相続詐欺の手口と防ぎ方|自称相続人・遺言偽造・親の取り込みまで

相続をめぐる詐欺は、見知らぬ他人だけが仕掛けてくるものではありません。「手続きを代行する」と名乗る業者、突然現れた自称相続人、内容を確かめないまま署名を求められる書類。どれも、こちらが急かされて確認をとばした瞬間に成立します。

この記事では、相続をめぐる詐欺の手口を6つに分けて見分け方を示します。そのうえで、立ち止まるべきサインと、署名の前に押さえておく5つの法律知識を整理します。

目次

先に結論:この3つが出たら、いったん止まる

📞

急かされる

「今日中に」「あなただけに」。期限を切るのは、調べる時間を奪うためです。

📝

その場で署名を求められる

遺産分割協議書・委任状・白紙の書類。持ち帰って中身を読んでからで足ります。

💸

先にお金を求められる

「手続き費用の前払い」「登録料」。振込を求められた時点で立ち止まります。

判断に迷ったら、署名の前にここへ

188

消費者ホットライン。近くの消費生活センターにつながります。

#9110

警察相談専用電話。被害届の前の相談窓口です。

いずれも相談料はかかりませんが、通話料は利用者負担です(2026年8月時点)。

相続を狙う詐欺の共通点は、書類に署名させるか、お金を振り込ませるかのどちらかです。どちらも「持ち帰って調べる」で止められます。以下、手口の型と、押さえておくべき5つの法律知識を確認してください。

相続詐欺を防ぐ5つの法律知識(全体像)

1

遺言書の作成と管理

3種類の遺言書の特徴を理解し、信頼できる方法で保管する

2

法定相続人の確認

戸籍謄本を取り寄せて正確な相続人を確認する

3

遺産分割協議の注意点

相続人全員で協議し、協議書に全員の署名・押印を残す

4

相続登記は3年以内

名義を移さないままだと、外から権利関係が見えない状態が続く

5

調べる時間を確保する

持ち帰る・戸籍で照合する・第三者に見せる。この3つで止まる

うちの家族はもめやすい?

家族のあいだの不信感は、つけ込まれるきっかけにもなります。
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相続詐欺の代表的な手口

⚠️ まず知っておきたい4つの大きな型

1

遺言書偽造

署名の偽造や内容の書き換えで、自分に有利な内容に改ざんする

2

相続人のなりすまし

他人の戸籍を不正に入手し、相続人と偽って財産を奪う

3

遺産分割協議での不正

嘘の情報の提供や重要な情報の隠蔽で、有利な条件を引き出す

4

財産管理を巡る詐欺

財産管理を任された者が権限を悪用し、財産を不正に流用する

場面別に見分ける、相続をめぐる6つの手口

「相続詐欺」と聞くと、見知らぬ業者を思い浮かべがちです。しかし実際は、遺産の話し合いの場や、親のそばにいる身内の中にも、似た手口があります。入口と見分けるポイントを、6つに分けて並べます。

手口よくある入口見分けるポイントまず取る行動
1. 手続き代行を装う業者「相続手続きを全部代行します」と、電話・チラシ・訪問で近づく事務所の所在地や代表者名があいまい。費用を先に振り込ませようとする事務所名で調べ、費用の見積書を書面でもらう
2. 自称相続人「私も相続人です」と、突然連絡してくる戸籍を見せようとしない。続柄の説明が二転三転する亡くなった方の出生から死亡までの戸籍で確かめる
3. 「遺産を受け取れる」という連絡「受け取っていない遺産があります」とメールやはがきが届く受け取るための手数料・登録料を、先に払うよう求める振り込まず、消費者ホットライン188に相談する
4. 話し合いでの嘘・隠しごと「財産はこれだけです」と、一部の財産を知らせないまま協議を進める財産の一覧や通帳の写しを出さない。考える時間を与えず、署名を急がせる資料の写しを求め、持ち帰って確かめてから決める
5. 遺言書の偽造・書き換え・隠しごと亡くなった後に、急に遺言書が出てくる。または、あるはずの遺言書が見つからない筆跡や内容が普段の本人らしくない。一人だけが保管していた勝手に開封せず、家庭裁判所の検認を受ける(法務局保管の自筆証書遺言は不要)
6. 親に近づく身内の取り込み・使い込み「世話をするから」と、通帳や印鑑を預かる。親に遺言を書かせる他の家族を親に会わせない。お金の使い道を見せない通帳の動きを家族で共有し、第三者を交えて話す

「孝行」を装って親に近づく身内には、どう気づくか

6つのうち、いちばん気づきにくいのが6番目です。親のそばで世話をする人が、全員悪意をもっているわけではありません。ただ、次のような変化が重なるときは、立ち止まって確かめる価値があります。

  • 親の通帳・印鑑・キャッシュカードを、世話をする一人が握っている
  • 他の兄弟や親戚が会いに行くと、理由をつけて断られる
  • 親の口座から、使い道の分からない大きな引き出しが続いている
  • 親が急に「全部あの子に任せる」といった遺言や委任状を書いていた

これだけで、不正があったとは言えません。親が自分の意思で決めたことも、世話の費用を立て替えていることもあります。大切なのは、疑って責めるより先に、通帳の動きや書類を家族みんなで見られる形にすることです。介護の負担や不公平感から生まれる対立は、親の介護で兄弟が不公平…どう話し合う?で、話し合いの進め方と記録の残し方を説明しています。

法律ではどう扱われるか

行為法律上の扱い
遺言書を偽造・変造・破棄・隠す民法891条により、その人は相続人になれません(相続欠格)。偽造した場合は、刑法の私文書偽造(159条)や、その行使(161条)に当たるおそれがあります
だましたり脅したりして、親に遺言を書かせる・変えさせる同じく民法891条の相続欠格の対象です
他の相続人の署名を代わりに書く本人の意思に基づかない協議書は有効になりません。署名の偽造は、刑法の私文書偽造に当たるおそれがあります
後見人が本人の財産を使い込む家庭裁判所が令和7年に対応を終えたものとして報告された後見人等の不正は、26件、被害額は約1億6千万円でした

ここで挙げた「疑わしい行為があった」ことと、「実際に不正と認められる」ことは別です。証拠をどう集めるか、返してもらえるかといった判断は、個別の事情で変わります。争いになりそうなときは、早めに弁護士に相談してください。当社が相手との交渉や、請求の代理をすることはできません。

なお、「相続人の中に認知症の方がいて、遺産分割協議の署名を代わりに書いてしまった」という場合は、詐欺とは別の問題が生じます。相続で認知症の相続人はバレる?代筆は無効・犯罪になり得ますで、正しい進め方を説明しています。すでに署名や支払いをしてしまった場合は、下の「5. 急かされたときは、調べる時間を確保する」に窓口をまとめています。

1. 遺言書は偽造されにくい形で残す

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。書き換えや隠匿を防ぐという観点では、この3つは同じではありません。

  • 自筆証書遺言:被相続人が自分で全て書く遺言書。作成が簡単ですが、偽造されやすい点がデメリットです。
  • 公正証書遺言:公証人の前で作成する遺言書。偽造が難しく、法的に強力です。
  • 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま公証人の証明を受ける遺言書。保管が難しく、手続きが複雑です。

公正証書遺言(偽造リスクが低い)

✓ 公証人の前で作成するため偽造が難しい

✓ 法的に強力

✓ 原本が公証役場に残るため、手元の紛失で失われない

自筆証書遺言(偽造リスクに注意)

✕ 作成は簡単だが偽造されやすい

✕ 家庭内保管では死後に発見されないおそれ

どこに置くかで、書き換えのリスクが変わる

自筆で書いた遺言書は、法務局の自筆証書遺言書保管制度(申請1件3,900円・2026年8月時点)に預けられます。原本を法務局が保管するので、家の中で書き換えられたり捨てられたりする余地がなくなり、家庭裁判所の検認も不要になります。公正証書遺言は原本が公証役場に残るため、同じく手を加えられません。手元の引き出しに置いたままにするのが、いちばん形が変わりやすい状態です。

2. 相続人は戸籍で確認する

配偶者は常に相続人になります。それ以外は順番が決まっていて、第1順位が子(子が先に亡くなっていれば孫へ代襲)、子がいなければ第2順位の父母など直系尊属、それもいなければ第3順位の兄弟姉妹です。上の順位の人が1人でもいれば、下の順位の人は相続人になりません。「両親も兄弟も全員が相続人」ではない点が、名乗り出てきた人を見分けるときの手がかりになります。

確かめる方法は1つです。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)を市区町村から取り寄せ、そこに記載された人だけを相続人として扱います。相手の言い分ではなく戸籍で照合すれば、なりすましはここで止まります。

3. 遺産分割協議書は全員の署名・押印で成立する

遺産分割協議は、相続人全員で分け方を決める話し合いです。1人でも欠けた協議は無効になります。裏を返せば、あなたの署名がない協議書で財産を動かすことはできません。その場で署名を求められても、持ち帰って中身を読んでから決めて構いません。

署名する前に見るのは、財産の一覧が全部載っているか、自分の取り分が具体的な金額や物で書かれているか、「その他一切の財産は◯◯が取得する」という一文が入っていないか、の3点です。最後の一文は、まだ見つかっていない預金や不動産までまとめて相手のものにする書き方です。

4. 相続登記は3年以内(2024年から義務)

不動産を相続したら、名義を自分に移す相続登記をします。相続登記は2024年4月1日から義務になりました。不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない場合に10万円以下の過料の対象になります(2026年8月時点)。期限の問題だけでなく、登記名義が亡くなった方のままだと権利関係が外から見えず、第三者につけ込まれる余地が残ります。

⚠️ 相続登記の放置は不正取得のリスクを高める

相続登記を怠ると不動産の相続権が曖昧になり、第三者に不正取得を狙われるリスクが高まります。登記の遅れが不動産売却の遅れや資金繰りへの影響につながった事例もあるため、相続登記は速やかに行いましょう。

5. 急かされたときは、調べる時間を確保する

相手が期限を切ってくる場面では、こちらが調べる時間を確保するだけで話は止まります。書類を持ち帰り、戸籍と登記事項証明書を取り寄せ、内容を第三者に見てもらう。この3つを挟めば、たいていは相手のほうが降ります。

相談先を選ぶときは、事務所名で検索して所在地と代表者名が確認できるか、依頼前に費用の見積書を書面で出してくれるかを見てください。すでに支払ってしまった、署名してしまったという段階なら、消費者ホットライン188と警察相談専用電話#9110が最初の窓口になります。

今日できる「照合」の手順

1. 相続人を戸籍で照合する

行き先は市区町村の戸籍担当課(戸籍住民課・市民課など名称は自治体で異なります)。2024年3月から広域交付が始まり、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村の窓口で、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をまとめて請求できます。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、兄弟姉妹の分やコンピュータ化されていない古い戸籍は対象外です。窓口へは顔写真付きの本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)と手数料を持参してください。広域交付は郵送・代理人による請求ができず、窓口へ本人が行く必要があります。

2. 不動産を登記事項証明書で照合する

行き先は法務局。登記事項証明書は誰でも請求でき、全国どの法務局の窓口でも取れます(窓口請求は1通600円。オンライン請求ならこれより安くなります)。所在地・地番・家屋番号が必要なので、固定資産税の納税通知書を持って行くと早いです。渡された書類に載っている不動産と、実際に登記されている名義・持分が一致するかを見ます。

3. その場で伝える3つ

①「持ち帰って確認します」②「戸籍と登記を取り寄せてから返事します」③「費用は見積書を書面でください」。断る必要はありません。期限を切らせないことだけが目的です。

進まないとき・もう応じてしまったとき

持ち帰りを断られる、原本を見せない、その場で押印を迫られる——このいずれかがあれば、そこで署名しないでください。相手の名刺と書類は写真に残します。すでに支払った・署名したときは188と#9110へ。訪問や電話をきっかけに結んだ契約であれば、書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフが使える場合があります。該当するかどうかの判断も含めて188で相談できます。

「期限が迫っている」と言われたときの本当の期限

相続放棄は自分が相続人だと知った日から3か月、相続税の申告・納付は亡くなった日の翌日から10か月、相続登記は取得を知った日から3年です。これ以外に「今日中」の期限はありません(2026年9月時点)。

「この書類に署名していいのか」で迷っている方へ
遺産分割協議書や委任状を渡されたが、内容が妥当か判断できない。名乗り出てきた相続人が本物か分からない。こうした場面は、戸籍と登記事項証明書を突き合わせれば大半が確認できます。30分の無料相談では、その書類にサインしてよいか、先に取り寄せるべき資料は何かを整理してお持ち帰りいただけます。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)

参考にした公的情報

いずれも2026年10月時点で確認した内容です。


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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

相続事務所にてマーケティング、広報、人事、新規事業等を行いウェブ経由の月間売上を更新する傍ら経営にも参画する。主にウェブマーケティングを通じて業界特有の「見せ方」やずる賢い手法をたくさん目撃していく。お客さんにとっては幾度とない大事な機会なのに半ば騙すようなマーケティングや営業で受任している事業者がいることを問題視し、業界についての正確な情報を発信したいと考え「相続事務所のホンネとタテマエ」を運営中。

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