内縁の妻・夫には相続権がありません。では、遺族年金も受け取れないのか。答えは「受け取れる場合がある」です。年金の制度では、婚姻の届出をしていなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある方を配偶者として扱うと法律で定められており、内縁のパートナーは相続では「他人」でも、年金では「配偶者」になり得ます。
ただし、自動的にもらえるわけではありません。事実婚であったこと、生計を維持されていたことを、残された側が書類で示して請求する必要があります。この記事では、内縁のパートナーが遺族年金を受け取るための条件、戸籍上の配偶者が別にいる場合の扱い、そして元気なうちに整えておくべきことを、相続と保険の相談現場の視点から整理します。
同じ「内縁の妻・夫」でも、相続と年金で扱いが違う
相続(民法)
遺言か保険がなければ0円
遺族年金(年金法)
事実婚+生計維持を証明できれば
内縁のパートナーが遺族年金を受け取るための2つの条件
年金事務所が見るのは、大きく2点です。ひとつは「事実婚関係にあったこと」、もうひとつは「亡くなった方に生計を維持されていたこと」。どちらも、戸籍上の夫婦なら戸籍謄本一枚で済むところを、内縁では生活の実態を示す書類で補うことになります。
条件1|事実婚関係にあったこと
同じ住所で同一世帯として暮らし、住民票の続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」になっていれば、事実婚関係は比較的示しやすくなります。住民票が別になっている、続柄が「同居人」のままという場合は、賃貸借契約書、生活費を出し合っていた通帳、健康保険の被扶養者になっていた記録、親族や近隣の方による第三者の証明などを重ねて示します。どの書類がどの場面で効くかは内縁関係を証明する方法で詳しく解説しています。
条件2|生計を維持されていたこと
「生計維持」とは、亡くなった方と生計を共にしていて、かつ請求する側の収入が一定額未満であることです。収入の基準は、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満とされています。共働きでお互いに収入がある場合でも、この基準を下回っていれば要件を満たします。同居していれば生計同一は原則認められ、別居の場合は仕送りや定期的な行き来を示す必要があります。
受け取れる可能性のある年金の種類
遺族年金には大きく遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、どちらも事実婚の配偶者が対象に含まれます。亡くなった方がどの年金に加入していたかで、受け取れるものが変わります。
亡くなった方の加入状況で、受け取れるものが変わる
自営業・国民年金のみ
18歳年度末までの子がいる
子がいなければ対象外
死亡一時金・寡婦年金の可能性も
会社員・公務員(厚生年金)
厚生年金に加入していた
子がいなくても対象に
子がいれば基礎年金も上乗せ
年齢・子の有無・加入期間で受給の可否と期間が変わります。2028年4月以降、子のない配偶者の遺族厚生年金は段階的に制度が変わる予定です。
遺族基礎年金は、18歳の年度末までの子(または一定の障害のある20歳未満の子)がいる配偶者か、その子が対象です。内縁のパートナーとの間の子については、父が亡くなった場合、認知されていることが前提になります。遺族厚生年金は、亡くなった方が厚生年金に加入していれば、子がいない配偶者でも対象になります。ただし夫が受け取る場合は55歳以上という年齢要件があり、また30歳未満で子のない妻は5年間の有期給付です。子のない配偶者に対する遺族厚生年金は法改正により2028年4月以降、男女の差をなくす方向で段階的に見直される予定のため、請求時点の最新の取り扱いは年金事務所で確認してください。
このほか、亡くなった方が受け取るはずだった未支給の年金も、生計を同じくしていた事実婚の配偶者が請求できます。遺族年金は非課税で、受け取っても所得税や相続税はかかりません。
戸籍上の配偶者が別にいる場合はどうなるか
相談現場でもっとも多く、もっとも難しいのがこのケースです。亡くなった方に離婚が成立していない戸籍上の配偶者がいる場合、遺族年金は原則としてその戸籍上の配偶者に支給されます。内縁のパートナーが何十年連れ添っていても、原則は変わりません。
例外として、戸籍上の婚姻関係がすでに実体を失い、その状態が固定していると認められる場合には、内縁のパートナーの側が配偶者として扱われることがあります。具体的には、長期間の別居が続き、経済的なやり取りも音信もなく、離婚の合意はあるのに届出だけしていない、といった事情が重なっているケースです。別居の期間が長いほど認められやすくなりますが、年数だけで機械的に決まるものではなく、年金事務所が個別の事情を総合して判断します。戸籍上の配偶者の側からも請求があれば、双方の事情を比べて決まることになります。
この「重婚的内縁」と呼ばれる状況では、遺族年金だけでなく、遺言による財産の行き先も戸籍上の配偶者の遺留分とぶつかります。年金は年金事務所の判断に委ねるしかありませんが、財産については生命保険の受取人指定という、遺留分の影響を受けにくい方法があります。パターン別の考え方は内縁の妻・夫に相続権はない|財産を渡す4つの方法で整理しています。
相談現場から|相談員メモ
遺族年金は年金事務所、死亡保険金は保険会社と、判断する相手は別ですが、どちらも最初に見るのは住民票です。同一世帯で「妻(未届)」の記載があるかどうかで、その後の説明のしやすさがまったく違います。ご相談では、年金のことを聞きに来られた方に「保険の受取人は決めてありますか」と伺うと、そこで初めて「内縁でも受取人になれるのか」と気づかれる方が少なくありません。遺族年金は亡くなった後にパートナーが申請するもの、保険の受取人は生きているうちにご本人が決めておくもの。両方を揃えて、残される方が一人で証明に奔走しなくて済む形を作るのが、当社の考える備えです。
請求の流れと、元気なうちに整えておくこと
請求先は年金事務所(遺族基礎年金のみの場合は市区町村の窓口でも可)です。亡くなった方の年金手帳や基礎年金番号、死亡診断書の写し、亡くなった方と請求者の住民票(除票を含む)、戸籍謄本、請求者の収入を示す書類に加え、内縁の場合は事実婚関係と生計維持関係を示す申立書と、それを裏付ける書類が必要になります。第三者による証明を求められることもあります。請求の時効は5年ですが、書類集めに時間がかかるため、早めに年金事務所に相談するのが確実です。
残される側の負担を減らすために、元気なうちにできることは3つです。住民票を同一世帯にして続柄を「妻(未届)」「夫(未届)」にしておくこと。生活費を出し合っている通帳や賃貸借契約など、生計を共にしている記録を残しておくこと。そして、年金とは別に、当面の生活費を確実に届ける手段として生命保険の受取人指定を整えておくことです。遺族年金は請求から支給まで数ヶ月かかるのが普通で、その間の生活費は別に用意しておく必要があります。
「年金とは別に、当面の現金を確実に渡したい」方へ
遺族年金は亡くなった後に請求し、審査を経て支給されるものです。その間の生活費や葬儀費用を確実に届ける手段として、内縁のパートナーを生命保険の受取人にできるかどうかを、当社で確認できます。基準は保険会社ごとに異なり公開されていませんが、当社の相談員はすべての保険会社の商品を扱えるため、通る可能性のある会社を横断して当たります。
遺族年金は亡くなった後にパートナーが申請するもの。受取人の指定は、いま決められます
遺族年金の可否は年金事務所の判断ですが、当面の生活費を確実に届ける保険の受取人指定は、いまの段階で確認できます。同居の年数や住民票の状態をお話しいただければ、どの保険会社なら認められる可能性があるかを当社で当たります。お名前だけで、書類をお見せいただく必要はありません。
相談員は全社の保険を扱える募集人で、相続の相談を本業にしている行政書士法人に所属しています。年金のことは年金事務所や社会保険労務士に確認すべき点を含めて、整理してお伝えします。
30分の無料相談で聞いてみる(オンライン・全国対応)→お電話でも承ります:052-766-5650(相談中の場合は折り返しご連絡します)。パートナーの方とご一緒でも、お一人でも構いません。
よくある質問
同居何年から遺族年金の対象になりますか?
「何年以上」という年数の基準はありません。事実婚関係と生計維持関係が認められれば、同居期間が短くても対象になり得ます。ただし、期間が短いほど関係を示す書類は多く求められます。
パートナーシップ宣誓制度の受領証があれば、遺族年金は受け取れますか?
受領証だけで自動的に認められるわけではありませんが、事実婚関係を示す材料の一つにはなります。年金事務所はそれに加えて住民票や生計維持の状況を確認します。なお、同性のパートナーについては、現時点で遺族年金の対象とする取り扱いにはなっていません。
内縁の妻が遺族年金を受け取ると、相続税はかかりますか?
かかりません。遺族年金は所得税・相続税ともに非課税です。一方、遺言や生命保険で財産を受け取った場合は相続税の対象になり、内縁のパートナーは法定相続人ではないため2割加算の対象になります。
本記事は制度の一般的な説明であり、特定の保険商品を推奨するものではありません。遺族年金の受給可否は年金事務所が個別の事情をもとに判断します。金額や要件は執筆時点の情報で、法改正により変わることがあります。詳細は年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。