親が亡くなって数週間。役所の死亡届は出したけれど、年金のほうは何もしていない。そう気づいて、「止める手続きを忘れていたら、どうなるのか」と心配になる方は多いと思います。亡くなったあとに口座へ年金が振り込まれていて、使っていいのか迷う方もいます。
この記事では、死亡による年金の停止手続きを、日本年金機構の案内(2026年10月時点)をもとに整理しました。年金の死亡届が要る人・要らない人の判定表、亡くなった月ごとに「もらえる分」と「返す分」が分かる振込月の早見表、手続きを忘れていたときにする順番、家族の中で誰が何をするかの分担表をのせています。
先に結論:止める届は省ける人が多い。でも「もらう請求」と「返す分の確認」は家族の仕事
この記事の結論
- 止める届:日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は、年金の死亡届(年金受給権者死亡届)を原則として出さなくてよいとされています。収録されていない人は、厚生年金なら10日以内、国民年金なら14日以内に出します。
- もらう請求:年金は亡くなった月の分まで受け取れます。まだ受け取っていない分(未支給年金)は、生計を同じくしていた遺族が請求しないと支払われません。
- 忘れていたら:気づいた時点で届と請求を出します。亡くなった翌月以降の分まで振り込まれていたら、その分はあとで返すことになります。口座のお金は、精算が済むまで使わずに置いておきます。
年金を止める手続きが要る人・要らない人(判定表)
役所に死亡届を出しても、年金が自動で止まるかどうかは、日本年金機構にマイナンバーが収録されているかで変わります。収録されていれば、原則として年金の死亡届は省略できます。どちらか分からないときは、年金事務所に電話で確かめるのが確実です。
届は年金事務所へ郵送で出せます。窓口で相談したいときは、予約をして年金事務所か街角の年金相談センターへ行きます。e-Govからの電子申請もできます。予約の取り方は年金事務所の予約のしかたにまとめています。
未支給年金を受け取れる遺族がいる場合は、止める届と請求が1枚になった「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を使います。死亡届を省略できる人でも、この請求書は出します。
亡くなった月で決まる:振込の中身と「もらえる分・返す分」の早見表
年金は偶数月の15日に、その前の2か月分がまとめて振り込まれます(15日が土日祝日なら直前の平日)。たとえば12月15日の振込は、10月分と11月分です。年金は亡くなった月の分まで受け取れるので、亡くなった月が偶数月か奇数月かで、次の振込のうち「もらえる分」と「返す分」の分かれ方が変わります。
覚え方は1つです。偶数月に亡くなると、次の振込の半分(亡くなった翌月の分)が返す分になります。奇数月に亡くなると、次の振込は全部もらえる分で、その次の振込があれば全部が返す分です。
亡くなった方の口座に振り込まれた分のうち、亡くなった月までの分も未支給年金に含まれます。日本年金機構は、未支給年金を請求しても、亡くなった方の口座を解約していないと、その口座に入金される場合があるとしています。口座の扱いは、取引している金融機関に相談してください。
年金の死亡手続きを忘れていた・遅れたときにする順番
期限を過ぎてしまっても、手続きをしないままにする理由はありません。日本年金機構は、届が遅れると年金を多く受け取ることになり、あとで返還を求められる場合があるとしています。気づいた時点で、次の順に進めます。
- 年金事務所に電話する:亡くなった方の基礎年金番号(年金証書や年金振込通知書に書かれています)を手元に、「死亡届が要るか」「未支給年金を誰が請求できるか」を聞きます。
- 口座の記帳をする:亡くなったあとに振り込まれた年金がいくらあるか、通帳で確かめます。上の早見表で、もらえる分と返す分に分けておきます。
- 届と請求書を出す:死亡届が要る人は届を、未支給年金を受け取れる遺族がいれば兼用の請求書を出します。戸籍や住民票は、亡くなった日より後に交付されたものが必要です。
- 返す分は、案内が来るまで手を付けない:返す額が決まると、日本年金機構から案内が届きます。それまで、亡くなった月より後の分は使わずに残しておきます。
未支給年金の請求には期限(時効)があり、日本年金機構は年金を受ける権利の時効を5年としています。とはいえ、遅れるほど返す分が増えるおそれがあるので、落ち着いたら早めに出すのが安心です。
相続放棄を考えているときの注意
借金が多くて相続放棄を考えている場合、亡くなった方の口座から引き出して使うと、相続を受け入れたとみなされるおそれがあります。振り込まれた年金も、口座の中にある限りは同じです。一方、未支給年金は遺族が自分の権利として受け取るお金で、相続財産ではないとされています。相続放棄との関係は相続放棄できないケースで整理しています。
家族の中で誰が何をする?年金の手続きの分担表
年金の手続きは、「止める」「もらう」「返す」「次の年金を受け取る」の4つが重なります。誰がやるかを決めておくと、抜けや二重の手続きを防げます。
未支給年金の必要書類や請求のしかたは、未支給年金の請求方法(請求できる遺族の順位・期限・必要書類)で詳しく説明しています。受け取った未支給年金は一時所得にあたり、その年の一時所得の合計が50万円以下なら確定申告は要らないとされています。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
一緒に確かめたいこと:遺族年金・企業年金・年金事務所の場所
- 遺族年金:配偶者や子が受け取れる場合があります。日本年金機構は、亡くなった方の家族が受けられるものとして、遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金を挙げています。請求に要る書類とマイナンバーで省ける書類は、遺族年金の請求・必要書類にまとめています。
- 企業年金・共済年金:日本年金機構の手続きとは別に、それぞれの支払元への連絡が必要です。年金の通知書や源泉徴収票で、どこから支払われていたかを確かめます。
- 年金事務所の場所:愛知県・岐阜県の年金事務所は、市区町村ごとの管轄と一緒に一覧にしています。
夫が亡くなったときに妻が受け取る遺族年金の目安は遺族年金で妻はいくら?、年金事務所の一覧は愛知県・岐阜県の年金事務所一覧にまとめています。亡くなったあとの手続きを期限の順に見たいときは、死亡後の手続き一覧表をご覧ください。
年金のほかに、預金・不動産・相続税の申告など、うちの場合は何から手をつければいいか整理したいときは、30分の無料相談で、書類を見ながら一緒に順番を確かめられます。
今日できる一歩
- 亡くなった方の年金証書か年金振込通知書を探し、基礎年金番号を控える
- 年金が振り込まれていた口座を記帳し、亡くなったあとの振込を確かめる
- 年金事務所に電話し、死亡届が要るかと、未支給年金を誰が請求するかを聞く
年金の停止手続きでよくある質問
役所に死亡届を出せば、年金は自動で止まりますか?
日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば、原則として年金の死亡届は省略できるとされています。収録されていない場合は、年金の死亡届を別に出す必要があります。どちらか分からないときは、年金事務所に確かめてください。どちらの場合も、未支給年金の請求は遺族が出します。
年金の死亡手続きを忘れていました。罰金などはありますか?
日本年金機構の案内では、届が遅れたときは多く受け取った分の返還を求められる場合がある、とされています。まずは気づいた時点で年金事務所に連絡し、届と請求を出してください。亡くなった月より後の分は、使わずに残しておきます。
亡くなった月の年金は、日割りになりますか?
なりません。年金は亡くなった月の分まで支払われるので、月の初めに亡くなっても、その月の分は受け取れます。受け取っていない分は、未支給年金として遺族が請求します。
亡くなった後に振り込まれた年金を、葬儀代に使ってしまいました。
振り込まれたうち、亡くなった月までの分は未支給年金にあたるため、請求できる遺族がいれば精算の対象になります。亡くなった月より後の分は返すことになるので、年金事務所に事情を伝えて、返す額と方法の案内を受けてください。相続放棄を考えている場合は、使う前に専門家に相談したほうが安全です。
年金証書が見つかりません。手続きできますか?
年金事務所に相談すれば進められます。基礎年金番号は、年金振込通知書や年金額改定通知書、ねんきん定期便などにも書かれています。見つかった書類を持って相談してください。
同居していない子でも、未支給年金を請求できますか?
住所が別でも、仕送りをしていたなど生計を同じくしていた関係があれば請求できる場合があります。その場合は「生計同一関係に関する申立書」を一緒に出します。くわしくは未支給年金の請求方法をご覧ください。
参考にした公的情報
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html - 日本年金機構「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/jukyushatodoke/kyotsu/shibo/20140421.html - 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/uketori/uketori/shiharaiduki/20140421-01.html - 日本年金機構「年金受給権者死亡届(報告書) 兼 未支給年金・未支払給付金請求書のご提出について」
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/seikeidouitsu.html - 日本年金機構「年金の時効」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/shikyu/20140421-01.html - 日本年金機構「身近な方が亡くなったとき」
https://www.nenkin.go.jp/service/scenebetsu/shibou.html
※本記事は2026年10月時点の日本年金機構など公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。振込の時期と額の例は、支払いの決まりに当てはめた計算例です。実際の扱いは年金の種類や記録によって変わるため、年金事務所からの通知や窓口でご確認ください。税の扱いは個別の事情で変わるため、税務署や税理士にご相談ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
