遺言書に有効期限はない【2026年】書き直し・撤回のルールと保管期間

何年も前に親が書いた遺言書が出てきた。日付は10年以上前。これはまだ使えるのか、期限切れで無効になっていないか。自分で書いた遺言書を、書き直さないといけない時期があるのか。そんな疑問に、2026年10月時点の民法と公的機関の案内をもとに答えます。

この記事の結論

  1. 有効期限はない:遺言書に「何年で切れる」という期限はありません。決まりどおりに書かれていれば、20年前のものでも効力は変わりません。
  2. 変わるのは撤回したとき:新しい遺言で取り消す、前と食い違う遺言を書く、その財産を売る、本人がわざと破る。この場合は、その部分が撤回されたものとみなされます(民法1022条〜1024条)。
  3. 期限があるのは別のもの:法務局や公証役場の保管期間、亡くなった後の相続放棄(3か月)や相続税の申告(10か月)です。
目次

遺言書に有効期限はない:何年たっても効力は変わらない

民法には、遺言書の有効期限の定めがありません。遺言は、書いた人が亡くなった時に効力が生じます(民法985条1項)。書いてから何年たっていても、亡くなった時点で撤回されていなければ、その遺言が使われます。

これは、自分で書く自筆証書遺言でも、公証役場で作る公正証書遺言でも同じです。ただし、もともと書き方の決まりを満たしていない遺言書は、年数に関係なく効力が認められません。自筆の場合は、全文・日付・氏名を自分で書いて印を押すことが必要です(民法968条)。

よくある心配答え
書いてから10年以上たっている年数だけで無効にはならない。期限切れという考え方はない
書いた後に認知症になった判断できる力は「遺言をする時」に必要とされる(民法963条)。書いた時に力があれば、その後の病気だけで無効にはならない
書いた後に、遺言に書いた家を売った売った部分は、遺言を撤回したものとみなされる(民法1023条2項)
新しい遺言書も見つかった内容が食い違う部分は、新しいほうが優先される(民法1023条1項)。食い違わない部分は古いほうも生きている
財産を渡す相手が先に亡くなったその部分は効力が生じないことがある(遺贈について民法994条)
出典:民法963条・968条・985条・994条・1023条(e-Gov法令検索)。確認:2026年10月。

「期限がない」ことは、安心できる反面、古いまま放っておけるという意味ではありません。家族や財産が変わったのに書き直していないと、今の暮らしに合わない遺言が、そのまま使われることになります。

期限の代わりにあるのが「撤回」と「書き直し」

遺言は、書いた本人がいつでも取り消せます。民法は、遺言の方式に従えば、全部でも一部でも撤回できると定めています(民法1022条)。「もう書き換えない」と家族に約束しても、撤回する権利は手放せません(民法1026条)。

撤回になる場面どこが撤回されるか根拠
新しい遺言で「前の遺言を撤回する」と書く書いた範囲(全部でも一部でも)民法1022条
前の遺言と食い違う内容の遺言を新しく書く食い違う部分だけ民法1023条1項
遺言の後に、その財産を売ったり贈ったりする食い違う部分だけ民法1023条2項
本人がわざと遺言書を破る・捨てる破った部分民法1024条
出典:民法1022条〜1024条(e-Gov法令検索)。確認:2026年10月。

書き直すときに気をつけたい3つのこと

  1. 新しい遺言も決まりどおりに書く。撤回は「遺言の方式に従って」します。メモや手紙で「前のはなし」と書いても、遺言の決まりを満たしていなければ撤回になりません。
  2. 「これまでの遺言はすべて撤回する」と一文入れる。古い遺言書が残っていると、どこが食い違うかを家族が読み合わせることになります。一文あれば、その手間がなくなります。
  3. 撤回を取り消しても、前の遺言は戻らない。撤回した遺言は、その撤回をさらに取り消しても、原則として効力が戻りません(民法1025条)。前の内容に戻したいときは、もう一度その内容で書き直します。

公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されています。手元の正本や謄本を破っても、原本は残ります。取り消したいときは、新しい遺言を作るのが確実です。自筆で書くときの日付や訂正のルールは、自筆の遺言書の日付・印鑑・書き直しの決まりにまとめています。

古い遺言と新しい遺言の関係が分からないときは
前の遺言のどこが生きていて、どこが撤回されたのか。家族構成が変わったあとの書き直しでは、ここで迷う方が多くいます。30分の無料相談では、手元の遺言書をもとに、書き直すべき点と、公正証書にするかどうかの判断材料を整理します。書類の作成は、必要に応じて司法書士・弁護士をご案内します。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)

期限があるのは「保管期間」と「亡くなった後の手続き」

「遺言書 期限」で調べると、いくつかの期限が混ざって出てきます。遺言そのものには期限がありませんが、預け先の保管期間と、亡くなった後の手続きには期限や期間があります。

項目期間・期限根拠
法務局に預けた自筆の遺言書原本は亡くなった後50年、画像データは150年保管法務省
公正証書遺言の原本遺言者の死亡後50年、証書の作成後140年、または遺言者の生後170年のあいだ保存する取扱い日本公証人連合会
自宅で保管する遺言書決まった期間はない。紙の傷み、紛失、見つからないことに注意―
見つけた遺言書の検認日数の定めはなく「遅滞なく」民法1004条
相続放棄・限定承認相続人になったと知った時から3か月以内民法915条
相続税の申告亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内国税庁
出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」、日本公証人連合会「遺言」、民法915条・1004条、国税庁「相続税の申告と納税」。確認:2026年10月。

法務局に預けた遺言書は、本人が「保管の申請の撤回」をすると返してもらえます。ただ、これは預けるのをやめる手続きで、遺言の効力には関係しません(東京法務局)。預け方は自筆証書遺言の保管制度に、見つけた後の検認は遺言書の検認の手続きにまとめています。

期限はなくても、見直したいタイミング

有効期限がないからこそ、次のような変化があったら、書いた内容が今も合っているかを読み返します。

  • 結婚・離婚・養子縁組・孫の誕生など、家族の形が変わった
  • 財産を渡すつもりだった人が先に亡くなった
  • 遺言に書いた家を売った、口座を解約した、新しく不動産を買った
  • 遺言で手続きを任せる人(遺言執行者)に頼んだ人が高齢になった
  • 封筒や保管場所を家族に伝えていなかったことに気づいた

保管場所や封筒の扱いは、遺言書の封筒の書き方と保管方法で比べています。自筆か公正証書かで迷う場合は、公正証書遺言と自筆証書遺言の比較が参考になります。親の預金や自宅のことも含めて整理したい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

今日できる一歩

  1. 手元の遺言書(または控え)の日付を見て、その後に家族や財産で変わったことを紙に書き出す。変わったことがあれば、その部分を書き直すかどうかを決める。

よくある質問

10年以上前に書いた遺言書は、今も有効ですか

書き方の決まりを満たしていて、その後に撤回されていなければ有効です。遺言書に有効期限はありません。遺言は亡くなった時に効力が生じます(民法985条1項)。

公正証書遺言にも有効期限はありませんか

ありません。期間が決まっているのは、公証役場での原本の保存です。日本公証人連合会によると、遺言者の死亡後50年、作成後140年、または生後170年のあいだ保存する取扱いです。

遺言を書いた後に認知症になりました。遺言は無効になりますか

判断できる力が必要なのは、遺言をする時です(民法963条)。書いた時に力があれば、その後に認知症になっただけで無効にはなりません。ただ、書いた時の力が争われることはあります。認知症が進むと新しく書き直すのが難しくなるため、見直しは早めが安心です。

古い遺言書と新しい遺言書が両方見つかりました

内容が食い違う部分は、新しい遺言で古い遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。食い違わない部分は、古い遺言書も生きています。自宅で保管されていた自筆の遺言書なら、どちらも家庭裁判所の検認が必要です。

法務局に預けた遺言書は、何年かで返されたり捨てられたりしますか

生きているあいだに期限が来て返されることはありません。法務省の案内では、原本は遺言者が亡くなった後50年、画像データは150年保管されます。本人が保管の申請を撤回すれば返してもらえますが、それで遺言の効力がなくなるわけではありません(東京法務局)。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。手元の遺言が有効かどうか、どこが撤回されたかの判断は、個別の事情で変わります。司法書士・弁護士などの専門家にご確認ください。

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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