母の退院が近づき、病院の相談員から「退院後の訪問看護は介護保険になります」と言われた。これまでは健康保険で通院していたのに、何が変わるのか。保険証も2種類あって、どれを出せばよいのか分からない。
健康保険(医療保険)は病気やけがの治療に、介護保険は日々の介助や暮らしの支えに使う保険です。介護保険の対象は40歳以上で、使うには要介護認定の申請が要ります。同じ訪問看護やリハビリがどちらでも受けられるときは、認定を受けた人は原則として介護保険が先になります。この記事では、2つの保険の違いを比較表で整理し、どちらを使うかの判定表、扶養家族の保険料、親の入院から退院までの切り替えを、2026年10月時点の公的な情報でまとめます。
先に結論:治療は健康保険、暮らしの介助は介護保険
この記事の結論
- 診察・薬・入院は健康保険、ヘルパーやデイサービス、福祉用具などは介護保険です。介護保険は、市区町村に申請して認定を受けてから使います。
- 訪問看護のように両方にあるサービスは、要介護・要支援の認定を受けた人は原則として介護保険を使います。末期のがんや国が定める難病などは、医療保険の訪問看護になります。
- 保険料は、40〜64歳は健康保険料と一緒に、65歳からは市区町村に納めます。協会けんぽの扶養に入っている家族は、介護保険料を別に納めません。
介護保険と健康保険の違い:対象・保険料・自己負担の比較表
まず、2つの保険を同じ項目で並べます。いちばん大きな違いは「使い始め方」です。健康保険は窓口で資格を確認すればその日から使えますが、介護保険は申請と認定を経てから使います。
介護保険の被保険者証は、名古屋市では65歳になる月に手続きなしで交付されます。40〜64歳の人は、認定の申請をしたときなどに交付されます(名古屋市)。医療の資格確認書とは別のものなので、病院と介護の事業所で見せるものが違います。
自己負担の割合は、医療と介護で別々に判定されます。同じ人でも、医療と介護で割合が違うことがあります。介護の2割・3割の決まり方は介護保険の2割負担の判定基準で整理しています。
同じサービスはどっち?訪問看護・リハビリは「介護保険が先」
訪問看護のように、健康保険にも介護保険にもあるサービスがあります。厚生労働省の資料は、介護保険の給付が医療保険より優先すると説明しています。要介護・要支援の認定を受けた人の訪問看護は、原則として介護保険です。ただし、末期の悪性腫瘍や国が定める難病、急に悪くなって主治医の指示があった場合などは、医療保険の訪問看護になります(厚生労働省)。
どちらの保険を使うかは、病名や主治医の指示で決まり、家族が選ぶものではありません。迷ったら、訪問看護ステーションかケアマネジャーに「今回はどちらの保険か」を聞くと確実です。
リハビリにも注意点があります。医療保険でリハビリを受けている人が要介護認定を受けると、今のリハビリを続けられなくなる場合があります。名古屋市は、申請の前に医療機関に相談するよう案内しています(名古屋市)。
保険料の違い:40〜64歳は健康保険と一緒、65歳からは市区町村へ
40〜64歳の人の介護保険料は、健康保険料と一緒に納めます。会社員なら給与から引かれ、会社と半分ずつ負担します。協会けんぽの介護保険料率は2026年度は1.62%で、全国一律です(協会けんぽ)。国保の人は、国保料に「介護分」が加わります。
65歳になる月からは、健康保険からの介護分が止まり、住んでいる市区町村に介護保険料を納めます。会社で働き続けていても、健康保険料は引かれ続け、介護保険料だけが市区町村に移ります(協会けんぽ茨城支部)。
健康保険組合の中には、40歳未満の加入者が40歳以上の家族を扶養しているとき、規約で介護保険料を求めるところがあります(日本年金機構)。会社員・国保・65歳以上それぞれの計算方法と月いくらかの計算例は、介護保険料は月いくら?計算方法と何歳まで払うかにまとめています。
40〜64歳の人は、介護保険料を納めていても、介護保険を使えるのは16の特定疾病が原因のときだけです。たとえば交通事故のけがで介助が必要になっても、介護保険の対象にはなりません(厚生労働省)。この場合は、障害福祉など別の制度を市区町村の窓口に相談します。
親の入院から退院まで:場面ごとにどちらの保険を使うか
2つの保険が入れ替わる場面で、家族がいちばん迷うのが入院から退院までの流れです。場面ごとに並べると、次のとおりです。
退院の日に間に合わせたいときは、相談員と申請の時期を決めておくと動きやすくなります。申請の窓口や必要なものは介護保険の申請方法に、亡くなったあとの返却と資格喪失の届出は死亡後の保険証返却と資格喪失の手続きにまとめています。
負担が重い月の上限は別々:高額療養費・高額介護サービス費・合算
1か月の自己負担が重くなったときの上限は、医療と介護で別々の制度です。医療は高額療養費、介護は高額介護サービス費で、それぞれ上限を超えた分が戻ります。
医療と介護の両方に長くお金がかかる世帯には、もう1つ制度があります。毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間の、医療保険と介護保険の自己負担を合わせて、上限を超えた分が戻る「高額医療・高額介護合算療養費」です(厚生労働省、名古屋市)。入院のあとに介護が始まった年は、対象にならないか一度確かめておきます。
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今日できる一歩
- 親の手元に、医療の資格確認書など・介護保険被保険者証・負担割合証がそろっているか確かめる
- 入院したら、病院の相談員に「退院後に介護保険を使うか」を早めに聞く
- 40〜64歳の人は、給与明細の「介護保険料」の欄を一度見ておく
よくある質問
介護保険と健康保険は、両方に入るのですか
40歳以上の人は両方に入ります。65歳以上の人は全員、40〜64歳の人は医療保険に入っている人が介護保険にも加入します(世田谷区)。40歳未満の人は健康保険だけです。
要介護認定を受けたら、病院の受診も介護保険になりますか
なりません。診察や薬、入院は、認定を受けたあとも健康保険(75歳以上は後期高齢者医療)で受けます。介護保険に変わるのは、訪問看護など両方にあるサービスと、ヘルパーやデイサービスなど介護のサービスです。
訪問看護は、介護保険と健康保険のどちらですか
要介護・要支援の認定を受けている人は、原則として介護保険です。末期の悪性腫瘍や国が定める難病の人、主治医から特別訪問看護指示書が出ている期間は、健康保険になります。認定を受けていない人は健康保険です。
40〜64歳で介護保険料を払っているのに、介護保険は使えないのですか
使えるのは、末期のがんや脳血管疾患など16の特定疾病が原因で介護が必要になったときだけです。それ以外の原因のときは、介護保険の対象になりません。市区町村の窓口で、ほかに使える制度を相談してください。
医療と介護で、自己負担の割合は同じですか
同じとは限りません。医療の割合と介護の割合は、別々の基準で決まります。介護の割合は、毎年届く負担割合証に書かれています。医療の割合は、加入している医療保険に確かめられます。
医療と介護の両方にお金がかかっています。まとめて軽くなる制度はありますか
高額医療・高額介護合算療養費があります。8月から翌年7月までの1年間の医療と介護の自己負担を合わせて、上限を超えた分が戻ります。対象になるかどうかと申請のしかたは、加入している医療保険か市区町村の窓口に確かめてください。
参考にした公的情報
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料3「訪問看護」(2026年6月29日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716095.pdf
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」 https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf
- 厚生労働省 第2号被保険者(40〜64歳)向けリーフレット https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム(サービス利用までの流れ) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
- 厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/dl/tp0724-1b.pdf
- 世田谷区(介護保険の被保険者) https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/2282.html
- 協会けんぽ「令和8年度 保険料率について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/chiba/public_relations/002
- 協会けんぽ茨城支部「介護保険制度と介護保険料について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/ibaraki/public_relations/009/index.html
- 日本年金機構「40歳以上の方を被扶養者にした場合の介護保険料」(よくある質問) https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hokenryo/20120305.html
- 名古屋市(介護保険証の交付) https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/seido/tetsuduki/
- 名古屋市「要介護認定等の申請」 https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/koureisha/1016500/1011160/1011165.html
- 名古屋市(要介護・要支援認定の申請をする前にご覧いただきたい事項) https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000011/11133/sinseimaetyuui0704.pdf
- 名古屋市「高額医療・高額介護合算制度」 https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1011736/1011758/1011769/1011771.html
- 柏市(要介護認定のよくある質問) https://www.city.kashiwa.lg.jp/kourei/kaigo/kaigohoken/yokaigoninte/shitsumon.html
- 東京都中央区(介護保険の要介護・要支援認定の申請) https://www.city.chuo.lg.jp/a0029/kenkouiryou/koureikaigo/kaigohoken/riyousha/nintei/sinsei.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報にもとづく一般的な整理です。どちらの保険を使うかは、病名や主治医の指示、本人の認定の状況で変わります。個別のことは、主治医、ケアマネジャー、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
