小規模宅地等の特例と二次相続【2026年】同居の子・家なき子の要件早見表

父が亡くなって数年。母はいま実家で一人暮らしで、子どもはそれぞれ別の家に住んでいる。そんなご家族が次に気になるのが「母の相続のとき、実家の土地はどう評価されるのか」です。

自宅の土地の評価を大きく下げる「小規模宅地等の特例」は、親の片方が亡くなったとき(一次相続)と、残った親が亡くなったとき(二次相続)で、使える人の条件が変わります。この記事では、同居の子と別居の子(いわゆる家なき子)の要件、実家をどうするかで変わる点、申告が必要なことを、2026年10月時点の国税庁の案内で整理します。

目次

先に結論:二次相続では「誰が実家を継ぐか」で決まります

この記事の結論

  1. 使える人:二次相続では配偶者がいないため、親と同居していた子か、条件を満たす別居の子(家なき子)が実家の土地を取得したときに使えます。
  2. 家なき子の条件:親と同居していた相続人がいないこと、相続前3年以内に自分や配偶者などの持ち家に住んでいないこと、などをすべて満たす必要があります。
  3. 申告が前提:特例で税金が0円になる場合でも、相続税の申告書を出さないと使えません。期限は原則10か月です。

二次相続全体の流れ(税金・預金・認知症への備え)は、二次相続とは?親の一人が亡くなったら確かめる5つにまとめています。この記事は、実家の土地の特例に絞ります。

小規模宅地等の特例とは:一次相続と二次相続の違い

亡くなった人が住んでいた家の土地を、決まった親族が受け継ぐと、相続税の計算で土地の評価額を下げられる制度です。自宅の土地の場合、330㎡までの部分が80%減額されます。

土地の種類減額される面積の上限減額の割合
自宅の土地(特定居住用宅地等)330㎡80%
お店・工場などの事業用の土地400㎡80%
アパート・駐車場など貸している土地200㎡50%
※貸している土地と他の土地を組み合わせるときは、面積の計算に調整があります。
出典:国税庁タックスアンサーNo.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月確認)。

たとえば、自宅の土地が200㎡で評価額4,000万円なら、80%の3,200万円が減り、800万円として計算します(仮の例です)。二次相続の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、子2人なら4,200万円です。土地の評価が下がると、基礎控除の内に収まるご家庭も出てきます。基礎控除の早見表は相続税はいくらから?基礎控除の早見表をご覧ください。

一次相続で残った親が実家を取得した場合、配偶者には住み続けるなどの条件がありません。ところが二次相続では配偶者がいないので、受け継ぐ子に条件がかかります。ここが一番の違いです。一次相続で実家を誰の名義にするかは、一次相続の分け方で二次相続の税金は変わるで、税金の一般例とあわせて扱っています。

対象になる人・ならない人の早見表

親が一人で住んでいた実家の土地を、子が相続する場面を想定した表です。

取得する子使えるか主な条件
親と同じ家に住んでいた子使える亡くなる直前から申告期限まで住み続け、申告期限まで土地を持ち続ける
別居で、賃貸住まいの子条件次第で使える(家なき子)次の章の6つの条件をすべて満たす
別居で、持ち家に住む子原則使えない相続前3年以内に自分や配偶者の持ち家に住んでいると対象外
別居の子(同居のきょうだいがいる)使えない同居していた相続人がいると、別居の子は家なき子になれない
申告期限前に売る・手放す子使えない同居の子も家なき子も、申告期限まで持ち続けることが条件
二世帯住宅に住んでいた子登記の仕方で変わる区分所有の登記がされた建物は、親が住んでいた部分に限って判定
出典:国税庁タックスアンサーNo.4124(2026年10月確認)。実際に使えるかは、ご家族の住まいの経緯で変わります。個別の判断は税理士にご確認ください。

家なき子の6つの条件と、親が老人ホームにいた場合

別居の子が使うには、次の6つをすべて満たす必要があります(平成30年の見直し後の要件)。

  • □ 亡くなった親に、配偶者がいない(二次相続なら通常は満たします)
  • □ 親と同居していた相続人がいない(相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして数えます)
  • □ 相続前3年以内に、自分・自分の配偶者・3親等内の親族(たとえば配偶者の親)・特別の関係がある法人が持つ家に住んだことがない(亡くなった親の家は除く)
  • □ 相続のときに住んでいる家を、過去に一度も自分で持ったことがない
  • □ 相続のときから申告期限まで、その土地を持ち続ける
  • □ 海外に住む日本国籍のない人など、一定の人に当たらない

3つ目のうち親族や法人が持つ家の部分と、4つ目は、以前の要件にはなかった点です。自分の家を子や配偶者の親に売って、そこに賃貸で住み続けるような形は対象外になりました。「今は賃貸だから大丈夫」と思っていても、3年以内の住まいの経緯で外れることがあります。

親が老人ホームに入っていた場合

親が施設に入り、実家が空いたまま亡くなることもあります。国税庁の案内では、次の場合は、施設に入る直前まで住んでいた実家を「親が住んでいた家」として扱います。

  • 要介護・要支援の認定を受けていた(認定の有無は、亡くなる直前の時点で見ます)
  • 入っていたのが、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、認知症のグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの決められた施設
  • 空いた実家を、お店などの事業に使ったり、生計を一にしていない人に新しく住ませたりしていない

要介護認定の申請中に亡くなり、後から認定が出た場合も、認定を受けていた人として扱ってよいとする国税庁の回答があります。施設に入った後に実家を人に貸すと、使えなくなる可能性があります。貸す前に税理士に相談してください。

実家をどうするかで変わる点

二次相続の後、実家に住むのか、売るのか、貸すのか。特例との関係で見ると、次のように整理できます。

実家の行方特例との関係確かめること
同居の子が住み続ける申告期限まで住み、持ち続ければ対象期限前に引っ越す予定がないか
別居の子が取得して持っておく家なき子の6条件を満たせば対象3年以内の住まい、同居の相続人の有無
売る申告期限より前に売ると対象外売る時期。売ったときの所得税の特例は別の制度
人に貸す取得する人と時期によって扱いが変わる貸し始める前に税理士に確認
きょうだいで共有にする条件を満たす人の持分だけが対象誰が条件を満たすか、後の売却の話し合い
出典:国税庁タックスアンサーNo.4124をもとに整理(2026年10月確認)。売ったときの所得税は、国税庁タックスアンサーNo.3306(被相続人の居住用財産〔空き家〕を売ったときの特例)などの別の制度で判断します。

親が元気なうちに子が同居を始めるかどうかは、税金だけでなく暮らし全体の話です。同居を考えるときの決めごとは親との同居を始める前に決めておくことにまとめています。特例のためだけに住まいを動かすかどうかは、暮らしへの影響も含めて慎重に考えたいところです。

親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

申告の手順・必要書類と期限

この特例は、相続税の申告書を出して初めて使えます。特例で税金が0円になる場合でも、申告書の提出が必要です。

  1. 実家の土地の面積と評価の目安を確かめる。固定資産税の課税明細書や登記事項証明書で面積を見ます。
  2. 誰が取得すれば条件を満たすかを整理する。同居の有無、別居の子の3年以内の住まいを書き出します。
  3. 遺産分割の話し合いをまとめる。原則として申告期限までに分割が済んでいることが条件です。相続人が複数いる場合は、特例を使う土地の選び方に全員の同意が必要です。
  4. 申告書に特例を使う旨を書き、決められた書類を添える。計算は税理士に相談するのが一般的です。
  5. 申告期限まで、住み続ける・持ち続ける。期限前に売ったり引っ越したりしないようにします。

そろえる書類のチェックリスト(一般的な例)

  • □ 遺産分割協議書の写し(遺言書があればその写し)
  • □ 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押したもの)
  • □ 戸籍謄本や法定相続情報一覧図の写しなど、相続人がわかる書類
  • □ 実家の登記事項証明書、固定資産税の課税明細書
  • □ 家なき子の場合:相続前3年以内の住所がわかる書類(マイナンバーがあれば提出不要)、その間に住んだ家が自分や親族などの持ち家でないことを示す書類、今の家を過去に持っていないことを示す書類(賃貸借契約書など)
  • □ 親が施設に入っていた場合:亡くなった親の戸籍の附票の写し(亡くなった日以後に作ったもの)、介護保険の被保険者証の写しなど要介護認定がわかる書類、施設の入所契約書の写しなど施設の名称・所在地・種類がわかる書類

同居の子が使う場合は、その家に住んでいることがわかる書類も求められます(マイナンバーがあれば提出不要)。必要な書類はご家族の状況で変わります。国税庁の「相続税の申告のしかた」や、申告を頼む税理士の案内で確かめてください。

期限と、間に合わなかったとき

場面期限過ぎたら
相続税の申告・納税亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内延滞税や加算税がかかることがあります
期限までに分け方が決まらない期限内に、特例を使わない形で申告。「申告期限後3年以内の分割見込書」を添える分割が決まらなくても申告期限は延びません
申告期限から3年以内に分割できた分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求払い過ぎた税金を戻してもらう機会を逃します
裁判などで3年以内に分割できない「やむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、3年を過ぎた日の翌日から2か月以内に提出承認がないと、後から特例を使えなくなります
出典:国税庁タックスアンサーNo.4124・No.4208、国税庁「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」(2026年10月確認)。

10か月の数え方や、遅れたときの税金は相続税の申告期限10か月の数え方で詳しく扱っています。

損しやすい点

  • 「税金が0円だから申告しない」。特例は申告して初めて使えます。申告しないと、特例なしの評価で税金がかかる場合があります。
  • 申告期限前に実家を売る。買い手が早く見つかっても、期限前に手放すと特例は使えません。
  • 同居のきょうだいがいるのに、別居の子が実家を取得する。この場合、別居の子は家なき子になれません。
  • 過去の持ち家を見落とす。3年以内に自分や配偶者の持ち家に住んでいた、今の家を以前は自分で持っていた、といった経緯で外れます。
  • 話し合いが長引く。分け方が決まらないと、期限内の申告では特例が使えず、いったん多めに納めることになります。
  • 施設に入った後に実家を貸す。事業に使ったり、生計が別の人を住ませたりすると、対象から外れることがあります。

ご家族の構成や財産で答えが変わるところは、30分の無料相談で、通帳や書類を見ながら一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。

今日できる一歩

  1. 実家の固定資産税の課税明細書を出し、土地の面積を確かめる。
  2. 子それぞれの「この3年の住まい」と「持ち家かどうか」を紙に書き出す。
  3. 残った親が施設に入る可能性があれば、介護保険の被保険者証の置き場所を家族で共有する。

よくある質問

一次相続で母が特例を使いました。二次相続でも使えますか

特例は相続ごとに判定します。一次相続で使っていても、二次相続で取得する子が条件を満たせば使えます。逆に、一次相続で使えたからといって、二次相続でも使えるとは限りません。

兄は母と同居、私は別居で賃貸です。私が実家を取得したら使えますか

母と同居していた相続人(兄)がいるため、あなたは家なき子の条件を満たしません。同居していた兄が取得し、申告期限まで住み続けて持ち続ければ、兄の取得分は対象になります。

会社の社宅に住んでいます。家なき子になれますか

条件で外れるのは、自分・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人が持つ家です。一般の勤務先の社宅なら、この条件には当たらないことが多いと考えられます。ただし、家族が経営する会社の社宅などは外れる場合があります。個別には税理士に確認してください。

特例を使えば相続税が0円になります。申告しなくてよいですか

いいえ。特例を使うには、申告書に特例を使う旨を書き、決められた書類を添えて提出する必要があります。期限は原則10か月です。

実家を早く売りたいのですが、どうすればいいですか

申告期限より前に売ると、この特例は使えません。特例を使うかどうかで税額が変わるため、売る時期は税理士に相談してから決めるのが安心です。売ったときの所得税には、空き家を売ったときの特例など別の制度があり、条件も別に確かめます。

小規模宅地等の特例の要件を、取得する人ごとにまとめると?

自宅の土地の場合、国税庁の案内では取得する人ごとに次のように分かれます。配偶者が取得するなら、取得する人の要件はありません。亡くなった人と同居していた親族は、亡くなる直前から申告期限まで住み続け、申告期限まで土地を持ち続けることが要件です。同居していない親族は、この記事の「家なき子の6つの条件」をすべて満たす必要があります。亡くなった人と生計を一にしていた親族が自分で住んでいた土地なら、その親族が申告期限まで住み続け、持ち続けることが要件です(国税庁タックスアンサーNo.4124、2026年10月確認)。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の国税庁の公開情報をもとにした一般的な整理です。特例を使えるかどうかや税額は、ご家族の住まいの経緯、土地の状況、遺産の分け方によって異なります。個別の判断や税額の計算は、税務署または税理士にご確認ください。当社は相続税の申告や登記などの手続きの代行は行っていません。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

親の預金・保険、元気なうちに決めておくこと。30分無料で相談できます052-766-5650無料相談を申し込む
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

目次