年金だけでは足りない親に、毎月いくらか送っている。都会で一人暮らしをする子に、家賃や学費を出している。家族のあいだでは当たり前のお金ですが、「これは贈与税の対象になるの?」と気になる方は少なくありません。
この記事では、仕送りに贈与税がかからない範囲を、国税庁のタックスアンサーと相続税法基本通達(国税庁の内部の取り扱いのルール)をもとに整理します。まとめて渡したときや、預金として貯まったときの扱いも、2026年10月時点の公開情報で確かめました。
先に結論:必要な分を、その都度なら贈与税はかからない
この記事の結論
- 非課税の条件:親子・夫婦・兄弟姉妹などの間で、生活費や教育費に必要な分を、必要なときに渡して実際に使えば贈与税はかかりません。
- 金額の上限はない:「いくらまで」という決まった額はなく、受け取る人の必要と渡す人の資力から見て、世間一般に妥当な範囲かで判断されます。年110万円の基礎控除とは別の仕組みです。
- 貯まった分は別:数年分をまとめて渡したり、受け取ったお金が預金や株・家の購入に回ったりすると、その部分は贈与税の対象になります。
仕送りに贈与税がかからない根拠と、対象になる人
贈与税は、原則として個人からもらった財産すべてにかかります。ただし相続税法は、いくつかの財産を「贈与税がかからない財産」として定めています。その一つが、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために受け取った財産で、通常必要と認められるものです(相続税法21条の3第1項2号)。
「扶養義務者」はだれのこと?
扶養義務者とは、生活を支え合う義務がある家族のことです。国税庁のQ&Aでは、次の人を挙げています。
- 配偶者(夫・妻)
- 直系血族(親・子・祖父母・孫など)と兄弟姉妹
- 家庭裁判所の審判で扶養義務者になった三親等内の親族
- 三親等内の親族で、生計を一にする(同じ財布で暮らす)人
扶養義務者にあたるかどうかは、お金を渡した時点の状況で判断されます。子から親への仕送りも、親から子への仕送りも、直系血族どうしなので対象になります。兄弟で分担して親に送る場合も同じです。
「生活費」と「教育費」の範囲
生活費は、その人がふだんの暮らしを送るのに必要な費用です。治療費や養育費、子育ての費用も含みます。ただし、保険金や損害賠償金で埋め合わされる分は除きます(相続税法基本通達21の3-3)。教育費は、学費・教材費・文具費などで、義務教育に限りません(同21の3-4)。国税庁のQ&Aでは、通学の交通費や修学旅行の参加費も例に挙がっています。
対象になる・注意が要る場面の早見表
仕送りの贈与税はいくらまで?金額の上限は決まっていない
「仕送りは月いくらまでなら大丈夫か」という質問はよくあります。答えは、決まった金額はない、です。国税庁の通達では、「通常必要と認められるもの」を次のように説明しています。
(相続税法基本通達21の3-6)
言い換えると、受け取る人にどれだけ必要か、渡す人にどれだけ余裕があるかを見て、世間一般に妥当といえる範囲かで判断します。同じ金額でも、家族の事情で答えが変わるということです。国税庁のQ&Aでは、子が自分の収入で家賃を払えないなどの事情があり、妥当な範囲の家賃を親が負担している場合は贈与税がかからない、と説明しています。
贈与税はいくらから?110万円の基礎控除は別の仕組み
「110万円までなら贈与税はかからない」という話は、暦年課税の基礎控除のことです。1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計から110万円を差し引けるしくみで、仕送りの非課税とは別枠です。そのため、仕送りが年110万円を超えても、生活費として必要な分をその都度使っていれば、それだけで課税されるわけではありません。
110万円の基礎控除を使った生前贈与の進め方は、110万円の非課税を正しく使う生前贈与の手順で詳しく整理しています。
まとめて渡す・預金に貯まると課税されうる
非課税になるのは、生活費や教育費として「必要な都度直接」充てるためのお金に限られます(相続税法基本通達21の3-5)。生活費の名目で受け取っても、預金したり、株や家の購入代金に充てたりした分は、通常必要と認められるもの以外として扱われます。
課税されうる典型的な例
- 数年分の学費をまとめて渡した:国税庁のQ&Aでは、数年分を一括で受け取り、使わずに預貯金になっている部分は課税対象としています。
- 仕送りが口座に貯まり続けている:生活費に使われず残った部分は、非課税の対象から外れます。
- 仕送りを家や株の購入に充てた:生活費の名目でも、購入に充てた金額は対象外です。
- 結婚資金として渡したお金が預金のまま:家具・家電などに使った分は非課税、残った分は課税対象とされています。
預金として貯まった分の扱い(一般論)
非課税から外れた分は、ふつうの贈与として扱われます。その年にもらったほかの贈与と合わせて110万円を超えると、贈与税の申告が必要です。たとえば国税庁の計算例では、18歳以上の子が親から1年で500万円の贈与を受けた場合、贈与税は48.5万円です。
ただし、どこまでを「貯まった分」とみるかは、家庭ごとの事情で個別に判断されます。判断に迷う額が残っているときは、お住まいを管轄する税務署か税理士に、通帳を見せて相談してください。
なお、祖父母などから孫への教育資金の一括贈与の非課税制度は、2026年3月31日で新しい利用ができなくなりました。それまでに手続きした分は引き続き対象です。くわしくは孫への贈与の非課税制度の終了と期限をご覧ください。
仕送りを課税されにくい形で続ける手順と、残しておく記録
国税庁の説明に沿えば、ポイントは「必要な分を、必要なときに、生活費・教育費に使う」ことです。次の順で整えておくと、あとで説明しやすくなります。
- 何に使うお金かを決める。家賃、食費、医療費、学費など、生活費・教育費の中身を家族で確認します。
- 毎月など、必要な時期ごとに渡す。数年分をまとめて渡すのは避け、その月・その学期に要る分にします。
- 払い先が決まっているものは直接払う。授業料は学校へ、家賃は大家さんや管理会社へ、と渡す側が直接払うと使い道がはっきりします。
- 振込で渡し、仕送り用の口座を分ける。現金手渡しより記録が残り、ほかのお金と混ざりにくくなります。
- 年に一度、残高を確かめる。受け取った側の口座に使わない分が貯まっていたら、翌月以降の額を見直します。
- まとまった額が残ったら相談する。110万円を超えそうなときは、税務署や税理士に申告の要否を確認します。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
記録として残しておくもの(チェックリスト)
- □ 仕送りの振込記録(通帳の写し・ネットバンキングの明細)
- □ 何の費用かが分かるメモ(「4月分の家賃」「後期の授業料」など)
- □ 学校の納付書・振込の控え、家賃の契約書や領収書
- □ 医療費・介護費の領収書(親の生活費を出している場合)
- □ 受け取った側の口座の年末残高のメモ
- □ 仕送りを始めた理由(親の年金額、子の収入の状況など)を書いた家族のメモ
親と同居して生活費を出し合う場合の決め方は、親との同居を始める前に決めておくことも参考になります。
贈与税の申告期限と、過ぎたらどうなるか
非課税の範囲で使った仕送りは、贈与税の計算に入れません。申告が必要になるのは、非課税から外れた分とほかの贈与の合計が、1年で110万円を超えたときです。
期限を過ぎていると気づいたら、できるだけ早く申告するのが基本です。加算税や延滞税の額は事情や日数で変わるため、税務署に確認してください。
仕送りで損しやすい点
- 「年110万円以内なら何でも大丈夫」と思い込む:仕送りの非課税と基礎控除は別物です。仕送りの残りとほかの贈与を合わせて数える必要があります。
- 「学費用」とまとめて先に渡す:使う前のお金は預金になりやすく、非課税から外れることがあります。
- 子名義の口座に親が積み立て、通帳も親が持っている:もらった側が自由に使えない口座は、親の財産(名義預金)とみられ、相続のときに親の財産に数えられることがあります。
- 記録を残していない:何年もたってから使い道を説明するのは難しくなります。振込とメモを残しておくと安心です。
相続の前の贈与が相続財産に足し戻されるしくみ(加算期間が3年から7年へ延びる途中です)は、生前贈与の加算7年はいつからで整理しています。
今日できる一歩
- 直近3か月の仕送りの振込記録を通帳やネットバンキングで確かめ、何の費用かを1行ずつメモしておきましょう。
よくある質問
仕送りの贈与税は、いくらからかかりますか?
金額で一律に決まるものではありません。生活費・教育費として必要な分をその都度使っていれば、年110万円を超えても非課税です。課税されるのは、使わずに残った分などで、ほかの贈与と合わせて1年で110万円を超えたときです。
親に送った仕送りを、親が一部貯金していたら?
生活費に使われずに預金となった部分は、非課税の対象から外れる扱いです。どの程度が問題になるかは個別の事情で変わります。まとまった額が残っているなら、仕送りの額を見直し、税務署か税理士に相談してください。
生活費の贈与でも申告は必要ですか?
非課税の範囲で使った生活費・教育費は、贈与税の計算に入れません。それ以外の贈与の合計が1年で110万円以下なら申告は不要です。110万円を超えたら、翌年2月1日〜3月15日に、受け取った人が申告します。
祖父母が孫の学費を払っても大丈夫ですか?
祖父母と孫は直系血族なので、扶養義務者にあたります。学費を必要な時期に、学校へ直接払う形なら非課税の対象です。「通常必要」かどうかは受け取る側の必要と渡す側の資力などで判断されるため、気になるときは税務署に確認してください。
兄弟で分担して親に仕送りしてもいいですか?
子はそれぞれ親の直系血族なので、分担しても考え方は同じです。合計額が親の暮らしに必要な範囲か、受け取った分が生活費に使われているかがポイントです。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.4405「贈与税がかからない場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm - 国税庁「扶養義務者(父母や祖父母)から『生活費』又は『教育費』の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sozoku/131206/pdf/01.pdf - 国税庁 相続税法基本通達 第21条の3関係(21の3-3〜21の3-6)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/10.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.4402「贈与税がかかる場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.4429「贈与税の申告と納税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4429.htm
※本記事は2026年10月時点の国税庁の公開情報(タックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)をもとにした一般的な整理です。仕送りが非課税の範囲かどうかは、家族の収入・資産・使い道などの事情で個別に判断されます。実際の申告の要否や税額は、お住まいを管轄する税務署または税理士にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
