実家の引き出しから、封をした遺言書が出てきた。開けてよいのか、どこへ持っていくのか分からない。そんなときに出てくる手続きが、家庭裁判所の「検認(けんにん)」です。
検認は、遺言書の状態を裁判所で確かめて記録する手続きです。申立ての先も、費用も、書類も決まっています。この記事では、申立ての手順、費用、期間、検認が要らない遺言までを、2026年10月時点の公式な案内で整理します。検認に法律上の「何日以内」という期限はありませんが、相続放棄の3か月などほかの期限と重なるため、早めの申立てが目安になります。
先に結論:検認は、遺言書を見つけた人が家庭裁判所に申し立てます
この記事の結論
- 要るか:自宅などで見つかった自筆の遺言書と、秘密証書遺言は検認が必要です。公正証書遺言と、法務局に預けた自筆の遺言書は要りません。
- どこへ・いくら:遺言者の最後の住所地の家庭裁判所へ。収入印紙は遺言書1通につき800円分で、連絡用の郵便切手も要ります。検認の日まで、約1か月が目安です(名古屋家庭裁判所の案内)。
- 開けない:封のある遺言書は、家庭裁判所で開けます。自分で開けると、5万円以下の過料の対象になります。
検認が要るかどうかは、遺言書の種類で決まります。まず、手元の遺言書がどの種類かを見分けます。
検認が必要な遺言・要らない遺言の早見表
民法は、公正証書遺言を除く遺言書について、検認を請求するよう定めています(民法1004条)。法務局に預けた自筆の遺言書は、別の法律で検認が要らないとされています。
方式ごとの手間や費用の違いは、公正証書遺言と自筆証書遺言はどっちがいい?費用・手間・確実性で比較で表にしています。
法務局に預けた遺言書の場合
法務局に預けた遺言書は、検認が要りません。遺言者が亡くなったあと、相続人などは「遺言書情報証明書」を請求します。これは、預けた遺言書の内容を写した書面で、手続きに使えます。預け方や予約の流れは自筆証書遺言の法務局保管制度にまとめています。
預けているかどうか分からないときは、「遺言書保管事実証明書」で調べられます。こちらは、遺言書があるかどうかだけを示し、中身は載りません。手数料は次のとおりです。
このほか、相続人の誰かが証明書の交付などを受けると、ほかの相続人にも通知が届きます(関係遺言書保管通知)。遺言者が指定した人(3名まで)に、亡くなったあと知らせる仕組みもあります(法務省)。
検認でやること・やらないこと
検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせる手続きです。あわせて、検認の日の遺言書の状態を明らかにします。形、書き足しや訂正の様子、日付、署名などです。後から偽造や書き換えがされるのを防ぐ目的があります(裁判所)。
一方で、遺言が有効か無効かを決める手続きではありません。「検認が済んだから有効」とも、「検認で無効にしてもらえる」とも言えません。無効を争うときは、別の手続き(遺言無効確認の申立て)が必要です(名古屋家庭裁判所の案内)。
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遺言書の検認手続きの流れ:申立てから検認期日まで
申立てができるのは、遺言書の保管者と、遺言書を見つけた相続人です。申立て先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。まず全体の流れを表で見ておきます。
| 段階 | やること | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 1. 見つける | 開けずにそのまま保管し、遺言者の最後の住所を確かめる | 見つけたとき |
| 2. 書類を集める | 戸籍を集め、申立書を書く | 取れた分から進める(足りない戸籍は後から追加できる) |
| 3. 申し立てる | 家庭裁判所へ申立書・戸籍・収入印紙800円分・郵便切手を出す | 相続の開始を知った後、遅滞なく(民法1004条) |
| 4. 期日の通知 | 裁判所が検認の日を決め、相続人に知らせる | 申立てから検認の日まで約1か月(名古屋家庭裁判所の目安) |
| 5. 検認期日 | 申立人が遺言書と印鑑を持って出席し、裁判所で開封・確認する | 1時間程度(同) |
| 6. 検認済証明書 | 遺言書1通につき150円分の収入印紙で申請する | 検認のあと |
| 7. 遺言の実行 | 法務局での名義変更や、金融機関での手続きに使う | 証明書を受け取ってから |
各段階の中身を、順に見ていきます。
- 遺言書は開けずに保管する。封のあるものは、そのままにします。
- 申立て先を調べる。裁判所のホームページに「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」があります。遺言者の最後の住所地から探します。
- 戸籍を集める。遺言者の出生から死亡までの戸籍など、次の章の一覧のとおりです。
- 申立書を書く。書式と記載例は、裁判所のホームページにあります。
- 書類をそろえて提出する。申立書、戸籍、収入印紙、連絡用の郵便切手を、申立て先の裁判所へ出します。窓口か郵送かは、裁判所の案内で確かめます。
- 検認期日の通知を待つ。裁判所が日を決めて、相続人に通知します。
- 検認期日に出席する。申立人は、遺言書と印鑑を持っていきます。
収入印紙と郵便切手は、名古屋家庭裁判所の案内によると、裁判所では売っていません。郵便局などで先に買います。裁判所のホームページには、切手のかわりに郵便料を保管金として納める方法も載っています。切手の額と枚数は、申立て先に確かめてから買うと無駄がありません。
必要書類のチェックリストと、戸籍の集め方
提出するものは、全員に共通する分と、家族の構成で増える分があります。まず共通の分です。
- □ 申立書 1通(裁判所の書式と記載例を使う)
- □ 収入印紙 800円分(遺言書1通につき)
- □ 連絡用の郵便切手(申立て先の指定の額と枚数)
- □ 遺言者の、出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
- □ 相続人全員の戸籍謄本
- □ 亡くなっている遺言者の子(その子の子も含む)がいる場合は、その人の出生から死亡までのすべての戸籍
- □ 検認期日に持っていく遺言書の原本と、申立人の印鑑
相続人の組み合わせによって、戸籍が増えます。裁判所の案内を表にしました。
- 戸籍は、発行から3か月以内のものを出します(東京家庭裁判所の案内)。
- 申立てまでに取れない戸籍は、申立ての後に追加で出せます(裁判所)。取れた分から進められます。
- 戸籍のかわりに「法定相続情報一覧図の写し」を出せる場合があります。使えるかは申立て先に確かめます。取り方は法定相続情報一覧図の取り方にまとめています。
- 戸籍を郵送で取るときの宛先は、市区町村ごとに違います。愛知県の例は愛知県の戸籍謄本の郵送請求先一覧にあります。
遺言書の検認に期限はある?「遅滞なく」と、早めに申し立てたい理由
検認に「何日以内」という決まりはありません。民法は、相続の開始を知った後、「遅滞なく」家庭裁判所へ出して請求するよう定めています(民法1004条1項)。遅滞なくとは、間をあけずに、という意味です。
検認そのものに日数の期限がなくても、相続のほかの手続きの期限は進みます。遺言の中身が分からないままだと、相続するか放棄するか、税金の申告をどうするかを決めにくくなります。検認と関係の深い期限は次のとおりです。
| 手続き | 期限 | 検認との関係 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 自分が相続人になったと知った時から3か月以内(民法915条) | 遺言の中身で、財産や借金の全体が見えることがある。間に合わないときは、家庭裁判所に期間の延長(伸長)を申し立てられる |
| 相続税の申告・納付 | 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内(国税庁) | 遺言で誰が何を受け取るかが決まり、申告の前提になる |
| 遺留分侵害額の請求 | 相続の開始と、取り分を減らす遺贈などを知った時から1年(民法1048条) | 遺言の中身を知ることが出発点になる |
申立てから検認の日までは、約1か月が目安です(名古屋家庭裁判所の案内)。戸籍がすべてそろうのを待ちすぎず、取れた分から申し立てると、検認のあとに相続放棄などを考える時間が残ります。足りない戸籍は、申立ての後に追加で出せます(裁判所)。
先に開けてしまったとき・検認せずに進めたとき
民法1005条は、次の場合に5万円以下の過料としています。過料は、決まりを守らなかった人に科される、刑罰とは別のお金の制裁です。科されるかどうかは、裁判所が判断します。
- 遺言書を家庭裁判所に出さず、検認を受けないまま、遺言を実行したとき
- 家庭裁判所の外で、封のある遺言書を開けたとき
検認の日まで約1か月かかります。その間にも、相続の他の手続きの期限は進みます。期限のある手続きがあるときは、検認の日程を待たずに、全体の予定を先に確かめます。
検認のあとにやることと、損しやすい点
検認が終わったら、遺言の内容を実行するための準備に進みます。
- 検認済証明書を申請する。遺言書1通につき150円分の収入印紙と、申立人の印鑑が要ります。
- 手続き先に確かめる。土地や建物なら法務局、預金なら金融機関です。実際に実行できるかどうかは、手続き先に聞きます(名古屋家庭裁判所の案内)。
遺言書を見つけた家族が、つまずきやすい点をまとめます。
- 先に開けてしまう。封のあるものは、家庭裁判所で開けます。迷ったら、封筒のまま持ち込みます。
- 遺言書が複数あるときの費用。印紙の800円は、遺言書1通ごとです。封書に入っているときは、封書1通で数えます。
- 戸籍がそろうまで待つ。取れない分は、申立ての後に追加できます。
- 切手を買ってから確認する。額と枚数は裁判所ごとに違います。先に申立て先へ確かめます。
- 検認を「有効のお墨付き」と考える。検認は有効・無効を決めません。内容に疑問があるときは、別の手続きになります。
- 取り分の話と混ぜる。遺言の内容に納得がいかないときの、最低限の取り分(遺留分)の話は、検認とは別の手続きです。期限があるため、早めに確かめます。
これから遺言を書く親御さんがいる場合は、書き方のルールを先に知っておくと、検認のときに迷う家族が減ります。遺言書は封筒がないとだめ?正しい書き方と保管方法が参考になります。
今日できる一歩
- 遺言書らしきものを見つけたら、開けずにそのままの形で置き、遺言者が最後に住んでいた住所を確かめる。そのうえで、裁判所のホームページで、その住所を管轄する家庭裁判所を調べる。
よくある質問
遺言書の検認に期限はありますか。何か月も放っておくとどうなりますか
「何日以内」という期限はなく、相続の開始を知った後「遅滞なく」申し立てる決まりです(民法1004条1項)。ただ、相続放棄の3か月や相続税申告の10か月は、検認を待たずに進みます。遺言の中身が分からないままだと判断が遅れるため、見つけたら早めに申し立てるのが安心です。
封筒が閉じたままです。自分で開けてもよいですか
開けないでください。封のある遺言書は、家庭裁判所で相続人か代理人が立ち会って開けます(民法1004条3項)。家庭裁判所の外で開けると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。
遠方に住む相続人や、高齢の相続人が出席できなくても大丈夫ですか
大丈夫です。検認期日の通知は、裁判所から相続人に届きます。出席するかどうかは各相続人の判断に任され、全員がそろわなくても検認は行われます(名古屋家庭裁判所の案内)。
検認が済むと、その遺言は有効と認められたことになりますか
なりません。検認は、遺言が有効か無効かを決める手続きではありません。遺言書が偽物だと考えるときは、別に遺言無効確認の申立てが必要です(名古屋家庭裁判所の案内)。
検認を受けないと、預金や不動産の手続きはできませんか
遺言の実行には、検認済証明書が付いていることが必要とされています。検認を終えたら、検認済証明書を申請します。実際に手続きができるかどうかは、手続き先の法務局や金融機関に確かめてください。
私は相続人ではなく、遺言書を預かっているだけです。申立てできますか
できます。申立てができるのは、遺言書の保管者と、遺言書を見つけた相続人です(裁判所)。預かっている人は、相続の開始を知った後、遅滞なく出す立場になります(民法1004条1項)。
法務局に預けた遺言書は、本当に検認が要りませんか
要りません。法務局(遺言書保管所)に保管されている遺言書は、法律で検認の対象から外れています(遺言書保管法11条)。裁判所の案内でも、遺言書情報証明書は検認が不要と書かれています。代わりに、遺言書情報証明書を請求します。
参考にした公的情報
- 裁判所「遺言書の検認」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html - 名古屋家庭裁判所「「遺言書の検認」の手続とは」
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/04kajibu/05/souzoku/05kennninn.pdf - 東京家庭裁判所「遺言書の検認」
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/yuigonsyo/index.html - e-Gov法令検索「民法」(915条・1004条・1005条・1048条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(9条・11条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000073 - 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm - 法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。郵便切手の額や、必要な書類の細部は、申立て先の家庭裁判所によって異なります。ご自身の場合の手続きは、申立て先の家庭裁判所でご確認ください。
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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
