平日の昼間は仕事で、役所の窓口に行けない。本籍地は遠く、郵送で請求すると何度もやりとりが要りそうだ。そんなとき、マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、家から戸籍謄本を請求できる市区町村があります。
ただし、どの市区町村でも使えるわけではありません。手数料や支払い方法、請求できる戸籍の範囲も市区町村で違います。この記事では、2026年10月8日時点の公式の案内をもとに、手順と料金、届くまでの目安を整理します。「電子の戸籍証明書提供用識別符号」との違いも説明します。
この記事の結論
- マイナポータルなどから戸籍謄本を請求できるかは、本籍地の市区町村しだいです。マイナポータルの「手続の検索」に市区町村名を入れて、手続きが出てくるかで調べます。
- 届くのは紙の戸籍謄本で、受け取りは郵送が基本です。PDFやスマホの画面では受け取れません。手数料は戸籍謄本1通450円の市区町村が多く、郵送料や支払い方法は市区町村で違います。
- 「識別符号(電子戸籍パス)」は、紙の戸籍謄本の代わりに手続きで使う16桁の番号です。パスポートの申請など、対象の手続きでしか使えません。
オンラインでできることは2種類ある
「戸籍のオンライン請求」には、似ていて中身が違う2つがあります。ここを取り違えると、必要なものが手に入りません。
相続や年金の手続きで「戸籍謄本を出してください」と言われた場合は、左側の紙の戸籍謄本が必要です。右側の識別符号は、書類の代わりに使える手続きが決まっています。後ろの章でくわしく説明します。
対応している市区町村の調べ方
戸籍謄本を請求するのは、「本籍地」の市区町村です。住んでいる場所ではありません。本籍地がわからない方は、本籍の調べ方を先に確認してください。
オンラインで請求できるかどうかは、マイナポータルで確かめられます。マイナポータルの案内によると、手順は次のとおりです。
- マイナポータルの「手続の検索」を開きます
- 「注目」の欄にある「証明書」を選びます
- 本籍地の市区町村名を入力して、戸籍に関する手続きが出てくるか確かめます
手続きが出てこなければ、その市区町村はマイナポータルからの電子申請を受け付けていない可能性があります。その場合は、市区町村の窓口、コンビニ交付、郵送での請求になります。コンビニ交付のしくみは亡くなった人の戸籍謄本はコンビニで取れる?でまとめています。
なお、申請の入り口は市区町村によって違います。札幌市のように、マイナポータルとは別の専用の申請画面から手続きする例もあります。本籍地の市区町村のホームページで、戸籍証明書の「オンライン申請」「電子申請」のページを探してください。
申請に必要なもの
名古屋市、札幌市、千葉市の案内にある、主な必要物は次のとおりです。
- 署名用電子証明書が入っているマイナンバーカード。有効期限は発行から5年で、切れていると使えません(名古屋市の案内)
- 署名用電子証明書の暗証番号。6桁から16桁の英数字で、4桁の数字とは別のものです
- マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン。無料の専用アプリが要る場合は、申請画面から入れられます
- 手数料を払うための決済手段。クレジットカードが基本で、市区町村によっては電子マネーも使えます
- メールを受け取れる環境。申請完了や、証明書を郵送したときの連絡が届きます
署名用電子証明書の暗証番号を忘れた、またはロックされた場合は、コンビニ等で再設定できると名古屋市は案内しています。申請の前に、カードの電子証明書が有効かどうかも確かめておくと、途中で止まりません。
申請の流れ(札幌市の例)
画面や順番は市区町村で少しずつ違います。札幌市の案内にある流れは、次の5つです。
- 申請画面でアカウントを登録する
- 申請する人の情報と、請求する戸籍の情報を入力する。本籍地と筆頭者の氏名は必ず入力する
- マイナンバーカードを読み取り、電子署名で本人確認をする
- 手数料をクレジットカードで支払う
- 内容を確認して申請を完了する。完了のメールが届く
入力で使う「本籍」と「筆頭者」は、戸籍を特定する大事な情報です。わからないまま進めると、申請が差し戻されることがあります。名古屋市の案内でも、申請内容に不備があると差し戻され、内容を電話で確認することがあるとされています。事前に住民票(本籍記載あり)などで確かめておくと安心です。
手数料と支払い方法:3つの市の例
戸籍謄本1通の手数料は、3つの市とも450円でした。ただし、郵送料と支払い方法は市ごとに違います。3つの市の案内を並べました。
千葉市では、決済のURLがマイナポータルに届いてから15日以内に支払う必要があり、支払い後の返金はできません。申請を出す前に、請求する戸籍と通数に間違いがないかを確かめてください。
札幌市の案内には、急ぐ場合はマイナンバーカードでのコンビニ交付(1通250円)も使えると書かれています。コンビニ交付は、本籍地の市区町村が対応している場合に限り使えます。金額も市区町村で違うため、本籍地の案内で確認してください。
届くまでの日数の目安
オンラインで頼んでも、その場では受け取れません。公式の案内にある日数は、市区町村でばらつきがあります。
- 千葉市:申請の受付は翌営業日。手数料の納付を確認してから、3営業日以内に発送します。配達にかかる日数は案内にありません
- 名古屋市:受け付けの処理に、1週間から10日程度かかることがあります。休庁日は処理されません
- 札幌市:日数の記載はありません。速達には対応していません
証明書は、住民登録のある住所に郵送されるのが一般的です。札幌市は、住民登録地以外への郵送はオンラインでは対応していないとしています。引っ越し直後で住民票の住所が古いままの方は、受け取れないことがないよう注意してください。
提出の期限が決まっている手続きでは、申請から1週間以上かかる前提で動くのが安全です。急ぐときは、窓口やコンビニ交付のほうが早く手に入ることがあります。
オンラインでは頼めないもの、できないこと
オンライン請求には、次のような制限があります。相続の手続きで戸籍を集める方は、特に確認してください。
- 代理人や第三者からの申請は、名古屋市と札幌市の案内では対象外です
- 請求できるのは、その市区町村に本籍がある方の戸籍です。本籍地が対応していなければ、他の市区町村から取ることはできません
- 除籍や改製原戸籍を請求できるかは、市区町村で違います(上の表のとおり)
- 別々の申請ページにある証明書は、まとめて申請できないことがあります。名古屋市では、住民票の写しと戸籍の証明書は別々の申請です
亡くなった親の「出生から死亡までの戸籍」を集めたい場合は、古い除籍や改製原戸籍が必要になることが多くあります。オンライン請求は、現在の戸籍を1通ほしいときには便利です。連続した戸籍を何か所からも集めるなら、窓口の「広域交付」や郵送請求のほうが向く場面があります。くわしくは戸籍の広域交付の使い方と除籍謄本・改製原戸籍の取り方をご覧ください。
広域交付は、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を請求できる制度です。法務省の案内では、請求できるのは本人、配偶者、直系の親族で、郵送や代理人による請求はできません。窓口に本人が行き、顔写真つきの身分証明書を見せる必要があります。
電子の識別符号(電子戸籍パス)とは
「戸籍電子証明書提供用識別符号」は、法務省が「電子戸籍パス」と呼んでいる番号です。戸籍証明書と一対になった、数字16桁のパスワードです。
手続きのときにこの番号を示すと、申請先の行政機関が電子の戸籍証明書を確認します。その分、紙の戸籍謄本を出さなくて済みます。法務省の案内(2026年2月2日現在)にある、使える手続きは次のとおりです。
- 外務省:パスポートの申請
- 在外公館:身分関係事項などの証明
- 国家公安委員会:運転免許の本籍情報の変更(マイナ免許証のみを持つ方)
- 法務省:所有不動産記録証明制度、相続人申告登記
取得できるのは次のとおりです。
- マイナポータルでは、本人(15歳以上)だけが、無料で取得できます
- 市区町村の窓口や郵送でも取得できますが、有料です。ただし、戸籍証明書を同時に取る場合は無料になります。金額は市区町村に確認が必要です
- 有効期限は発行から3か月です。期限内なら、複数の手続きに使えます
- 除籍(転籍前などの戸籍)の識別符号は、マイナポータルでは取得できません。市区町村の窓口で取得します
マイナポータルでの取得は、「さがす」から「証明書」を選び、「戸籍電子証明書提供用識別符号の取得手続き」へ進みます。マイナンバーカードで本人情報を読み取り、本籍と筆頭者の氏名を確認して、電子署名をして送信します。完了したあと、申請状況の詳細画面で番号を確認できます。15歳未満の方は本人では申請できず、同じ戸籍にいる15歳以上の方が取得した番号を使います。
注意点が3つあります。ひとつは、この番号がマイナンバー(個人番号)とは無関係なことです。戸籍ごとに発行される一時的なパスワードです。ふたつめは、申請した本人でも、番号に対応する戸籍の中身は見られないことです。みっつめは、パスポートをマイナポータルから申請する場合、戸籍の情報が自動で連携されるため、自分で番号を取る必要がない場合があることです。
相続人申告登記は、法務局での手続きです。必要な書類や、識別符号を使える場面は手続きによって違います。登記の中身は、法務局か司法書士にご確認ください。
よくある質問
Q1 PDFやスマホの画面で、戸籍謄本を受け取れますか。
受け取れません。マイナポータルの案内では、マイナポータル上でPDFなどの電子ファイルとして取得することはできず、主に郵送で書面を受け取るとされています。
Q2 亡くなった親の戸籍謄本も、オンラインで請求できますか。
市区町村によります。千葉市のように、本人、配偶者、直系の親・子・孫に請求を認めている例もあります。一方で、名古屋市や札幌市は除籍の請求ができません。亡くなった方の戸籍は除籍になっていることが多いため、本籍地の案内で請求できる戸籍の種類を確認してください。
Q3 本籍地が遠方です。住んでいる市区町村のサービスで請求できますか。
オンライン請求は、本籍地の市区町村のサービスを使います。本籍地が対応していない場合は、郵送請求のほか、住んでいる市区町村の窓口での広域交付が候補です。広域交付は窓口での請求に限られます。
Q4 申請の途中で、暗証番号がロックされました。
署名用電子証明書の暗証番号は、再設定の手続きが要ります。名古屋市の案内では、コンビニ等で再設定できるとされています。
Q5 識別符号を取れば、銀行や保険会社への提出に使えますか。
法務省の案内にある対象の手続きは、この記事の「電子の識別符号とは」の章にあげたものです。銀行や保険会社への提出は、対象として案内されていません。提出先から紙の戸籍謄本を求められたら、書面を請求してください。
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参考にした公的情報
- マイナポータル よくある質問「マイナポータルで戸籍謄本(全部事項証明書)や住民票を取得できますか。」 https://faq.myna.go.jp/faq/show/8044?category_id=18&site_domain=default
- 名古屋市「電子申請サービスによる請求」 https://www.city.nagoya.jp/kurashi/todokede/tetsuzuki/1007862.html
- 札幌市「戸籍証明書のオンライン請求」 https://www.city.sapporo.jp/shimin/koseki/shomei/online3.html
- 千葉市「各種証明書のオンライン交付申請(ぴったりサービス)」 https://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kusei/online-syoumeisyo.html
- 法務省「電子戸籍とは」 https://www.moj.go.jp/MINJI/denshikoseki/index.html
- マイナポータル操作マニュアル「戸籍電子証明書提供用識別符号の取得申請」 https://img.myna.go.jp/manual/03-10/0236.html
※本記事は2026年10月8日時点の、各市区町村・法務省・マイナポータルの公開情報にもとづく一般的な情報です。手数料、支払い方法、請求できる戸籍の範囲は市区町村で異なり、変更されることがあります。申請の前に、本籍地の市区町村の案内をご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
