引っ越しの片づけをしていて、住民票の本籍欄が目に留まった。書かれているのは、三十年前に住んでいた遠い町の地名。戸籍謄本が要るたびに、その町の役所へ郵送で頼むことになる。
本籍は、届け出れば変えられます。この手続きを「転籍届(てんせきとどけ)」といいます。この記事では、出せる人・出す場所・持ち物・手数料と、変えたあとに戸籍がどうなるかを整理しました。変えるかどうかを決める材料として、メリットとデメリットも並べています。
この記事の結論
- 本籍を変える届出は「転籍届」です。戸籍の筆頭者(戸籍の最初に書かれている人)と配偶者が、いまの本籍地・新しい本籍地・住所地のどれかの役所に出します。本籍が遠くても、住んでいる市区町村で出せます。
- 2024年3月1日から、戸籍謄本の添付は原則いりません。基本の持ち物は転籍届の用紙です。手数料は、日野市は無料と案内しています。
- 転籍しても、前の戸籍の記録は消えません。「除籍」として前の本籍地に残ります。ただし新しい戸籍には載らない人や記録があり、将来、戸籍をさかのぼるときの請求先が増えます。
転籍届とは。住所の引っ越しとは別の手続き
本籍とは、戸籍が置かれている場所のことです。住んでいる場所とは関係なく、日本国内の地番のある場所なら、どこにでも置けます。日野市も、本籍と住所を同じ場所にする必要はないと案内しています。
転籍届を出すと、この本籍が別の場所に移ります。氏名も住所も変わりません。岡崎市は「転籍届を出しても住所は変わらない」と案内しています。住所も変えるときは、転入届や転居届を別に出します。
筆頭者でも配偶者でもない人(たとえば子)が、自分だけ本籍を変えたいときは、転籍届ではなく「分籍届」という別の届出になります。自分の本籍が分からない人は、先に本籍の調べ方をご覧ください。
転籍届を出す人と、出す場所
出せる人
届出人は、戸籍の筆頭者とその配偶者です。夫婦がそろっているときは、届書にふたりの署名が要ります。
- 夫婦のどちらかが亡くなっている:残った一方が届け出ます。
- 筆頭者と配偶者の両方が亡くなっている:転籍届は出せません(岡崎市の案内)。
- 子など、筆頭者と配偶者以外の人:届出人にはなれません。ただし、書き上がった届書を役所へ持っていく使者にはなれます。
出せる場所
次の3か所のうち、どこか1か所の役所に出せば足ります。
- いまの本籍地の役所
- 新しい本籍地の役所
- 届出人の住所地の役所
本籍が遠くても、住んでいる市区町村の役所で手続きできます。窓口は、市区町村の戸籍の担当課が基本です。支所や出張所では扱わない役所もあります。横浜市は、区役所の戸籍課で扱い、行政サービスコーナーでは扱わないと案内しています。行く前に電話で確かめると、無駄足になりません。
必要なものと出し方
持ち物
戸籍謄本の例外について、横浜市は「コンピューター化されていない戸籍の場合は、同一区内の転籍を除き、本籍地で戸籍謄本を取って添付する」と案内しています。該当するかどうかは、戸籍を管理している役所に聞いてください。
出し方の流れ
- 新しい本籍にする場所を決め、その地番が実在するか確かめます。
- 用紙に必要事項を書き、筆頭者と配偶者が署名します。
- 出す役所の戸籍の窓口へ持っていきます。平日の開庁時間内が確実です。
- 受理されれば手続きは終わりです。届け出た日が、転籍の効力が生じる日になります。届出の期限はありません。
- 戸籍が書き換わるまで待ちます。日野市は、受理から通常1〜2週間程度としています。
手数料と、戸籍に反映されるまでの日数
日野市は、転籍届の手数料は無料と案内しています。ほかの市区町村については、出す役所の案内で確かめてください。
届け出た日に転籍の効力は生じますが、戸籍の記載が終わるまでには日数がかかります。この間は、新しい本籍の戸籍謄本が取れないことがあります。戸籍謄本をすぐ使う予定がある人は、日程に余裕を見てください。
新しい本籍に決められる場所、決められない場所
新しい本籍は、日本国内にある実在の場所なら、どこでも決められます。住んでいる場所と同じでなくても構いません。
気をつけたいのは、住所の表示と地番が一致しないことがある点です。「○丁目○番○号」の「号」以下は、本籍には入りません。決めた場所が本籍にできるかどうかは、新しい本籍地の役所に聞くのが確実です。
転籍のメリットとデメリット
転籍は、してもしなくても困らない手続きです。次の表を見て、自分の場合にどちらが合うか比べてみてください。
「いまの本籍が遠く、戸籍謄本を取る機会が多い」「住所の近くにまとめたい」という人には、転籍が合います。一方、戸籍謄本を取る予定がしばらくない人は、今は何もしなくてもかまいません。広域交付があるので、本籍が遠いだけなら、以前ほど不便ではなくなりました。仕組みは戸籍の広域交付の使い方で説明しています。
転籍すると、前の戸籍はどうなるか
転籍の届出をすると、前の本籍地の戸籍は「除籍」になり、前の役所に保存されます。保存期間は、全員が除籍になった年度の翌年から150年です(生駒市の案内)。記録が消えることはありません。
新しい本籍地には、新しい戸籍ができます。ここに移るのは、転籍の時点で戸籍に入っている人です。すでに死亡や婚姻で戸籍から出た人は、新しい戸籍には載りません。
そのため、あとで「生まれてから亡くなるまでの戸籍」をそろえる場面では、新しい戸籍だけでは足りません。転籍前の除籍謄本もそろえる必要があります。取り方は除籍謄本・改製原戸籍の取り方に、必要な戸籍の枚数の見方は戸籍の枚数で決まる判定表にまとめています。
転籍したあとに確認すること
- 戸籍謄本:反映が終わってから、新しい本籍で取り直します。
- 住所・住民票:転籍届だけでは変わりません。
- 運転免許証:本籍が登録されています。変更の手続きがあるため、免許を扱う警察署に確認してください。
- パスポート:「本籍の都道府県名」が記載事項です。都道府県をまたいで転籍したときは、記載事項変更の手続きが要ります。くわしくはパスポートの申請と戸籍謄本をご覧ください。
よくある質問
Q. 転籍すると、住所や住民票も変わりますか。
変わりません。転籍は本籍だけを移す届出です。住所を変えるときは、転入届や転居届を別に出します。
Q. 子どもだけ、本籍を変えられますか。
筆頭者でも配偶者でもない人は、転籍届を出せません。自分の戸籍をつくる「分籍届」という別の届出があります。条件は役所で確認してください。
Q. 転籍すると、過去の戸籍の記録は消えますか。
消えません。前の戸籍は除籍として保存され、保存期間は150年です。新しい戸籍に載らない記録は、前の本籍地の役所で除籍謄本として取れます。
Q. 届出のときに、戸籍謄本は持っていくべきですか。
2024年3月1日から、原則いりません。ただし、コンピュータ化されていない戸籍など、例外がある役所もあります。出す前に電話で聞いておくと確実です。
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- 除籍謄本・改製原戸籍の取り方|出生から死亡までの戸籍のさかのぼり方
- パスポートの申請に戸籍謄本はいる?
- 婚姻届に戸籍謄本は必要?
参考にした公的情報
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
- 横浜市「本籍を移す(変更する)ときの手続き(転籍届)はどのようにするのですか」
- 岡崎市「転籍届(本籍の場所の移転)」
- 日野市「転籍届」
- 船橋市「婚姻届や転籍届に記入する新しい本籍は、どこにすれば良いですか?」
- 生駒市「戸籍の保存期間」
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報です。取り扱いや必要書類は市区町村で異なります。個別の手続きは、届出先の役所にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
