出生から死亡までの戸籍を苦労して集めたのに、銀行・法務局・保険会社のたびに同じ束を提出し直すのは大変です。実は、法務局にその戸籍一式と一覧図を一度提出しておけば、無料で認証を受けた「法定相続情報一覧図」の写しを、提出先の数に合わせて必要な通数だけ発行してもらえます。
この記事では、一覧図の書き方(記載例どおりに作るためのルール)と、申出書の記入のしかたを中心に整理します。取り方の全体の流れ、使える手続き、何通もらえるかは、法定相続情報一覧図の取り方と使い方にまとめています。
先に結論:一覧図は自分で作り、戸籍一式と申出書を添えて法務局へ出す
法定相続情報一覧図ができるまで
📚
戸籍一式+一覧図
出生から死亡までの戸籍を用意
🏛️
法務局へ申出
無料・郵送も可能
📄
一覧図の写し×複数
必要な通数だけ無料交付
5年間、再交付を受けられる
(申出日の翌年から起算。2026年9月時点)
法定相続情報証明制度は、法務局が戸籍関係の内容を確認したうえで、相続関係を1枚の図にまとめた「法定相続情報一覧図」に認証文を付けてくれる制度です。手数料は無料で、必要な通数だけ交付してもらえます。銀行、法務局(相続登記)、税務署(相続税申告)、保険会社への請求など、提出先ごとに戸籍の束を出し直す必要がなくなります。
申出先(申出書で選ぶ法務局)
申出は、次のいずれかを管轄する法務局(登記所)に対して行います。
- 被相続人(亡くなった方)の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
いずれかを選べるため、自分の住所地を管轄する法務局を選べば、遠方の本籍地まで出向く必要はありません。窓口への持参のほか、郵送での申出にも対応しています(返信用封筒・切手を同封)。
作る前にそろえる書類
申出までに準備するもの
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
相続手続きで集めた戸籍一式をそのまま使います。取り方は関連記事をご覧ください。
被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)
最後の住所を確認するために必要です。
相続人全員の現在の戸籍謄本(または戸籍抄本)
相続人であることを確認するための書類です。
申出人(相続人代表)の本人確認書類・住所を証明する書類
運転免許証のコピーや、住民票の写しなどで確認します。
法定相続情報一覧図(自分で作成)と申出書
法務局のウェブサイトにある様式・記載例を使って作成します。手書きでもパソコンでも構いません。
一覧図の書き方:記載例どおりに作るためのルール
一覧図には、被相続人の氏名・生年月日・死亡年月日・最後の本籍と住所、相続人全員の氏名・生年月日・被相続人との続柄を記載します。法務局のウェブサイトに、家族構成別(配偶者と子、子のみ、父母のみ、兄弟姉妹など)のひな形と記載例が公開されているため、自分の状況に近いものを選んでそのまま書式を使うと迷いません。手書きでもパソコン作成でも、A4サイズの用紙であれば認められます。
法務局の記載例には、次のような注意書きがあります。作り直しにならないよう、書き始める前に確かめておきましょう。
- 用紙:A4の縦向き。下から約5cmは法務局が認証文を付ける場所なので、できるだけ何も書きません。紙は長く保存できる丈夫なものにします。
- 文字:パソコンで入力するか、黒のインクや黒のボールペンで、楷書ではっきり書きます。こすると消えるボールペンは使えません。
- 亡くなった方の最後の住所:住民票の除票(または戸籍の附票)で確かめて、そのとおりに書きます。
- 申出をする人:相続人のうち申出をする人の名前には「(申出人)」と書き添えます。
- 続柄:「長男」「長女」など戸籍のとおりに書くほか、「子」と書くこともできます。ただし「子」と書くと、相続税の申告など使えない手続きがあります。
- 相続人の住所:書くかどうかは任意です。書くなら住民票の写しのとおりに書き、その写しも出します。書かないなら「住所」の項目を消します。写しをもらったあとに住所が変わっても、それを理由に出し直すことはできません。
- 作成日と作成者:作った日と、作った人の住所を書き、署名するか記名して押印します。
(法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」、千葉地方法務局「法定相続情報一覧図(記載例)」をもとに整理。2026年10月確認)
似た書類に「相続関係説明図」がありますが、こちらは法務局の認証を受けない、相続登記の申請時に使う簡易な家系図です。認証を受けて銀行など複数の提出先で使えるのが法定相続情報一覧図、登記申請時に戸籍原本を還付してもらうための書類が相続関係説明図、と役割が異なります。違いの詳細は相続関係説明図のひな形と書き方で解説しています。
申出書の書き方:記入する欄と迷いやすい所
一覧図と一緒に出す申出書(法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書)は、法務局のホームページにPDFとWordの様式があります。記入する主な欄は次のとおりです。
- 申出年月日:申出をする日を書きます。
- 被相続人の表示:亡くなった方の氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日です。
- 申出人の表示:自分の住所、氏名、連絡先、亡くなった方との続柄です。郵送で受け取るときは、ここに書いた住所に送られます。
- 代理人の表示:親族や資格者に申出を頼むときだけ書きます。
- 利用目的:不動産登記、預貯金の払戻し、相続税の申告、年金等手続、その他から選びます。「その他」には「相続手続」ではなく、「株式の相続手続」のように具体的に書きます。
- 必要な写しの通数・交付方法:使う予定の通数と、窓口で受け取るか郵送かを選びます。
- 被相続人名義の不動産の有無:「有」なら、不動産の所在か不動産番号を1つ書けば足ります。
- 申出先登記所の種別:本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、不動産の所在地のどれを理由に出すかを選びます。
窓口で受け取るときは、申出人の表示欄と同じ住所・氏名が載った公的な書類(運転免許証など)を持っていきます。申出の日から3か月以内に受け取らないと、写しと返す予定の戸籍は廃棄されることがあります(法務局の申出書の注意書き。2026年10月確認)。通数の決め方や郵送での出し方、銀行・年金・相続税での使い方は、法定相続情報一覧図の取り方と使い方で詳しく説明しています。
使える場面と使えない場面
認証付きの一覧図の写しは、次のような場面で戸籍一式の代わりに提出できます。
- 銀行・証券会社での預金・有価証券の解約や名義変更(銀行から届いた相続手続きの書類の進め方)
- 法務局での相続登記の申請(相続登記を自分で申請する場合)
- 税務署への相続税申告
- 生命保険会社への死亡保険金の請求
一方で、一覧図には限界もあります。相続放棄をした人がいる場合、その事実は一覧図には反映されないため、別途、家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書などを添える必要があります。また、被相続人が亡くなった後に相続人がさらに亡くなった「数次相続」のケースでは、一覧図の表記だけでは関係が伝わりにくく、追加の説明書類を求められることがあります。こうした複雑なケースでは、司法書士・弁護士へ相談したほうが手続きがスムーズです。
⚠️ ここに注意
戸籍一式に不備があると、一覧図の内容と食い違いが生じ、法務局から追加書類を求められて時間がかかります。申出の前に、戸籍が出生から死亡まで連続してつながっているかを確認しておきましょう。被相続人や相続人に日本国籍のない方が含まれる場合など、戸籍で相続関係を確認できないケースでは、この制度自体を利用できません(2026年9月時点)。
写しの通数・受け取りまでの期間・費用
一覧図の写しは、申出のときに必要な通数を伝えておけば、その分だけまとめて交付してもらえます。銀行が2行、証券会社が1社、法務局での相続登記、税務署への相続税申告、保険会社への請求と、提出先が5か所あれば5通申出ておけば、それぞれに原本の戸籍一式を出す必要がなくなります。あとから足りなくなった場合も、5年間の保存期間内であれば同じ法務局に再交付を申出できるので、申出時点で通数を厳密に数えられなくても心配はいりません。
受け取りまでの期間
申出から一覧図の写しの交付までは、数日かかります(名古屋法務局)。窓口の混雑や書類の内容によって前後し、不備があればさらに延びます。急ぎの提出先がある場合は、余裕を持って早めに申出をしておくと安心です。交付後は5年間(申出日の翌年から起算)保管され、この間であれば再交付の申出もできます。
費用
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 法定相続情報一覧図の写しの交付 | 無料(手続きに必要な通数) |
| 戸籍謄本(全部事項証明) | 450円/通 |
| 除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 750円/通 |
| 被相続人の住民票除票 | 約300円(市区町村により異なる) |
(一覧図の写しの交付は法務局手続きとして無料。戸籍関係の手数料は戸籍法手数料令にもとづく全国共通額。2026年9月時点/法務局公式案内をもとに整理)
司法書士に作成・申出を依頼する場合は、単独依頼で1.65万円〜が目安です(相続登記とセットで依頼する場合は登記費用に含まれる事務所もあります。愛知・岐阜の複数事務所の公開料金を調べた相場・2026年9月時点)。戸籍集めから自分で行う自信がない場合は、依頼を検討する価値があります。
相続の手続きで本籍を調べている方へ:集める戸籍の範囲
一覧図を作る前提として、まず出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。誰が相続人かによって範囲が変わります。
集める通数が多いほど、一覧図を作る前の戸籍集めに時間がかかります。自分で進められる範囲の目安は相続手続き、自分でできる人・できない人|戸籍の枚数で決まる判定表にまとめています。戸籍の集め方は戸籍の広域交付の使い方と除籍謄本・改製原戸籍の取り方をあわせてご覧ください。
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※本記事は2026年9月時点の法令・法務省および法務局の公開情報にもとづく一般的な整理です。所要日数や運用は法務局・案件により異なります。個別の相続手続きの判断は司法書士・弁護士等の専門家にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
