生存給付金付終身保険で生前贈与するデメリット【2026年】仕組みと税金・確認点

銀行や保険の窓口で「毎年110万円以内の生存給付金をお子さんに渡せる保険があります」と言われた。設計書も受け取った。仕組みはなんとなく分かったけれど、本当に贈与として通るのか、損はしないのか。そこが引っかかって、契約書にサインする手が止まっている。この記事は、そんな方に向けて書いています。

生存給付金付終身保険を使った生前贈与は、使い方を間違えなければ筋の通った方法です。ただ、デメリットもはっきりあります。ここでは、仕組み、税金の分かれ方、デメリット、契約前に設計書で見る場所を、国税庁の公開情報をもとに順に整理します。特定の保険会社や商品の話はしません。

この記事の結論
1. 親が保険料を払い、子が毎年の生存給付金を受け取る形では、受け取るたびに親から子への贈与として扱われます。年110万円以内なら贈与税はかかりません。
2. 主なデメリットは、途中解約での元本割れ、受取口座を親が管理すると贈与と認められにくいこと、亡くなる前7年以内の受け取りは相続財産に足し戻されることの3つです。
3. 契約前に、設計書の「契約者・被保険者・受取人の欄」「解約返戻金の推移表」「受取人を変えられるか」を確かめると、向き不向きが見えてきます。
※2026年10月時点。出典:国税庁タックスアンサーNo.4402・No.4417・No.1755、東京国税局 文書回答事例(平成27年5月28日)
目次

生存給付金付終身保険を使った生前贈与の仕組み:2つの形

生存給付金付終身保険は、被保険者が生きている間、決まった時期に「生存給付金」が支払われる終身保険です。亡くなったときには死亡保険金が出ます。生前贈与に使う場合、勧められる形は大きく2つに分かれます。

形A 親が保険料を払い、子が生存給付金を受け取る
親
契約者・保険料を払う
(多くは一時払い)
→
保険料
保険会社
毎年、生存給付金を支払う
→
生存給付金
子の口座
受け取るたびに
親からの贈与
形B 親が毎年現金を贈与し、子が契約者として保険料を払う
親
毎年、現金を贈与
(被保険者は親)
→
現金
子
契約者・受取人
自分の口座から保険料
⇄
保険料と給付金
保険会社
生存給付金も
死亡保険金も子へ
※一般的な契約の形を図にしたものです。実際の契約の組み方は商品によって異なります。

窓口で「生存給付金で贈与できる」と説明されるのは、ほとんどが形Aです。親がまとまったお金で保険料を払い、子は毎年の生存給付金を受け取るだけ。子の側に手間がかからないのが特徴です。

形Bは、いわゆる「保険料贈与」です。親は保険料ではなく現金を子に贈与し、子が自分の口座から保険料を払います。こちらの手順と注意点は保険料贈与とは|親が保険料を払い、子が契約者になる生前贈与のやり方と注意点で詳しく扱っています。

項目形A(親が保険料を払う)形B(子が保険料を払う)
契約者・保険料を払う人親子(親から贈与された現金で)
贈与されるもの毎年の生存給付金毎年の現金
子が受け取る生存給付金の税金贈与税(年110万円以内なら非課税)所得税(一時所得)
親が亡くなったときの扱い契約の形により相続税(下の表)子の死亡保険金は所得税(一時所得)
毎年の手間少ない(受け取りの管理だけ)多い(贈与契約書・振込・保険料の支払い)

(2026年10月時点/国税庁タックスアンサーNo.1750・No.1755・No.4417をもとに整理)

誰が払い、誰が受け取るかで税金が分かれる

生命保険の税金は、契約書の名前ではなく「実際に保険料を負担した人」と「受け取る人」の組み合わせで決まります。生存給付金も同じ考え方です。

場面保険料を負担した人受け取る人かかる税金
生存給付金を受け取る(形A)親子贈与税
生存給付金を受け取る(形B)子子所得税(一時所得)
親(被保険者)が亡くなり死亡保険金が出る(形A)親子相続税(非課税枠の対象)
親(被保険者)が亡くなり死亡保険金が出る(形B)子子所得税(一時所得)
契約者の親が亡くなったが、被保険者は親以外で保険が続く親(契約を引き継ぐ人)相続税(生命保険契約に関する権利)

(2026年10月時点/国税庁タックスアンサーNo.1750・No.1755・No.4114・No.4417、国税庁「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例⑨」をもとに整理)

形Aの生存給付金については、東京国税局の文書回答事例があります。保険料を負担した契約者以外の人が受け取る生存給付金は、支払いのたびに、保険料を負担した人から贈与で取得したものとみなされる、という考え方です(平成27年5月28日回答)。つまり、毎年受け取るたびに、その年の贈与として数えます。

形Bで子が受け取る生存給付金や死亡保険金は、子の一時所得です。一時所得は「受け取った額から払った保険料を差し引き、さらに特別控除の最高50万円を引いた額」の2分の1が課税対象です(No.1755)。生存給付金のたびに差し引ける保険料の計算は契約の形で変わるので、受け取ったときの支払通知書で確かめるのが確実です。

契約者・被保険者・受取人の組み合わせ全体の一覧は、生命保険の契約者・被保険者・受取人と税金の早見表にまとめています。

生存給付金付終身保険で生前贈与するデメリット

ここからが本題です。窓口の説明では軽く流されがちな点を、6つに分けて書きます。どれも「だからやめたほうがいい」という話ではありません。知ったうえで選ぶための材料です。

1. 途中で解約すると、払った保険料より少なく戻ることがある

終身保険の保険料には、保障のための費用や契約の経費が含まれます。そのため、契約から日が浅いうちに解約すると、解約返戻金が払った保険料を下回ることがあります。いわゆる元本割れです。

形Aでは親のまとまったお金が保険に入ります。親の介護や施設入居でお金が必要になり、途中で解約すると、元本割れの分だけ手元資金が減ります。どの年に払込額を上回るかは、設計書の解約返戻金の推移表で確かめられます。

2. 受取口座を親が管理していると、贈与と認められにくい

形Aでいちばん崩れやすいのがここです。生存給付金の振込先は子名義の口座でも、通帳と印鑑を親が持ち、子は存在を知らない。この状態では、名前だけ子の「名義預金」と同じ問題になります。

名義預金と見られると、そのお金は親の財産のままとされ、親が亡くなったときに相続財産に含まれます。贈与のつもりで10年続けても、その分が相続税の計算に戻る、ということが起こりえます。民法でも、贈与は渡す側が与える意思を示し、受け取る側が受諾して成り立つ契約です(民法第549条)。

子が受取口座の通帳・印鑑・キャッシュカードを自分で持ち、自由に使える状態にしておく。生存給付金が入ることを子自身が知っている。この2点は最低限そろえておきたいところです。

3. 毎年同じ額を渡す形は「定期金の贈与」の論点がある

国税庁は、毎年100万円ずつ10年間贈与することを最初に約束していた場合、約束した年に「10年分の給付を受ける権利」の贈与を受けたものとして贈与税がかかる、という考え方を示しています(タックスアンサーNo.4402の質疑応答)。毎年110万円以内でも、まとめて課税される可能性があるということです。

では、生存給付金はどうか。前の章の東京国税局の文書回答事例では、生存給付金の請求権は毎年の支払時期にその都度生じるとして、定期金の権利の贈与ではなく、支払いのたびの贈与とする見解が示されました。この事例では、契約者が支払いの前に受取人を変えられる仕組みであることも前提になっていました。

ただし、文書回答は照会された事実関係を前提にした回答で、事実が違えば別の課税関係になりうる、と明記されています。勧められている商品が同じ前提に当てはまるかは、設計書や約款だけでは判断しにくいところです。受取人を途中で変えられるか、受け取る額と年数が契約で固定されているかを確かめ、税理士に見てもらうと安心です。

4. 保険料の総額と受け取りの総額を比べると、増えていないことがある

「生存給付金がもらえる」と聞くと、お金が増えるように感じます。実際には、生存給付金は自分が払った保険料の一部が戻ってくる性格が強いものです。比べるべきは次の2つです。

比べるもの例(説明のための仮の数字)
払う保険料の総額1,000万円
10年間の生存給付金の合計年50万円×10年=500万円
10年後に解約した場合の解約返戻金450万円
受け取りの総額(生存給付金+解約返戻金)950万円(払った額より50万円少ない)

(数字は仕組みを説明するための仮のものです。実際の金額は商品・年齢・契約時期で変わります)

このように、受け取りの総額が払った額に届かない年があります。死亡保険金まで含めて見れば増える設計もあります。どの時点で、何と何を足して比べているのか。設計書の数字をこの形で並べ直すと、説明の印象と実際の差が見えてきます。

5. 亡くなる前7年以内の受け取りは、相続財産に足し戻される

形Aの生存給付金は贈与なので、相続前贈与の加算の対象になります。相続や遺贈で財産を受け取る子が、親の亡くなる前の一定期間に受け取った生存給付金は、相続税の計算で足し戻されます。110万円以内で贈与税がかからなかった分も同じです。

この期間は2024年1月以降の贈与から3年が7年に延び、2027年1月以降の相続から実際に長くなり始めます。どの時期にどこまで戻るかは生前贈与の加算7年はいつから?早見表と孫への贈与で整理しています。相続税がかかる家ほど、受け取りを始める年齢が大切になります。

6. 親の判断能力が下がると、契約を動かせなくなる

形Aでは親が契約者です。解約、受取人の変更、契約者の変更といった手続きは、原則として契約者本人の意思で行います。親が認知症などで判断能力を失うと、家族が代わりに手続きすることは難しくなります。

介護費用のために解約したくてもできない。受取人だった子が先に亡くなっても変更できない。こうした場面では成年後見制度を使うことになりますが、後見人は本人の財産を守る立場なので、贈与のための手続きは進めにくくなります。家族が代わりにできる範囲は認知症になったら保険は家族が動かせる?にまとめました。

このほか、子がその年に別の人からも贈与を受けると、合計で110万円を超えて申告が必要になります。基礎控除は「受け取る人ごとに1年間の合計で110万円」だからです(No.4408)。祖父母からの援助がある家は、合計で見ておきましょう。

向く人・向かない人

向いている向いていない
相続税がかかる見込みがあり、贈与を何年も続けられる財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下で、相続税がかからない
保険に入れるお金とは別に、親の生活費・介護費が確保できている老後資金に余裕がなく、途中で解約する可能性がある
子が受取口座を自分で管理でき、贈与のことを理解している子に知らせずに進めたい、通帳は親が持っていたい
親が元気で、10年以上先まで見通して決められる親の判断能力に不安が出始めている
現金で渡すと使ってしまいそうで、形を決めて渡したい近いうちにまとまった額を子に渡したい(住宅資金など)

右の列に当てはまる項目が多い場合は、無理に保険を使う理由は薄くなります。毎年の現金の贈与や、贈与以外の方法も含めて比べたほうがよいでしょう。保険の非課税枠を使う一時払いとの違いは一時払い終身保険と生前贈与、どっちが得?で比べています。

契約前に確かめるチェックリスト:設計書のどこを見るか

設計書(提案書)は数ページあり、どこを見ればいいか迷います。贈与に使う前提で見るなら、次の7か所です。

設計書で見る場所確かめること
契約者・被保険者・死亡保険金受取人の欄誰が保険料を払い、誰が亡くなったときに誰が受け取るか。上の税金の表のどれに当たるか
生存給付金受取人の欄子の名前になっているか。途中で変えられるか、変える手続きは何か
生存給付金の額・支払時期・回数年110万円以内か。他からの贈与と合わせても超えないか
解約返戻金の推移表何年目に払込保険料の累計を上回るか。早く解約した場合にいくら戻るか
払込保険料の総額と受け取りの総額生存給付金の合計+解約返戻金(または死亡保険金)が払込額をいつ上回るか
外貨建て・変額などの表示為替や運用で受取額が変わる商品か。円での最低保証の有無
指定代理請求人・契約者代理の特約の欄親の判断能力が下がったときに家族ができること、できないこと

このほか、受取口座を誰が管理するか、生存給付金を据え置きにできる商品なら据え置いた場合の扱いも、担当者に聞いておきましょう。答えをメモに残しておくと、家族で話すときにも役立ちます。

受け取った設計書、契約の前に第三者に見てもらいませんか

贈与に使う前提で、契約の形・解約返戻金の推移・受取口座の管理まで、上のチェックリストに沿って一緒に確かめます。30分の無料相談で、設計書の写真だけでも確認できます。比べた結果「この契約はしない」が答えになることもあります。

いまから相続は保険代理店ではなく、保険の販売はしていません。商品の比較や詳しい説明が必要な場合は、提携している乗合代理店所属の生命保険募集人におつなぎします。その際、当社が紹介料を受け取る場合があります。紹介料の有無でお伝えする内容は変えません。税額の判断は税理士にご確認ください。

設計書を見てもらう(無料・オンライン可)→

よくある質問

Q1. 生存給付金が年110万円以内なら、申告はいりませんか?

その年に受け取った贈与の合計が110万円以内なら、暦年課税の贈与税はかからず申告も不要です。ほかの人からの贈与と合わせて超えた場合は、翌年2月1日から3月15日までに受け取った子が申告します(No.4402・No.4408)。

Q2. 生存給付金の受取人を孫にすることはできますか?

受取人を孫にできる商品もあります。孫は相続人でなければ、原則として相続前贈与の加算の対象外です。ただし、遺言で財産を受け取る場合や、死亡保険金の受取人にもなっている場合は加算の対象になりえます。詳しくは生前贈与の加算7年の記事の表をご覧ください。

Q3. 子がまだ未成年の場合はどうなりますか?

未成年の子への贈与は、親権者が受け取りを承諾し、口座も親権者が管理するのが一般的です。祖父母が契約者の場合は、通帳や印鑑を祖父母が持たないことが大切です。管理する人を家族で決めておきましょう。

Q4. 途中で生存給付金の受取人を変えたらどうなりますか?

変更後に支払われる分は、新しい受取人への贈与になると考えられます。東京国税局の文書回答事例も、契約者が支払いの前に受取人を変えられる仕組みを前提にしていました。変更できるか、どんな手続きかは商品ごとに違うので、契約前に確かめてください。

Q5. 親が亡くなったら、契約はどうなりますか?

被保険者が親なら死亡保険金が支払われ、親が保険料を負担していれば相続税の対象です。500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えます(No.4114)。被保険者が親以外なら契約は続き、解約返戻金相当額が「生命保険契約に関する権利」として相続財産になります。

Q6. 保険料贈与(形B)とどちらがよいですか?

一概には言えません。形Aは子の手間が少ない一方、親が契約者のため判断能力が下がったときに動かしにくくなります。形Bは毎年の贈与契約書や振込が必要ですが、契約は子のものです。家族が毎年続けられるかで選ぶのが現実的です。

今日できる一歩

1. 設計書の名前の欄を書き出す。契約者・被保険者・死亡保険金受取人・生存給付金受取人の4つを並べ、上の税金の表のどれに当たるか印をつけます。

2. 解約返戻金の推移表で「払込額を超える年」を探す。その年に親が何歳かを書き添えると、途中で解約する可能性と比べやすくなります。

3. 受取口座を誰が管理するか、子と話す。通帳・印鑑・キャッシュカードを子が持てるかどうかで、この方法が向くかが変わります。

贈与の方法そのものを迷っている方へ
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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の国税庁の公開情報(タックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)にもとづく一般的な仕組みの説明です。東京国税局の文書回答事例は照会された事実関係を前提とした見解で、事実関係が異なると別の課税関係になることがあります。個別の税額や課税関係の判断は税理士または税務署に、契約内容は保険会社にご確認ください。本記事は特定の保険会社・商品の推奨を目的とするものではありません。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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