親が亡くなり、引き出しから証券会社の封筒や取引報告書が出てきた。そんな場面で、何から手を付けるか迷う方は多いです。
この記事では、亡くなった人の証券口座の相続手続きを、会社が違っても共通する流れで整理します。2026年10月時点の公式な案内をもとにしています。
先に結論:証券会社へ連絡し、相続人の口座へ移す
この記事の結論
- 流れ:証券会社に亡くなったことを伝え、書類をそろえ、相続人名義の口座へ株や投資信託を移します。
- 相続人の口座:故人の口座は閉じられるため、受け皿になる相続人名義の口座が必要です。持っていなければ先に開きます。
- 特別口座とほふり:証券会社にない株は、信託銀行の特別口座にあるかもしれません。口座先が不明なら、ほふりに開示請求できます。
証券口座の手続きに、法律上の決まった期限はありません。ただ、死亡を伝えると、多くの会社で口座の取引が止まります。株価は動き続けるため、早めに動いた方が迷いが少なくなります。
なお、相続税の申告期限は別に動きます。亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。相続税がかかるかは、株や預金に不動産も合わせた合計で決まります。親名義の不動産の一覧は、名寄帳の取り方で確かめられます。
手続きの対象になるもの・ならないもの
証券会社の口座にあるものは、まとめて相続の対象です。一方で、口座の種類によって扱いが少し違います。
NISA口座の細かい扱いは、NISA口座の相続手続きにまとめました。
全体の流れ:連絡から移管まで
会社ごとに書類の名前は違いますが、順番はほとんど同じです。手続きは郵送が中心で、書類の往復に時間がかかります。
- 口座のある証券会社を確かめる。取引報告書、郵便物、通帳の引き落とし先などから探します。わからないときは次の章を見てください。
- 証券会社に連絡する。故人の名前、亡くなった日、連絡先を伝えます。この時点で、多くの会社が取引を止めます。
- 案内書類を受け取る。会社から、手続きの手引、死亡届出書、残高証明書の依頼書などが届きます。基準日を亡くなった日にする考え方は、銀行の残高証明書の取り方と同じです。
- 相続人の口座を用意する。受け皿になる口座を、同じ会社に持っていなければ開きます。
- 戸籍などをそろえて返送する。会社に書類を送り、内容を確認してもらいます。
- 移管または売却。株や投資信託を相続人の口座へ移します。売って現金で受け取れる会社もあります。
手続き前に、決めておくこと
- □ 誰が相続するか(遺言書、遺産分割協議書の有無)
- □ 手続きを進める代表者は誰か
- □ 移管して持ち続けるか、売るか(売るなら評価と税金も確認)
- □ 相続人名義の口座を、どの会社に持つか
株の評価や売るときの税金は、相続した株・投資信託の評価と売るときの税金で一般的な仕組みを整理しています。個別の計算は税務署や税理士にご確認ください。
必要書類と、相続人の口座が必要な理由
必要書類は、遺言書や遺産分割協議書があるかで変わります。ここでは、多くの会社で共通する中身を挙げます。
必要書類チェックリスト
- □ 故人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、または法定相続情報一覧図
- □ 相続人全員の戸籍謄本
- □ 相続人全員の印鑑登録証明書(発行日の期限を確認)
- □ 遺言書、または遺産分割協議書(ある場合)
- □ 相続人の本人確認書類
- □ 会社所定の依頼書(会社から届いたもの)
戸籍を何度も出す手間は、法務局の「法定相続情報一覧図」で減らせます。取り方は法定相続情報一覧図の取り方を見てください。
なぜ相続人の口座が必要なのか
故人名義の口座は、亡くなった時点で閉じる前提で扱われます。そのため、故人の口座のまま売り買いを続けることはできません。株や投資信託を、売らずにそのまま移す先が必要になります。
多くの会社では、移す先を同じ会社の相続人名義の口座としています。持っていなければ、先に開設してください。口座開設には本人確認に日数がかかるため、早めの用意が役立ちます。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
証券会社が分からないとき:特別口座と、ほふりの開示請求
通帳や郵便物を見ても、証券会社が見つからないことがあります。このとき確かめる方法は2つです。
特別口座に株が残っていないか
特別口座とは、2009年の株券の電子化のときに、証券会社の口座に入らなかった株を管理するための口座です。発行会社の申し出で、株主名義で信託銀行などに開かれました。
証券会社に口座がないのに、株主総会の案内や配当金の通知が届く場合は、この口座かもしれません。手続きの窓口は証券会社ではなく、その銘柄の株主名簿管理人(特別口座の管理機関)です。通知の差出人を確認してください。
特別口座の株は、そのままでは市場で売れません。売るには、先に証券会社に口座を開き、そこへ株を移す手順が必要とされています。
ほふりに、口座先の開示請求をする
株式の口座の管理をしている「証券保管振替機構(ほふり)」には、故人の口座がある証券会社や信託銀行を調べる開示請求があります。2026年10月1日から、相続人の費用が改定されました。
- 手続きは郵送のみです。窓口や電話での回答はありません。
- わかるのは、口座がある証券会社や信託銀行などの一覧です。銘柄や残高は、わかりません。
- 受付から結果の送付まで、書類に不備がなくても2か月ほどかかるとされています。
- 請求後のキャンセルはできません。該当がなくても手数料がかかります。
先に、銀行の引き落としや郵便物で見当をつけてください。銀行側の調べ方は亡くなった親の銀行口座の調べ方にあります。
期限の目安:口座に期限はないが、別の期限が動く
証券口座を移す前に、相続の放棄を考えている方は注意が必要です。株を売ったり名義を変えたりすると、相続を認めたとみなされることがあります。迷うときは先に専門家へ相談してください。
損しやすい点と、今日できる一歩
- 連絡前に売買しない:死亡後は、故人の口座で売買できないのが一般的です。連絡の前に動かさないでください。
- 特別口座を見落とす:証券会社の口座だけで終えると、株の残りに気づけません。
- 配当金の受け取りもれ:未受領の配当金がある場合、その手続きも別に必要です。
- 書類の期限切れ:印鑑証明などは、会社が決めた期限内のものが必要です。
- 相続人の口座がない:持っていなければ、先に開設しましょう。
今日できる一歩
- 故人の郵便物と引き出しを見て、証券会社や信託銀行の名前を紙に書き出す。
よくある質問
Q1. 証券会社は、どこに連絡すればよいですか。
多くの会社に相続専用の窓口があります。会社の公式サイトで「相続」を探すか、取引報告書にある電話番号に連絡してください。複数の会社を使っていたときは、それぞれに連絡が必要です。
Q2. 相続人の口座は、同じ会社でなければいけませんか。
移管の場合は、同じ会社の口座を求める会社が多いです。他社の口座へ移せるかどうかは、会社によって違います。事前に各社に確認してください。
Q3. 売ってから分けることはできますか。
会社によっては、売却して代金を受け取る方法を選べます。ただ、相続人全員の同意が前提です。税金も関わるため、先に売るか移すかを話し合ってください。
Q4. 特別口座の株は、証券会社で手続きできますか。
できません。窓口は、特別口座を管理する信託銀行などです。三菱UFJ信託銀行の案内でも、証券会社で持つ株の手続きは取引先の証券会社に問い合わせるよう書かれています。
Q5. 相続人の一人だけで手続きできますか。
原則は、相続人全員の書類が必要です。遺産分割協議書や遺言書の内容で、必要な書類が変わります。代表者を決めて進める形が多いです。
Q6. 亡くなった親の証券口座の解約は、どう進めますか。
証券口座の解約は、相続手続きの書類と一緒に進みます。三菱UFJ eスマート証券の例では、最初に届く書類の中に「口座開設者死亡届出書 兼 口座抹消届出書」があります。口座の中の株や投資信託は、相続人の口座へ移すか、売って代金を受け取ります。先に行き先を相続人で話し合っておくと、書類のやり取りが減ります。流れは会社ごとに違うため、相続窓口で「口座を閉じるまでの手順」を聞いてください。
参考にした公的情報
- 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」
https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/ - 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求に係る費用改定のお知らせ」
https://www.jasdec.com/assets/download/news/20260630_tsuuchi_HP.pdf - 証券保管振替機構「開示請求(相続人の場合)」
https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/direct/ - 三菱UFJ信託銀行「株式等の相続手続のご案内」
https://www.tr.mufg.jp/daikou/pdf/kabu_qa_06.pdf - 三菱UFJ eスマート証券「相続手続き 必要書類」
https://kabu.com/support/souzoku/required.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関と事業者の公開情報をもとにした一般的な整理です。必要書類や取扱いは証券会社・信託銀行ごとに異なります。税金や法律の個別の判断は、窓口や専門家にご確認ください。当社は証券会社への手続きを代行しません。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
