親が亡くなって何年もたつのに、実家の名義は親のまま。相続登記が義務になったと聞いたけれど、しないとどうなるのか。過料があるなら、誰が払うことになるのか。そう気になって調べている方に向けた記事です。
相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。この記事では、しないまま置いたときに起きること、過料の対象になる人とならない人、過料が科されるまでの流れ、期限に間に合わないときの方法を、2026年10月時点の法務省の案内で整理します。
2024年4月より前に始まった相続(過去分)は、2027年3月31日までに申請すれば期限を守れます。義務化の期限の3年は、亡くなった日ではなく、相続と不動産の取得を知った日から数えます。自分の期限がいつかの判定表と、そこから逆算した段取りも載せました。
先に結論:相続登記をしないと、過料・売れない・相続人が増えるの3つが起きます
この記事の結論
- 過料:正当な理由なく3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。ただし、いきなり科されるのではなく、先に法務局の登記官から催告が届きます。
- 売れない・担保にできない:名義が亡くなった方のままでは、売却や抵当権の設定の前に相続登記が要ります。
- 相続人が増える:置いている間に相続人が亡くなると、その配偶者や子が話し合いに加わります。必要な書類と人が増えていきます。
- 過料は誰が払う:対象は、登記の義務を負う相続人それぞれで、正当な理由がない人です。金額は裁判所が決めます。
自分で相続登記をする手順と費用は相続登記を自分でする手順にまとめています。この記事は「しないとどうなるか」と「過料」に絞ります。
相続登記の義務化の期限:いつから3年か、誰がするのか
相続や遺言で不動産を取得した相続人は、相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。2024年4月1日より前に始まった相続も対象です。
遺産分割をしていない間は、相続人全員が法定相続分の割合で不動産を共有している扱いです。そのため、相続人全員に申請の義務があります。遺産分割で不動産を取得しないことになった相続人は、義務がなくなります(法務省Q&A)。
期限の3年は、亡くなった日ではなく「知った日」から数えます
相続登記の期限は、亡くなった日から3年とは限りません。数え始めは、自分が相続人になったと知り、かつ、その不動産を取得したと知った日です(不動産登記法76条の2第1項)。どの不動産を相続したのかを具体的に知るまでは、義務は始まりません(法務省Q&A)。
遺言や遺産分割がからむと、数え始めの日が変わります。自分がどれに当たるかを、次の表で確かめてください。
| こんなとき | 3年の数え始め | ひとこと |
|---|---|---|
| 親が亡くなったことと、実家を相続したことを同じころに知った | その知った日 | 多くの方はこれに当たります |
| 遺言で、相続人である自分が不動産を受け取ることになった | 相続が始まったことと、遺言で取得したことを知った日 | 相続人に対する遺贈も、義務の対象です |
| 相続人ではない人(孫や知人など)が、遺言で不動産を受け取った | 申請義務の対象外 | 義務は「相続人に対する遺贈」に限られます。名義を移すには、別に登記が要ります |
| 何年もたってから、親名義の土地があると分かった | その土地を相続したと知った日 | 知らなかった間は、義務は始まっていません |
| 法定相続分で登記した後、遺産分割で多く受け取ることになった | 遺産分割の日 | 分割の内容どおりの登記が、もう一度必要です |
| 相続人申告登記を出した後、遺産分割がまとまった | 遺産分割の日 | 申告登記では、この2回目の義務は果たせません |
兄弟で期限の日がずれることがあります
「知った日」は、相続人一人ひとりについて数えます。近くに住む長男は亡くなった日に知り、遠方の次男は半年後に知った、という場合は、2人の期限も半年ずれます。
家族で段取りを組むときは、いちばん早く来る人の期限に合わせます。そうすれば、誰か1人だけが期限を過ぎることを防げます。亡くなったという連絡を受けた日や、不動産があると分かった日を、メモに残しておくと後で迷いません。
相続登記の義務化、過去分はいつまで?2024年4月より前の相続の判定表
先に結論です。2024年3月31日までに始まった相続で、まだ相続登記をしていない不動産は、2027年3月31日までに申請します。ただし、その不動産を相続したと知ったのが2024年4月1日以降なら、知った日から3年以内です(法務省)。2026年10月時点で、2027年3月31日まで残りは約5か月半です。
| ご家族の状況 | 申請の期限 |
|---|---|
| 親が2024年3月以前に亡くなった。実家を相続したことは知っているが、名義は親のまま | 2027年3月31日まで |
| 遺産分割の話し合いは前にまとまったが、登記はしていない | 2027年3月31日まで(相続登記がされていない不動産は対象です) |
| 名義が祖父母の代のまま。祖父母も親も2024年3月以前に亡くなり、その土地を相続したことは知っている | 2027年3月31日まで |
| 2024年3月以前に亡くなった親の土地があると、2025年になって初めて知った | 知った日から3年以内(2025年6月に知ったなら、2028年6月まで) |
| (参考)親が2024年4月1日以降に亡くなった | 相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内 |
期限までに必要なのは「申請」です。登記の完了ではありません
法務省は、義務の中身を「相続登記の申請をすること」としています。2027年3月31日までに法務局へ申請していれば、登記が終わるのが4月以降になっても、期限は守れています。郵送で出すときは、届くまでの日数を見込んで早めに送ってください。2027年3月31日は水曜日です。
2027年3月31日は、登録免許税がかからない措置の期限とも同じ日です
過去分の相続では、次の2つに当てはまる土地がよくあります。どちらも2027年3月31日までの登記なら、登録免許税がかかりません(国税庁 No.7191、令和8年4月1日現在法令等)。
- 名義を変える前に相続人が亡くなった土地:たとえば祖父名義の土地を受け継ぐはずだった父が、登記をしないまま亡くなった場合。父の名義にする登記には登録免許税がかかりません。
- 評価額100万円以下の土地:山林や農地、小さな私道などで当てはまることがあります。
建物は対象外です。申請書には、税額の代わりに免税の根拠を書きます。司法書士に頼む場合の報酬と実費の目安は、相続登記の費用相場と司法書士報酬で整理しています。
2027年3月31日から逆算した段取りと、家族の役割
2026年10月から始める場合の、余裕を持たせた目安です。話し合いが長引きそうだと分かった時点で、相続人申告登記に切り替えられるようにしておきます。
| いつまでに | やること | 家族の誰が |
|---|---|---|
| 2026年11月 | 登記事項証明書で今の名義を確かめる。親名義の不動産の漏れを、所有不動産記録証明や名寄帳で調べる | 中心になって動く相続人1人 |
| 2026年12月 | 戸籍を集める。本人・配偶者・父母・子などは、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できる(広域交付) | 同じ人 |
| 2027年1月 | 分け方を話し合う。まとまったら遺産分割協議書に全員が実印を押し、印鑑証明書をそろえる | 相続人全員 |
| 2027年2月 | 申請書を作る。まとまらないときは、相続人申告登記に切り替える | 不動産を受け継ぐ人。申告登記なら1人がほかの相続人の分もまとめて申し出られる |
| 2027年3月31日 | 法務局に申請する(窓口・郵送・オンライン) | 不動産を受け継ぐ人、または申し出る人 |
名義の確かめ方は登記事項証明書の取得方法で説明しています。相続人申告登記で義務を果たしたことになるのは、申し出に含まれた相続人だけです。兄弟がいるときは、誰の分まで出したかを家族で共有しておきます。
相続登記をしないとどうなる?放置で起きること
1. 10万円以下の過料の対象になる
正当な理由なく期限までに申請しないと、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。期限を1日過ぎたらすぐ科される、という仕組みではありません。登記官からの催告を受け、それでも正当な理由なく申請しないときに、裁判所の手続きに進みます。流れは下の「過料は誰が払う?」で説明します。
2. 売却や担保に使えない
登記簿の名義が亡くなった方のままでは、その不動産を売ったり、借入れの担保にしたりできません。法務省のQ&Aでも、売却や抵当権の設定をする場合は相続登記が必要と書かれています。期限対策の相続人申告登記を出していても、ここは同じです。
売る場合は、売買の登記より前に、相続登記で名義を相続人に移しておく必要があります。空き家になった実家を売りたい、建て替えのためにローンを組みたい、という話が出てから戸籍を集め始めると、引き渡しや融資の日程に間に合わないことがあります。売る予定があるなら、相続登記を先に済ませておくと安心です。
3. 数次相続で、相続人がどんどん増える
登記をしないまま相続人の1人が亡くなると、その人の配偶者や子が新たに相続人になります。これを数次相続といいます。たとえば、父名義の家を母と兄と自分で分ける前に兄が亡くなると、兄の妻と子も話し合いに加わります。
人が増えるほど、集める戸籍が増え、全員の実印と印鑑証明書をそろえるのが難しくなります。疎遠な親族が加わると、話し合いそのものが進まないこともあります。数次相続になったとき、誰が協議書に署名するかと「亡○○相続人」の書き方は、数次相続の遺産分割協議書で記載例とともに説明しています。
4. 子の世代に片づかないまま残る
祖父母の代から名義が変わっていない土地は、法務局から「長期相続登記等未了土地」として相続人に通知が届くことがあります。届いたときの対応は法務局から「長期相続登記等未了土地」の通知が届いたらで説明しています。なお、固定資産税は登記の名義とは別に、相続人が納めることになります。
相続登記に限らず、相続放棄や相続税も含めて手続きを置いたときに起きることは、相続手続きをしなかったらどうなる?で期限別に整理しています。
相続登記の過料は誰が払う?対象になる人とならない人
過料の対象は、相続登記の申請義務を負う相続人のうち、正当な理由なく申請しなかった人です(法務省Q&A)。家族の代表1人が払う、という決まりではありません。義務は相続人それぞれにあり、過料を科すかどうかと金額は、裁判所が一人ひとりについて判断します。
家庭裁判所で相続放棄が認められた人は、不動産を相続で取得しないため、相続登記の義務も生じません。放棄した家や土地がどうなるかは相続放棄した家・土地はどうなる?で説明しています。
過料が科されるまでの流れ(催告が先です)
- 登記官が義務違反を知る。登記官が催告するのは、職務上、義務違反を知った場合に限られます。たとえば、ほかの登記の申請で出された遺言書や遺産分割協議書に、まだ登記されていない別の不動産も相続すると書かれていた場合です。
- 催告書が届く。登記官が期限を決めて、相続登記を申請するよう促します。
- 期限内に申請しないと、裁判所へ通知される。登記官は管轄の地方裁判所に通知します。正当な理由があると登記官が認めた場合は、通知しません。
- 裁判所が判断する。要件に当たるかを裁判所が判断し、過料を科す裁判をします。金額は10万円以下の範囲で裁判所が決めます。
つまり、催告書が届いた段階で申請すれば、裁判所への通知には進みません。催告書が届いたら、その期限を最優先にしてください。
「正当な理由」と認められる例
法務省は、一般に正当な理由があると認められる例として、次の5つを挙げています。これに当たらなくても、個別の事情によって認められることがあります。
- 相続人がきわめて多く、戸籍を集めたり相続人を把握したりするのに時間がかかる
- 遺言が有効かどうかや、遺産の範囲が争われている
- 義務を負う人に、重い病気などの事情がある
- 義務を負う人が、配偶者などからの暴力の被害を受け、避難している
- 義務を負う人が経済的に困っていて、登記の費用を負担できない
「話し合いがまとまらない」だけでは、ここに当たるとは限りません。分け方が決まらないうちは、次の相続人申告登記で期限に対応するのが確実です。
期限に間に合わないときの方法:相続人申告登記
相続人申告登記は、亡くなった方の相続が始まったことと、自分が相続人であることを法務局に申し出る手続きです。相続人の1人が単独で出せ、申し出た人は相続登記の義務を果たしたものとして扱われます。登録免許税はかかりません(法務省)。
相続人申告登記は、相続人全員の義務をまとめて済ませるものではありません。兄弟がいる場合は、それぞれが申し出るか、1人がほかの人の分も代わりに申し出ます。後で遺産分割がまとまったら、成立の日から3年以内に相続登記を申請します。
何年も放置していた相続登記を、今から始める順番
何年も手を付けていなかった場合でも、始める順番は同じです。先に「今の名義」と「今の相続人」をはっきりさせると、そのあとの判断が早くなります。
- 今の名義を確かめる。登記事項証明書を取り、名義が親のままか、祖父母の代のままかを見ます。親名義の不動産がほかにないかは、所有不動産記録証明制度や名寄帳で調べられます。
- 今の相続人を確かめる。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めます。放置している間に亡くなった相続人がいれば、その人の戸籍と、その配偶者・子の戸籍も要ります。
- 期限を確かめる。相続が始まった時期で、3年以内か2027年3月31日までかが決まります。
- 分け方を話し合う。まとまれば遺産分割協議書を作り、相続登記を申請します。まとまらず期限が近いときは、先に相続人申告登記を出します。
名義が祖父母の代のままで相続人が増えている場合や、連絡のつかない相続人がいる場合は、自分で進めるのは難しくなります。司法書士に早めに相談してください。自分でできる場合の申請の流れと費用は相続登記を自分でする手順、親名義の不動産の調べ方は所有不動産記録証明制度の請求方法で説明しています。
相続登記の期限や過料の扱いは、ご家族の構成と、遺産分割の進み具合で答えが変わります。30分の無料相談では、書類を見ながら、今どの手続きから手を付けるかを一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。
今日できる一歩
固定資産税の納税通知書を見て、名義が亡くなった方のままの土地や建物がないかを確かめる。見つかったら、その不動産の登記事項証明書を取り、亡くなった日から期限(3年、または2027年3月31日)をカレンダーに書き込みます。
親が元気なうちに、自宅や預金の行き先を決めておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
よくある質問
期限を過ぎたら、すぐに過料を払うことになりますか
すぐではありません。先に登記官から催告書が届き、その期限までに申請しないと、地方裁判所に通知されます。正当な理由があると登記官が認めた場合は通知されません。過料を科すかどうかと金額は、裁判所が決めます。
相続登記の過料は、相続人全員が払うのですか
過料の対象は、申請の義務を負う相続人のうち、正当な理由なく申請しなかった人です。遺産分割で不動産を取得しないことになった人は義務がなくなり、相続人申告登記を申し出た人は義務を果たしたものとして扱われます。誰が対象になるかは、相続人ごとの状況で変わります。
2024年より前に亡くなった親の家も対象ですか
対象です。2024年3月31日までに始まった相続で、まだ相続登記をしていない不動産は、2027年3月31日が期限です。不動産を相続したことを知ったのが2024年4月以降なら、知った日から3年以内です(法務省)。
相続登記の義務化の過去分は、2027年3月31日までに登記が終わっていないといけませんか
終わっている必要はありません。義務は「相続登記の申請をすること」なので、2027年3月31日までに法務局へ申請すれば足ります(法務省)。郵送なら届くまでの日数を見込んでください。まとまらないときは、同じ日までに相続人申告登記を出す方法もあります。
固定資産税を払っていれば、相続登記をしなくてもよいですか
よくありません。固定資産税の支払いと、相続登記の義務は別のものです。税金を払っていても、登記の名義は亡くなった方のままで、相続登記の義務は残ります。
遺産分割の話し合いがまとまらず、3年が過ぎそうです
相続人申告登記を出すと、申し出た人は期限の義務を果たしたものとして扱われます。登録免許税はかかりません。話し合いがまとまったら、成立の日から3年以内に分割の内容どおりの相続登記をします。もめている場合は、弁護士への相談も考えてください。
相続登記の義務化の期限は、亡くなった日から3年ですか
亡くなった日からとは限りません。自分が相続人になったことと、その不動産を取得したことを知った日から3年です。遺産分割で取得した分は、分割の日から3年です。相続人ごとに知った日が違えば、期限もずれます(不動産登記法76条の2)。
住所や氏名が変わったときの登記も義務ですか
2026年4月1日から、住所や氏名の変更登記も義務になりました。相続登記とは別の義務です。期限や過料は住所変更登記の義務化で説明しています。
参考にした公的情報
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html - 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html - 法務省「相続人申告登記について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html - 国税庁 タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm - 法務省民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係)」(令和5年9月12日)
https://www.moj.go.jp/content/001402460.pdf - e-Gov法令検索「不動産登記法」(76条の2、164条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(広域交付)」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。期限や過料の扱いは、相続が始まった時期やご家族の事情で変わります。具体的な判断は、管轄の法務局や司法書士・弁護士にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
