相続登記の必要書類を調べていると、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」という似た名前の書類が並んで出てきます。どちらも家系図のような図で、見た目もよく似ています。両方作らないといけないのか、どちらか一方でいいのか、迷うところです。
結論を先に言うと、目的がまったく違います。相続関係説明図は、自分で作って登記申請に添える図で、戸籍の原本を返してもらうためのものです。法定相続情報一覧図は、法務局が内容を確認して認証文を付けてくれる証明書で、戸籍の束そのものの代わりになります。この記事では、相続関係説明図の書き方とWordのひな形、そして一覧図との使い分けを整理します。
先に結論:2つの図は目的が違う
戸籍の原本が返ってくる
代わりになる
銀行を何行も回る予定なら、法定相続情報一覧図を取ったほうが早く終わります。不動産の登記だけで済むなら、相続関係説明図を1枚作れば戸籍は返ってきます。両方作る必要はありません。
相続関係説明図は何のために作るのか
相続登記を申請するとき、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍を一式提出します。これを何もせずに出すと、法務局に預けたままになります。同じ戸籍を銀行や証券会社にも出したいのに、手元にないという状態になります。
そこで、申請書に相続関係説明図を添えます。すると、戸籍のコピーを付けなくても、原本を返してもらえます。1枚の図を書くだけで、何十枚もの戸籍をコピーする手間が省ける、という位置づけの書類です。
| 提出する書類 | 原本を返してもらう方法 |
|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 | 相続関係説明図を添える(コピー不要) |
| 遺産分割協議書 | コピーに「原本と相違ありません」と記載し、署名押印して添付 |
| 印鑑登録証明書 | 同上(コピーに原本証明を付ける) |
| 住民票・戸籍の附票 | 同上 |
ここを勘違いして「説明図を出せば全部返ってくる」と思っていると、協議書が戻ってこなくて慌てることになります。戻してほしいのは戸籍だけなのか、協議書もなのかを、申請前に決めておいてください。
書き方のルール
決まった様式はありません。手書きでもパソコンでも構いません。ただし、書く項目はほぼ決まっています。
| 誰について | 書く項目 |
|---|---|
| 亡くなった方 | 最後の本籍/最後の住所/登記簿上の住所/出生年月日/死亡年月日/氏名 |
| 相続人 | 住所/出生年月日/氏名/続柄(妻・長男・長女など) |
| 不動産を取得する人 | 氏名の下に(相続)と付記 |
| 取得しない相続人 | 氏名の下に(分割)と付記 |
| 相続放棄をした人 | 図から消さずに(相続放棄)と付記 |
| 先に亡くなった子 | 氏名と死亡年月日を書き、その下に代襲相続人(孫)を書く |
線の引き方は、婚姻関係が二重線、親子関係が一本線です。作成者の署名や押印は不要で、法務局の認証も入りません。あくまで「戸籍の内容をこう読みました」という説明のための図です。
記載例
最後の住所 愛知県名古屋市〇区〇町〇丁目〇番〇号
登記簿上の住所 愛知県名古屋市〇区〇町〇丁目〇番〇号
出生 昭和〇年〇月〇日/死亡 令和〇年〇月〇日
住所 愛知県〇市〇町〇丁目〇番〇号
出生 昭和〇年〇月〇日
氏名 山田花子(妻) (相続)
この例では、妻が不動産を取得するので(相続)、子2人は取得しないので(分割)と書いています。誰が何を取得するかは遺産分割協議書で決めた内容にそろえてください。図と協議書が食い違っていると、法務局から補正を求められます。
Wordのひな形
法定相続情報一覧図との使い分け
| 相続関係説明図 | 法定相続情報一覧図の写し | |
|---|---|---|
| 作る人 | 相続人が自分で作る | 相続人が図を作り、法務局が確認して認証する |
| 費用 | かからない | 交付手数料は無料(戸籍の取得費用は別) |
| 戸籍の代わりになるか | ならない(戸籍も一緒に出す) | なる(1枚で足りる) |
| 使える場面 | 相続登記の原本還付 | 相続登記、預貯金の払戻し、相続税の申告、年金の手続きなど |
| 相続放棄の反映 | (相続放棄)と付記して残す | 反映されない。法定相続人が全員載る |
| 再交付 | 自分で作り直す | 5年間は法務局で再交付を受けられる |
手続き先が不動産だけなら相続関係説明図、預貯金や証券も並行して進めるなら法定相続情報一覧図、という選び方でおおむね間に合います。銀行での使い方は遺産分割協議書を銀行に提出するときにまとめています。
関係が複雑なときの書き方
親子と配偶者だけの図なら難しくありません。つまずくのは、途中で誰かが亡くなっているパターンです。
| 状況 | 図にどう書くか |
|---|---|
| 代襲相続 子が親より先に死亡 | その子を図に残し、氏名の下に「令和〇年〇月〇日死亡」と書く。さらにその下に孫をつなぎ、孫に住所・出生年月日・(相続)または(分割)を書く |
| 数次相続 遺産分割の前に相続人が死亡 | 1つの図にまとめず、亡くなった方ごとに図を分けて作るのが分かりやすい。図の上部に「被相続人 〇〇」と誰の図かを明記する |
| 兄弟姉妹が相続人 | 亡くなった方の両親も図に書き、両親から兄弟姉妹へ線を引く。両親の死亡年月日も記載する |
| 前の配偶者との子 | 前婚の配偶者は相続人ではないので二重線だけを引き、その子は現在の子と同じ列に並べる |
| 養子 | 続柄を「養子」と書く。実子と区別して書けば足りる |
兄弟姉妹が相続人になるケースは、集める戸籍の量が一気に増えます。亡くなった方の両親それぞれについて、出生から死亡までの戸籍が必要になるためです。この段階で図を書こうとして手が止まったら、戸籍がまだ足りていない合図だと考えてください。
よくある書き間違い
- 相続放棄した人を図から消してしまう:戸籍上は相続人なので、消すと戸籍と図が合わなくなります。残して(相続放棄)と付記します。
- 登記簿上の住所を書き忘れる:亡くなった方が引っ越していると、登記簿の住所と最後の住所が違います。両方書いて、同一人物であることを示します。
- 先に亡くなった子を省略する:その子の死亡年月日を書き、下に孫(代襲相続人)をつなぎます。省略すると相続人の範囲が変わってしまいます。
- (相続)(分割)を付けない:付記がないと、誰が不動産を取得するのか図から読み取れません。
- 戸籍を集めきる前に作る:出生まで遡ると、知らなかった子が出てくることがあります。図は戸籍が全部そろってから作ります。
どの戸籍をどこまで集めればよいかは、相続人が誰かによって変わります。範囲の目安は本籍の調べ方|相続で集める戸籍の範囲で整理しています。
今日の一歩:図を書く前に、戸籍が「つながっているか」を確かめる
図の間違いは、たいてい戸籍が足りないまま書き始めたことから起きます。確かめ方は単純です。集めた戸籍を、死亡が載っているものから古いほうへ並べ、1通ずつ「この戸籍がいつ作られたか」と「1つ前の戸籍がいつ閉じられたか」を見比べてください。
戸籍の冒頭近くに、「編製」「改製」「転籍」「婚姻」などの日付があります。その日付が、1つ前の戸籍の末尾の日付とつながっていれば、そこは切れていません。日付のあいだに空白の期間があれば、その間の戸籍がまだ足りていない合図です。いちばん古い戸籍に亡くなった方の出生の記載が出てくるところまで届けば、収集は完了です。
つながらないときの次の一手。その戸籍に書かれている「従前の本籍」「転籍前の本籍」の記載が、次に請求すべき本籍地です。そこを管轄する市区町村へ、郵送で請求します(申請書・本人確認書類の写し・定額小為替・返信用封筒)。どの戸籍が足りないか自分で判断しかねるときは、管轄の法務局の登記手続案内(予約制)で、集めた戸籍を見てもらえます。
図ができたら、窓口で「原本還付でお願いします」と伝えてください。相続関係説明図を添えれば戸籍の原本は返ってきますが、遺産分割協議書と印鑑登録証明書は、コピーに「原本と相違ありません」と書いて記名押印したものを添えないと返りません(前掲の表)。ここを取り違えると、預貯金の解約のときに印鑑登録証明書を取り直すことになります。
期限の目安:相続登記は不動産の取得を知った日から3年、相続税の申告・納税は10か月です。戸籍の収集は数週間かかることがあるので、図を書き始める前に請求だけ先に出しておくと待ち時間が重なりません。
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本記事の制度は2026年9月時点の情報にもとづいています。相続関係説明図の様式や原本還付の取り扱いは、法務局や事案によって細かな指示が異なる場合があります。相続人に外国籍の方がいる場合、数次相続が発生している場合など、関係が複雑なときは、申請前に管轄の法務局または専門家にご確認ください。