パスポートの案内には「戸籍謄本」、年金の案内には「戸籍抄本」と書いてある。役所の窓口に行くと、申請書には「全部事項証明書」「個人事項証明書」という言葉が並んでいる。同じ戸籍の話なのに、自分は何を取ればよいのか迷う場面です。
この記事では、謄本と抄本の違い、新しい呼び方との関係、使う場面ごとにどちらを取るかを一覧にしました。取り方の手順は本籍の調べ方、発行から何か月以内かという話は戸籍謄本の有効期限、人に頼んで取る方法は代理人が取る場合にまとめています。
先に結論:謄本は「戸籍の全員分」、抄本は「ひとり分」
この記事の結論
- 謄本は戸籍に載っている全員、抄本は載っている人のうち必要な人だけの記録です。手数料はどちらも1通450円が標準です(世田谷区・名古屋市の案内)。
- 「全部事項証明書」は謄本、「個人事項証明書」は抄本と同じものです。戸籍をコンピュータで管理している市区町村が使う名前で、中身が変わるわけではありません。
- 提出先が「謄本」と書いていれば全部事項証明書を取ります。パスポートの新規申請、相続の手続き、家庭裁判所への申立てなどは、謄本が基本です。
戸籍謄本と戸籍抄本の違い
戸籍には、夫婦とその子どもが一緒に記録されています。この記録を証明書として写したものが謄本や抄本で、どこまで写すかによって名前が分かれます。
謄本・抄本・一部事項証明書の違い
たとえば、父・母・長男の3人が載っている戸籍なら、謄本には3人分が、長男の抄本には長男の記録だけが載ります。謄本には、提出先に関係のない家族の情報も入ります。その人ひとりの記載が確認できれば足りる場面では、抄本のほうが家族の情報を出さずに済みます。
「全部事項証明書」「個人事項証明書」は新しい呼び方
戸籍をコンピュータで管理するようになった市区町村では、謄本を「戸籍全部事項証明書」、抄本を「戸籍個人事項証明書」と呼びます(名古屋市・世田谷区の案内)。名古屋市は、電算化に合わせて名前が変わっただけで手数料は変わらないと案内しています。申請書には、従来の「謄本」「抄本」の名前が併記されていることもあります。
電算化の前の紙の戸籍は、「改製原戸籍」として保存されています。名古屋市の場合、証明書は「平成改製原戸籍謄(抄)本」という名前で、1通750円です。古い戸籍を集める場面は除籍謄本・改製原戸籍の取り方で説明しています。
提出先の案内に「戸籍謄本」と書いてあっても、窓口では「戸籍全部事項証明書」を請求すれば足ります。逆に「個人事項証明書」と書いてあれば、抄本のことです。
用途別の早見表:どちらを取るか
提出先の公式な案内で確認できたものを、使う場面ごとに並べました。ここで扱うのは「謄本か抄本か」だけです。発行から何か月以内のものが必要かは、戸籍謄本の有効期限のほうに書いています。
使う場面ごとの戸籍の取り方
相続の手続きでは、戸籍が何通になるかで自分で進められるかどうかの見当がつきます。目安は相続手続き、自分でできる人・できない人にまとめています。
謄本が必要な場面、抄本でよい場面
謄本が求められやすいのは、家族のつながりを確かめる場面です。相続のように「相続人が誰か」を確認する手続きは、戸籍に載っている人を全員確認する必要があるため、謄本が基本になります。表の相続税の申告も「全ての相続人を明らかにする」ものとされています。
抄本で足りるのは、特定の人ひとりの氏名や生年月日、本籍を確認できればよい場面です。提出先が「抄本で可」と書いていれば、他の家族の情報を出さずに済みます。
迷ったときは、提出先に「謄本でも抄本でもよいか」を聞いてから取るのが確実です。謄本には抄本に当たる内容が含まれますが、受け付けるかどうかを決めるのは提出先です。
抄本は広域交付で取れません
本籍地以外の窓口でも請求できる「広域交付」(2024年3月開始)では、個人事項証明書(抄本)と一部事項証明書は請求できません(法務省)。抄本が必要なときは、本籍地の市区町村に窓口か郵送で請求します。広域交付は郵送や代理人による請求もできません。
取り方と手数料の早見表
窓口に行く時間がないときの考え方は、戸籍の広域交付の使い方とコンビニで取れるかの記事に詳しく書いています。
よくある質問
Q. 抄本を求められたのに、謄本を出してもよいですか。
謄本には抄本にあたる内容が含まれますが、受け付けるかどうかは提出先の判断です。同じ戸籍の他の人の情報も載る点も含めて、窓口や電話で確認してから取ると、取り直しを避けられます。
Q. 全部事項証明書と謄本で、手数料は違いますか。
違いません。名古屋市では、電算化で名前が「戸籍全部事項証明書」に変わりましたが、手数料は同じ450円と案内されています。
Q. 戸籍謄本と住民票の写しは、同じ書類ですか。
別の書類です。住民票は住所の記録、戸籍は本籍や家族関係の記録です。本籍を調べるときは、住民票の写しを「本籍記載あり」で請求する方法もあります。詳しくは本籍の調べ方をご覧ください。
Q. 本籍地が遠くて行けません。謄本はどうやって取りますか。
本籍地の市区町村に郵送で請求できます。窓口に行く時間がなく、家族や知人に取りに行ってもらう場合は、委任状が必要になることがあります。誰が委任状なしで請求できるかは戸籍謄本を代理人が取る方法で説明しています。
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- 除籍謄本・改製原戸籍の取り方|出生から死亡までの戸籍のさかのぼり方
参考にした公的情報
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
- 外務省「日本国内及び国外でパスポートに関する申請手続きに通常必要な書類」
- 世田谷区「戸籍の証明」
- 名古屋市「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・住民票の写しなどの証明」
- 法務局(東京ブロック)「相続登記ガイドブック」
- 日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報の整理です。必要な戸籍の種類や手数料は、提出先と市区町村によって異なります。個別の手続きの判断は、提出先や専門家にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
