遺族年金は、待っていても自動では始まりません。請求書と添付書類を出して、初めて支払いが決まります。ところが「何をどこで取ればいいか」「マイナンバーを書けば何が要らなくなるのか」は、案内を読んでも分かりにくいところです。
この記事では、遺族年金の請求に必要な書類を「全員が出すもの」と「家族の事情で増えるもの」に分け、マイナンバーで省ける書類と省けない書類を表にしました。書類を取る順番、提出先、家族が代わりに出すときの委任状も整理しています。2026年10月時点の日本年金機構の案内で確かめた内容です。
この記事の結論
- 使う請求書は、遺族厚生年金がある場合は「年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)様式第105号」、国民年金だけなら「年金請求書(国民年金遺族基礎年金)様式第108号」です。
- 請求書にマイナンバーを書くと、住民票と収入の書類は省けます。戸籍は、請求する人が配偶者か子の場合に省けます。死亡診断書のコピー(または死亡届の記載事項証明書)は省けません。
- 戸籍と住民票は「亡くなった日以降に交付され、出す日から6か月以内」のものが要ります。先に年金事務所の予約を取り、持ち物を聞いてから取ると二度手間になりません。
遺族年金の請求に必要な書類一覧|全員が出すもの
まず、だれが請求する場合でも基本になる書類です。「何のために出すのか」が分かると、窓口で別の書類を案内されたときにも慌てずに済みます。
| 書類 | 何のため | どこで取る | マイナンバーを書いた場合 |
|---|---|---|---|
| 年金請求書(様式第105号、国民年金だけなら第108号) | 請求そのもの | 年金事務所・街角の年金相談センター(第108号は市区町村役場でも) | ― |
| 戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し | 亡くなった人との続柄を確かめる | 戸籍は市区町村、一覧図は法務局 | 請求する人が配偶者か子なら省ける |
| 世帯全員の住民票の写し | 生計を同じくしていたかを確かめる | 住所地の市区町村 | 省ける |
| 亡くなった人の住民票の除票 | 同上 | 住所地の市区町村 | 世帯全員の住民票に載っていれば不要 |
| 請求する人の収入が分かる書類(所得証明書、課税・非課税証明書、源泉徴収票など) | 生計維持(年収850万円未満など)を確かめる | 市区町村、勤め先 | 省ける |
| 子の収入が分かる書類 | 子の生計維持を確かめる | 高校などに在学中は、在学証明書か学生証の写し | 義務教育を終える前の子は不要 |
| 死亡診断書(死体検案書など)のコピー、または死亡届の記載事項証明書 | 亡くなった事実と日付を確かめる | コピーは手元の控え。記載事項証明書は死亡届を出した市区町村など | 省けない |
| 受け取る人の名義の通帳など | 振込先を確かめる | 手元 | 公金受取口座を使う場合は不要 |
(日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」「遺族基礎年金を受けられるとき」をもとに作成。2026年10月時点)
戸籍の束の代わりに使える法定相続情報一覧図は、法務局で無料で交付されます。銀行や相続登記でも使えるので、相続の手続きが多い家庭は先に作っておくと楽です(法定相続情報一覧図の取り方)。死亡診断書の控えが見当たらないときの考え方は死亡診断書とはで整理しています。
亡くなった人が年金を受け取っていた場合は、「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」も一緒に出すことが多い書類です。日本年金機構に亡くなった人のマイナンバーが登録されていれば、死亡の届出は原則省けます。ただし、亡くなった月までの払い残し(未支給年金)は、請求しないと受け取れません(未支給年金の請求方法)。亡くなった人の年金を止める届や、亡くなったあとに振り込まれた年金の扱いは、死亡による年金の停止手続きで整理しています。
マイナンバーで省ける書類・省けない書類|請求する人で違う
請求書にマイナンバーを書くと、日本年金機構が住民票や所得の情報を確かめられるため、書類の一部を出さずに済みます。ただ、戸籍だけは「だれが請求するか」で扱いが分かれます。
| 書類 | 配偶者・子が請求する | 父母・孫・祖父母が請求する |
|---|---|---|
| 戸籍謄本・法定相続情報一覧図の写し | 省ける | 要る |
| 世帯全員の住民票の写し | 省ける | 省ける |
| 請求する人の収入が分かる書類 | 省ける | 省ける |
| 死亡診断書のコピーなど | 要る | 要る |
| 受け取る人の名義の通帳など | 公金受取口座なら不要 | 公金受取口座なら不要 |
| 生計同一関係に関する申立書(別居などの場合) | 事情により要る | 事情により要る |
(日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」「遺族年金の請求手続きのご案内」をもとに作成。2026年10月時点)
マイナンバーを書いても、情報の連携で確かめられない事情があるときは、窓口で書類を求められることがあります。予約の電話で「マイナンバーを書くつもりです」と伝え、それでも要る書類があるかを聞いておくと確実です。
家族の事情で増える書類
次のような事情があると、書類が増えます。当てはまるものがあれば、予約のときに先に伝えておきます。
- 亡くなった人と住所が別だった(施設入所・入院・単身赴任など):「生計同一関係に関する申立書」を出します。入院・入所の証明や領収書の写し、仕送りが分かる通帳の写し、健康保険の扶養が分かる資格情報など、生計が同じだったことを示す書類を添えると、申立書への第三者の証明は要らないとされています(日本年金機構「生計同一関係証明書類等について」)。
- 籍を入れていない内縁の妻・夫:「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」と裏付けの書類が要ります(内縁の妻・夫は遺族年金をもらえる?)。
- 18歳年度末までの子が3人以上:3人目からは別紙の様式に書いて出します。
- 交通事故など、第三者の行為で亡くなった:第三者行為事故状況届、交通事故証明(取れないときは新聞のコピーなど)、確認書、示談が済んでいれば損害賠償金の算定書などが加わります。
- 亡くなった人の保険料を納めた期間などが25年に足りない:合算対象期間を確かめるため、戸籍の附票の写しなどが要ることがあります。先に年金事務所に相談します。
親が施設に入っていて住民票の住所が別だった、というのは60代以上の夫婦によくある形です。別居でも、仕送りや入所費用の支払いなどで生計が同じだったと示せれば、遺族年金の対象になります。入所先の領収書や通帳は、捨てずに保管しておきます。
書類を取る順番|「亡くなった日以降・6か月以内」から逆算する
戸籍謄本と世帯全員の住民票は、「受給権が生まれた日(亡くなった日)以降に交付され、出す日から6か月以内」のものが必要です(日本年金機構)。早く取りすぎても遅すぎても使えないので、次の順番で進めると無駄がありません。
- 死亡届を出し、死亡診断書のコピーを取っておく:死亡届は亡くなったことを知った日から7日以内です。原本は役所に出すと戻らないので、出す前にコピーを数枚取ります(死亡届の出し方と書き方)。
- 年金事務所の予約を取る:予約相談の電話は0570-05-4890です。「だれが請求するか」「マイナンバーを書くか」「別居などの事情」を伝え、要る書類を聞きます(年金事務所の予約のしかた)。
- 予約日に合わせて、6か月以内の書類をそろえる:マイナンバーを書くなら、配偶者や子の請求では戸籍・住民票・所得の書類を取らずに済むことが多くなります。
- 請求書と書類を出す:窓口で記入を確かめてもらいながら出せます。来所する人の本人確認書類も持参します。
- 年金証書が届く:出してから1か月程度(加入状況の確認が要るときは2か月程度)で届き、その1〜2か月後に振り込みが始まります(日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」)。
遺族年金を受け取る権利は、亡くなった日の翌日から5年で時効になります。四十九日や相続の手続きが落ち着いてからでも間に合いますが、振り込みまで数か月かかるので、生活費の見通しのためにも予約は早めに入れておくと安心です。
家族で分担すると早い|だれが何をそろえるか
葬儀のあとは、相続や銀行の手続きも同時に動きます。遺族年金の書類は、ほかの手続きと重なるものが多いので、家族で役割を分けると早くそろいます。
| そろえるもの | 任せると早い人 | ひと言メモ |
|---|---|---|
| 死亡診断書のコピー | 死亡届を出した人、葬儀を手配した人 | 原本は役所に出すと戻らない。出す前に数枚コピーしておく |
| 年金事務所の予約・当日の同行 | 請求する本人。難しければ委任を受けた子 | 本人の基礎年金番号が分かるものを預かっておく |
| 戸籍謄本・法定相続情報一覧図 | 相続の手続きを進める人 | 銀行や相続登記にも使うので、まとめて取ると無駄が少ない |
| 通帳・年金証書・基礎年金番号の分かる書類 | 請求する本人 | 受け取る人の名義の口座を用意する |
| 別居だった場合の証明(入所費の領収書、仕送りの記録など) | 施設や病院とやり取りしていた人 | 捨てずにまとめておく |
だれが何を持っているかを1枚の紙に書き出してから予約の電話をすると、窓口で「次はこれを持ってきてください」と言われる回数が減ります。
提出先は年金事務所?市区町村?
出す先は、亡くなった人の年金の種類で決まります。
| 亡くなった人・請求する年金 | 提出先 |
|---|---|
| 厚生年金の期間がある(遺族厚生年金を請求する) | 年金事務所か街角の年金相談センター |
| 国民年金だけ(遺族基礎年金だけを請求する) | 住所地の市区町村役場。亡くなった日が国民年金の第3号被保険者の期間中なら、年金事務所か街角の年金相談センター |
| 寡婦年金・死亡一時金 | 市区町村役場、年金事務所、街角の年金相談センター |
(日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」「遺族基礎年金を受けられるとき」「寡婦年金を受けるとき」をもとに作成。2026年10月時点)
年金事務所は、住所の管轄に関係なく全国どこでも相談できます。愛知県・岐阜県の年金事務所の住所と管轄は愛知県・岐阜県の年金事務所一覧にまとめています。
家族が代わりに出すとき|委任状と持ち物
請求する本人が高齢や病気で窓口に行けないときは、子などが代わりに手続きできます。日本年金機構の案内では、次のものを用意します。
- 本人が作成した委任状:様式は日本年金機構のホームページにあります。任意の用紙でも、委任日、代理人の氏名・住所・本人との関係、本人の基礎年金番号・氏名・生年月日・住所・電話番号、委任する内容などを書けば使えます。
- 代理人自身の本人確認書類:運転免許証やマイナンバーカードなどです。
- 本人の基礎年金番号が分かるもの:番号が分からないと、制度の一般的な説明だけになります。番号が分からないときは、本人の本人確認書類の写しが要ります。
病気などで本人が委任状を書けないときは、日本年金機構の「委任状を作成できない場合」の案内に沿って対応します。まず年金事務所に事情を伝えて相談してください。80代の母の手続きを子が進める流れは、遺族年金 夫 死亡 70歳以上の妻でも整理しています。
今日できる一歩
1. 亡くなった方と、請求する方の基礎年金番号が分かる書類を探す。年金証書、年金手帳、基礎年金番号通知書などです。
2. 死亡診断書のコピーが手元にあるか確かめる。なければ、死亡届の記載事項証明書を取れるかを市区町村に聞きます。
3. 年金事務所の予約を取り、この記事の表に沿って要る書類を聞く。戸籍や住民票は、予約日から逆算して6か月以内に取ります。
よくある質問
遺族年金の請求に必要な書類は何ですか
基本は、年金請求書、戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)、世帯全員の住民票の写し、収入が分かる書類、死亡診断書のコピー、受け取る人の通帳などです。別居や事実婚、交通事故などの事情があると書類が増えます。
マイナンバーを書けば、戸籍や住民票は要りませんか
住民票と収入の書類は省けます。戸籍は、請求する人が配偶者か子の場合に省けます。父母・孫・祖父母が請求する場合は、戸籍が要ります。死亡診断書のコピーなど、マイナンバーでは省けない書類もあります。
戸籍や住民票は、いつ取ったものでもいいですか
亡くなった日以降に交付され、出す日から6か月以内のものが必要です。予約日が決まってから取ると、期限切れになりにくくなります。
死亡診断書の原本を役所に出してしまいました。どうすればいいですか
遺族年金の請求で使うのは、死亡診断書のコピーか、死亡届の記載事項証明書です。コピーがなければ、死亡届を出した市区町村などで記載事項証明書を取れるかを確かめてください。
遺族年金の手続きはどこでしますか
遺族厚生年金がある場合は、年金事務所か街角の年金相談センターです。亡くなった人が国民年金だけで、遺族基礎年金だけを請求する場合は、原則として住所地の市区町村役場です。
子どもが代わりに手続きできますか
できます。本人が作成した委任状、来所する子の本人確認書類、本人の基礎年金番号が分かるものを持って行きます。本人が委任状を書けないときは、年金事務所に事情を伝えて相談してください。
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参考にした公的情報
- 日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」
- 日本年金機構「遺族基礎年金を受けられるとき」
- 日本年金機構「遺族年金の請求手続きのご案内」(PDF)
- 日本年金機構「生計同一関係・事実婚関係に関する申立をするとき」
- 日本年金機構「生計同一関係証明書類等について」(PDF)
- 日本年金機構「年金相談や手続きを代理人に委任するとき」
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」(PDF)
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。必要な書類は、亡くなった方と請求する方の加入記録や家族の状況で変わります。実際に要る書類は、予約の際に年金事務所でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
