相続の手続きで戸籍謄本が必要になったとき、「役所に行かずコンビニで取れないか」と考える方は多いはずです。実際、マイナンバーカードがあればコンビニのマルチコピー機で戸籍を取得できますが、相続の場面では思ったほど使えないことがあります。
この記事では、コンビニ交付で取れるもの・取れないもの、手続きの流れと手数料、相続で本当に必要な戸籍をどう取ればよいかを説明します。
先に答えると、亡くなった人の戸籍謄本(除籍謄本)はコンビニでは取れません。生きている自分の戸籍でも、本籍地が対応していない、本籍地以外に住んでいて利用登録が済んでいない、暗証番号がロックされている、といった理由で取れないことがあります(下の原因チェック表)。
先に結論:取れるのは「今の戸籍」だけ。亡くなった方の戸籍は原則不可
コンビニ交付が使える条件
🆔
マイナンバーカード
暗証番号の設定が必要
🏢
本籍地がコンビニ交付対応
全自治体ではない
📜
取れるのは現在の戸籍のみ
除籍・改製原戸籍は原則不可
なぜ取れない? コンビニ交付は、マイナンバーカードの本人が「自分がいま入っている戸籍」を取る仕組みだからです。亡くなった方のカードは死亡届のあと使えなくなり、全員が抜けた除籍や古い改製原戸籍も対象外です。
相続では「取れない前提」で進める
(自治体により対応証明書は異なる。2026年9月時点)
コンビニ交付は、マイナンバーカードを使ってコンビニのマルチコピー機から住民票や戸籍証明書を取得できるサービスです。ただし対応しているのは主に「現在の戸籍全部事項証明書」で、亡くなった方の戸籍(除籍謄本)や、その前の代の戸籍(改製原戸籍謄本)はコンビニ交付の対象外としている自治体がほとんどです。相続で必要になるのは、まさにこの除籍・改製原戸籍のため、コンビニ交付だけでは完結しないと考えておくのが安全です。
対応自治体の調べ方
コンビニ交付に対応しているかどうかは、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の公式サイトで自治体ごとに確認できます。本籍地の市区町村名で検索し、「戸籍証明書」の欄が対応になっているかを確認してください。同じ市区町村でも、住民票は対応していて戸籍は非対応、というケースもあるため、証明書の種類ごとの確認が必要です。
2026年9月時点で、コンビニ交付を導入している自治体はサービス開始当初より大きく増えていますが、導入率は100%ではなく、対応証明書の範囲も自治体ごとに差があります。必ず本籍地の自治体で個別に確認してください。
手順と手数料
本籍地と住所地が同じ場合
本籍地と住民票の住所が同じ市区町村にある場合は、特別な事前登録なしでマイナンバーカードを使ってすぐに取得できます。コンビニのマルチコピー機で「行政サービス」から証明書交付を選び、マイナンバーカードを読み取らせ、暗証番号(利用者証明用電子証明書の4桁)を入力して手数料を支払います。多くの自治体で午前6時30分から午後11時まで、土日・祝日も利用できます(利用時間は自治体により異なります)。
本籍地と住所地が違う場合は事前の利用登録が必要
本籍地と現住所の市区町村が異なる場合、コンビニのマルチコピー機か、本籍地自治体が用意する登録サイトから事前に「戸籍証明書等の利用登録」を済ませておく必要があります。登録が完了するまで数日かかることもあるため、急ぎで取りたい場合は事前登録が間に合うかを確認してから動いてください。
⚠️ 発行日・有効期限の扱いに注意
金融機関や法務局に提出する証明書は、多くの場合「発行から3か月以内」などの有効期限が定められています。コンビニ交付は取得が簡単な分、早めに取りすぎて期限切れになるケースがあるので、提出先が決まってから取得するようにしましょう。また年末年始(12月29日〜1月3日)や自治体のシステムメンテナンスで利用できない日・時間帯があります。提出期日が迫っているときは、前日までに取っておくと確実です。
手数料は自治体により異なり、窓口より安く設定されていることがあります(戸籍全部事項証明書は窓口450円が基準)。2026年9月時点。
コンビニで戸籍謄本が取れないときの原因チェック表
マルチコピー機で戸籍謄本が出ないときは、多くが次のどれかです。上から順に確かめてください。
| 起きていること | 主な原因 | どうするか |
|---|---|---|
| 亡くなった親の戸籍が選べない | 除籍・改製原戸籍はコンビニ交付の対象外。取れるのは本人か同じ戸籍の人の、今の戸籍だけ | 窓口(広域交付)か郵送で請求する |
| 戸籍のメニューが出ない | 本籍地の市区町村が、コンビニでの戸籍の交付に対応していない | J-LISのサイトで本籍地の対応状況を確認し、対応外なら窓口か郵送 |
| 本籍地以外に住んでいて取れない | 本籍地への利用登録が済んでいない。カードや電子証明書を更新・再発行したあとも登録のし直しが必要 | 利用登録を申請し、完了するまで待つ |
| 夜や休日に取れない | 本籍地以外に住む人の戸籍は、平日の日中だけの自治体がある(例:福岡市は平日9時〜17時) | 本籍地の自治体の利用時間を確認する |
| 暗証番号で先に進めない | 利用者証明用の暗証番号(数字4桁)を続けて3回間違えるとロックされる | 住所地の市区町村の窓口で解除してもらう |
| 結婚などの届出の直後で出ない | 届出で新しい戸籍に移った、または記録の反映を待っている | 窓口で請求する |
| 年末年始やメンテナンスの日 | サービスが止まっている | 提出期限が近いときは前日までに取る |
世田谷区・福岡市のコンビニ交付の案内で確認した内容です。利用時間や対応する証明書は自治体ごとに違います(2026年10月時点)。
自分の戸籍も出ないとき:電子証明書の期限切れと登録のやり直し
相続人ご自身の戸籍がコンビニで出ないときは、マイナンバーカードに入っている「利用者証明用電子証明書」の状態も確かめてください。この電子証明書の有効期限は「発行日から5回目の誕生日」までで、カード本体の有効期限とは別に切れます。期限が過ぎると、カードが手元にあってもコンビニ交付は使えず、住所地の市区町村の窓口で改めて発行の手続きが必要です。
そのほか、次のような場合もコンビニでは取れません。
- 本籍地の外に住んでいて、電子証明書やカードを更新したあと、本籍地への利用登録をやり直していない(登録には最大5開庁日ほどかかる自治体もあります)
- 転出の手続きをした(転出予定を含む)
- 15歳未満である
- 婚姻や転籍などの届出の直後で、証明書にまだ反映されていない(2週間程度かかることがあります)
板橋区・横浜市・静岡市の案内で確認した内容です(2026年10月時点)。
亡くなった親のマイナンバーカードを使えば取れる?
取れません。死亡届が出て住民票が消除されると、亡くなった方のマイナンバーカードは自動的に廃止され、電子証明書も使えなくなります。また、コンビニ交付はカードの本人が自分で操作する仕組みで、店員が代わりに操作することもありません。
亡くなった方のカードは役所へ返す必要はなく、相続の手続きが終わるまでは保管し、その後不要になれば処分してよいと案内している自治体もあります(板橋区)。
相続で使えない理由と、そのときの代替手段
相続手続きで必要なのは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)です。コンビニ交付は「現在の戸籍」に限定している自治体が大半のため、亡くなった方の戸籍をコンビニだけで揃えることはできません。また、コンビニ交付を利用できるのはマイナンバーカードの本人(生存している人)に限られ、亡くなった方の分をコンビニで代わりに取得することもできません。
相続の戸籍集めでは、次の2つの方法を使うことになります。本人・配偶者・直系の親族であれば、最寄りの役所の窓口でまとめて請求できる広域交付が最も効率的です。兄弟姉妹が相続人になる場合など広域交付の対象外になるケースでは、本籍地への郵送請求を使います。
出生から死亡までの戸籍は「誰が・どの戸籍を」で取り方を決める
「出生から死亡まで」の戸籍のうち、コンビニで取れるのはごく一部です。取りたい戸籍と請求する人の組み合わせで、取り方を先に決めておくと役所を何度も回らずに済みます。
| 取りたい戸籍 | 請求する人 | 向いている取り方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 相続人自身の現在の戸籍 | 相続人本人 | コンビニ交付 | 本籍地が対応していること。本籍地の外に住む方は事前の利用登録が必要 |
| 亡くなった親の死亡時の戸籍(除籍)と、さかのぼる戸籍 | 配偶者・子・孫 | 最寄りの市区町村窓口で広域交付 | 請求する本人が窓口へ行く。顔写真付きの本人確認書類が必要。郵送・代理人は不可 |
| そのうちコンピュータ化されていない古い戸籍 | 配偶者・子・孫 | 本籍地の役所へ郵送か窓口 | 一部は広域交付の対象外 |
| 亡くなった兄弟姉妹の戸籍 | 兄弟姉妹 | 本籍地の役所へ郵送か窓口 | 兄弟姉妹は広域交付で請求できる範囲(本人・配偶者・直系の親族)に入らない |
| 平日に役所へ行けないとき | 請求できる方 | 本籍地への郵送請求 | 本籍地が何度も変わっている場合は、それぞれの本籍地へ請求 |
広域交付は2024年3月1日に始まった制度です。請求できる人・必要書類・対象外の戸籍は法務省の案内にもとづきます(2026年10月時点)。
相続人自身の現在戸籍だけはコンビニで足りることもある
相続手続きでは、亡くなった方の戸籍だけでなく、相続人自身の現在の戸籍謄本(自分が相続人であることを証明する分)が必要になる場面もあります。この自分の分については、本籍地がコンビニ交付に対応していれば、コンビニ交付で取得できます。亡くなった方の分は本籍地への請求、自分の分はコンビニ、と使い分けると移動の手間を減らせます。
親が亡くなったことは、自分の戸籍謄本に載る?
親と同じ戸籍に今も入っているかどうかで決まります。亡くなった人は戸籍から除かれ(除籍)、戸籍に誰もいなくなると、その戸籍は除籍簿に移ります(戸籍法23条・12条)。
| あなたの状況 | 自分の戸籍謄本に親の死亡は載る? | コンビニで取れる? |
|---|---|---|
| 結婚しておらず、親と同じ戸籍に入っている | 載る。親の欄に死亡の記載があり、除籍と表示される | 本籍地が対応していれば取れる(死亡届の後、記載されるまでしばらくかかることがある) |
| 結婚などで親の戸籍から出ている | 載らない。自分の戸籍は親と別 | 自分の分は取れるが、親の死亡は載らない。親の戸籍は窓口か郵送で取る |
| 親の戸籍に残っていた最後の人が亡くなった | その戸籍は除籍謄本になる | 取れない。窓口(広域交付)か郵送で取る |
相続の手続きでは、親の死亡が載った戸籍だけでは足りず、亡くなった親の出生から死亡までの戸籍が必要です。亡くなった日をまず手元で確かめたいだけなら、マイナポータルの「戸籍関係情報」にある「親の死亡日」でも確認できます(電算化後の記録に限ります)。見られる項目は本籍の調べ方|マイナポータルで確認する手順で表にしています。
戸籍を取るときの費用
| 取得方法 | 取れる戸籍 | 手数料の目安 |
|---|---|---|
| コンビニ交付 | 現在の戸籍全部事項証明書のみ(自治体により異なる) | 窓口と同額か、やや安い自治体もある(450円が基準) |
| 窓口・広域交付 | 現在の戸籍/除籍・改製原戸籍(広域交付は本人・配偶者・直系のみ) | 戸籍450円・除籍/改製原戸籍750円 |
| 郵送請求 | 本籍地のすべての戸籍 | 戸籍450円・除籍/改製原戸籍750円+定額小為替の手数料 |
(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本は戸籍法手数料令にもとづく全国一律額。コンビニ交付の対応証明書・手数料は自治体により異なります。2026年9月時点)
相続の手続きで戸籍を調べている方へ:集める戸籍の範囲
誰の戸籍をどこまで集めるかは、相続人が誰かによって変わります。
コンビニで足りる分と役所で取る分を合わせて何通になるかで、自分で進められるかどうかの見当がつきます。判断の目安は相続手続き、自分でできる人・できない人|戸籍の枚数で決まる判定表にまとめています。本籍そのものが分からない方は本籍の調べ方から確認してください。
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※本記事は2026年9月時点の法令・地方公共団体情報システム機構および自治体の公開情報にもとづく一般的な整理です。対応証明書・手数料・利用時間は市区町村により異なります。個別の手続きの判断は本籍地の役所または司法書士にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
