内縁の妻・夫は遺族年金をもらえる?|事実婚の2つの条件・戸籍上の配偶者がいる場合・請求の4ステップを相談員が解説

内縁の妻・夫は、相続では「他人」です。けれども遺族年金では「配偶者」になり得ます。年金の法律は、婚姻の届出をしていなくても「事実上婚姻関係と同様の事情にある人」を配偶者に含めると定めているからです。「籍を入れていないから遺族年金は無理だろう」とあきらめて請求しない方が、相談の現場では少なくありません。まず、この一点を知っておいてください。

ただし自動的にもらえるわけではありません。「事実婚関係にあったこと」と「亡くなった方に生計を維持されていたこと」の2つを、残された側が書類で示して請求する必要があります。この記事では、内縁のパートナーが遺族年金を受け取るための2条件、遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金のどれが対象になるか、戸籍上の配偶者が別にいる場合の扱い、年金事務所での請求の流れと必要書類、そして元気なうちにできる3つの備えを、相続と保険の相談現場の視点から整理します。

同じ「内縁の妻・夫」でも、相続と年金で扱いが違う

📜

相続(民法)

相続人ではない

遺言か保険がなければ0円

💴

遺族年金(年金法)

配偶者に含まれる

事実婚+生計維持を証明できれば

国民年金法・厚生年金保険法は「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を配偶者に含めています。

目次

内縁のパートナーが遺族年金を受け取るための2つの条件

年金事務所が見るのは、大きく2点です。ひとつは「事実上婚姻関係と同様の事情にあったこと」、もうひとつは「亡くなった方に生計を維持されていたこと」。戸籍上の夫婦なら戸籍謄本一枚で済むところを、内縁では生活の実態を示す書類で補うことになります。

2つそろって、はじめて「年金上の配偶者」

🏠
条件1

事実婚関係

同居・住民票「妻(未届)」・被扶養者

💴
条件2

生計維持

生計同一+年収850万円未満

配偶者

として認定

遺族年金の請求権

収入基準は前年収入850万円未満または所得655万5千円未満(令和8年度時点)。認定は年金事務所が個別に判断します。

条件1|事実婚関係にあったこと

同じ住所で同一世帯として暮らし、住民票の続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」になっていれば、事実婚関係は比較的示しやすくなります。住民票が別、続柄が「同居人」のままという場合は、賃貸借契約書、生活費を出し合っていた通帳、健康保険の被扶養者になっていた記録、親族や近隣の方による第三者証明などを重ねて示します。どの書類がどの場面で効くかは内縁関係を証明する方法で詳しく解説しています。

条件2|生計を維持されていたこと

「生計維持」とは、亡くなった方と生計を共にしていて(生計同一)、かつ請求する側の収入が一定額未満であることです。収入の基準は、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満とされています(令和8年度時点)。共働きでお互いに収入がある場合でも、この基準を下回っていれば要件を満たします。同居していれば生計同一は原則認められ、別居の場合は仕送りや定期的な行き来を示す必要があります。

内縁の配偶者が対象になる年金・ならない年金

遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、どちらも事実婚の配偶者が対象に含まれます。さらに国民年金には寡婦年金と死亡一時金という独自の給付があり、これらも事実婚の妻・配偶者が対象です。逆に、事実婚だから対象外という給付は、公的年金にはありません。分かれ目は「内縁かどうか」ではなく、「亡くなった方がどの年金に加入していたか」と「子の有無・年齢」です。

内縁の配偶者が受け取れる可能性のある給付(一覧)

給付の種類 内縁の配偶者 主な条件
遺族基礎年金 18歳年度末までの子(または障害のある20歳未満の子)がいること。子がいなければ対象外
遺族厚生年金 亡くなった方が厚生年金に加入。子がいなくても対象。夫は55歳以上(支給は60歳から)
寡婦年金 妻のみ。夫が国民年金第1号として10年以上納付、事実婚を含む婚姻10年以上、妻60〜65歳の間
死亡一時金 国民年金第1号として36月以上納付し、年金を受けずに死亡。生計同一の配偶者が対象(寡婦年金と選択)
未支給年金 亡くなった方が受け取るはずだった年金の残り。生計同一の配偶者が請求できる

○=事実婚の配偶者も対象、△=女性のみ・条件つき。令和8年度時点の制度。要件・年齢は法改正で変わります。

亡くなった方の加入状況で、受け取れるものが変わる

自営業・国民年金のみ

👶

18歳年度末までの子がいる

遺族基礎年金

子がいなければ対象外

💴

死亡一時金・寡婦年金の可能性も

会社員・公務員(厚生年金)

🏢

厚生年金に加入していた

遺族厚生年金

子がいなくても対象に

子がいれば基礎年金も上乗せ

年齢・子の有無・加入期間で受給の可否と期間が変わります。2028年4月以降、子のない配偶者の遺族厚生年金は段階的に制度が変わる予定です。

年金額の考え方(令和8年度時点・毎年改定あり)

遺族基礎年金は定額で、年額80万円台の基本額に子1人あたりの加算が上乗せされます(参考:令和7年度は基本額831,700円、子の加算は第1子・第2子各239,300円、第3子以降各79,800円)。遺族厚生年金は定額ではなく、亡くなった方の報酬比例部分の年金額のおおむね4分の3が目安です。加入期間や給与水準で大きく変わるため、この記事では断定しません。金額は毎年度改定され、令和8年度の額は日本年金機構の案内または年金事務所で確認してください。

内縁のパートナーとの間の子については、父が亡くなった場合、認知されていることが前提になります。遺族厚生年金を夫が受け取る場合は55歳以上という年齢要件があり、30歳未満で子のない妻は5年間の有期給付です。子のない配偶者に対する遺族厚生年金は、2028年4月以降、男女の差をなくす方向で段階的に見直される予定のため、請求時点の最新の取り扱いは年金事務所で確認してください。なお遺族年金は非課税で、受け取っても所得税や相続税はかかりません。

戸籍上の配偶者が別にいる場合はどうなるか(重婚的内縁)

原則は戸籍上の配偶者、例外は「婚姻が形骸化している」とき

相談現場でもっとも多く、もっとも難しいのがこのケースです。亡くなった方に離婚が成立していない戸籍上の配偶者がいる場合、遺族年金は原則としてその戸籍上の配偶者に支給されます。内縁のパートナーが何十年連れ添っていても、原則は変わりません。

戸籍上の配偶者がいるとき、内縁の側が認められる分かれ目

📕

原則

戸籍上の配偶者へ

別居していても、まだ夫婦の実体があると見られる間は

🏠

例外

内縁の側へ

長期の別居+送金も音信もない+離婚の合意はあるが届出だけ未了

別居の長さ(概ね10年程度以上が一つの目安)や経済的なやり取りの有無などを、年金事務所が総合して判断します。年数だけで機械的に決まるものではありません。

例外として、戸籍上の婚姻関係がすでに実体を失い、その状態が固定していると認められる場合には、内縁のパートナーの側が配偶者として扱われることがあります。長期間の別居が続き、経済的なやり取りも音信もなく、離婚の合意はあるのに届出だけしていない、といった事情が重なっているケースです。戸籍上の配偶者の側からも請求があれば、双方の事情を比べて決まることになります。

年金は年金事務所の判断、財産は生前に決められる

この「重婚的内縁」と呼ばれる状況では、遺族年金だけでなく、遺言による財産の行き先も戸籍上の配偶者の遺留分とぶつかります。年金は年金事務所の判断に委ねるしかありませんが、財産については生命保険の受取人指定という、遺留分の影響を受けにくい方法があります。パターン別の考え方は内縁の妻・夫に相続権はない|財産を渡す4つの方法で、内縁のパートナーを受取人にできるかどうかは内縁の妻・夫を生命保険の受取人にできる?で整理しています。

相談現場から|相談員メモ

遺族年金は年金事務所、死亡保険金は保険会社と、判断する相手は別ですが、どちらも最初に見るのは住民票です。同一世帯で「妻(未届)」の記載があるかどうかで、その後の説明のしやすさがまったく違います。ご相談では、年金のことを聞きに来られた方に「保険の受取人は決めてありますか」と伺うと、そこで初めて「内縁でも受取人になれるのか」と気づかれる方が少なくありません。遺族年金は亡くなった後にパートナーが申請するもの、保険の受取人は生きているうちにご本人が決めておくもの。両方を揃えて、残される方が一人で証明に奔走しなくて済む形を作るのが、当社の考える備えです。

請求の流れ|年金事務所での4ステップと必要書類

請求先は年金事務所(遺族基礎年金のみの場合は市区町村の窓口でも可)です。内縁の場合は通常の書類に加えて、事実婚関係と生計同一関係を示す申立書と、それを裏付ける書類が必要になります。請求の時効は5年ですが、書類集めに時間がかかるため、早めに年金事務所に相談するのが確実です。

内縁のパートナーが遺族年金を請求する4ステップ

📞
1

年金事務所に予約

「内縁の配偶者として請求したい」と伝える

📄
2

書類を集める

住民票・戸籍・収入証明+内縁を示す書類

✍️
3

申立書を提出

事実婚・生計同一の申立書+第三者証明

💴
4

審査・決定

数か月後に年金証書、以後2か月ごと振込

請求の時効は死亡日の翌日から5年。審査期間は年金事務所の状況や書類の内容により異なります。

内縁の場合に追加で求められる書類

共通で必要なのは、年金請求書、亡くなった方の基礎年金番号がわかるもの、死亡診断書の写し、亡くなった方と請求者の戸籍謄本、世帯全員の住民票(亡くなった方の除票を含む)、請求者の収入を示す書類(課税証明書など)、振込先の口座がわかるものです。内縁の場合はこれに加えて「事実婚関係および生計同一関係に関する申立書」を出し、その裏付けとして次のような書類を添えます。

  • 住民票で同一世帯・続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」になっているもの
  • 健康保険の被扶養者になっていたことがわかる書類(保険証の写し、健康保険組合の証明など)
  • 給与簿や賃金台帳で扶養手当の支給対象になっていた記録
  • 賃貸借契約書や住宅ローンの書類で同居がわかるもの、生活費を出し合っていた通帳
  • 葬儀で喪主を務めた会葬礼状、連名の年賀状など生活実態を示す資料
  • 親族や近隣の方、勤務先などによる第三者証明(申立書の所定欄に記入)

すべてが揃わなくても請求はできますが、住民票の続柄と健康保険の被扶養者の2つが揃っていると、年金事務所での説明が格段に楽になります。逆にどちらもない場合は、第三者証明と複数の生活資料で補うことになり、時間がかかります。

元気なうちにできる3つの備え

残される側の負担を減らすために、元気なうちにできることは3つです。どれも費用はほとんどかからず、いまからでも整えられます。遺族年金は請求から支給まで数か月かかるのが普通で、その間の生活費は別に用意しておく必要があります。

元気なうちにできる3つ

📋
1

住民票の続柄を
「妻(未届)」に

市区町村の窓口で世帯合併・続柄変更

🏥
2

健康保険の
被扶養者にする

勤務先経由で申請。内縁でも可

📝
3

保険の受取人を
指定しておく

年金が届くまでの生活費を確実に

続柄変更は住民票のある市区町村、被扶養者の認定は加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)ごとに条件が異なります。

1つ目は、住民票を同一世帯にして続柄を「妻(未届)」「夫(未届)」にしておくこと。市区町村の窓口で世帯を合併し、続柄を申し出れば記載できます。2つ目は、勤務先の健康保険で被扶養者にしておくこと。内縁の配偶者も収入要件を満たせば被扶養者になれ、その記録が年金請求時の有力な証拠になります。3つ目は、年金とは別に、当面の生活費を確実に届ける手段として生命保険の受取人指定を整えておくことです。相続人が兄弟姉妹だけで、内縁のパートナーに財産を渡したい方は相続人が兄弟姉妹・甥姪だけの人へ|受取人指定の6論点も参考になります。

「年金とは別に、当面の現金を確実に渡したい」方へ

遺族年金は亡くなった後に請求し、審査を経て支給されるものです。その間の生活費や葬儀費用を確実に届ける手段として、内縁のパートナーを生命保険の受取人にできるかどうかを、当社で確認できます。基準は保険会社ごとに異なり公開されていませんが、当社の相談員はすべての保険会社の商品を扱えるため、通る可能性のある会社を横断して当たります。

遺族年金は亡くなった後にパートナーが申請するもの。受取人の指定は、いま決められます

遺族年金の可否は年金事務所の判断ですが、当面の生活費を確実に届ける保険の受取人指定は、いまの段階で確認できます。同居の年数や住民票の状態をお話しいただければ、どの保険会社なら認められる可能性があるかを当社で当たります。お名前だけで、書類をお見せいただく必要はありません。

相談員は全社の保険を扱える募集人で、相続の相談を本業にしている行政書士法人に所属しています。年金のことは年金事務所や社会保険労務士に確認すべき点を含めて、整理してお伝えします。すでにパートナーを亡くされている方は、遺族年金の請求にどの書類がそろえられそうか、ほかに残っている手続きは何かの洗い出しからご相談いただけます。

30分の無料相談で聞いてみる(オンライン・全国対応)→

お電話でも承ります:052-766-5650(相談中の場合は折り返しご連絡します)。パートナーの方とご一緒でも、お一人でも構いません。

よくある質問

同居何年から遺族年金の対象になりますか?

「何年以上」という年数の基準はありません。事実婚関係と生計維持関係が認められれば、同居期間が短くても対象になり得ます。ただし、期間が短いほど関係を示す書類は多く求められます。なお寡婦年金だけは、事実婚を含めて婚姻関係が10年以上続いていることが要件です。

パートナーシップ宣誓制度の受領証があれば、遺族年金は受け取れますか?

受領証だけで自動的に認められるわけではありませんが、事実婚関係を示す材料の一つにはなります。年金事務所はそれに加えて住民票や生計維持の状況を確認します。なお、同性のパートナーについては、令和8年時点で遺族年金の対象とする取り扱いにはなっていません。

内縁の妻が遺族年金を受け取ると、相続税はかかりますか?

かかりません。遺族年金は所得税・相続税ともに非課税です。一方、遺言や生命保険で財産を受け取った場合は相続税の対象になり、内縁のパートナーは法定相続人ではないため2割加算の対象になります。子どものいないご夫婦が「全部を配偶者に」と望む場合の考え方は財産を全部妻(夫)に相続させたいで解説していますが、内縁の場合は遺言があっても法律婚の配偶者とは扱いが異なる点にご注意ください。

亡くなったパートナーが受け取るはずだった年金の残りはもらえますか?

受け取れます。亡くなった方がまだ受け取っていなかった「未支給年金」は、生計を同じくしていた配偶者が請求でき、事実婚の配偶者も含まれます。遺族年金の請求とあわせて、年金事務所で手続きしてください。

本記事は制度の一般的な説明であり、特定の保険商品を推奨するものではありません。遺族年金の受給可否は年金事務所が個別の事情をもとに判断します。金額や要件は令和8年度時点の情報で、毎年度の改定や法改正により変わることがあります。詳細は年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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