必要はありません。外貨預金のように、そもそも預金保険の対象外のものもあります。

口座を増やしすぎると、相続のとき家族が困ること

口座の数は、相続の手続きの数とほぼ同じです。本人が亡くなると、家族は金融機関ごとに相続の手続きをすることになります。

  • 金融機関ごとに連絡し、相続の届け出の用紙を取り寄せる
  • 戸籍の束(または法定相続情報一覧図の写し)、相続人の印鑑証明書などをそろえて出す
  • 窓口の予約や郵送のやりとりを、口座の数だけくり返す
  • どこに口座があるか分からないと、心当たりの金融機関に一つずつ問い合わせることになる

1つの銀行なら1回で済む手続きが、5つに分かれていれば5回です。平日の昼間に窓口へ行ける家族ばかりではありません。銀行から届く書類の読み方や、手続きの流れは銀行から相続手続きの書類が届いたらの記事にまとめています。戸籍の束を何度も出さずに済む方法は法定相続情報一覧図の作り方の記事をご覧ください。

もう一つ困るのが「見つからない口座」です。通帳のない口座や、昔作ったまま使っていない口座は、家族が存在を知らないまま残りがちです。分けた本人が覚えていても、家族が知らなければ手続きのしようがありません。

分けるなら、一覧表を作って家族と共有する

口座を分ける・分けないにかかわらず、いちばん効くのは「どこに何があるか」を1枚にしておくことです。紙1枚で十分です。

書いておくこと書かないこと
金融機関名と支店名キャッシュカードの暗証番号
預金の種類(普通・定期・決済用など)ネットバンキングのログイン情報
おおよその金額と、定期の満期月(口座番号を書くなら、一覧表の保管場所に注意)
通帳・証書の置き場所、届け出印がどれか(一覧表と通帳・印鑑は同じ場所に置かない)

一覧表は、子どもなど信頼できる家族1人に「ここにある」と伝えておけば足ります。内容を全部見せなくても、場所が分かっていれば十分役に立ちます。年に1回、定期の満期の時期などに見直す習慣をつけると、古い情報のまま残ることも防げます。

注意したいのは、一覧表の中身を電話で尋ねてくる相手です。家族や銀行、警察を名乗っても、電話で口座や暗証番号を答える必要はありません。手口は高齢者を狙う詐欺の手口2026の記事で紹介しています。

認知症になる前に考えておきたいこと

口座の数は、認知症になったときにも効いてきます。金融機関が本人の判断する力の衰えを知ると、定期預金の解約などが難しくなることがあります。本人の意思を確かめられないためです。家族が代わりに手続きしようとしても、多くの場合はすぐには進みません。

金融機関によっては、元気なうちに家族を「代理人」として届け出ておける仕組みがあります。ただ、これも金融機関ごとの届け出です。口座が5つあれば、5か所で手続きが要ります。

分けるかどうかは、もう一つの目でも見てください。「85歳、90歳になっても自分で管理できる数か」「家族が代わりに動くなら何か所になるか」です。定期預金と認知症の関係、元気なうちにできる準備は親の定期預金を解約・普通預金に移すにはの記事で詳しく説明しています。

今日できる一歩

1. 通帳を金融機関ごとに分けて、合計を出す。支店が違っても同じ銀行なら1つにまとめて足します。外貨預金は別にしておきます。

2. 1,000万円を超えている金融機関があれば、窓口で2つ聞く。「この口座を決済用預金にできますか」「家族を代理人として届け出る仕組みはありますか」。

3. 一覧表の下書きを作る。金融機関名・支店名・種類・おおよその金額・通帳の置き場所まで。暗証番号は書きません。

相談現場から

よく伺うのは「別の支店に分けたから大丈夫だと思っていた」というお話です。同じ銀行なら合算されると知って、驚かれる方は少なくありません。反対に、1,000万円を超えるたびに口座を増やし、ご本人も全部を思い出せなくなっていた、という場面にも出会います。守られる範囲と、家族が手続きできる数。その両方で考えると、ちょうどよい口座の数が見えてきます。

この話、うちの場合はどうなるか知りたい方へ
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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の公表情報をもとにした一般的な情報の整理です。個別の金融機関の経営状態を評価するものではありません。決済用預金の扱いや代理人の届け出の仕組みは金融機関ごとに異なりますので、取引先の金融機関でご確認ください。税金の扱いなど個別の判断は専門家にご相談ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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