親が「お墓は建てずに、納骨堂でいい」と言い出した。見学に行くと、ロッカーのような棚から、カードで遺骨が運ばれてくる建物まであって、値段の幅に驚いた。納骨堂を考え始めた家族が、まず迷うのはお金のことです。
この記事では、納骨堂の費用を「最初に払うお金」「毎年のお金」「最後にかかるお金」に分けて整理します。公営の納骨堂の料金例、誰が払うのか、納骨堂じまいの費用、相続税での扱いまで、2026年10月時点の公的な情報をもとにまとめました。
納骨堂じまいの費用は、取り出しや解約の手数料、お布施(お寺なら離檀料)、改葬許可の手数料、移す先の費用の合計です。いちばん大きくなりやすいのは、移す先の費用です。
先に結論:納骨堂の費用は「最初・毎年・最後」の3つで見ます
この記事の結論
- いくら:最初の費用は施設と種類で大きく変わります。公営の例では、横浜市の自動搬送式が使用料48万4,000円(30年)と管理料が年9,900円です。民間の施設は、同じ種類でも場所や広さで大きく変わります。
- 毎年:年間管理費がかかる施設と、最初にまとめて払う施設があります。使用期間が終わったあとの扱い(更新か合葬か)も、費用に直結します。
- 誰が・税金:払うのは契約した人(使用者)で、亡くなった後は引き継いだ人です。親が生前に買った納骨堂には相続税がかかりません。亡くなった後に買った費用は、遺産から差し引けません。
お墓全体の選び方(墓じまい・樹木葬・散骨との比較)は、墓じまい・樹木葬・散骨の違いと費用にまとめています。この記事は納骨堂のお金に絞ります。
納骨堂の種類別の費用の考え方(ロッカー式・仏壇式・自動搬送式など)
納骨堂は、建物の中に遺骨を納める施設です。値段を決めるのは、主に「1区画の広さ」「何人分入るか」「使える期間」「場所」の4つです。種類ごとの特徴と、費用の考え方は次のとおりです。
公営の納骨堂の料金例
料金をはっきり公表しているのは、市町村が運営する公営の納骨堂です。民間の施設を比べるときの「ものさし」になります。
出典:横浜市記者発表資料(令和8年6月30日)、熊本市「市営納骨堂」、岡山市「市営納骨堂」、鹿児島市「市営納骨堂について」。確認時点:2026年10月。
民間の納骨堂は、公表された一律の相場はありません。公営の料金を「ものさし」にして、見積もりの使用料・管理費・期間を比べると判断しやすくなります。
永代供養料と年間管理費:「年間いくら」かかるか
納骨堂の請求書には、似た名前の費用が並びます。どれが一度きりで、どれが毎年かを分けて見るのがコツです。
- 使用料(永代使用料):区画を使う権利の代金です。最初に一度払います。「永代」とあっても、使える期間が決まっている施設が多くあります。
- 永代供養料:お寺や霊園が、家族に代わって供養と管理を続けるための費用です。使用料に含まれる施設もあります。
- 年間管理費:建物や設備を保つための費用で、毎年かかります。最初にまとめて前払いする方式の施設もあります。
- そのほか:銘板(名前を刻む板)の彫刻料、納骨のときの読経のお礼、追加で遺骨を納めるときの手数料など。
30年使ったときの合計で比べる
横浜市の自動搬送式で計算すると、使用料48万4,000円に、管理料9,900円×30年=29万7,000円が加わります。30年の合計は78万1,000円です。最初の値段が安く見えても、年間管理費が高い施設は、長く使うほど差が開きます。見積もりは「使う予定の年数の合計」で比べると、比べやすくなります。
期限が来たら・管理費を払わなかったら
使用期間が終わると、更新するか、合葬墓に移すのが一般的です。熊本市の家族納骨壇は、10年ごとに更新の手続きをします。民間では、年間管理費の支払いが長く途絶えると、使用の許可を取り消して合葬すると規約で決めている施設もあります。合葬された遺骨は、あとから取り出せないのが一般的です。契約前に、期限後と滞納時の扱いを規約で確かめます。
納骨堂の費用は誰が払う?相続税で差し引けるか
納骨堂の費用を払うのは、施設と契約した「使用者(名義人)」です。親が生前に契約したなら親、子が契約したなら子が払います。名義人が亡くなった後は、名義を引き継いだ人が年間管理費などを払います。
お墓や仏壇は、法律上「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、ふつうの遺産とは分けて扱います。引き継ぐのは、供養を中心になって行う人(祭祀承継者)です(民法897条)。納骨堂の名義変更の条件は、施設の規約で決まっています。
相続税での扱い:納骨堂は非課税、納骨の費用は差し引ける
- 納骨堂そのもの:国税庁は、墓地や墓石、仏壇、仏具など日常礼拝している物には相続税がかからないとしています。親が生前に買った納骨堂は、遺産に入りません。
- 亡くなった後の納骨堂の購入費:「墓石や墓地の買入れのためにかかった費用」は葬式費用に含まれず、遺産から差し引けません。納骨堂の購入費も同じ考え方です。
- 納骨にかかった費用:国税庁は「火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用」を、差し引ける葬式費用に挙げています。
- 法事の費用:初七日など法事の費用は差し引けません。
どの支払いが「納骨の費用」に当たるかは、中身で判断されます。領収書は、使用料・管理費・納骨の読経料などに分けてもらうと整理しやすくなります。納骨費用の扱いと、遺産から払うときの手順は納骨費用は相続税から差し引ける?で詳しく扱っています。
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契約から納骨までの手順と必要書類
- 家族で条件を決める。何人分入れたいか、何年使いたいか、宗派の条件を気にするか、お参りに通える距離かを話します。
- 公営の募集を確かめる。住んでいる市町村に公営の納骨堂があるか、募集の時期と住所の条件を調べます。
- 2〜3か所を見学し、見積もりをもらう。使用料・管理費・期限後の扱いを書面でもらい、30年などの合計で比べます。
- 規約を読んでから契約する。名義人、名義変更、解約したときの返金の有無を確かめます。
- 納骨の日を決めて納める。施設に埋葬許可証などの書類を出して納骨します。
必要なものチェックリスト
- □ 火葬済みの印が押された火葬許可証(埋葬許可証)
- □ 契約書・使用許可証(施設が発行するもの)
- □ 契約する人の本人確認書類と印鑑
- □ 公営の場合は住民票など、申込の条件を示す書類
- □ ほかのお墓から移すときは改葬許可証
- □ 見積書と規約の写し(費用の内訳、期限後の扱いが書かれたもの)
火葬許可証と埋葬許可証の関係や、なくしたときの再発行は埋葬許可証とはで確認できます。必要な書類は施設ごとに違うので、契約前に一覧をもらっておきます。
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納骨堂じまいの費用の内訳と手順
納骨堂じまいは、納骨堂から遺骨を取り出して契約を終え、別の場所へ移すことです。先に結論です。費用は「今の納骨堂を出るお金」と「移す先のお金」の合計で考えます。お墓と違って墓石を片付ける工事がない分、出るお金は抑えやすい傾向です。全体の額を左右するのは、移す先の費用です。
| 費用の項目 | 払う先 | 金額の考え方 |
|---|---|---|
| 取り出し・解約の手数料 | 今の納骨堂 | 施設の規約で決まります。かからない施設もあります |
| 閉眼供養のお布施 | お寺(読経を頼む場合) | 決まった額はありません。頼まない場合はかかりません |
| 離檀料 | お寺(寺院の納骨堂で檀家をやめる場合) | 檀家をやめるときに、お礼として慣習的に包むお布施です。明確な基準はありません |
| 改葬許可の手数料 | 今の納骨堂がある市町村 | 無料の市町村と、有料の市町村があります |
| 移す先の費用 | 新しい納骨先 | 公営の例で、合葬式なら約12万円(横浜市・1体分60年)、個別の納骨堂なら16万〜78万円ほど(鹿児島市・岡山市・横浜市などの例。期間や管理料で変わる) |
移す先の金額は、この記事の「公営の納骨堂の料金例」の表をもとにした幅です。民間の施設や散骨などは、見積もりで確かめてください。
離檀料は「求められたら払う決まり」ではありません
国民生活センターは、離檀料を「檀家をやめるときに寺へのお礼として慣習的に支払われるお布施」と説明しています。金額に明確な基準はありません。墓じまいで数百万円の離檀料を求められたという相談も寄せられています。
- まず家族や親族で話し合い、移す先を決めてからお寺に相談します。
- 改葬許可には、今の納骨堂の管理者の証明(申請書への記名押印か収蔵証明書)が要ります。お寺と話し合わずに進めることはできません。
- 金額に納得できないときは、住んでいる自治体の消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談できます。
檀家にならずに使っている納骨堂なら、離檀料はかかりません。解約と取り出しの手続きは、契約時の規約に沿って進めます。費用の項目ごとの中身は次のとおりです。
- 取り出しや解約の手数料:施設の規約で決まります。かからない施設もあります。
- 閉眼供養のお礼:取り出す前に読経をお願いする場合のお布施です。包み方はお布施の書き方を参考にしてください。
- 改葬許可の手数料:無料の市町村と、有料の市町村があります。
- 新しい納骨先の費用:いちばん大きくなりやすい部分です。公営の合葬式なら、横浜市の例で1体分の使用料と管理料の合計が12万1,000円(60年)です。
途中で解約しても、払った使用料が戻らない規約の施設は少なくありません。返金の有無と、年の途中で解約したときの管理費の扱いを先に確かめます。
遺骨をほかへ移すときの手順
- 新しい納骨先を決める。受け入れの証明が必要か、新しい納骨先と市町村に確かめます。
- 今の納骨堂の管理者に証明をもらう。改葬許可申請書への記名押印か、収蔵証明書を出してもらいます。
- 納骨堂がある市町村に改葬許可を申請する。名古屋市では保健所長が許可を出し、郵送か区の保健センターで受け付けています。使用者以外が出すときは委任状が要ります。
- 遺骨を取り出し、新しい納骨先に納める。改葬許可証を新しい納骨先に出します。
改葬許可を受けずに遺骨を別のお墓や納骨堂へ移すことはできません(墓地、埋葬等に関する法律)。手続きの順番を逆にしないことが大切です。
お墓を閉じて遺骨を納骨堂などへ移す場合の行き先の比べ方や、骨壺が何体分あるかの確かめ方は、墓じまいの遺骨はどうする?行き先7つの比較と処分・散骨の決まりにまとめています。
納骨堂の費用で損しやすい点
- 「永代」を「ずっと個別に置ける」と思い込む。期限の後は合葬になる施設があります。何年たったら合葬かを確かめます。
- 最初の値段だけで比べる。年間管理費が高いと、30年で大きな差になります。合計で比べます。
- 何人分入るかを確かめない。夫婦で入るつもりでも1人用だと、追加の区画や費用が要ります。
- 名義人を高齢の親だけにしておく。親が亡くなった後に名義変更の書類が要ります。引き継ぐ人を家族で決めておきます。
- 相続税を減らすつもりで高額な区画を選ぶ。生前に買えば非課税ですが、使わない区画まで買うのは家族の負担になります。
- 領収書をまとめてもらう。納骨の費用と購入費が一緒だと、相続税の申告で分けにくくなります。
相続税の申告が必要な場合、期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。過ぎると加算税などがかかることがあるため、納骨の領収書は早めに整理しておきます。
今日できる一歩
住んでいる市町村のホームページで「納骨堂」と検索し、公営の納骨堂があるか、次の募集はいつかを確かめてみてください。公営の料金を一つ知っておくと、民間の見積もりが高いか安いか判断しやすくなります。
よくある質問
納骨堂の年間管理費は、だいたいいくらですか
施設によって違い、決まった相場はありません。公営の例では、横浜市の自動搬送式が年9,900円、岡山市の灘崎納骨堂が年2,090円です。管理費がない代わりに、最初にまとめて払う施設もあります。
年間管理費を払っていた親が亡くなったら、どうなりますか
名義を引き継ぐ人を決めて、施設に名義変更を申し出ます。引き継いだ人がその後の管理費を払います。申し出が遅れて支払いが止まると、規約によっては合葬に移されることがあります。
納骨堂の費用を、親の預金から払ってもいいですか
親が生前に自分で契約し、自分の預金から払うのは問題ありません。亡くなった後に遺産から払うときは、ほかの相続人の了解をとり、領収書を残しておくと後でもめにくくなります。
生前に納骨堂を買うと、相続税の節税になりますか
生前に買った納骨堂には相続税がかからないため、その分の現金が遺産から減ります。ただし、投資目的などは対象外です。実際に税額がどう変わるかは、税理士や税務署にご確認ください。
納骨堂じまいの費用は、全部でいくらかかりますか
決まった相場はなく、「今の納骨堂を出るお金」と「移す先のお金」の合計で決まります。出るお金は、取り出しや解約の手数料、お布施、改葬許可の手数料です。移す先は、公営の例で合葬式なら約12万円、個別の納骨堂なら16万〜78万円ほどです。お寺の納骨堂で檀家をやめる場合は離檀料の話が出ますが、明確な基準はありません。
納骨堂じまいに、改葬許可は必ず要りますか
遺骨をほかのお墓や納骨堂に移すときは必要です。申請先は、今の納骨堂がある市町村です。手数料や書式は市町村で違うので、ホームページで確かめます。
参考にした公的情報
- 横浜市「令和8年度 市営墓地(舞岡しぜん墓園・日野こもれび納骨堂)の使用者募集」記者発表資料(令和8年6月30日)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/saijo/shiyoushaboshu.html - 熊本市「市営納骨堂」
https://www.city.kumamoto.jp/kiji0031320/index.html - 岡山市「市営納骨堂」
https://www.city.okayama.jp/shisei/0000063289.html - 国税庁 タックスアンサーNo.4129「相続財産から控除できる葬式費用」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.4108「相続税がかからない財産」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm - 名古屋市「改葬許可申請」
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/eisei/1011432/1011619.html - 独立行政法人国民生活センター「見守り新鮮情報」第424号(2022年6月28日、牛久市ホームページ掲載)
https://www.city.ushiku.lg.jp/data/doc/1659485046_doc_340_0.pdf
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報などをもとにした一般的な整理です。納骨堂の料金、使用期間、規約は施設ごとに異なり、公営の料金は年度で変わることがあります。特定の施設や事業者をおすすめするものではありません。契約の前に、施設の料金表と規約でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
