親の借金が分かった。相続放棄をしたいけれど、親が住んでいた町の家庭裁判所は遠く、平日に休みを取って行くのも難しい。そんなときは、書類を郵送して申し立てられます。
相続放棄は、申述書と戸籍などを、管轄の家庭裁判所へ郵送すれば手続きができます。この記事では、郵送でする手順、封筒に入れるもの、切手と収入印紙の扱い、封筒の書き方、届いた後の照会書と受理通知書までを、2026年10月時点の裁判所の案内で順に整理します。
先に結論:相続放棄は郵送でできます。送り先は管轄の家庭裁判所です
この記事の結論
- 送り先:亡くなった方の最後の住所地を担当する家庭裁判所です。放棄する人の住所の近くの家裁ではありません。
- 入れるもの:申述書、戸籍など、収入印紙800円分(1人につき)、連絡用の郵便切手です。切手の額は裁判所ごとに違うので、申述先の案内で確かめます。
- 届いた後:裁判所から書面で照会があれば、答えて返送します。受理されると受理通知書が届きます。期限は、相続人になったと知った時から3か月以内です。
どこの家庭裁判所が担当かの調べ方と、愛知・岐阜の家庭裁判所の担当地域は、相続放棄 家庭裁判所はどこ?にまとめています。この記事は「郵送でどう出すか」に絞ります。
相続放棄を郵送で申し立てる手順(7ステップ)
郵送の場合も、そろえる書類は窓口に出すときと同じです。違うのは、封筒の準備と、届いた後のやり取りが郵便になる点です。次の順で進めると、出し直しが減ります。
- 管轄の家庭裁判所を調べる。亡くなった方の住民票の除票で最後の住所を確かめ、裁判所サイトの「申立書提出先一覧」で担当の家裁を探します。
- 申述書を手に入れる。裁判所のサイトの「相続の放棄の申述書(成人)」のページから、書式(PDF・Word)と記入例を入手できます。放棄する人が未成年のときは、未成年者用の書式を使います。
- 戸籍などを集める。放棄する人の立場(配偶者・子・親・兄弟姉妹)で、要る戸籍が変わります。下のチェックリストで確かめます。
- 収入印紙と郵便切手を用意する。収入印紙は1人につき800円分です。連絡用の郵便切手の額は、申述先の家裁の案内で確かめます。裁判所では売っていないので、郵便局などで先に買います。
- 申述書を書き、全部のコピーを取る。日中に連絡がつく電話番号(携帯電話でも可)を書いておきます(福岡家庭裁判所の注意事項)。「放棄の理由」欄の書き方は相続放棄の理由の書き方で説明しています。
- 封筒に入れて送る。切手と収入印紙は封筒に貼らず、中に入れます。送料の切手は別に貼ります。くわしくは下の「封筒の書き方と送り方」で説明します。
- 照会書に答え、受理通知書を受け取る。裁判所から書面で質問が届いたら、期日までに返送します。受理されると受理通知書が届きます。
郵送で同封する書類と費用のチェックリスト
封筒に入れるものは、全員に共通のものと、放棄する人の立場で変わるものに分かれます。裁判所の案内をもとに表にしました。
同じ方について家族が同時に出すときは、共通の書類は1通で足ります。戸籍の代わりに法定相続情報一覧図の写しを出せる場合もあり、使えるかどうかは申述先に確認します(裁判所)。一覧図の作り方は法定相続情報一覧図の取り方にまとめています。兄弟姉妹が放棄するときの戸籍の集め方は兄弟の相続放棄の必要書類で説明しています。
東京家庭裁判所の案内では、戸籍謄本などは原本の代わりにコピーを出してもかまわないとされています。ただし、裁判官の指示で原本を求められることがあります。ほかの家裁の扱いは、申述先の案内で確かめてください。
郵便料は、切手のほかに保管金で納める方法もあります
裁判所の案内では、連絡用の郵便料は郵便切手で納めるほか、保管金として納める方法もあります。郵送で切手を同封する場合は、申述先が示す額と組み合わせのとおりに用意します。使われなかった切手は、手続きが終わった後に返されます(福岡家庭裁判所の注意事項)。
封筒の書き方と送り方
先に結論です。表に管轄の家庭裁判所の住所と宛先、裏に自分の住所と氏名を書きます。申立てに使う切手と収入印紙は封筒に貼らず、中に入れます。送料は別に切手を貼ります。宛先の係の名前は裁判所ごとに違うため、申述先の案内のとおりに書きます。
送り方:届いたことを確かめたいなら、追跡できる方法で
福岡家庭裁判所は、郵便物が届いたかどうかの問い合わせには応じていないと案内しています。届いたことを確かめたいときは、レターパックや書留など、追跡できる送り方が向いています。送り方を指定している裁判所もあるため、方法は申述先の案内に従ってください。
- 送る前に、申述書と添付書類を全部コピーして手元に残します。照会書に答えるときにも役立ちます。
- 郵送は届くまでに日数がかかります。3か月の期限が近いときは早めに送り、心配なら申述先の家庭裁判所に電話で相談します。
- 提出後に、裁判所から書類の追加や切手の追加を指示されたら、その指示に従います。
3か月の数え方や、期限内に決められないときの期間の伸長(延長)は、相続放棄の期限3か月はいつから?で説明しています。
届いた後の流れ:照会書への回答と受理通知書
書類が届くと、家庭裁判所が中身を確かめます。裁判所は、判断のために書面で照会したり、事情を直接確かめたりすることがあります。裁判所からの照会や呼出しには必ず応じるよう案内されています(裁判所)。
受理されなかったときは、2週間以内であれば不服申立てができます(名古屋家庭裁判所の案内資料)。照会書の答え方に迷うときや、受理されなかったときは、司法書士や弁護士に相談してください。
ご家族の構成や財産で答えが変わるところは、30分の無料相談で、書類を見ながら一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。
郵送でつまずきやすい点
- 切手と印紙を封筒の表に貼ってしまう。申立てに使う切手と印紙は中に入れます。送料の切手だけを封筒に貼ります。
- 送料が足りない。書類が多いと重くなります。郵便局で量ってもらうと確実です。
- 届いたかを裁判所に電話で聞けばよいと思う。到着の問い合わせに応じない裁判所があります。追跡できる方法で送ると安心です。
- 照会書をそのままにする。期日までに返送しないと、手続きが進みません。
- 自分の住所の近くの家裁に送る。送り先は、亡くなった方の最後の住所地の家裁です。違う家裁に送ると、確認や出し直しで日数を失うおそれがあります。
今日できる一歩
管轄の家庭裁判所のページを開き、相続放棄の「連絡用の郵便切手」の額と、申立書の送り先(係の名前)をメモする。あわせて、裁判所のサイトから相続放棄の申述書と記入例を印刷しておきます。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
よくある質問
相続放棄は郵送だけで終わりますか
書類一式を郵送で出し、照会書も郵送で返し、受理通知書も郵送で届く流れが一般的です。ただし、裁判所が事情を直接確かめるために、呼出しや聴き取りをすることもあります。照会や呼出しには必ず応じてください。
相続放棄の郵送は書留でないとだめですか
送り方の決まりは裁判所の案内によります。福岡家庭裁判所は、郵便物の到着の問い合わせに応じていないため、届いたか確かめたい場合はレターパックなど追跡できる郵便を使うよう案内しています。迷うときは、申述先の家庭裁判所に確かめてください。
郵便切手はいくら分入れればよいですか
裁判所ごとに違います。名古屋家庭裁判所は550円分(110円×5枚)、東京家庭裁判所は440円分(110円×4枚)です(2026年10月時点の案内)。申述先の家庭裁判所の案内で、額と組み合わせを確かめます。
兄弟で同時に郵送するとき、戸籍は人数分要りますか
申述書と収入印紙800円は、放棄する人ごとに必要です。亡くなった方の戸籍など共通の書類は、同時に出すなら1通で足ります(裁判所)。
戸籍は原本ですか、コピーでもよいですか
東京家庭裁判所の案内では、戸籍謄本などはコピーでもかまわないとされています。ただし、裁判官の指示で原本を求められることがあります。ほかの家裁の扱いは、申述先の案内で確かめてください。
期限の3か月が近いです。郵送で間に合いますか
郵送は届くまでに日数がかかるため、できるだけ早く送ります。財産や借金の調べがつかず決められないときは、3か月のうちに同じ家庭裁判所へ期間の伸長(延長)を申し立てられます。期限が近いときは、申述先の家裁や専門家に早めに相談してください。
参考にした公的情報
- 裁判所「相続の放棄の申述」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html - 裁判所「相続の放棄の申述書(成人)」
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html - 裁判所「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kasai/index.html - 名古屋家庭裁判所「相続放棄の申述」案内資料
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/04kajibu/05/02souzokuhouki.pdf - 名古屋家庭裁判所「郵便切手及び予納金一覧(令和8年4月1日~)」
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/R8.4yuubinkitteoyobiyonoukinichiran.pdf - 東京家庭裁判所「相続の放棄の申述」案内(令和6年10月)
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/01NEW/kaji/17_houki_s.pdf - 福岡家庭裁判所「申立書等を郵便提出する際の注意事項」
https://www.courts.go.jp/fukuoka/vc-files/fukuoka/2022/R0407_FC_kaji/R0407_fc_00yubinteishutsu_ryuiten.pdf - e-Gov法令検索「民法」(915条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。送り先、郵便切手の額、送り方の指定、必要書類は家庭裁判所ごとに異なり、変わることがあります。実際に送る前に、申述先の家庭裁判所の案内をご確認ください。期限が迫っている場合や事情が複雑な場合は、司法書士・弁護士にご相談ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
